同居家族がいると生活援助は使えない?ヘルパーの要件

「同居家族がいると生活援助は使えない」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。告示は、同居している利用者であっても、家族等の障害・疾病等の理由により家事を行うことが困難な場合には算定できると定めています。一律の禁止ではなく、条件つきで認められているというのが条文の書き方です。
この記事では、ヘルパー(訪問介護)の生活援助と同居家族の関係を、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準の原文を確認して整理しました。介護支援専門員として、実際に保険者とやり取りしてきた立場から書いています。
- 同居家族がいても生活援助を算定できる場合があること
- 告示の条文に「等」が入っている意味
- 認められやすい事情と、そうでない事情
- ケアプランに書くべき理由の書き方
- 保険者への確認が必要な理由
- 同居家族へのサービス提供禁止(別の規定)との違い
- 身体介護に該当する場合の考え方
- 算定を否定されたときの整理のしかた
生活援助の対象者を定めた条文
- 単身の世帯に属する利用者又は家族若しくは親族と同居している利用者であって、当該家族等の障害、疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるものに対して、生活援助が中心である指定訪問介護を行った場合に算定する。
読み取るべき点は3つあります。
- 対象は「単身の世帯」または「家族・親族と同居している利用者」の両方である
- 同居の場合は「当該家族等の障害、疾病等の理由により」家事が困難であることが条件
- 条文は「障害、疾病等」と書いており、障害と疾病だけに限定していない
実際の運用では、高齢や体力低下により家事が難しい、介護疲れで心身の状態が悪化している、といった事情が考慮されることがあります。ただし、どこまでを「等」に含めるかは保険者の判断です。
認められやすい事情と、慎重な判断が必要な事情
| 事情 | 実務上の扱い |
|---|---|
| 同居家族に障害があり、家事ができない | 条文に直接該当する |
| 同居家族が疾病で治療中・入院中 | 条文に直接該当する |
| 同居家族も高齢で、身体機能が低下している | 「等」に含まれると判断されることが多い |
| 同居家族が介護疲れで心身の不調をきたしている | 状況の記録があれば考慮されうる |
| 同居家族が就労で日中不在 | 保険者によって判断が分かれる |
| 同居家族が家事をしたがらない | 認められにくい |
| 同居家族が遠方に長期出張している | 期間と実態により判断される |
「就労で不在」は最も判断が分かれるところです。日中不在であっても帰宅後に家事ができる状態であれば、生活援助の必要性が認められないことがあります。一方で、勤務形態や利用者の状態によっては認められることもあります。
ちびウルフじゃあ、とりあえず入れてみて、ダメだったら外せばいいのかな?
リハウルフそれは危険です。後から否定されると、算定していた期間すべてが返還の対象になることがあります。困るのは事業所と利用者です。判断が微妙なケースこそ、先に保険者へ確認して、担当者名と日付を記録に残すのが確実です。私は迷ったら必ず事前に電話しています。
ケアプランに書くべき理由
算定の可否は、書類上で説明できるかどうかで決まります。「同居家族あり」とだけ書いて生活援助を入れると、根拠が示せません。
- 同居家族の状況を具体的に書く(誰が、どんな状態で、なぜ家事が困難か)
- その状態を裏づける情報を記録する(診断名、通院状況、就労状況、本人・家族の発言)
- 家族が担える家事と、担えない家事を分けて書く
- 生活援助が必要な範囲を、具体的な行為で特定する
- 家族が担えるようになった場合の見直し時期を書く
| 避けたい書き方 | 望ましい書き方 |
|---|---|
| 同居家族はいるが多忙のため | 長男は平日7時〜20時まで就労のため不在。本人は片麻痺により調理・買い物が困難。長男は帰宅後に夕食のみ対応可能だが、昼食の準備ができない |
| 家族が高齢のため | 同居の妻は要支援2で、腰痛により立位での調理が10分以上継続できない。掃除機の使用も困難 |
| 家族の負担軽減のため | 同居の娘はうつ病で通院中(月2回)。主治医より家事負担の軽減が必要との助言あり |
「同居家族へのサービス提供禁止」とは別の話
①同居家族がいる利用者への生活援助:告示19号 訪問介護費 注3。条件つきで算定できる
②同居家族である利用者へのサービス提供:指定居宅サービス等基準 第25条。禁止されている
②は「訪問介護員が、自分の同居家族である利用者にサービスを提供すること」の禁止です。ヘルパーとして働く人が、自分の親を担当できない、という話であり、①とは論点が異なります。
身体介護に該当する場合
同居家族の有無は、生活援助の算定要件であって、身体介護の要件ではありません。身体介護は、同居家族がいても算定できます。
実務でよく問題になるのが、次のような場面です。
- 調理は生活援助だが、嚥下状態に応じた食形態の調整を伴う場合の扱い
- 買い物は生活援助だが、本人が同行して選ぶ場合の扱い
- 掃除は生活援助だが、本人と一緒に行い自立を促す場合の扱い
本人の自立支援のために「一緒に行う」場合は、身体介護として整理される場合があります。この考え方は訪問介護の身体介護に続く生活援助とあわせて確認してください。ただし区分の判断は保険者の見解によります。
算定を否定されたときの整理
- どの条文・通知にもとづく判断かを確認する
- 同居家族の状況について、追加で示せる情報がないか整理する
- 家族が担えない具体的な家事を特定し直す
- 身体介護として整理できる部分がないか検討する
- 保険外サービスや、地域の支援で代替できないか検討する
- 再度、書面で照会する(回答を記録に残す)
感情的にやり取りしても結論は変わりません。条文に沿って、事実を追加できるかで勝負するのが実務です。
よくある質問
同居家族がいると生活援助は使えないのですか?
一律に使えないわけではありません。告示は、家族等の障害、疾病等の理由により家事を行うことが困難な場合には算定できると定めています。
「障害、疾病等」の「等」には何が含まれますか?
障害や疾病と同程度に家事を困難にする事情が含まれると読めます。高齢による身体機能の低下や、介護疲れによる不調などが考慮されることがありますが、判断は保険者によります。
家族が仕事で日中いない場合は認められますか?
判断が分かれます。帰宅後に家事ができる状態であれば認められないことがあります。勤務形態と利用者の状態により結論が変わるため、事前に保険者へ確認してください。
ケアプランには何を書けばよいですか?
誰が、どんな状態で、なぜ家事が困難かを具体的に書いてください。家族が担える家事と担えない家事を分けて書くと、根拠が明確になります。
あとから算定を否定されるとどうなりますか?
算定していた期間が返還の対象になることがあります。判断が微妙な場合は、事前に保険者へ確認し、担当者名と日付を記録に残してください。
ヘルパーが自分の親を担当できますか?
できません。指定居宅サービス等基準第25条により、訪問介護員が同居の家族である利用者へサービスを提供することは禁止されています。生活援助の算定要件とは別の規定です。
身体介護も同居家族がいると使えませんか?
使えます。同居家族の有無は生活援助の算定要件であり、身体介護の要件ではありません。
本人と一緒に調理する場合はどう扱いますか?
自立支援を目的として一緒に行う場合、身体介護として整理される場合があります。区分の判断は保険者の見解によるため、確認してください。
家族が家事をしたがらない場合は?
認められにくい事情です。条文は「家事を行うことが困難である」ことを求めており、意思の問題は該当しにくくなります。
- 同居家族がいても、生活援助が一律に使えないわけではない
- 告示19号 訪問介護費 注3が、単身世帯と同居世帯の両方を対象としている
- 同居の場合は「家族等の障害、疾病等の理由により家事が困難」が条件
- 条文は「障害、疾病等」と書いており、限定列挙ではない
- 「等」にどこまで含めるかは保険者の判断
- 家族の高齢や介護疲れが考慮されることがある
- 「就労で日中不在」は最も判断が分かれる
- 家族が家事をしたがらないという事情は認められにくい
- ケアプランには、誰が・どんな状態で・なぜ困難かを具体的に書く
- 家族が担える家事と担えない家事を分けて書く
- 判断が微妙なら、事前に保険者へ確認し記録に残す
- 後から否定されると、算定期間全体が返還の対象になり得る
- 「同居家族への生活援助」と「同居家族である利用者へのサービス提供禁止(基準第25条)」は別の規定
- 同居家族の有無は、身体介護の算定要件ではない
- 否定されたときは、条文に沿って追加できる事実を整理して再度照会する
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)(訪問介護費 ロ 注3)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)e-Gov法令検索(第25条)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)e-Gov法令検索
※本記事の制度に関する記述は、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準および指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準にもとづいて整理したものです。「障害、疾病等」の「等」に含まれる事情の範囲、および身体介護と生活援助の区分については、留意事項通知および保険者の解釈によって取扱いが異なります。本記事に挙げた例は実務上見られる整理であり、算定の可否を保証するものではありません。個別の判断は必ず保険者(市町村)にご確認いただき、回答を記録に残してください。実務上の注意点は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。





