親の介護費用は誰が払う?兄弟での分担と決め方

先に結論をお伝えします。親の介護費用は、まず親本人の年金と貯蓄から払うのが基本です。足りない分を子どもが負担する場合、民法では兄弟姉妹はそろって扶養の義務を負いますが、誰がいくら出すかは法律で決まっておらず、兄弟の話し合いで決めることになります。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所が定める仕組みです。
この記事では、介護費用の払い方の順番、兄弟での分担の決め方、負担を減らす制度、もめないための工夫を、民法と国税庁の案内を確認して整理しました。
- 親の介護費用を誰が払うのが基本か
- 兄弟で分担するときの決め方
- お金を出す人・介護する人の不公平の考え方
- 介護費用の負担を減らす制度
- 兄弟でもめないための準備
親の介護費用は誰が払う?
介護保険サービスの自己負担や施設の費用は、介護を受ける親本人の支払いです。まずは親の年金と貯蓄でどこまで払えるかを確認することから始めてください。
そのうえで足りない分をどうするか、という段階で子どもの負担の話になります。民法第877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めており、子どもは親を扶養する義務を負います。子どもが複数いれば、その全員が扶養義務者です。
民法には、兄弟の誰がいくら負担するかの決まりはありません。扶養の順序や程度・方法は、当事者間で協議が調わないときに、家庭裁判所が「扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して」定めるとされています(第878条・第879条)。
つまり、「長男だから全額」「近くに住んでいるから多め」と決まっているわけではなく、それぞれの収入や生活の状況をふまえて、兄弟で話し合って決めるのが原則です。
ちびウルフ近くに住んでる私が介護して、お金まで多く出すのは納得いかない…
リハウルフその気持ちは、介護の現場でよく聞きます。介護している人は時間と体力を出しているので、お金の分担は少なくしてもらう、という決め方もあります。我慢を続けるより、早めに数字を出して兄弟で話し合ったほうが、あとで関係がこじれにくいですよ。
兄弟で介護費用を分担するときの決め方
分担の方法に正解はありません。よく使われる決め方は次のとおりです。
| 決め方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 均等に分ける | 兄弟の収入に大きな差がない | 介護を担う人の負担が考慮されにくい |
| 収入に応じて分ける | 収入差が大きい | 割合の根拠を話し合っておく |
| お金と介護で役割を分ける | 近くに住む人と遠方の人がいる | 介護の負担を金額に換算しにくい |
| 親のお金の範囲で収める | 親に年金・貯蓄がある | 親の判断能力が落ちると口座が使いにくくなる |
話し合う前に用意しておくこと
- 親の年金額、預貯金、保険などの資産
- 現在かかっている介護費用と、今後かかりそうな費用(施設入居など)
- 兄弟それぞれが出せる金額と、介護に使える時間
- 親のお金を誰が管理するか
決まったことは、メモやメールなど記録に残しておきましょう。親のお金を誰かが管理する場合は、何に使ったかを兄弟で共有できるようにしておくと、あとで疑われずに済みます。施設の費用の目安は【種類別】老人ホームの費用相場で確認できます。
介護した人の負担は相続で考慮される?
介護を担った人が不公平を感じやすいのが、相続のときです。民法には、介護した人の貢献を相続で考慮する仕組みがあります。
寄与分(相続人の場合)
相続人のうち、被相続人の「療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」は、その寄与分を相続分に加えることができます(民法第904条の2)。寄与分は相続人どうしの協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所が定めます。
特別寄与料(相続人以外の親族の場合)
長男の妻など、相続人ではない親族が介護をした場合も、一定の条件を満たせば、相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できる制度があります(民法第1050条)。
ただし、どちらも「特別の寄与」と認められる必要があり、家族として通常期待される程度の介護では認められにくいとされています。介護の記録(日誌・支払いの領収書など)を残しておくことが、あとで話し合うときの材料になります。
親の介護費用は親のお金から。
その仕組みを元気なうちに作る
家族信託で預金の一部を信託しておくと、親の判断能力が落ちたあとでも、受託者の子どもが信託したお金から施設費用や医療費を支払えるようにできます。ただし契約は、親が内容を理解できるうちにしか結べません。おやとこは家族信託を専門にしたサービスで、司法書士などの専門家に無料で相談できます。
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介護費用の負担を減らす制度
兄弟で分担する前に、使える制度で費用そのものを減らせないか確認しましょう。
- 高額介護サービス費:介護保険の自己負担が上限額を超えた分が払い戻される(高額介護サービス費とは?)
- 介護保険負担限度額認定:所得の低い人は、施設の食費・居住費が軽減される(介護保険負担限度額認定証とは?)
- 医療費控除:対象になる介護サービスの自己負担は医療費控除に含められる(介護の医療費控除)
- 扶養控除:親を扶養している子どもは、所得税の扶養控除を受けられることがある
扶養控除の金額
国税庁によると、70歳以上の親を扶養する場合の控除額は次のとおりです。
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 老人扶養親族(同居老親等以外) | 48万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 |
扶養親族になるには、納税者と「生計を一にしている」ことや、親の合計所得金額が一定以下であることなどの要件があります。老人ホームに入所している場合は「同居」には当たらないと国税庁は案内しています。また、同じ親を兄弟の2人以上が重ねて扶養控除の対象にすることはできない(所得税法第85条第6項)ため、誰が控除を受けるかも話し合っておきましょう。
兄弟でもめないための準備
- 親が元気なうちに、親の希望とお金の状況を聞いておく
- 話し合いは兄弟全員で:一部の兄弟だけで決めると、あとで不満が出やすい
- ケアマネジャーに同席してもらう:必要なサービスと費用の見通しを、第三者から説明してもらえる
- 親のお金の管理方法を決めておく:親の判断能力が落ちると、家族でも預金を引き出しにくくなる
親の判断能力が落ちたあとのお金の管理は、成年後見制度や家族信託などの方法があります。違いは認知症の親の財産管理|家族信託と成年後見の違いで解説しています。仕事との両立に悩む場合は介護離職を防ぐには?も参考にしてください。
よくある質問
親の介護費用は長男が払うものですか?
民法では、子どもは全員が親を扶養する義務を負い、長男だけが負担するという決まりはありません。誰がいくら出すかは兄弟で話し合って決め、まとまらなければ家庭裁判所が定めます。
介護費用を払わない兄弟がいたらどうすればいいですか?
まずは親の収支と必要な費用を数字で示して話し合ってください。それでもまとまらない場合は、家庭裁判所の調停で扶養の程度や方法を話し合う方法があります。
親が施設に入っていても扶養控除は受けられますか?
生計を一にしているなどの要件を満たせば、扶養控除の対象になることがあります。ただし、老人ホームに入所している場合は「同居老親等」には当たらないと国税庁は案内しています。
介護した分、相続で多くもらえますか?
相続人であれば寄与分、相続人以外の親族であれば特別寄与料の制度があります。ただし「特別の寄与」と認められる必要があるため、介護の記録や領収書を残しておくことが大切です。
親のお金で介護費用を払うのに、気をつけることはありますか?
親の判断能力が落ちると、家族でも預金を引き出しにくくなります。誰が管理するか、何に使ったかをどう共有するかを、兄弟で早めに決めておきましょう。
- 介護費用は、まず親本人の年金と貯蓄から払うのが基本
- 兄弟は全員が扶養義務者。分担は話し合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所が定める
- 介護した人の貢献は、寄与分・特別寄与料で考慮される可能性がある
- 高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除・扶養控除で負担を減らせる
- 親が元気なうちに、お金の状況と管理方法を兄弟で共有しておく
※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。扶養義務・寄与分・特別寄与料に関する記述は民法の条文、扶養控除に関する記述は国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)にもとづいて整理しています(2026年10月確認)。扶養親族の所得要件は税制改正で変わることがあります。個別の税務・相続の判断は、税務署・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。分担の決め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。





