訪問介護の口腔連携強化加算とは?

訪問介護の口腔連携強化加算は50単位、1月に1回。令和6年度介護報酬改定で新設された加算です。
この加算がこれまでと違うのは、歯科専門職ではなく、訪問介護事業所の従業者が利用者の口腔の健康状態を評価するという発想にあります。ヘルパーが口の中を見て、歯科医療機関とケアマネジャーの両方に情報を届ける。その入口の役割が評価されました。
要件は決して重くありません。歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関と、相談できる体制を文書等で取り決めておくこと。それだけです。ただし算定できない場面が3つあり、そこには細かい例外が付いています。
この記事では、指定居宅サービス介護給付費単位数表(厚生省告示第19号)訪問介護費 ヘ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の3、老企第36号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 単位数は50単位、1月に1回限りであること
- 令和6年度改定で新設され、6つのサービスが対象であること
- 評価するのは事業所の従業者(介護職員等)であること
- 確認する口腔の項目8つ
- 状態に応じて確認可能な場合に限る2項目があること
- 連携先は歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関に限られること
- 連携歯科医療機関は複数でも差し支えないこと
- 情報提供先は歯科医療機関とケアマネの両方であること
- 算定できない3つの場合と、その例外
- 算定する事業所はサービス担当者会議等で決めること
口腔連携強化加算とは?単位数は50単位
口腔連携強化加算とは、事業所の従業者が利用者の口腔の健康状態を評価し、利用者の同意を得て、歯科医療機関と介護支援専門員に情報提供した場合に算定できる加算です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 50単位 |
| 算定の回数 | 1月に1回限り |
| 評価する人 | 事業所の従業者(介護職員等) |
| 情報提供先 | 歯科医療機関および介護支援専門員 |
| 新設 | 令和6年度介護報酬改定 |
| 届出 | 必要 |
別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定訪問介護事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果の情報提供を行ったときは、口腔連携強化加算として、1月に1回に限り所定単位数を加算する。
令和6年度改定資料は、この加算の対象サービスをこう示しています。
訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護
訪問系と短期入所系に限られており、通所系サービスにはありません(通所系には口腔・栄養スクリーニング加算や口腔機能向上加算があります)。
改定の趣旨——介護職員が「入口」になる
2.(1)⑮ 訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化
○ 訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護及び定期巡回・随時対応型訪問介護看護において、職員による利用者の口腔の状態の確認によって、歯科専門職による適切な口腔管理の実施につなげる観点から、事業所と歯科専門職の連携の下、介護職員等による口腔衛生状態及び口腔機能の評価の実施並びに利用者の同意の下の歯科医療機関及び介護支援専門員への情報提供を評価する新たな加算を設ける。
ちびウルフヘルパーが口の中を評価してもいいんですか?専門職じゃないのに。
リハウルフいいんだ。というより、それがこの加算の狙いなんだよ。
在宅で暮らす人の口の中を、いちばん頻繁に見ているのは誰か。食事介助や口腔ケアで毎日のように口を見ているヘルパーだよね。歯科医師が訪問するのは、問題が起きてからになりがちだ。
だから制度は「見つける人」と「治す人」を分けた。ヘルパーは診断するわけじゃない。8項目を見て、気づいたことを歯科医療機関とケアマネに渡す。判断はそこから先の専門職がする。
評価の方法に迷ったら連携歯科医療機関に相談してよい、と通知にも書いてある。一人で抱え込まない設計になっている。
確認する口腔の項目は8つ
老企第36号が、評価項目を列挙しています。
口腔の健康状態の評価は、それぞれ次に掲げる確認を行うこと。ただし、ト及びチについては、利用者の状態に応じて確認可能な場合に限って評価を行うこと。
イ 開口の状態
ロ 歯の汚れの有無
ハ 舌の汚れの有無
ニ 歯肉の腫れ、出血の有無
ホ 左右両方の奥歯のかみ合わせの状態
ヘ むせの有無
ト ぶくぶくうがいの状態
チ 食物のため込み、残留の有無
| 項目 | 確認 |
|---|---|
| イ 開口の状態 | 必ず確認する |
| ロ 歯の汚れの有無 | |
| ハ 舌の汚れの有無 | |
| ニ 歯肉の腫れ、出血の有無 | |
| ホ 左右両方の奥歯のかみ合わせの状態 | |
| ヘ むせの有無 | |
| ト ぶくぶくうがいの状態 | 状態に応じて確認可能な場合に限る |
| チ 食物のため込み、残留の有無 |
ぶくぶくうがいは、指示が入らない方や誤嚥のリスクが高い方には実施できません。食物のため込みも、食事場面に立ち会わなければ確認できません。
通知はそれを見越して、この2項目だけ「利用者の状態に応じて確認可能な場合に限って」としています。できない項目があるからといって、加算を諦める必要はありません。確認できなかった理由を記録に残しておけば足ります。
あわせて通知は、評価にあたって参考にすべき資料を挙げています。
口腔の健康状態の評価を行うに当たっては、別途通知(「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」)及び「入院(所)中及び在宅等における療養中の患者に対する口腔の健康状態の確認に関する基本的な考え方」(令和6年3月 日本歯科医学会)等を参考にすること。
連携先は「歯科訪問診療料の算定実績がある」歯科医療機関
算定要件の中心は、厚生労働大臣が定める基準(告示第95号)第3号の3イです。
イ 指定訪問介護事業所の従業者が利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うに当たって、歯科診療報酬点数表の区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士に相談できる体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること。
- 連携先は歯科訪問診療料(C000)の算定実績がある歯科医療機関に限る
- 相談相手は歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士
- 相談できる体制を確保する
- その旨を文書等で取り決める
近所の歯科医院であれば何でもよい、というわけではありません。歯科訪問診療料の算定実績がある——つまり在宅への訪問診療を実際に行っている歯科医療機関である必要があります。
探し方としては、地域の歯科医師会に問い合わせる、居宅療養管理指導(歯科)を提供している事業所を当たる、ケアマネジャーに紹介を依頼する、といったルートが現実的です。
連携歯科医療機関は複数でもよい
口腔の健康状態の評価の実施に当たっては、必要に応じて、(中略)連携歯科医療機関の歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士に口腔の健康状態の評価の方法や在宅歯科医療の提供等について相談すること。なお、連携歯科医療機関は複数でも差し支えない。
1か所に限定されないため、地域ごとに複数の歯科医療機関と取り決めておくことができます。訪問介護の営業エリアが広い事業所では、実務上ありがたい規定です。
情報提供は歯科医療機関とケアマネの「両方」へ
口腔の健康状態の評価をそれぞれ利用者について行い、評価した情報を歯科医療機関及び当該利用者を担当する介護支援専門員に対し、別紙様式6等により提供すること。
歯科医療機関への情報提供に当たっては、利用者又は家族等の意向及び当該利用者を担当する介護支援専門員の意見等を踏まえ、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医等のいずれか又は両方に情報提供を行うこと。
| 提供先 | 内容 |
|---|---|
| 歯科医療機関 | 連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医等のいずれか又は両方。本人・家族の意向とケアマネの意見を踏まえて選ぶ |
| 介護支援専門員 | 必ず提供する |
情報を渡す歯科医療機関は、連携先とは限りません。利用者にかかりつけ歯科医がいるなら、そちらへの情報提供も選択肢になります。本人・家族の意向を確認してください。
様式は別紙様式6等とされています。「等」とあるので他の様式でも差し支えありませんが、標準様式に沿うのが無難です。
主治医への情報提供も視野に入れる
口腔の健康状態によっては、主治医の対応を要する場合もあることから、必要に応じて介護支援専門員を通じて主治医にも情報提供等の適切な措置を講ずること。
算定できない3つの場合
告示第3号の3ロが、算定できない場面を定めています。ここが実務上いちばん複雑です。
| 算定できない場合 | 例外 |
|---|---|
| ①他の事業所で口腔・栄養スクリーニング加算を算定している | 栄養状態のスクリーニングを行い(Ⅱ)を算定している場合は算定可 |
| ②居宅療養管理指導(歯科医師・歯科衛生士)を算定している | 評価の結果、居宅療養管理指導が必要と歯科医師が判断し、初回の居宅療養管理指導を行った日の属する月は算定可 |
| ③他の事業所で口腔連携強化加算を算定している | — |
②の例外は読みにくいのですが、意味は明快です。口腔連携強化加算で評価して情報提供した結果、歯科医師が「居宅療養管理指導が必要」と判断して初回の指導を行った月は、両方算定できるということ。
「見つけて、歯科につないだ」ことを評価する——制度の狙いがそのまま条文になっています。逆に、翌月以降は居宅療養管理指導が続くので、口腔連携強化加算は算定しません。
③——1人の利用者につき1事業所
訪問介護と訪問看護を併用している利用者の場合、どちらか一方の事業所しか算定できません。通知は決め方も示しています。
口腔連携強化加算の算定を行う事業所については、サービス担当者会議等を活用し決定することとし、原則として、当該事業所が当該加算に基づく口腔の健康状態の評価を継続的に実施すること。
- 算定する事業所はサービス担当者会議等で決定する
- 決めた事業所が継続的に評価を実施する
- 毎月事業所が入れ替わるような運用は想定されていない
請求してから重複が判明して返戻、というのが典型的な失敗です。開始前にケアマネジャーを通じて調整してください。
算定にあたっての実務ステップ
- 歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関を探す(歯科医師会・ケアマネ経由等)
- 相談できる体制について文書等で取り決める(複数の歯科医療機関でも可)
- 都道府県知事へ届け出る
- サービス担当者会議等で、自事業所が算定することを確認・決定する
- 他事業所で口腔・栄養スクリーニング加算や口腔連携強化加算を算定していないかを確認する
- 居宅療養管理指導(歯科)を受けていないかを確認する
- 8項目の評価を実施する(トとチは確認可能な場合に限る)
- 評価方法に迷ったら連携歯科医療機関の歯科医師・歯科衛生士に相談する
- 利用者の同意を得る
- 別紙様式6等により、歯科医療機関と介護支援専門員の両方へ情報提供する
- 必要に応じてケアマネを通じて主治医にも情報提供する
- 翌月以降も継続的に評価を実施する
1つ目と2つ目さえ整えば、あとは日々の訪問のなかで完結します。研修修了者の配置も、割合要件も、LIFE提出もありません。着手のハードルは低い加算です。
よくある質問
単位数と回数は?
50単位で、1月に1回限り算定できます。
いつ新設された加算ですか?
令和6年度介護報酬改定です。訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が対象です。
評価は誰が行いますか?
指定訪問介護事業所の従業者です。介護職員等による評価が想定されています。
何を確認しますか?
開口の状態、歯の汚れの有無、舌の汚れの有無、歯肉の腫れ・出血の有無、左右両方の奥歯のかみ合わせの状態、むせの有無、ぶくぶくうがいの状態、食物のため込み・残留の有無の8項目です。
うがいができない利用者でも算定できますか?
できます。ぶくぶくうがいの状態と食物のため込み・残留の有無については、利用者の状態に応じて確認可能な場合に限って評価するとされています。
連携する歯科医療機関に条件はありますか?
あります。歯科診療報酬点数表の区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関に限られます。
連携先は1か所だけですか?
複数でも差し支えないとされています。
取り決めは口頭でもよいですか?
告示は「文書等で取り決めていること」としています。文書等による取り決めが必要です。
情報提供先はどこですか?
歯科医療機関と、利用者を担当する介護支援専門員の両方です。歯科医療機関は、本人・家族の意向とケアマネの意見を踏まえ、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医等のいずれか又は両方に提供します。
様式は決まっていますか?
通知は「別紙様式6等により提供すること」としています。
居宅療養管理指導を受けている人には算定できませんか?
原則算定できませんが、評価の結果、居宅療養管理指導が必要と歯科医師が判断し、初回の居宅療養管理指導を行った日の属する月は算定できます。
訪問看護でも算定している場合はどうなりますか?
同一の利用者について、他の事業所で口腔連携強化加算を算定している場合は算定できません。算定する事業所はサービス担当者会議等を活用して決定します。
- 訪問介護の口腔連携強化加算は50単位、1月に1回限り
- 令和6年度介護報酬改定で新設された
- 対象は訪問系・短期入所系の6サービス
- 評価するのは事業所の従業者(介護職員等)
- 介護職員が「見つける入口」になることを評価する加算
- 確認項目は8つ
- ぶくぶくうがいと食物のため込みは確認可能な場合に限る
- 評価方法は連携歯科医療機関の歯科医師・歯科衛生士に相談できる
- 連携先は歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関に限られる
- 相談できる体制を文書等で取り決める
- 連携歯科医療機関は複数でも差し支えない
- 情報提供先は歯科医療機関と介護支援専門員の両方
- 歯科医療機関は連携先・かかりつけ歯科医のいずれか又は両方
- 本人・家族の意向とケアマネの意見を踏まえて選ぶ
- 様式は別紙様式6等
- 必要に応じてケアマネを通じ主治医にも情報提供する
- 口腔・栄養スクリーニング加算を算定していると原則算定できない
- 居宅療養管理指導(歯科)を算定していると原則算定できない
- ただし歯科につないだ初回の月は算定できる
- 他事業所が算定している場合は算定できない
- 算定する事業所はサービス担当者会議等で決定し、継続的に実施する
- 研修修了者の配置・割合要件・LIFE提出はなく、着手しやすい加算
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号) 訪問介護費 ヘ 口腔連携強化加算(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号) 第3号の3
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス等に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号) 訪問介護費(23)口腔連携強化加算について
- 令和6年度介護報酬改定における改定事項について(PDF) 2.(1)⑮ 訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化(厚生労働省)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、老企第36号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。連携歯科医療機関との取り決めの文書の様式、情報提供の様式(別紙様式6等)、届出の方法は指定権者によって取扱いが異なる場合があります。口腔・栄養スクリーニング加算や居宅療養管理指導との併算定の可否は、他事業所の算定状況によって変わるため、ケアマネジャーを通じて必ずご確認ください。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。連携先の探し方や運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




