老人ホームの費用が払えなくなったら?滞納時の対応と生活保護での入居

「年金だけでは足りない」「貯金が尽きるのが先に見えている」。施設に入ってから相談されることが、本当に多い内容です。
先に結論を言うと、払えなくなってから動くのでは遅い制度がいくつもあります。この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方に関わってきた立場から、介護保険法・生活保護法・老人福祉法の条文と、令和8年8月1日から適用されている最新の負担限度額にもとづいて整理します。
- 費用が払えないときに確認すべき4つの制度
- 令和8年8月からの食費・居住費の負担限度額(最新の数値)
- 補足給付の対象になる施設とならない施設
- 滞納するとどうなるか(民間施設と介護保険施設の違い)
- 生活保護を受けながら老人ホームに入居できるのか
- 特別養護老人ホームが生活保護と結びついている法的な理由
- それでも入れないときの措置入所
老人ホームの費用が払えないとき、まず確認する4つの制度
いきなり退去や生活保護を考える前に、使える軽減制度が残っていないかを確認します。申請していないだけで受けられていないというケースが、実際にかなりあります。
1|高額介護サービス費(介護保険法第51条)
1か月の介護サービス費の自己負担が上限を超えたとき、超えた分が戻ってくる仕組みです。上限は所得によって分かれます。
| 所得区分 | 負担上限額(月額) |
|---|---|
| 住民税課税世帯・課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 住民税課税世帯・課税所得380万〜690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 住民税課税世帯・課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 住民税非課税世帯 | 24,600円(世帯) |
| 住民税非課税世帯で、合計所得金額+年金収入額が82.65万円以下等 | 24,600円(世帯)/15,000円(個人) |
| 生活保護受給者 | 15,000円(個人) |
2|補足給付(介護保険法第51条の3)
正式名称は特定入所者介護サービス費。食費と居住費に上限を設ける制度で、低所得の方にとっては高額介護サービス費よりインパクトが大きいのがこちらです。
対象になるかどうかは、所得と預貯金の両方で判定されます。令和8年8月から基準額が80.9万円から82.65万円に見直されました。
| 利用者負担段階 | 主な対象者 | 預貯金額(夫婦の場合) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者 | 要件なし |
| 第1段階 | 世帯全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給者 | 1,000万円(2,000万円)以下 |
| 第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入金額+合計所得金額が82.65万円以下 | 650万円(1,650万円)以下 |
| 第3段階① | 同上で、82.65万円超〜120万円以下 | 550万円(1,550万円)以下 |
| 第3段階② | 同上で、120万円超 | 500万円(1,500万円)以下 |
負担限度額(1日あたり)は次のとおりです。令和8年8月1日から、第3段階①・②の方の食費と居住費が引き上げられました。
| 区分 | 基準費用額 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② |
|---|---|---|---|---|---|
| 食費 | 1,545円 | 300円 | 390円 | 680円 | 1,420円 |
| 食費(ショートステイ) | ― | 300円 | 600円 | 1,030円 | 1,360円 |
| 多床室(特養等) | 915円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室(老健・医療院/室料を徴収する場合) | 697円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室(老健・医療院等/室料を徴収しない場合) | 437円 | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
| 従来型個室(特養等) | 1,231円 | 380円 | 480円 | 880円 | 980円 |
| 従来型個室(老健・医療院等) | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室 | 2,066円 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,470円 |
リハウルフ基準費用額と負担限度額の差を見てください。ユニット型個室なら1日2,066円が第1段階で880円。月にすると3万円以上違います。食費も1,545円が300円。この2つを合わせると、月に7万円前後変わることがある。申請していないだけの方が、本当にいます。
3|社会福祉法人等による利用者負担軽減
社会福祉法人が運営する施設が、低所得で特に生計が困難な方の負担を軽減する制度です。実施していない法人もあります。市町村への申請が必要なので、施設と市町村の両方に確認してください。
4|高額医療・高額介護合算制度
1年間(8月〜翌年7月)の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を超えた分が支給される制度です。医療費が重なっている方は、ここで戻ることがあります。加入している医療保険の窓口が申請先です。
補足給付は「6つのサービス」しか対象にならない
ここは費用計画を大きく左右する部分です。介護保険法第51条の3は、対象を限定列挙しています。
言い換えると、次のようになります。
- 対象になる|特別養護老人ホーム、老健、介護医療院、地域密着型特養、ショートステイ
- 対象にならない|有料老人ホーム(介護付き・住宅型とも)、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、ケアハウス
ちびウルフ施設を変えるって発想がなかった……
滞納するとどうなるのか
民間施設(有料老人ホーム・サ高住)の場合
利用契約にもとづく契約解除の対象になります。多くの契約書には、利用料の支払いを一定期間怠ったときは契約を解除できるという条項が入っています。滞納が続けば、身元保証人・連帯保証人に請求が行きます。
ただし、解除を告げられてすぐ出て行かなければならないわけではありません。退去には猶予期間が設けられているのが通常で、その間に転居先を探すことになります。まずケアマネジャーと施設の相談員に事情を伝えてください。
介護保険施設(特養・老健)の場合
介護保険施設には提供拒否の禁止がかかっています(特養は指定介護老人福祉施設基準第4条の2、老健は介護老人保健施設基準第5条の2)。ただしこれは「正当な理由なく」拒んではならないという規定であり、利用料の支払いがないことは、正当な理由に当たり得ます。
とはいえ、実務ではいきなり退所にはなりません。多くの場合、施設の相談員が生活保護の申請や負担限度額認定の手続きにつなぎます。施設側にとっても、退所させるより制度につないだほうが確実に回収できるからです。
リハウルフだから隠さないでほしいんです。支払いが苦しいと分かった時点で相談員に言ってください。黙って滞納が膨らんでから発覚するのが、いちばん打つ手がなくなるパターン。早く言うほど選択肢は多い。これは断言できます。
生活保護を受けながら老人ホームに入居できるのか
できます。介護費用は「介護扶助」という独立した扶助として制度に組み込まれています。
介護扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない要介護者に対して、…一 居宅介護/二 福祉用具/三 住宅改修/四 施設介護/…九 移送…に掲げる事項の範囲内において行われる。
第4号に「施設介護」があります。特養・老健・介護医療院の施設サービスは、ここで賄われます。家賃相当は住宅扶助、食費や日用品費は生活扶助という形で組み合わされます。
特別養護老人ホームが生活保護と強く結びついている法的理由
あまり知られていませんが、生活保護法には次の規定があります。
読み解くとこうなります。介護保険の指定を受けた事業者は、自動的に生活保護の指定介護機関とみなされます。そして「別段の申出」をして外れることができる対象から、特別養護老人ホームと地域密着型特養だけが除外されています。
つまり特養は、生活保護の指定介護機関から抜けることが法律上できないということです。生活保護受給者の施設入所において特養が中心になるのは、この構造があるからです。
ちびウルフ断れないように、法律のほうで作ってあるんだ……
有料老人ホームやサ高住は入れるのか
入れる場合があります。ただし条件が厳しくなります。
- 家賃が住宅扶助の上限内であること|上限額は地域と世帯人数で異なります
- 食費・管理費が生活扶助の範囲で賄えること|ここで超えることが多い
- 入居一時金がないこと|生活保護では原則として支払えません
- 補足給付の対象外である点|食費・居住費の軽減が効きません
結果として、生活保護受給者を受け入れている民間施設は、あらかじめその料金設定にしているところに限られます。ケアマネジャーや福祉事務所の担当者は、地域のどこが受け入れているかを把握しています。自分で探すより早いです。
ちびウルフ受け入れてる施設は、もう決まってるんだね。
それでも入れないときの措置入所
費用や身寄りの問題で契約による入所ができない場合、市町村が権限で入所させる仕組みがあります。老人福祉法第11条です。
一 六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なものを…養護老人ホームに入所させ、又は…入所を委託すること。
二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により…介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を…特別養護老人ホームに入所させ、又は…入所を委託すること。
第1号の養護老人ホームは、経済的理由が正面から要件になっている数少ない施設です。介護度が高くない、けれど自宅では暮らせない、そしてお金がない。この組み合わせで行き詰まったときの選択肢になります。
第2号は、契約による入所が著しく困難な場合の特養への措置です。虐待からの分離や、判断能力がなく契約できない場合などが典型です。「必要に応じて…採らなければならない」と書かれている点が重要で、市町村の裁量というより責務として定められています。
リハウルフ養護老人ホームは、施設探しの選択肢からごっそり抜け落ちがちです。介護保険の施設ではないので、検索サイトにあまり出てこない。窓口は市町村の高齢福祉担当課です。ケアマネジャー経由ではなく、直接相談したほうが早い場合もあります。
払えなくなる前にやっておきたいこと
- 1負担限度額認定を申請しているか確認する|有効期間は申請月の初日から翌年7月31日まで。毎年の更新が必要です
- 2世帯分離が有効か検討する|判定は世帯単位。ただし配偶者は世帯を分けても合算されます
- 3資産の残りから逆算する|あと何か月もつかを数字で出す。感覚で判断しない
- 4補足給付の対象施設への転居を検討する|特養は申込みから時間がかかります。早く動く
- 5施設の相談員に早めに伝える|滞納が発生してからでは、動ける範囲が狭くなります
年金だけで特別養護老人ホームに入れますか?
有料老人ホームの費用が払えません。補足給付は使えますか?
生活保護を受けると、いまの施設を出なければいけませんか?
滞納したら、すぐに追い出されますか?
身寄りがなく、契約もできない状態です。どうすればよいですか?
- 費用が苦しいときに確認するのは、高額介護サービス費、補足給付、社会福祉法人等による利用者負担軽減、高額医療・高額介護合算制度の4つ。
- 高額介護サービス費(介護保険法第51条)の対象は介護サービス費のみ。食費・居住費・日用品費は対象外。
- 負担上限額は住民税非課税世帯で24,600円(世帯)、生活保護受給者は15,000円(個人)。
- 補足給付(同法第51条の3)は所得と預貯金の両方で判定。令和8年8月から基準額が80.9万円→82.65万円に見直された。
- 令和8年8月1日から、第3段階①・②の食費・居住費が引き上げられている。
- 食費の基準費用額は1日1,545円。第1段階は300円、第2段階は390円、第3段階①は680円、第3段階②は1,420円。
- 補足給付の対象は6つのサービスのみ。有料老人ホーム、サ高住、グループホーム、ケアハウスは対象外。
- 民間施設では利用料の滞納が契約解除事由になる。介護保険施設でも支払いがないことは「正当な理由」になり得る。
- ただし実務上はすぐに退所にはならず、相談員が制度利用につなぐのが一般的。早く伝えるほど選択肢が多い。
- 生活保護には介護扶助があり(生活保護法第11条第5号、第15条の2)、施設介護も範囲に含まれる。
- 特別養護老人ホームと地域密着型特養は、生活保護の指定介護機関から「別段の申出」で外れることができない(同法第54条の2第2項ただし書)。
- 有料老人ホーム等でも、家賃が住宅扶助の範囲内で入居一時金がなければ入居できる場合がある。
- 行き詰まったときは老人福祉法第11条の措置入所。経済的理由による養護老人ホームへの入所が第1号に規定されている。
- e-Gov法令検索「介護保険法(平成9年法律第123号)」(第51条:高額介護サービス費、第51条の3:特定入所者介護サービス費)
- e-Gov法令検索「生活保護法(昭和25年法律第144号)」(第11条:種類、第12条:生活扶助、第14条:住宅扶助、第15条の2:介護扶助、第54条の2:介護機関の指定等)
- e-Gov法令検索「老人福祉法(昭和38年法律第133号)」(第11条:老人ホームへの入所等)
- e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)」(第4条の2:提供拒否の禁止)
- 厚生労働省老健局介護保険計画課・老人保健課「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(令和8年5月29日 事務連絡/介護保険最新情報Vol.1506)
- 令和8年厚生労働省告示第88号(居住費・滞在費の負担限度額の一部を改正する告示)
※本記事の制度に関する記述は、上記の法令および事務連絡にもとづきます。条文は要旨として整理している箇所があり、正確な文言は原典をご確認ください。食費・居住費の基準費用額および負担限度額は、令和8年5月29日付事務連絡(介護保険最新情報Vol.1506)に示された令和8年8月1日からの数値です。高額介護サービス費の負担上限額は自治体の公表資料により確認したもので、区分の判定方法や適用時期の詳細はお住まいの市町村にご確認ください。社会福祉法人等による利用者負担軽減は、実施していない法人もあります。住宅扶助・生活扶助の基準額は地域と世帯の状況により異なるため、本記事では具体的な金額を記載していません。滞納時の取扱いは契約内容および施設の運営方針により異なります。実務に関する記述は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の経験にもとづくものです。個別の判断は担当ケアマネジャー、施設の生活相談員、市町村の介護保険担当課・高齢福祉担当課、福祉事務所にご相談ください。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。




