パンフレットの隅に「○○県指定介護保険特定施設」と書いてある。重要事項説明書に「特定施設入居者生活介護」という見慣れない言葉が並んでいる。この言葉の意味が分かると、施設選びの精度が一段上がります。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方を見てきた立場から、介護保険法・同施行規則・指定居宅サービス等基準の条文にもとづいて特定施設入居者生活介護を整理します。「介護付き」の正体が、ここにあります。

この記事でわかること
  • 特定施設入居者生活介護の法律上の定義
  • 対象になる3種類の施設
  • 一般型と外部サービス利用型の違い
  • 法令で義務づけられているサービスの中身
  • 人員基準と居室の基準
  • 費用の仕組みと単位数
  • 在宅サービスとの決定的な違い

特定施設入居者生活介護とは何か

介護保険法第8条第11項が定義しています。

介護保険法第8条第11項この法律において「特定施設」とは、有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であって、地域密着型特定施設でないものをいい、「特定施設入居者生活介護」とは、特定施設に入居している要介護者について、当該特定施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他の事項を定めた計画に基づき行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの、機能訓練及び療養上の世話をいう。

短い条文ですが、3つのことが決まっています。

  • 場所を指す言葉ではなく、サービスの名前|施設の種類ではなく、そこで提供される介護保険サービスの呼び名です
  • 計画に基づいて行われる|思いつきの介護ではなく、書面の計画が前提になっています
  • 機能訓練と療養上の世話まで含む|身の回りの世話だけではありません
「介護付き」の正体厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針は、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームは、広告・パンフレット等で「介護付き」「ケア付き」等の表示を行ってはならないと定めています。つまり「介護付き」=特定施設の指定を受けているということです。逆に、住宅型やサ高住で「介護付き」と書かれていたら、表示のほうがおかしいことになります。
リハウルフリハウルフ

ここが分かると、パンフレットの読み方が変わります。「介護付き」の4文字は、飾りではなく制度上の宣言です。指定を受けているかどうかは、重要事項説明書で確認できます。

対象になる施設は3種類

条文の「有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設」の中身は、介護保険法施行規則第15条が定めています。

有料老人ホーム法本文に明記。介護付有料老人ホームがこれにあたる。サービス付き高齢者向け住宅も、有料老人ホームに該当すれば対象になる
養護老人ホーム施行規則第15条第1号。環境上・経済的な理由で自宅での生活が困難な高齢者を、市町村の措置により受け入れる施設
軽費老人ホーム施行規則第15条第2号。ケアハウスが代表例

意外に思われるのが、ケアハウスと養護老人ホームが含まれることです。「介護付き有料老人ホームだけの制度」と誤解されがちですが、そうではありません。

ただし、これらの施設が自動的に特定施設になるわけではありません。都道府県知事(または市町村長)の指定を受けて初めて、特定施設入居者生活介護を提供できます。

定員29人以下は「地域密着型」になる

条文には「地域密着型特定施設でないものをいう」という除外があります。法第8条第21項により、入居者を要介護者等に限定した介護専用型特定施設のうち、入居定員29人以下のものは地域密着型特定施設入居者生活介護という別サービスになります。

この場合、指定は市町村が行うため、原則としてその市町村の住民しか利用できません。小規模で家庭的なホームを見つけたら、住所地の確認が先です。

ちびウルフちびウルフ

ケアハウスも入るんだ。全然知らなかった

一般型と外部サービス利用型

特定施設入居者生活介護には2つの型があります。指導指針の別表も、この2つを別の類型として掲げています。

一般型施設の職員が直接介護を提供する。多くの介護付有料老人ホームがこちら
外部サービス利用型施設の職員は安否確認や計画作成等を担当し、実際の介護は委託先の介護サービス事業所が提供する

入居者から見た窓口はどちらも施設ですが、介護報酬の計算方法が違います。外部サービス利用型は基本部分が1日84単位と低く設定され、これに委託先が提供したサービス分が加算されていく形です。

見学時には「一般型ですか、外部サービス利用型ですか」と聞いてください。重要事項説明書にも記載されています。

法令で義務づけられているサービス内容

ここが本題です。指定居宅サービス等の基準(平成11年厚生省令第37号)は、提供すべき内容をかなり細かく定めています。これは事業者の義務です。

特定施設サービス計画を作る

第184条が定める手順は、次のとおりです。

  • 計画作成担当者が、利用者の有する能力、置かれている環境等を評価し、解決すべき課題を把握する
  • 本人または家族の希望と課題に基づき、他の職員と協議のうえ、目標・達成時期・サービス内容・留意点を盛り込んだ原案を作成する
  • 原案の内容を本人または家族に説明し、文書により同意を得る
  • 作成したら利用者に交付する
  • 作成後も実施状況を把握し、必要に応じて変更する(変更時も同じ手順を踏む)

説明を受け、文書で同意し、書面をもらう。これが法令上の流れです。「計画書を見たことがない」なら、確認してよい場面です。

週2回以上の入浴

第185条は、介護の内容を具体的に定めています。

基準省令第185条(要旨)介護は、利用者の心身の状況に応じ、自立の支援と日常生活の充実に資するよう、適切な技術をもって行われなければならない。事業者は、自ら入浴が困難な利用者について、1週間に2回以上、適切な方法により入浴させ、または清拭しなければならない。排せつの自立について必要な援助を行い、食事、離床、着替え、整容その他日常生活上の世話を適切に行わなければならない。

入浴の回数が条文に書かれているのは、家族にとって使える情報です。週2回は最低ラインであって、上限ではありません。

ちびウルフちびウルフ

お風呂の回数まで法律に書いてあるんだ

健康管理・機能訓練・相談援助

  • 健康管理|看護職員は常に利用者の健康の状況に注意し、健康保持のための適切な措置を講じる(第186条)
  • 口腔衛生の管理|管理体制を整備し、各利用者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行う(第185条の2)
  • 相談及び援助|心身の状況や置かれている環境の把握に努め、本人・家族の相談に応じ、社会生活に必要な支援を行う(第187条)
  • 家族との連携|常に家族との連携を図り、本人と家族の交流等の機会を確保するよう努める(第188条)

身体的拘束は原則禁止

第183条は、本人または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないと定めています。行う場合は態様・時間・その際の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録しなければならず、適正化を図るための措置を講じることも義務づけられています。

同条はさらに、サービスが「漫然かつ画一的なものとならないよう配慮して行われなければならない」とも定めています。全員が同じ時間に同じことをする介護は、条文の想定と違うということです。

リハウルフリハウルフ

「漫然かつ画一的」という強い言葉が条文に入っているのは珍しいです。見学のときは、入居者が全員同じ方向を向いて座っていないかを見てください。制度が求めている姿と、目の前の光景が合っているかどうかの手がかりになります。

人員基準と居室の基準

第175条が人員を定めています。

  • 看護職員・介護職員の合計|常勤換算で、要介護者である利用者の数が3またはその端数を増すごとに1以上(3:1)
  • 看護職員|利用者30人以下は常勤換算1以上。30人を超える場合は、1に「30を超えて50またはその端数を増すごとに1」を加えた数以上
  • 介護職員常に1以上が確保されること
  • 生活相談員|常勤換算で、利用者100人またはその端数を増すごとに1以上
  • 機能訓練指導員・計画作成担当者|それぞれ配置が定められている

設備は第177条です。介護居室・一時介護室・浴室・便所・食堂・機能訓練室を有することとされ、介護居室は定員1人(処遇上必要と認められる場合は2人まで)、地階に設けてはならないと定められています。

3:1は年度平均の常勤換算「入居者3人につき職員が常に1人いる」という意味ではありません。年度ごとの平均で見た常勤換算の数字です。夜間は当然もっと少なくなります。指導指針の表示事項では、より手厚い体制を1.5:1/2:1/2.5:1として表示でき、1.5:1は基準の2倍以上の人数にあたります。見学では「何対1で表示していますか」と「夜間の実人数」を、別々に聞いてください。

費用の仕組み

特定施設入居者生活介護費は1日あたりの定額で、要介護度で決まります(令和8年6月施行の算定構造・基本部分)。

要支援1/要支援2183単位/313単位(介護予防特定施設入居者生活介護)
要介護1542単位/日
要介護2609単位/日
要介護3679単位/日
要介護4744単位/日
要介護5813単位/日
外部サービス利用型基本部分が1日84単位。これに委託先のサービス分が加わる

1単位10円として要介護3で計算すると、679単位×30日=20,370単位=約20万4千円。1割負担なら月およそ2万円です(概算。1単位の単価は地域とサービス種類で10円〜11.40円の幅があり、看取り介護加算や個別機能訓練加算などが上乗せされます)。

これとは別に、家賃・食費・管理費・水道光熱費・おむつ代・日用品費などは全額自己負担です。基準省令第182条は、事業者が介護費のほかにおむつ代や、利用者の選定により提供される便宜に要する費用等を受け取れるとしたうえで、あらかじめ内容と費用を説明し、同意を得なければならないと定めています。説明のない請求は、基準に反します。

在宅サービスとの決定的な違い

もっとも大きいのは、区分支給限度基準額の枠を使わないことです。

訪問介護やデイサービスは、要介護度ごとの限度額(要介護3なら20,490単位/月)の中でやりくりし、超えた分は全額自己負担になります。一方、特定施設入居者生活介護は1日定額で、この枠の管理対象になりません。介護報酬の算定構造でも、限度額に含まれるのは短期利用の特定施設入居者生活介護だけだと注記されています。

在宅(住宅型・サ高住など)使った分だけ費用が増える。介護量が増えると限度額の上限に当たり、超過分は全額自己負担
特定施設(介護付き)要介護度ごとの1日定額。介護量が増えても介護費は変わらない。ただし原則、施設のサービスを利用する
ちびウルフちびウルフ

介護が重くなっても値段が変わらないのは、安心かも

リハウルフリハウルフ

そこが最大の利点です。ただし裏返すと、介護をあまり使わない人には割高になります。自立度が高いうちは在宅型、介護量が増えたら特定施設。これが基本の考え方です。「今」ではなく「2年後」で比べてください。

よくある質問
特定施設入居者生活介護と介護付有料老人ホームは同じものですか?
同じではありません。特定施設入居者生活介護は介護保険サービスの名称で、介護付有料老人ホームはその指定を受けた施設の呼び方です。ほかに養護老人ホームと軽費老人ホーム(ケアハウス)も、指定を受ければ特定施設入居者生活介護を提供できます(介護保険法施行規則第15条)。
要支援でも利用できますか?
介護予防特定施設入居者生活介護として利用できます。単位数は要支援1が183単位/日、要支援2が313単位/日です。ただし入居できるかどうかは施設ごとの入居要件によります。
特定施設に入ると、外部の訪問介護やデイサービスは使えなくなりますか?
原則として、介護は当該施設が提供します。有料老人ホーム設置運営標準指導指針は、入居者が希望すれば特定施設入居者生活介護に代えて訪問介護等を利用することも可能としていますが、実際の取り扱いは施設と保険者によって異なります。契約前に、利用したいサービスがある場合は具体的に確認してください。
ケアプランは誰が作りますか?
施設の計画作成担当者が特定施設サービス計画を作成します。居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作る居宅サービス計画とは別のものです。基準省令第184条により、原案の説明、文書による同意、利用者への交付、作成後の実施状況の把握と必要に応じた変更が義務づけられています。
入浴は週に何回してもらえますか?
基準省令第185条は、自ら入浴が困難な利用者について「1週間に2回以上、適切な方法により入浴させ、又は清しきしなければならない」と定めています。これは最低基準であり、施設によってはより多い回数で実施しています。実際の回数は重要事項説明書と特定施設サービス計画で確認してください。
まとめ
  • 特定施設入居者生活介護は、介護保険法第8条第11項にもとづく居宅サービスの名称。施設の種類名ではない。
  • 対象となる施設は、有料老人ホーム(法本文)、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(施行規則第15条)の3種類。指定を受けて初めて提供できる。
  • 入居定員29人以下の介護専用型は地域密着型特定施設となり、原則その市町村の住民しか利用できない。
  • 指定を受けていない施設は「介護付き」「ケア付き」と表示してはならない。
  • 一般型は施設の職員が介護を提供し、外部サービス利用型は委託先の事業所が提供する。
  • 特定施設サービス計画は、説明・文書による同意・交付・実施状況の把握と変更まで義務づけられている。
  • 自ら入浴が困難な利用者には、1週間に2回以上の入浴または清拭が義務。
  • 身体的拘束は緊急やむを得ない場合を除き禁止。サービスは「漫然かつ画一的」であってはならないと明記されている。
  • 人員基準は看護・介護職員が常勤換算3:1以上、介護職員は常に1以上、生活相談員は100:1。
  • 介護居室は原則1人部屋で、地階に設けてはならない。
  • 介護費は1日定額(要介護3で679単位/日、要支援2で313単位/日、外部サービス利用型は基本84単位)。
  • 区分支給限度基準額の枠を使わないため、介護量が増えても介護費は変わらない。家賃・食費等は全額自己負担。
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、介護保険法、介護保険法施行規則、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準、老人福祉法の条文、および厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」にもとづきます。条文は要旨として整理しており、正確な文言は原典をご確認ください。単位数は令和8年6月改定の算定構造の基本部分であり、各種加算・減算は含みません。金額の試算は1単位10円として計算した概算で、実際の1単位の単価は地域とサービス種類により異なります。家賃・食費・管理費等の水準は施設ごとに大きく異なり、全国一律の基準は存在しません。外部サービスの併用の可否など個別の取り扱いは、施設および保険者によって異なります。実務に関する記述は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の経験にもとづくものです。個別の判断は担当ケアマネジャー・地域包括支援センター・各施設にご相談ください。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶