「介護の自己負担が毎月けっこうな額になっている…」「高額介護サービス費って聞いたことはあるけど、結局いくら戻ってくるの?」——介護保険を使うご家族や、利用者さんから相談を受けるケアマネ・相談員さんが必ずぶつかる疑問です。

この記事では、介護保険の高額介護サービス費について、自己負担の上限額・対象になるもの/ならないもの・申請の流れ・施設入所との関係までを、専門職にも利用者ご家族にもわかるようにやさしく整理しました。よく混同される「特定入所者介護サービス費(補足給付)」との違いもまとめています。

この記事でわかること
  • 高額介護サービス費とは何か(仕組みをわかりやすく)
  • 所得区分ごとの自己負担上限額(月額)の早見表
  • 対象にならない費用(福祉用具購入・住宅改修・食費など)
  • 申請方法と「2年」という期限の注意点
  • 施設入所と高額介護サービス費/特定入所者介護サービス費の違い

高額介護サービス費とは?わかりやすく解説

ちびウルフちびウルフ

高額介護サービス費って、医療の高額療養費みたいなものなの?

リハウルフリハウルフ

イメージはそれに近いよ。1ヶ月に払った介護サービスの自己負担が上限を超えたら、超えた分が後から戻ってくる制度なんだ。

高額介護サービス費とは、利用者さんが1ヶ月(月初〜月末)に支払った介護サービスの自己負担額の合計が上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。

介護保険のサービスは、原則1割(所得に応じて2割・3割)の自己負担で利用できます。とはいえ、利用量が多い方は自己負担も積み上がります。そこで家計の負担が重くなりすぎないよう、所得に応じた「月あたりの上限」を設けているのが高額介護サービス費です。医療の高額療養費の介護版とイメージすると分かりやすいでしょう。

ポイント上限を超えた分は「いったん払って、後から戻ってくる」償還払いが基本です。先に減額されるわけではない点に注意しましょう。

高額介護サービス費の自己負担上限額(月額の早見表)

自己負担の上限額は、本人や世帯の所得状況によって異なります。令和3年8月の見直しで現役並み所得の区分が細分化され、その内容が現在も継続しています。最新の上限額は以下のとおりです。

区分負担の上限額(月額)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上140,100円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)〜課税所得690万円(年収約1,160万円)未満93,000円(世帯)
市町村民税課税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満44,400円(世帯)
世帯全員が市町村民税非課税24,600円(世帯)
前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額が80万円以下の方等24,600円(世帯)/15,000円(個人)
生活保護を受給している方等15,000円(個人)
注意「世帯」とは住民基本台帳上の世帯員のうち、介護サービスを利用した方全員の負担を合計した限度額です。「個人」は本人ぶんだけの限度額を指します。同じ世帯に複数の利用者がいる場合は合算できます。
ちびウルフちびウルフ

「課税所得690万円以上で14万円」って、上限なのにけっこう高いんだね…?

リハウルフリハウルフ

そうなんだ。令和3年8月から現役並み所得の人は上限が引き上げられたんだよ。逆に非課税世帯は24,600円のまま据え置かれていて、低所得の人ほど手厚くなっているんだ。

高額介護サービス費の対象とならないもの

高額介護サービス費はあくまで介護保険サービスの自己負担(1〜3割)が対象です。次の費用は対象外なので、合算して計算しないよう注意しましょう。

高額介護サービス費の対象外となるもの
福祉用具購入費・住宅改修費の利用者負担分
施設の居住費(滞在費)・食費など介護保険外の負担分
日常生活費(理美容代・おむつ代など実費分)
区分支給限度基準額を超えて全額自己負担した分
注意「支給限度額をオーバーした分」は全額自己負担で、しかも高額介護サービス費の対象にもなりません。ケアプラン作成時に限度額を意識することが、利用者さんの負担を抑えるうえで大切です。

令和3年8月の見直しポイント

かつて現役並み所得の上限は44,400円で一律でしたが、令和3年8月から高所得層の区分が細分化され、現在の区分(93,000円・140,100円)が設けられました。これにより所得が高い方ほど上限が高くなり、負担能力に応じた仕組みへと整理されています。一方で、非課税世帯や年金収入の少ない方の上限額は引き上げられていません。

ポイント上限額の区分や金額は制度改正で変わることがあります。最新の金額は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や厚生労働省の資料で確認しておくと安心です。

高額介護サービス費の計算方法と申請の流れ

ちびウルフちびウルフ

自分で計算して申請しないといけないの?むずかしそう…

リハウルフリハウルフ

大丈夫。市区町村が自己負担額を把握しているから、対象になると申請書が郵送されてくるんだ。自分で計算する必要はないよ。

支給対象になると、市区町村から申請書(支給申請のお知らせ)が送られてきます。計算は市区町村側で行うため、利用者さんが自分で計算する必要はありません。手続きの流れは次のとおりです。

  1. 上限額を超えた月があると、市区町村から申請書が郵送される
  2. 申請書に必要事項(振込先口座など)を記入して返送する
  3. 審査後、超えた分が指定口座に振り込まれる
  4. 一度申請すれば、2年目以降は申請書の提出は原則不要(自動振込)
注意高額介護サービス費の申請には時効(2年)があります。支給を受ける権利が発生した月の翌月1日から2年を過ぎると申請できなくなるため、お知らせが届いたら早めに手続きしましょう。

高額介護サービス費は施設入所でも使える?

結論から言うと、施設入所中でも介護サービスの自己負担(1〜3割)分は高額介護サービス費の対象になります。ただし、施設で発生する居住費(滞在費)や食費は介護保険外のため、高額介護サービス費の対象にはなりません。

そこで、所得の低い方の居住費・食費を軽減するのが、別制度の特定入所者介護(予防)サービス費(いわゆる補足給付)です。混同しやすいので、違いを整理しておきましょう。

制度対象になる費用仕組み
高額介護サービス費介護サービスの自己負担(1〜3割)上限超過分を払い戻し
特定入所者介護(予防)サービス費(補足給付)施設の居住費(滞在費)・食費所得の低い方の負担を限度額まで軽減

特定入所者介護(予防)サービス費の対象サービス

補足給付の対象となるのは、主に施設・短期入所系のサービスです。

対象サービス
介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設サービス
介護医療院サービス
(介護予防)短期入所生活介護・短期入所療養介護
地域密着型介護老人福祉施設サービス

特定入所者介護(予防)サービス費の対象者(利用者負担段階)

対象は、介護認定を受けており、利用者負担段階が第1〜第3段階に該当する方です。所得だけでなく預貯金等の資産要件もある点が特徴です。

段階所得の状況(概要)資産の状況(単身/夫婦)
第1段階世帯非課税で老齢福祉年金受給、または生活保護受給など1,000万円以下/2,000万円以下
第2段階世帯非課税で、年金収入等の合計が年80万円以下650万円以下/1,650万円以下
第3段階①世帯非課税で、年金収入等の合計が年80万円超120万円以下550万円以下/1,550万円以下
第3段階②世帯非課税で、年金収入等の合計が年120万円超500万円以下/1,500万円以下
第4段階(非該当)本人非課税でも世帯に課税者がいる、または本人・配偶者が課税負担限度額の対象外
ポイント第2号被保険者(40〜64歳)の資産要件は、単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下です。資産要件・段階区分は改正で見直されることがあるため、申請時は最新の基準を市区町村で確認しましょう。

高額介護サービス費の「自費分」に注意

あらためて整理すると、高額介護サービス費の対象は介護サービスを利用して支払った1割・2割・3割の自己負担額のみです。

福祉用具購入費や住宅改修費の自己負担分、施設の居住費・食費などは自費分として扱われ、高額介護サービス費には含まれません。利用者さんやご家族に説明するときは、「戻ってくるのはサービス利用の自己負担分だけ」とはっきり伝えると誤解を防げます。

専門職が押さえておきたい実務ポイント

ケアマネジャー・相談員・施設職員など、介護保険に関わる専門職が利用者さん・ご家族に説明する際のポイントを整理します。

現場での説明ポイント
・「償還払い」が基本。いったん払って後から戻る点を最初に伝える
・対象はサービスの自己負担分のみ。食費・居住費・福祉用具購入・住宅改修は対象外
・施設入所者には高額介護サービス費と補足給付(特定入所者)を分けて案内する
・申請の時効は2年。お知らせが届いたら早めに提出を促す

限度額を超えるサービス利用が続いている方には、ケアプランの見直しで自己負担をコントロールできる余地がないか検討するのも専門職の役割です。費用面の不安は介護継続のハードルになりやすいため、制度を正しく案内することが利用者さんの安心につながります。

よくある質問(FAQ)

高額介護サービス費は自分で計算して申請するのですか?
いいえ。市区町村が自己負担額を把握しており、上限を超えた月があると申請書が郵送されます。自分で計算する必要はありません。
一度申請すれば毎回手続きが必要ですか?
いいえ。初回に申請すれば、2年目以降は原則として申請書の提出は不要で、自動的に指定口座へ振り込まれます。
申請に期限はありますか?
あります。支給を受ける権利が発生した月の翌月1日から2年で時効になります。お知らせが届いたら早めに手続きしましょう。
食費や居住費も高額介護サービス費の対象になりますか?
なりません。食費・居住費は介護保険外のため対象外です。所得の低い方は、別制度の特定入所者介護サービス費(補足給付)で軽減される場合があります。
世帯に2人介護サービス利用者がいる場合は合算できますか?
できます。住民基本台帳上の同一世帯で介護サービスを利用した方の自己負担は合算され、「世帯」の上限額が適用されます。
福祉用具を購入した費用は対象になりますか?
なりません。福祉用具購入費・住宅改修費の自己負担分は対象外です。これらには別途の支給制度があります。
まとめ
  • 高額介護サービス費は、1ヶ月の介護サービス自己負担が上限を超えた分を払い戻す制度
  • 上限額は所得区分により15,000円(個人)〜140,100円(世帯)。令和3年8月の見直し区分が現在も継続
  • 対象は1〜3割の自己負担のみ。食費・居住費・福祉用具購入・住宅改修・限度額超過分は対象外
  • 申請は市区町村からの案内に基づき、初回のみ。時効は2年なので早めに手続きを
  • 施設の居住費・食費の軽減は、別制度の特定入所者介護サービス費(補足給付)で対応

出典:厚生労働省「高額介護サービス費」関連資料、各市区町村介護保険担当ページ。上限額・資産要件は制度改正で変わるため、最新情報は市区町村窓口でご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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