特養の人員基準欠如・定員超過減算とは?

特養の人員基準欠如・定員超過減算は、所定単位数の100分の70、つまり30%の減算です。特養の減算では最も重く、身体拘束廃止未実施減算(10%)の3倍にあたります。そして人員基準欠如は「看護・介護職員」と「それ以外」で減算の始まる月が違います。ここが実務で最も混乱するところです。
この記事では、厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号)と老企第40号の原文を確認して、減算率・定員超過の基準・人員基準欠如の3パターン・やむを得ない場合の扱いを整理しました。
この記事でわかること
- 特養の人員基準欠如・定員超過減算は30%(所定単位数の70%)だということ
- 定員超過の基準と、105%まで認められるやむを得ない場合
- 看護・介護職員の欠如は「1割超」か「1割以内」かで始まる月が違うこと
- 看護・介護職員以外の欠如は翌々月からだということ
- 「最も低い所定単位数を下回ってはじめて人員基準欠如」という考え方
- 災害・虐待の受入れによる定員超過は減算しない場合があること
- 2か月以上続くと指定取消しの検討対象になること
- ユニット型の人員基準の書き方
特養の人員基準欠如・定員超過減算とは?
人員基準欠如・定員超過減算は、定員を超えて入所させている場合、または人員基準上必要な職員数を下回っている場合に、基本報酬を30%減額する仕組みです。
この2つは別の事象ですが、減算率が同じ70%で、根拠となる告示も同じ(平成12年厚生省告示第27号)であるため、早見表では1行にまとめられることが多くなっています。
老企第40号 1の(3)①は、この減算の趣旨を「適正なサービスの提供を確保するための規定であり、定員超過利用の未然防止を図るよう努めるものとする」と説明しています。罰則というより、あってはならない状態を防ぐための仕組みという位置づけです。
ちびウルフ30%は重いですね。介護職員が1人辞めただけでもこうなるんですか。
リハウルフ1人ではまずなりません。特養の基本報酬は職員配置に応じた区分があるので、まず低い区分に落ちます。一番低い区分の要件も満たせなくなって、はじめて人員基準欠如です。ここは誤解が多いところです。
人員基準欠如・定員超過減算の減算率
| 区分 | 算定方法 | 実質の減算率 |
|---|---|---|
| 定員超過 | 所定単位数の70% | 30%減 |
| 人員基準欠如 | 介護職員・看護職員の配置に応じた所定単位数の70% | 30%減 |
他の減算との比較
| 減算 | 減算率 |
|---|---|
| 人員基準欠如・定員超過 | 30% |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 10% |
| 夜勤職員基準減算 | 3% |
| 業務継続計画未策定減算 | 3% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% |
30%は突出しています。要介護3・多床室で1日800単位と仮定すると240単位の減。100床が1か月満床なら約720,000単位、金額にして700万円前後です。
定員超過の基準
告示第27号の第12号イは、定員超過を「運営規程に定められている入所定員を超えること」としています。ただし、やむを得ない場合の例外が括弧書きで用意されています。
| やむを得ない場合 | 認められる上限 |
|---|---|
| 老人福祉法にもとづき市町村が行った措置(措置入所) | 入所定員の105%(入所定員が40を超える場合は入所定員に2を加えた数) |
| 入院中の入所者の再入所が見込みより早まった場合 | |
| 併設のショートステイの施設を利用して提供することにより超える場合(緊急その他の事情を勘案してやむを得ない場合) | 入所定員の105% |
100床なら105人まで、ただし「入所定員に2を加えた数」の方が小さいことがある
入所定員が40を超える場合、措置入所や再入所のケースでは「105%」と「定員+2」のうち小さいほうが上限になります。100床なら105人ではなく102人です。40床なら105%=42人となり、定員+2=42人で一致します。定員が大きいほど、%より実数のほうが厳しくなる構造です。
災害・虐待の受入れは別扱い
老企第40号 1の(3)⑤は、災害や虐待の受入れ等やむを得ない理由による定員超過について、次のように定めています。
災害、虐待の受入れ等やむを得ない理由による定員超過利用については、当該定員超過利用が開始した月(中略)の翌月から所定単位数の減算を行うことはせず、やむを得ない理由がないにもかかわらずその翌月まで定員を超過した状態が継続している場合に、災害等が生じた月の翌々月から所定単位数の減算を行うものとする。
災害や虐待で緊急に受け入れた場合は、翌月は減算されません。その翌月まで超過が続いて、しかもやむを得ない理由がなくなっている場合に、翌々月から減算されます。
2か月続くと指定取消しの検討対象
老企第40号 1の(3)④は、都道府県知事が解消の指導を行い、指導に従わず定員超過利用が2月以上継続する場合には、特別な事情がある場合を除き、指定の取消しを検討するとしています。減算だけの問題ではありません。
人員基準欠如の3つのパターン
老企第40号 1の(5)③④は、職種と欠如の程度によって減算の始まる月を分けています。
| パターン | 減算の開始 |
|---|---|
| 看護・介護職員が、必要員数から1割を超えて減少 | 翌月から |
| 看護・介護職員が、1割の範囲内で減少 | 翌々月から(翌月末に満たしていれば減算なし) |
| 看護・介護職員以外の人員基準欠如 | 翌々月から(翌月末に満たしていれば減算なし) |
1割を超えたかどうかで1か月違う
看護・介護職員が大きく欠けた場合(1割超)は翌月から即座に減算、軽微な場合(1割以内)は翌々月からで、しかも翌月末までに解消すれば減算されません。同じ職種でも、欠如の程度で扱いが変わります。介護支援専門員など看護・介護職員以外の欠如は、程度にかかわらず翌々月からです。
「最も低い所定単位数を下回ってはじめて」
老企第40号 1の(5)⑤は、看護・介護職員について極めて重要な考え方を示しています。
看護・介護職員については、最も低い所定単位数を算定するために必要な員数を満たさない場合にはじめて人員基準欠如となるものであり、最も低い所定単位数を基にして減算を行うものであること(中略)。なお、届け出ていた看護・介護職員の職員配置を満たせなくなった場合には、事業者又は施設は該当することとなった職員配置を速やかに都道府県知事に届け出なければならないこと。
特養の基本報酬には職員配置に応じた区分があります。手厚い配置の区分を算定していた施設が、その配置を満たせなくなった場合、いきなり30%減算になるのではなく、まず低い区分の所定単位数を算定します。そして最も低い区分の要件すら満たせなくなって、はじめて人員基準欠如です。
- 手厚い配置の区分を満たせなくなった → 低い区分の所定単位数を算定(減算ではない)
- 最も低い区分の要件も満たせなくなった → 人員基準欠如として30%減算
- いずれの場合も、該当する職員配置を速やかに都道府県知事に届け出る
ちびウルフ区分が下がるだけなら、届出をせずに放っておくとどうなりますか。
リハウルフ通知は「速やかに届け出なければならない」と書いています。実態と違う高い区分で請求し続ければ、過誤調整の対象です。区分が下がる場合こそ、自分から届け出る必要があります。
ユニット型の人員基準
告示第27号の第12号ハは、ユニット型について次のように定めています。「常勤換算方法で、入居者の数の合計数が3またはその端数を増すごとに1以上の介護職員又は看護職員の数を置いておらず、又は指定介護老人福祉施設基準第2条に定める員数の介護支援専門員を置いていないこと」。
介護職員・看護職員を合わせて3対1、そして介護支援専門員。この2つが基準です。
人員基準欠如・定員超過減算の注意点
定員超過の判定は「月平均」
告示第27号の第12号イは「指定介護老人福祉施設の月平均の入所者の数」としています。1日だけ超過した状態が生じても、月平均で定員以内であれば減算にはなりません。
減算は入所者全員が対象
超過した分の入所者だけが減算されるのではありません。老企第40号 1の(3)③は「利用者等の全員について」と明記しています。人員基準欠如も同様です。
解消した月の翌月から通常に戻る
老企第40号 1の(3)③は「定員超過利用が解消されるに至った月の翌月から通常の所定単位数が算定される」としています。解消した月はまだ減算で、その翌月から戻ります。
介護支援専門員の欠如も対象
告示第27号の第12号ロ・ハは、介護職員・看護職員に加えて介護支援専門員を明示しています。施設ケアマネが不在になった場合も人員基準欠如の対象です。看護・介護職員以外にあたるため、減算の開始は翌々月からになります。
人員基準欠如・定員超過減算のQ&A
減算率はいくらですか?
所定単位数の70%を算定するため、実質30%の減算です。
1日だけ定員を超えたら減算されますか?
されません。判定は月平均の入所者の数で行います。
措置入所で定員を超えた場合は?
入所定員の105%(入所定員が40を超える場合は入所定員に2を加えた数)までは、やむを得ない場合として定員超過にあたりません。
災害で緊急に受け入れた場合は?
定員超過が開始した月の翌月は減算されません。やむを得ない理由がないのに翌月まで超過が続いた場合、翌々月から減算されます。
介護職員が1人辞めたら人員基準欠如になりますか?
通常はなりません。まず低い職員配置区分の所定単位数を算定することになり、最も低い区分の要件も満たせなくなってはじめて人員基準欠如です。
看護・介護職員の欠如はいつから減算ですか?
必要員数から1割を超えて減少した場合は翌月から、1割の範囲内なら翌々月から(翌月末に満たしていれば減算なし)です。
介護支援専門員が不在の場合は?
人員基準欠如の対象です。看護・介護職員以外にあたるため、減算の開始は翌々月からになります。
減算されるのは超過した分の入所者だけですか?
違います。入所者全員が対象です。
定員超過が続くとどうなりますか?
都道府県知事の指導に従わず2月以上継続する場合、特別な事情がある場合を除き、指定の取消しが検討されます。
まとめ
- 特養の人員基準欠如・定員超過減算は所定単位数の70%(30%減)
- 特養の減算のなかで最も重い
- 定員超過の判定は月平均の入所者の数で行う
- 措置入所や再入所の早期化によるやむを得ない超過は、105%(定員40超なら定員+2)まで認められる
- 災害・虐待の受入れによる超過は、開始した月の翌月は減算されない
- 指導に従わず2月以上続くと指定取消しの検討対象になる
- 人員基準欠如は、看護・介護職員が1割を超えて減少した場合は翌月から
- 1割の範囲内の減少なら翌々月から(翌月末に満たしていれば減算なし)
- 看護・介護職員以外の欠如は翌々月から(同上)
- 看護・介護職員は「最も低い所定単位数の要件を満たさない場合にはじめて」人員基準欠如となる
- 手厚い配置を満たせなくなった段階では、低い区分の所定単位数を算定する(減算ではない)
- 職員配置が変わったら速やかに都道府県知事に届け出る
- 介護支援専門員の不在も人員基準欠如の対象
- 減算の対象は入所者全員
- 解消した月の翌月から通常の所定単位数に戻る
参考にした情報
- 厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号)第12号
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)1の(3)、1の(5)
※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




