特養の認知症チームケア推進加算は、(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位(いずれも1月につき)です。令和6年度改定で新設されました。

この加算を検討するとき、最初に確認すべきは認知症専門ケア加算との関係です。両者は併算定できません。どちらか一方を選ぶことになります。

そして選ぶ際の鍵が、対象者の範囲です。認知症専門ケア加算の対象は日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mですが、認知症チームケア推進加算はランクⅡも含みます。どちらも「対象者が入所者の2分の1以上」という要件がありますが、分子に入る人数が違うということです。Ⅲ以上では2分の1に届かない施設でも、Ⅱを含めれば届く可能性があります。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「ツ 認知症チームケア推進加算」、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2、認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について(令和6年3月18日老高発0318第1号・老認発0318第1号・老老発0318第1号)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位で、違いは研修の種類だけであること
  • 対象者に日常生活自立度ランクⅡが含まれること
  • 認知症専門ケア加算(ランクⅢ以上)との対象者の違い
  • どちらを選ぶべきかの判断材料
  • (Ⅰ)は認知症介護指導者養成研修+認知症チームケア推進研修
  • (Ⅱ)は認知症介護実践リーダー研修+認知症チームケア推進研修
  • 対象者1人につき月1回以上のカンファレンスが必要なこと
  • 記録に専用のワークシートが指定されていること

単位数は(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位

告示21号の「ツ 認知症チームケア推進加算」は、次のとおりです。

区分単位数(1月につき)
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)120単位

注には、2つの排他規定が置かれています。

  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できない
  • 認知症専門ケア加算を算定している場合は算定しない

認知症専門ケア加算の側(告示の「ソ」)にも、「認知症チームケア推進加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない」という規定があります。双方向の排他です。

認知症専門ケア加算とどちらを選ぶか

まず単位数を並べます。

加算単位数月換算(30日)
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位/150単位
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)120単位/120単位
認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位/90単位
認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位/120単位
単位の数え方が違う

認知症専門ケア加算は1日につき、認知症チームケア推進加算は1月につきです。

そのため専門ケア加算(Ⅱ)は月の日数で変動します。30日の月なら120単位でチームケア推進加算(Ⅱ)と同額、31日の月なら124単位で上回ります。2月は112単位です。

いっぽうチームケア推進加算(Ⅰ)150単位は、月の日数にかかわらず一定で、いずれの専門ケア加算よりも高くなります。

対象者の範囲が違う

単位数以上に判断を左右するのが、対象者の定義です。

加算対象者日常生活自立度
認知症専門ケア加算日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症の者Ⅲ・Ⅳ・M
認知症チームケア推進加算周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・M

認知症専門ケア加算については老企第40号(38)①が「ランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する入所者を指す」としています。いっぽう認知症チームケア推進加算については、令和6年3月18日の3課長連名通知が次のとおり定めています。

本加算の対象者である「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」とは、日常生活自立度のランクⅡ、Ⅲ、Ⅳ又はMに該当する入所者等を指す。

ランクⅡが入るかどうかで、2分の1要件の成否が変わる

どちらの加算も「対象者が入所者の2分の1以上」という要件があります。しかし分子に入る人が違います。

たとえば入所者100人のうち、ランクⅢ以上が45人、ランクⅡが15人の施設を考えます。

認知症専門ケア加算:45人 → 2分の1に届かず算定不可
認知症チームケア推進加算:45+15=60人 → 2分の1以上で要件クリア

「認知症専門ケア加算が取れないから諦めていた」施設が、こちらなら取れる可能性があります。まず自立度Ⅱを含めた人数を数え直すことから始めてください。

ちびウルフちびウルフ

両方の要件を満たせる場合は、どちらを取るのが得ですか?

リハウルフリハウルフ

単位数だけで見ればチームケア推進加算(Ⅰ)150単位が最上位です。ただし要件の重さが違います。

チームケア推進加算は対象者1人につき月1回以上のカンファレンスが必要です。対象者が60人いれば、月60回分のカンファレンスと記録が発生します。専門ケア加算にはこの要件はありません。

150単位×100人=月15,000単位(約15万円)に対して、月60件のカンファレンスと専用ワークシートの記録。ここを回せる体制があるかどうかが分岐点です。人員に余裕がないなら、専門ケア加算のほうが現実的という判断もありえます。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは研修の種類だけ

大臣基準告示95号 第58号の5の2を読むと、(Ⅰ)と(Ⅱ)で異なるのは配置する人の研修要件だけです。

区分配置すべき者の研修
(Ⅰ)150単位認知症介護指導者養成研修を修了し、かつ認知症チームケア推進研修を修了した者
(Ⅱ)120単位認知症介護実践リーダー研修を修了し、かつ認知症チームケア推進研修を修了した者

いずれも1名以上の配置と、複数人の介護職員から成るチームを組むことが必要です。

共通して必要なのが「認知症チームケア推進研修」

(Ⅰ)(Ⅱ)どちらも、認知症チームケア推進研修の修了が必須です。通知はこの研修を次のように定義しています。

「認知症である入所者等の尊厳を保持した適切な介護、BPSDの出現・重症化を予防するケアの基本的考え方を理解し、チームケアを実践することを目的とした研修」

既存の認知症介護実践リーダー研修を修了している職員がいても、それだけでは足りません。チームケア推進研修を追加で受講する必要があります。受講計画を先に立てないと、要件を満たすまでに時間がかかります。

研修修了者は複数名いるほうが望ましい

通知「第4 その他」は、次のとおりです。

加算の対象となる入所者等の人数に応じ、一人の研修を修了した者が全てのチームに対応することが困難と考えられる場合は、複数の者が研修を修了することが望ましい

要件は「1名以上」ですが、対象者が多い施設で1名だけというのは現実的ではない、という趣旨です。「望ましい」なので要件ではありませんが、実地指導で体制を問われたときの説明材料になります。

算定要件は4つ

大臣基準イ(1)〜(4)を整理します。(Ⅱ)は(1)(3)(4)+研修要件です。

要件
(1)入所者の総数のうち、対象者の占める割合が2分の1以上であること
(2)所定の研修を修了している者を1名以上配置し、かつ複数人の介護職員から成るチームを組んでいること
(3)対象者に対し、個別にBPSDの評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、BPSDの予防等に資するチームケアを実施していること
(4)BPSDの予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、BPSDの有無および程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を行っていること

「評価に基づく値を測定」とは

(3)は「評価を行う」ではなく「評価に基づく値を測定する」と書かれています。通知も「BPSDの評価指標を用いて評価を実施し」としており、数値化できる指標を使うことが前提になっています。

具体的にどの指標を使うかは、告示・通知とも指定していません。施設として評価指標を決め、同じ指標で継続的に測定する運用を作る必要があります。

カンファレンスは「対象者1人につき月1回以上」

ここが実務負担のすべてです。通知(4)は次のとおりです。

チームは、ケアの質の向上を図る観点から、チームケアを実施するにあたっては、対象者1人につき月1回以上の定期的なカンファレンスを開催し、BPSDを含めて個々の入所者等の状態を評価し、ケア計画策定、ケアの振り返り、状態の再評価、計画の見直し等を行うこと。(中略)その他、日々のケアの場面で心身の状態や環境等の変化が生じたとき等は、その都度カンファレンスを開催し、再評価、ケア方針の見直し等を行うこと。

「1人につき」です。月1回のチーム会議で全員分をまとめて扱う、という形が想定されているわけではありません。対象者ごとに、その人の状態を評価し、計画を見直す場が月1回以上必要です。

加えて、状態や環境に変化が生じたときは都度のカンファレンスも求められます。

記録は専用ワークシートと介護記録に

同じく通知(4)は、記録先を指定しています。

  • 入所者等の状態の評価
  • ケア方針
  • 実施したケアの振り返り 等

これらを別紙様式の「認知症チームケア推進加算・ワークシート」および介護記録等に詳細に記録することとされています。

ワークシートは厚生労働省が様式を示している

この加算には、通知に添付された専用の様式(認知症チームケア推進加算 ワークシート)があります。施設独自の様式でも「相当する内容」を満たせばよいと考えられますが、厚生労働省が様式を出している以上、それに準拠しておくのが安全です。

他の加算のように「施設サービス計画への記載で代替できる」という規定は置かれていません。ワークシートは別途作成する前提と読むべきでしょう。

この加算が評価しているのは「予防」

通知「第1 基本的な考え方」を読むと、この加算の設計思想がわかります。

認知症ケアについては、認知症である入所者または入居者の尊厳を保持した適切な介護を提供することが、その目指すべき方向性である。入所者等に日頃から適切な介護が提供されることにより、BPSDの出現を予防し、出現時にも早期対応し重症化を防ぐことが可能となる。

評価されているのは、BPSDが出てから対応する力ではなく、出さないための平時の取組です。同じ認知症関連でも、認知症行動・心理症状緊急対応加算(200単位/日・7日限度)が「緊急対応」を評価しているのとは方向が逆になります。

また通知(3)は、計画づくりについてこう釘を刺しています。

  • 評価の結果と整合性が取れた計画を、個々の入所者等の状態に応じて個別に作成する
  • 画一的な計画とならないよう留意する
  • ケアにおいて入所者等の尊厳が十分保持されるよう留意する

自立支援促進加算の通知にもあった「画一的な計画とならないよう」という表現が、ここでも使われています。テンプレートを流用した計画では要件を満たさないという趣旨です。

他の加算との関係

加算関係
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)と(Ⅱ)同時算定不可
認知症専門ケア加算(Ⅰ)(Ⅱ)併算定不可(双方向で規定)
認知症行動・心理症状緊急対応加算併算定を禁じる規定なし
若年性認知症入所者受入加算併算定を禁じる規定なし
科学的介護推進体制加算併算定可

認知症関連の加算のなかで、排他関係にあるのは認知症専門ケア加算だけです。認知症行動・心理症状緊急対応加算は、在宅で暮らす方の緊急入所を評価する別建ての加算なので、性質が異なります。

介護予防(要支援)には存在しない

特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の認知症チームケア推進加算は存在しません。

この加算が設定されているのは、大臣基準第58号の5の2の見出しから次の6つと確認できます。

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護福祉施設サービス(特養)
  • 介護保健施設サービス(老健)
  • 介護医療院サービス
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護

通所介護や訪問介護など、居宅サービスには設定されていません。入所・入居系に限られた加算です。

よくある質問
認知症専門ケア加算と両方算定できますか?

できません。認知症チームケア推進加算の注にも、認知症専門ケア加算の注にも、相互に算定しない旨が規定されています。どちらか一方を選びます。

対象者の範囲は認知症専門ケア加算と同じですか?

違います。認知症専門ケア加算は日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mですが、認知症チームケア推進加算はランクⅡも含みます。3課長連名通知が「ランクⅡ、Ⅲ、Ⅳ又はMに該当する入所者等」と明記しています。

専門ケア加算が取れなくても、こちらなら取れますか?

可能性があります。どちらも「対象者が2分の1以上」ですが、分子に入る人数が違います。ランクⅢ以上では届かなくても、ランクⅡを加えれば2分の1を超える施設はあります。まず自立度Ⅱを含めて数え直してください。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?

配置する者の研修要件だけです。(Ⅰ)は認知症介護指導者養成研修+認知症チームケア推進研修、(Ⅱ)は認知症介護実践リーダー研修+認知症チームケア推進研修の修了者を1名以上配置します。それ以外の要件は共通です。

認知症介護実践リーダー研修を修了した職員がいれば(Ⅱ)を算定できますか?

できません。加えて認知症チームケア推進研修の修了が必要です。(Ⅰ)(Ⅱ)どちらもチームケア推進研修が必須なので、受講計画を先に立てる必要があります。

研修修了者は1名でよいですか?

要件としては1名以上です。ただし通知は「加算の対象となる入所者等の人数に応じ、一人の研修を修了した者が全てのチームに対応することが困難と考えられる場合は、複数の者が研修を修了することが望ましい」としています。

カンファレンスは月1回でよいのですか?

「対象者1人につき月1回以上」です。対象者全員をまとめて1回、ではありません。加えて、心身の状態や環境等に変化が生じたときは都度カンファレンスを開催する必要があります。

BPSDの評価にはどの指標を使えばよいですか?

告示・通知とも特定の指標を指定していません。ただし「評価に基づく値を測定」「BPSDの評価指標を用いて」とされているため、数値化できる指標を施設として定め、継続的に同じ指標で測定する運用が必要です。

記録は施設サービス計画に書けばよいですか?

この加算には「施設サービス計画への記載で代替できる」という規定がありません。通知は別紙様式の「認知症チームケア推進加算・ワークシート」および介護記録等に詳細に記録することとしています。厚生労働省が様式を示しているため、それに準拠するのが安全です。

通所介護でも算定できますか?

できません。この加算は認知症対応型共同生活介護、地域密着型特養、特養、老健、介護医療院、介護予防認知症対応型共同生活介護に設定されており、居宅サービスにはありません。

まとめ
  • 認知症チームケア推進加算は(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位/月。令和6年度の新設
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は同時算定不可
  • 認知症専門ケア加算とは双方向で併算定不可
  • 専門ケア加算は1日単位、チームケア推進加算は1月単位で数え方が違う
  • 対象者は日常生活自立度ランクⅡ・Ⅲ・Ⅳ・M
  • 認知症専門ケア加算(ランクⅢ以上)よりも対象者の範囲が広い
  • どちらも「対象者が2分の1以上」だが、分子に入る人数が違う
  • 専門ケア加算が取れない施設でも、ランクⅡを含めれば要件を満たす可能性がある
  • (Ⅰ)は認知症介護指導者養成研修+認知症チームケア推進研修
  • (Ⅱ)は認知症介護実践リーダー研修+認知症チームケア推進研修
  • (Ⅰ)(Ⅱ)とも認知症チームケア推進研修の修了が必須
  • 既存のリーダー研修修了者がいても、それだけでは足りない
  • 複数人の介護職員から成るチームを組むことが必要
  • 対象者が多い場合、研修修了者は複数名いることが望ましい
  • BPSDの評価は数値化できる指標を用いて計画的に行う
  • カンファレンスは「対象者1人につき月1回以上」
  • 状態や環境の変化時は都度カンファレンスを開催する
  • 記録は専用ワークシートと介護記録等に行う
  • 施設サービス計画への記載による代替規定はない
  • 評価されているのはBPSDの「予防」であり、緊急対応ではない
  • 画一的な計画では要件を満たさない
  • 居宅サービスには設定されていない
  • 介護予防(要支援)版は存在しない
参考にした情報
  • 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」ツ(認知症チームケア推進加算)、ソ(認知症専門ケア加算)、ネ(認知症行動・心理症状緊急対応加算)
  • 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2(認知症チームケア推進加算の基準)
  • 厚生労働大臣が定める基準に適合する入所者等(平成12年厚生省告示第94号)第63号の2、第41号の2
  • 認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について(令和6年3月18日 老高発0318第1号・老認発0318第1号・老老発0318第1号)
  • 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(38)認知症専門ケア加算について、同(39)認知症チームケア推進加算について

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。BPSDの評価指標については告示・通知とも特定の指標を指定していないため、本記事でも具体的な尺度名は挙げていません。使用する指標については指定権者にご確認ください。ワークシートの様式や研修の実施状況は変更されることがあるため、最新の情報をご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の人数の例は要件の考え方を示すための例示です。どちらの加算を選ぶかの判断に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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