「申し込んだのに断られた」「身元保証人がいないと無理と言われた」。施設探しで、いちばん心が折れる場面です。しかも理由をはっきり教えてもらえないことが多い。

ただ、断られる理由には型があります。そして身元保証人については、国が「それだけを理由に断ってはいけない」と明確に通知を出しています。この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方に関わってきた立場から、通知と条文にもとづいて整理します。

この記事でわかること
  • 老人ホームの入居を断られる主な理由
  • 公的施設と民間施設で「断れるかどうか」が違うこと
  • 身元保証人がいないことを理由にした拒否についての国の見解
  • 施設が身元保証人に求めている本当の役割
  • 身元保証人がいないときに使える代替手段
  • 断られたときの具体的な動き方
  • 身元保証会社を選ぶときの注意点

老人ホームの入居を断られる主な理由

相談を受けていて実際に多いのは、次の7つです。理由は複数が重なっていることがほとんどで、施設側から「一番言いやすい理由」だけが伝えられる傾向があります。

  1. 1介護度が施設の対象範囲に合わない|重すぎても軽すぎても対象外になります
  2. 2医療的ケアに対応できない|たん吸引、経管栄養、インスリン注射、在宅酸素など
  3. 3行動・心理症状への対応が難しい|他の入居者への暴力、繰り返す離設など
  4. 4感染症の状態|活動性の結核など、他の入居者への影響が大きいもの
  5. 5費用の支払いに不安がある|収入・資産の確認で難色を示されるパターン
  6. 6身元保証人・身元引受人がいない|この記事の後半で詳しく扱います
  7. 7単純に空きがない|特養では待機者が多く、順番が回ってこないだけの場合も
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大事なのは、「断られた理由」と「本当のネックになっている理由」がずれていることがあるという点です。実際には医療的ケアが不安なのに、伝えやすい「保証人」の話にすり替わることがあります。どこがネックですかと具体的に聞き返すだけで、次の施設探しの精度が変わります。

公的施設と民間施設では「断れる範囲」がまったく違う

ここを分けて考えないと、話がかみ合いません。介護保険の指定を受けた施設には、提供拒否の禁止という運営基準がかかっています。

指定介護老人福祉施設基準 第4条の2(提供拒否の禁止)指定介護老人福祉施設は、正当な理由なく指定介護福祉施設サービスの提供を拒んではならない。

同じ規定が、施設の種類ごとに置かれています。

施設の種類提供拒否の禁止の根拠
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)指定介護老人福祉施設基準 第4条の2
介護老人保健施設(老健)介護老人保健施設基準 第5条の2
介護付き有料老人ホーム等(特定施設)指定居宅サービス等基準 第179条第1項

一方で、介護保険の指定を受けていない住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、この規定の直接の対象ではありません。民間事業者と個人の契約なので、事業者側にも契約するかどうかの自由があります。

整理するとこうなります特養・老健・介護付き有料老人ホームは「正当な理由」がなければ断れない。住宅型有料老人ホームやサ高住は、制度上は断ることそのものが違法になるわけではない。ただし後述のとおり、身元保証人については民間施設でも国の考え方が示されています。

「正当な理由」とは何か

提供拒否の禁止とセットで、施設にはサービス提供困難時の対応という規定もあります。自分のところで適切な支援ができない場合は、断って終わりではなく、次につなぐ義務があるということです。

指定介護老人福祉施設基準 第4条の3(サービス提供困難時の対応)指定介護老人福祉施設は、入所申込者が入院治療を必要とする場合その他入所申込者に対し自ら適切な便宜を提供することが困難である場合は、適切な病院若しくは診療所又は介護老人保健施設若しくは介護医療院を紹介する等の適切な措置を速やかに講じなければならない

つまり、医療的ケアに対応できないことは断る理由になり得ますが、そのときは紹介などの措置が求められているということです。「うちでは無理です」で終わったら、それは基準を満たしていません。

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断られたら、それで終わりだと思ってた……

身元保証人がいないと施設に断られるのか

結論から言うと、身元保証人等がいないことだけを理由に断ることは、国が明確に否定しています

介護施設について国が出している通知

平成30年8月30日、厚生労働省老健局から都道府県宛てに通知が出ています(老高発0830第1号・老振発0830第2号)。

老高発0830第1号(平成30年8月30日)介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はなく、各施設の基準省令においても、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない

介護保険施設に対する指導・監督権限を持つ都道府県等におかれては、管内の介護保険施設が、身元保証人等がいないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱を行うことのないよう、適切に指導・監督を行うようお願いする。

ポイントは2つあります。ひとつは入所拒否だけでなく「退所を求めること」も名指しされていること。もうひとつは、これが都道府県への指導・監督の指示であることです。つまり、実際に起きていれば行政に相談できる筋の話になります。

病院への入院についての通知

入院の場面では、さらに踏み込んだ表現になっています(医政医発0427第2号・平成30年4月27日)。

医政医発0427第2号(平成30年4月27日)医師法第19条第1項において、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定めている。ここにいう「正当な事由」とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触する
ただし現実は追いついていない同じ平成30年の通知に、厚生労働省の調査結果が引用されています。介護施設への入所時に本人以外の署名を求めている施設は95.9%。つまり、ほぼすべての施設が誰かの署名を求めているのが実態です。通知が出ていることと、現場が変わっていることは別問題だと理解しておいてください。
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この通知を、施設を責めるための武器として使わないでほしいというのが正直なところです。施設側も、いざというときに連絡がつかないと本当に困る。「保証人は立てられませんが、この役割はこの方法で埋められます」と提案する形で使うほうが、はるかに前に進みます。次の章がその材料です。

施設が身元保証人に求めている4つの役割

厚生労働省の調査では、施設が身元保証人等に求める機能は滞納リスクの回避本人の判断能力が衰えた場合の身上保護・財産管理に大別されるとされています。実務ではもう少し細かく、次の4つに分かれます。

求められる役割具体的な場面代わりになる仕組み
利用料の連帯保証支払いが滞ったときの請求先成年後見人等による財産管理/預託金/保証会社
緊急時の連絡・意思決定の支援急変時の連絡先、方針の相談相手成年後見人等/事前の意思表示(ACP)/終身サポート事業者
身柄の引き取り退所時、他施設・病院への移動時成年後見人等/市町村・地域包括支援センター
死亡後の対応遺体の引き取り、遺品整理、精算死後事務委任契約/終身サポート事業者/市町村(墓地埋葬法)
交渉の鍵はここ「保証人がいない」ではなく、「この4つのうち、どれを心配されていますか」と聞くこと。施設が本当に困っているのは4つ全部ではなく、たいてい1つか2つです。そこだけを埋める提案ができれば、話は動きます。

身元保証人がいない場合に使える仕組み

成年後見制度

判断能力が不十分になった方について、家庭裁判所が後見人等を選任する制度です。財産管理と身上保護の2つを法的にカバーできるため、施設側の不安の中心部分に対応できます。

ただし、注意点があります。成年後見人は「身元保証人」にはなれません。後見人は本人の代理人であって、本人の債務を自分の財産で保証する立場ではないからです。この違いを理解していない施設もあるので、説明が必要になる場面があります。

死後事務委任契約

亡くなった後の手続き(葬儀、遺品整理、費用の精算、行政への届出など)を、あらかじめ第三者に委任しておく契約です。施設が最も不安に感じる「亡くなった後どうするのか」に直接答えられます。

高齢者等終身サポート事業(身元保証等サービス)

身元保証、日常生活支援、死後事務をまとめて引き受ける民間事業者です。令和6年6月に、内閣官房・厚生労働省など9府省庁の連名で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定されました。それまで所管があいまいだった分野に、はじめて共通のルールが示された形です。

市町村・地域包括支援センター

身寄りがない方の施設入所は、行政が関わるべき典型的な場面です。特に虐待からの避難や、本人に判断能力がなく後見申立てをする人もいない場合は、市町村長申立てという手段もあります。まず地域包括支援センターに相談してください。

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ひとりで抱えなくていいんだね。

特養で断られたときに知っておきたい「特例入所」

特別養護老人ホームは原則として要介護3以上が対象ですが、要介護1・2でも入所できる「特例入所」の仕組みがあります。厚生労働省の指針(平成26年12月12日 老高発第1212001号)で、対象となるやむを得ない事情が示されています。

  • 認知症であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
  • 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
  • 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
  • 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること

4つ目の事情は、まさに身寄りのない方が該当します。「要介護2だから特養は無理」と言われて諦めてしまうケースが多いのですが、諦める前に確認する価値があります。特例入所の判断には市町村が関与しますので、申請先の市町村の介護保険担当課とケアマネジャーに相談してください。

断られたときの具体的な動き方

  1. 1断った理由を具体的に聞く|「どの部分がネックですか」と役割ベースで質問する
  2. 2代替手段を具体的に提示する|後見申立ての予定、死後事務委任、預託金など
  3. 3ケアマネジャー・地域包括支援センターに共有する|受け入れ実績のある施設を把握しています
  4. 4並行して複数施設に申し込む|1か所ずつでは時間だけが過ぎます
  5. 5それでも改善しなければ行政に相談する|介護保険施設の指導・監督権限は都道府県等にあります
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現場感覚で一番効くのは3番です。身寄りのない方の受け入れ実績がある施設は、地域ごとにだいたい決まっています。ケアマネジャーはそれを知っています。ネットの情報より、地域を知っている人の一言のほうが圧倒的に早い。

身元保証会社を使うときに確認すること

民間の身元保証サービスは有効な選択肢ですが、契約トラブルも報告されている分野です。令和6年のガイドラインでも、利用者保護の必要性が高い分野として整理されています。

  • 契約書と重要事項説明書が交付されるか|口頭説明だけの事業者は避ける
  • 預託金が事業者の運営資金と分別管理されているか|ガイドラインでも望ましいとされています
  • 解約したいときの手順と返金の扱い|長期契約なので、出口の条件が重要です
  • 寄附・遺贈が契約条件になっていないか|ガイドラインは条件にすることを避けるべきとしています
  • 提供したサービスの記録が作成・報告されるか|内容と費用の記録・定期報告が重要とされています
保証契約の落とし穴民法第465条の2は、個人が保証人になる根保証契約について「極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めています。親族に保証人を頼む場合、契約書に上限額の記載があるかを確認してください。上限がないまま署名を求められる書式は、内容を確かめる必要があります。(施設の身元保証契約がこの規定の対象になるかは契約内容によるため、判断に迷う場合は法律の専門家にご確認ください)
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署名するとき、そこまで見てなかったかも。

よくある質問
身元保証人がいないと本当に入居できませんか?
介護保険施設については、平成30年8月30日の厚生労働省通知(老高発0830第1号)で、身元保証人等がいないことはサービス提供を拒否する正当な理由には該当しないと明示されています。ただし実際には、本人以外の署名を求めている施設が95.9%という調査結果もあり、現場との差があります。成年後見制度や死後事務委任契約など、施設が心配している役割を埋める手段を具体的に提示するのが現実的です。
成年後見人が身元保証人になれますか?
なれません。成年後見人は本人の代理人として財産管理と身上保護を行う立場であり、本人の債務を自分の財産で保証する立場ではありません。ただし、施設が身元保証人に求めている役割のうち、費用の支払い管理や各種手続きは後見人がカバーできます。
要介護2ですが、特養は申し込めませんか?
原則は要介護3以上ですが、特例入所の仕組みがあります。厚生労働省の指針では、単身世帯である、同居家族が高齢または病弱であるなどにより家族等による支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であることも、やむを得ない事情として挙げられています。市町村の介護保険担当課とケアマネジャーにご相談ください。
民間の有料老人ホームに断られた場合も、通知は使えますか?
介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けたもの)は、指定居宅サービス等基準第179条第1項の提供拒否の禁止の対象です。一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、介護保険の指定サービスとしての提供拒否の禁止の直接の対象ではなく、事業者側にも契約の自由があります。ただし国の考え方として身元保証人のみを理由にした拒否が望ましくないことは共通です。
入居後に「保証人がいなくなった」と退去を求められました。
介護保険施設については、先の通知が入所拒否だけでなく「退所を求めること」も不適切な取扱いとして名指ししています。まずケアマネジャーと地域包括支援センターに相談し、改善しない場合は指導・監督権限を持つ都道府県等の介護保険担当課に相談してください。
まとめ
  • 断られる理由は、介護度、医療的ケア、行動・心理症状、感染症、費用、身元保証人、空き状況の7つに大別される。
  • 特養・老健・介護付き有料老人ホームには、基準省令で提供拒否の禁止がかかっている。
  • 住宅型有料老人ホームやサ高住は、介護保険の指定サービスとしてのこの規定の直接の対象ではない。
  • 断る場合でも、施設には他の病院・施設を紹介する等の措置が求められている(サービス提供困難時の対応)。
  • 身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない(老高発0830第1号)。
  • 入所拒否だけでなく、退所を求めることも不適切な取扱いとして通知に明記されている。
  • 入院についても、身元保証人等がいないことのみを理由とした拒否は医師法第19条第1項に抵触する(医政医発0427第2号)。
  • 一方で、本人以外の署名を求めている施設は95.9%という調査結果があり、現場との差は大きい。
  • 施設が求めているのは、支払いの保証、緊急時の連絡・意思決定、身柄の引き取り、死亡後の対応の4つ。
  • 代替手段は成年後見制度、死後事務委任契約、高齢者等終身サポート事業、市町村・地域包括支援センター。
  • 成年後見人は身元保証人にはなれないが、財産管理と身上保護はカバーできる。
  • 特養は原則要介護3以上だが、単身で支援が期待できない場合などは特例入所の対象になり得る。
  • 民間の身元保証サービスは、令和6年6月の高齢者等終身サポート事業者ガイドラインを基準に選ぶ。
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、上記の通知および条文にもとづきます。条文・通知は要旨として整理している箇所があり、正確な文言は原典をご確認ください。95.9%という数値は、平成29年度厚生労働省老人保健健康増進等事業の調査結果として老高発0830第1号に引用されているものです。断られる理由の分類、および交渉の進め方に関する記述は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづくもので、制度上の定めではありません。個別の契約内容の法的な有効性については、弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。特例入所の判断、施設への指導・監督は市町村および都道府県の権限に属します。個別の相談は担当ケアマネジャー・地域包括支援センター・市町村の介護保険担当課へ。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

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理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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