訪問介護には、令和6年度改定で新設された減算が2つあります。高齢者虐待防止措置未実施減算業務継続計画未策定減算。どちらも所定単位数の100分の1で、利用者全員が対象です。

「1%なら大したことない」と思われがちですが、改定資料は「所定単位数から平均して7単位程度/(日・回)の減算となる」と説明しています。訪問回数の多い事業所では、月間で相応の金額になります。

そして重要なのは、2つの減算は開始時期の数え方も、必要な手続きも違うということ。虐待防止のほうには改善計画の提出という手続きがあり、業務継続計画のほうにはありません。

なお業務継続計画未策定減算には令和7年3月31日までの経過措置がありましたが、この期間はすでに終了しています。

この記事では、指定居宅サービス介護給付費単位数表(厚生省告示第19号)訪問介護費 注5・注6、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第2号・第2号の2、老企第36号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 2つの減算がいずれも所定単位数の1%であること
  • 平均して7単位程度/(日・回)の減算になること
  • 虐待が発生した場合ではなく、措置未実施が対象であること
  • 虐待防止に必要な4つの措置
  • 虐待防止のほうには改善計画の提出手続きがあること
  • 2つの減算で減算の開始時期の数え方が違うこと
  • 業務継続計画は感染症・災害のいずれか又は両方が未策定なら減算になること
  • 計画を作るだけでなく「必要な措置を講ずる」ことまで求められること
  • 経過措置がすでに終了していること
  • 施設・居住系は3%で、訪問介護(その他のサービス)は1%であること

2つの減算を並べて整理する

項目高齢者虐待防止措置未実施減算業務継続計画未策定減算
減算率所定単位数の100分の1(訪問介護の場合)
対象当該事業所の利用者全員
減算の開始事実が生じた月の翌月から事実が生じた翌月(月の初日なら当該月)から
減算の終了改善が認められた月まで基準を満たさない状況が解消された月まで
改善計画の提出必要規定なし
新設令和6年度介護報酬改定
1%は「平均7単位程度」

改定資料は、減算率を定率にした理由をこう説明しています。

「平成18年度に施設・居住系サービスに身体拘束廃止未実施減算を導入した際は、5単位/日減算であったが、各サービス毎に基本サービス費や算定方式が異なることを踏まえ、定率で設定。なお、所定単位数から平均して7単位程度/(日・回)の減算となる。」

つまり1回あたり7単位程度。訪問回数が月1,000回の事業所なら7,000単位、1単位10円換算で月7万円規模になります。

高齢者虐待防止措置未実施減算——虐待の発生が要件ではない

最大の誤解を、老企第36号がはっきり否定しています。

高齢者虐待防止措置未実施減算については、事業所において高齢者虐待が発生した場合ではなく、指定居宅サービス基準第37条の2(中略)に規定する措置を講じていない場合に、利用者全員について所定単位数から減算することとなる。

「虐待がなければ関係ない」ではない

この減算は虐待の有無を問いません。虐待が一度も起きていない事業所でも、体制の措置を講じていなければ減算されます。

逆にいえば、4つの措置を整えて記録を残しておけば、それ以上の何かを求められる減算ではありません。やっていないから引かれる、という単純な構造です。

必要な4つの措置

令和6年度改定資料が要件を列挙しています。

○ 虐待の発生又はその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合(新設)
虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
虐待の防止のための指針を整備すること。
・ 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
・ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

老企第36号も、同じ4項目を減算の引き金として挙げています。

措置ポイント
①委員会の定期開催テレビ電話装置等の活用が可能。結果を従業者に周知徹底する
②指針の整備虐待の防止のための指針
③研修の定期実施通知は年1回以上と明記
④担当者の設置措置を適正に実施するための担当者
ちびウルフちびウルフ

小さな事業所だと、委員会を開くのも大変そうです。

リハウルフリハウルフ

そこはテレビ電話装置等の活用が認められているのが助けになる。全員が同じ部屋に集まる必要はない。

実務的には、すでにやっている会議に虐待防止の議題を入れて、記録に残すのが現実的だと思う。訪問介護なら、特定事業所加算で開いている会議や、月次のミーティングがある事業所も多いはずだ。

大事なのは「委員会を開いた」「指針がある」「研修をやった」「担当者は誰か」の4つを、書類で示せること。運営指導で聞かれるのはそこだけだよ。逆に、4つのうち1つでも欠けると減算になる。

減算の手続き——改善計画の提出が要る

具体的には、高齢者虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催していない、高齢者虐待防止のための指針を整備していない、高齢者虐待防止のための年1回以上の研修を実施していない又は高齢者虐待防止措置を適正に実施するための担当者を置いていない事実が生じた場合、速やかに改善計画を都道府県知事に提出した後、事実が生じた月から3月後に改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告することとし、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間について、利用者全員について所定単位数から減算することとする。

  • 4つの措置のいずれかを講じていない事実が生じる
  • 速やかに改善計画を都道府県知事に提出する
  • 事実が生じた月の翌月から減算が始まる
  • 事実が生じた月から3月後に、改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告する
  • 改善が認められた月まで減算が続く
「改善が認められた月まで」

減算が止まるのは、自分で改善したと判断した月ではなく改善が認められた月です。3月後の報告というステップが設けられているのは、そのためです。

したがって最短でも数か月は減算が続くと見込んでおく必要があります。措置を欠かさないことが、結局いちばん安上がりです。

業務継続計画未策定減算——計画を作るだけでは足りない

業務継続計画未策定減算については、指定居宅サービス等基準第30条の2第1項(中略)に規定する基準を満たさない事実が生じた場合に、その翌月(基準を満たさない事実が生じた日が月の初日である場合は当該月)から基準を満たない状況が解消されるに至った月まで、当該事業所の利用者全員について、所定単位数から減算することとする。

改定資料が、基準の中身を示しています。

○ 以下の基準に適合していない場合(新設)
感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること

  • 対象は感染症非常災害の2つ
  • 改定資料は「いずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合」減算としている
  • 策定するだけでなく計画に従い必要な措置を講ずることまでが基準
片方だけでは減算対象

感染症のBCPは作ったが災害のBCPは未着手——この状態は「いずれかが未策定」に当たり、減算の対象です。両方そろえる必要があります。

さらに「計画に従い必要な措置を講ずること」まで基準に含まれています。ファイルに綴じてあるだけの計画では、基準を満たしたと言い切れません。研修・訓練の実施記録まで残してください。

減算の開始時期が虐待防止と微妙に違う

減算開始
高齢者虐待防止措置未実施減算事実が生じた月の翌月から
業務継続計画未策定減算その翌月から。ただし事実が生じた日が月の初日である場合は当該月から

業務継続計画未策定減算だけに「月の初日なら当該月から」という例外が付いています。細かい違いですが、請求時に効いてきます。

経過措置はすでに終了している

なお、経過措置として、令和7年3月31日までの間、当該減算は適用しないが、義務となっていることを踏まえ、速やかに作成すること。

改定資料も、訪問系サービス等について同様の経過措置を示していました。

※ 令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない。訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、令和7年3月31日までの間、減算を適用しない。

2026年8月現在、猶予はない

訪問介護は訪問系サービスなので、令和7年3月31日までは減算が適用されませんでした。その期間はすでに過ぎています。

まだ業務継続計画が未策定の事業所は、現在進行形で減算の対象です。改定資料は「事業所間の連携により計画策定を行って差し支えない旨を周知する」とも述べています。1事業所だけで抱えず、法人内や地域の事業所と連携して策定する方法もあります。

施設・居住系は3%、訪問介護は1%

サービス区分業務継続計画未策定減算高齢者虐待防止措置未実施減算
施設・居住系サービス3%1%
その他のサービス(訪問介護等)1%1%

業務継続計画未策定減算だけが、施設・居住系と在宅系で減算率が分かれています。訪問介護は「その他のサービス」なので1%です。他サービスの解説を読むときは、どの区分の話かに注意してください。

なお2つの減算とも、対象は全サービス(居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く)です。

確認すべきことのチェックリスト

  • 虐待防止のための委員会を定期的に開催し、結果を従業者に周知しているか
  • 虐待の防止のための指針を整備しているか
  • 虐待の防止のための研修を年1回以上実施しているか
  • 虐待防止措置を適正に実施するための担当者を置いているか
  • 感染症の業務継続計画を策定しているか
  • 非常災害の業務継続計画を策定しているか
  • 業務継続計画に従った必要な措置(研修・訓練等)を講じているか
  • いずれについても実施を示す記録が残っているか

8項目すべてに「はい」と答えられなければ、減算の対象になっている可能性があります。基本報酬に直接かかる減算なので、収益への影響は加算1つ分より大きくなることもあります。

よくある質問

2つの減算の減算率は?

訪問介護ではいずれも所定単位数の100分の1です。業務継続計画未策定減算は、施設・居住系サービスでは3%になります。

1%はどのくらいの金額ですか?

改定資料は「所定単位数から平均して7単位程度/(日・回)の減算となる」と説明しています。

虐待が起きていなければ関係ありませんか?

関係あります。通知は「事業所において高齢者虐待が発生した場合ではなく、(中略)措置を講じていない場合に」減算すると明記しています。

虐待防止に必要な措置は何ですか?

①虐待の防止のための対策を検討する委員会の定期開催と結果の周知、②指針の整備、③年1回以上の研修の実施、④担当者の設置の4つです。

委員会はオンラインで開催できますか?

できます。改定資料はテレビ電話装置等の活用が可能としています。

虐待防止の減算はいつからいつまでですか?

事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月までです。あわせて、速やかに改善計画を都道府県知事に提出し、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告します。

業務継続計画は感染症と災害の両方が必要ですか?

必要です。改定資料は「感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合」に減算するとしています。

計画を作れば要件を満たしますか?

策定に加えて「当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること」も基準に含まれています。

業務継続計画未策定減算はいつから始まりますか?

基準を満たさない事実が生じた翌月からです。ただし事実が生じた日が月の初日である場合は当該月からになります。

経過措置はまだ使えますか?

使えません。訪問系サービスについては令和7年3月31日までの間、減算を適用しないとされていましたが、その期間はすでに終了しています。

小規模事業所でも計画を作らなければいけませんか?

必要です。改定資料は、事業所間の連携により計画策定を行って差し支えない旨を周知するとしています。

減算の対象になるのは一部の利用者ですか?

いずれの減算も、当該事業所の利用者全員が対象です。

まとめ
  • 訪問介護の2つの減算はいずれも所定単位数の100分の1
  • 令和6年度介護報酬改定で新設された
  • 対象は当該事業所の利用者全員
  • 平均して7単位程度/(日・回)の減算になる
  • 高齢者虐待防止措置未実施減算は虐待の発生を要件としない
  • 必要なのは委員会・指針・研修・担当者の4つの措置
  • 委員会はテレビ電話装置等を活用して開催できる
  • 研修は年1回以上
  • 4つのうち1つでも欠けると減算の対象になる
  • 事実が生じたら速やかに改善計画を都道府県知事に提出する
  • 事実が生じた月から3月後に改善状況を報告する
  • 減算は事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで
  • 業務継続計画は感染症と非常災害の両方が必要
  • いずれかが未策定でも減算の対象になる
  • 策定に加えて計画に従い必要な措置を講ずることまでが基準
  • 減算はその翌月から、月の初日に事実が生じた場合は当該月から
  • 解消された月まで減算が続く
  • 訪問系サービスの経過措置は令和7年3月31日で終了している
  • 業務継続計画未策定減算は施設・居住系が3%、その他が1%
  • 計画策定は事業所間の連携により行って差し支えないとされている
参考にした情報

※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示、老企第36号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。委員会の開催頻度や研修の内容、改善計画の様式・提出方法、「改善が認められた月」の判断は、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。減算率は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の減算額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。経過措置の終了時期など期日に関する記述は本記事の作成時点のものです。最新の取扱いは必ず指定権者にご確認ください。体制づくりの進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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