特養の口腔衛生管理加算とは?(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位の要件を解説

特養の口腔衛生管理加算は、(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位(いずれも1月につき)です。
この加算がこれまで扱ってきた特養の加算と決定的に違うのは、入所者全員ではなく「入所者ごと」に算定する点です。老企第40号は「当該入所者ごとに算定するものである」と明記しています。歯科衛生士が月2回以上の口腔衛生等の管理を行った方だけが対象です。
そしてもう1つ、医療保険の訪問歯科衛生指導料が同じ月に3回以上算定されていると、この加算は算定できません。歯科訪問診療料が算定された月は算定できるのに、訪問歯科衛生指導料は回数で線が引かれている。介護保険と医療保険の境界にある、扱いの難しい加算です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の「ル 口腔衛生管理加算」、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第69号、老企第40号第二の5(31)、LIFE通知(令和6年3月15日老老発0315第4号)第2の10を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- (Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位で、入所者ごとに算定すること
- 歯科衛生士による月2回以上の口腔衛生等の管理が要件であること
- 介護職員への技術的助言・指導と相談対応が要件に含まれること
- (Ⅱ)はLIFEへの提出と活用が追加要件であること
- 訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された月は算定できないこと
- 歯科訪問診療料が算定された月は算定できること
- 同一月内の医療保険サービスの有無を本人・家族に確認する義務があること
- 記録は歯科衛生士が作成し、施設に提出・保管すること
単位数は(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位。同時算定は不可
告示21号の「ル 口腔衛生管理加算」は、次のとおりです。
| 区分 | 単位数(1月につき) |
|---|---|
| 口腔衛生管理加算(Ⅰ) | 90単位 |
| 口腔衛生管理加算(Ⅱ) | 110単位 |
注には「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」とあり、(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できません。
老企第40号①は、こう書いています。
「歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が施設の入所者に対して口腔衛生の管理を行い、当該入所者に係る口腔清掃等について介護職員へ具体的な技術的助言及び指導をした場合において、当該入所者ごとに算定するものである。」
科学的介護推進体制加算や自立支援促進加算のように「入所者全員」に算定する加算とは設計が違います。実際に歯科衛生士の管理を受けた方だけが対象です。
定員100人のうち40人が対象なら、(Ⅱ)で110×40=月4,400単位。全員が対象になるとは限らないので、収支の見積もりでは対象者数を現実的に置く必要があります。
(Ⅰ)の要件は4つ。核は「月2回以上」と「介護職員への指導」
大臣基準告示95号 第69号イが定める(Ⅰ)の要件は、次のとおりです。
| 要件 | |
|---|---|
| (1) | 歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言及び指導に基づき、入所者の口腔衛生等の管理に係る計画が作成されていること |
| (2) | 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔衛生等の管理を月2回以上行うこと |
| (3) | 歯科衛生士が、計画における入所者に係る口腔衛生等の管理について、介護職員に対し具体的な技術的助言及び指導を行うこと |
| (4) | 歯科衛生士が、入所者の口腔に関する介護職員からの相談等に必要に応じ対応すること |
加えて(5)として、定員超過利用・人員基準欠如の状態でないことが求められます。
要件(3)(4)は、歯科衛生士から介護職員への働きかけです。入所者の口腔ケアを歯科衛生士が実施するだけでは、要件の半分しか満たしていません。
介護職員への技術的助言・指導の内容が記録に残っていないと、算定要件を満たしていないと判断されます。
この加算の趣旨は、専門職が直接ケアすることに加えて、日々ケアに当たる介護職員の技術を引き上げることにあります。歯科衛生士が来た日の記録に「入所者○名に口腔ケア実施」としか書かれていない施設は、記録様式を見直してください。
「月2回以上」は入所者ごとに数える
要件(2)の「月2回以上」は、施設への訪問回数ではなく入所者1人あたりの管理回数です。歯科衛生士が月2回来訪しても、ある入所者を1回しか見ていなければ、その方については算定できません。
(Ⅱ)の追加要件はLIFEへの提出と活用だけ
大臣基準ロは、次の2つです。
- (Ⅰ)の要件(イ(1)〜(5))のいずれにも適合すること
- 入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報を厚生労働省に提出し、口腔衛生の管理の実施に当たって、当該情報等を活用していること
差は20単位。提出頻度は個別機能訓練加算(Ⅱ)と同じで、①新規に計画を作成した日の属する月、②計画の変更を行った日の属する月、③①②のほか少なくとも3月に1回、いずれも翌月10日までです。
提出する項目は10種類
LIFE通知第2の10は、老企第40号の別紙様式3から次の項目を提出することとしています。
- 要介護度
- 日常生活自立度
- 現在の歯科受診について
- 義歯の使用
- 栄養補給法
- 食事形態
- 誤嚥性肺炎の発症・既往
- 口腔の健康状態の評価・再評価(口腔に関する問題点等)
- 口腔衛生の管理内容(実施目標、実施内容および実施頻度に限る)
- 歯科衛生士が実施した口腔衛生等の管理および介護職員への技術的助言等の内容
最後の項目に注目してください。「介護職員への技術的助言等の内容」がLIFEへの提出項目に含まれています。要件(3)を実施していなければ、そもそも提出する内容がありません。
医療保険との調整がこの加算の最難関
老企第40号⑥が、医療保険との関係を定めています。ここが実務上いちばん判断に迷うところです。
本加算は、医療保険において歯科訪問診療料が算定された日の属する月であっても算定できるが、訪問歯科衛生指導料が算定された日の属する月においては、訪問歯科衛生指導料が3回以上(令和6年6月以降、(中略)緩和ケアを実施するものの場合は、7回以上)算定された場合には算定できない。
整理すると、こうなります。
| 同じ月の医療保険側の算定 | 口腔衛生管理加算 |
|---|---|
| 歯科訪問診療料が算定された | 算定できる(回数を問わない) |
| 訪問歯科衛生指導料が1〜2回算定された | 算定できる |
| 訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された | 算定できない |
| 訪問歯科衛生指導料が3〜6回算定された(緩和ケア実施の場合) | 算定できる |
| 訪問歯科衛生指導料が7回以上算定された(緩和ケア実施の場合) | 算定できない |
ちびウルフ歯科の先生が来てくださっているかどうかは、施設側では把握しきれないこともあります。
リハウルフだから通知が確認を義務づけています。「当該サービスを実施する同一月内において医療保険による訪問歯科衛生指導の実施の有無を入所者又はその家族等に確認するとともに、当該サービスについて説明し、その提供に関する同意を得た上で行うこと」。
確認の相手は「入所者又はその家族等」です。歯科医院に問い合わせるのではなく、本人・家族に聞く建て付けになっています。入所前からかかりつけの歯科医院を継続している方は、施設が把握していないケースがあるためでしょう。
実務としては、口腔衛生管理加算の同意書に「同一月内の訪問歯科衛生指導の有無の確認欄」を設けておくのが確実です。毎月の確認が必要なので、様式に組み込んでおかないと運用が回りません。
医療が必要な場合は情報提供する
通知④は、歯科衛生士側の対応も定めています。
- 介護職員から入所者の口腔に関する相談等に必要に応じて対応する
- 入所者の口腔の状態により医療保険における対応が必要となる場合には、適切な歯科医療サービスが提供されるよう、歯科医師および施設への情報提供を行う
介護保険の口腔衛生管理で完結させるのではなく、必要なら医療につなぐことまでが役割に含まれています。
記録は歯科衛生士が作成し、施設が保管する
老企第40号③は、記録の作成主体・内容・取扱いを定めています。
歯科医師の指示を受けて当該施設の入所者に対して口腔衛生の管理を行う歯科衛生士は、(中略)記録を別紙様式3を参考として作成し、当該施設に提出すること。当該施設は、当該記録を保管するとともに、必要に応じてその写しを当該入所者に対して提供すること。
記録すべき内容は5つです。
| 記録内容 | |
|---|---|
| 1 | 口腔に関する問題点 |
| 2 | 歯科医師からの指示内容の要点 (特に歯科衛生士が口腔衛生の管理を行うにあたり配慮すべき事項) |
| 3 | 当該歯科衛生士が実施した口腔衛生の管理の内容 |
| 4 | 入所者に係る口腔清掃等について介護職員への具体的な技術的助言及び指導の内容 |
| 5 | その他必要と思われる事項 |
この加算の記録は、歯科衛生士が作成して施設に提出するという流れです。施設側が代わりに書くものではありません。
歯科医院と契約する段階で、別紙様式3に準じた記録を毎回提出してもらうことを取り決めておく必要があります。ここが曖昧なまま算定を始めると、実地指導で記録が出てこない事態になります。
また「必要に応じてその写しを当該入所者に対して提供すること」も定められています。求められたら渡せる状態にしておくことです。
他の加算との関係
| 加算 | 関係 |
|---|---|
| 口腔衛生管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ) | 同時算定不可(いずれか一方) |
| 個別機能訓練加算(Ⅲ) | 口腔衛生管理加算(Ⅱ)の算定が要件 |
| 栄養マネジメント強化加算 | 併算定可 |
| 経口維持加算・経口移行加算 | 併算定可 |
| 科学的介護推進体制加算 | 併算定可 |
とくに重要なのが個別機能訓練加算(Ⅲ)との関係です。(Ⅲ)の要件は「口腔衛生管理加算(Ⅱ)および栄養マネジメント強化加算を算定していること」。(Ⅰ)では要件を満たしません。(Ⅱ)である必要があります。
個別機能訓練加算(Ⅲ)を目指すなら、LIFEへの提出を含む(Ⅱ)を取ることが前提です。20単位の差以上の意味があります。
施設系に「口腔衛生管理体制加算」はない
かつて存在した口腔衛生管理体制加算と混同されることがあります。大臣基準告示95号 第68号を見ると、この加算が設定されているのは認知症対応型共同生活介護費、地域密着型特定施設入居者生活介護費および介護予防認知症対応型共同生活介護費です。
特養・老健・介護医療院といった施設系には、口腔衛生管理体制加算は設定されていません。施設系で口腔に関する体制を評価するのは、この口腔衛生管理加算です。古い資料を参照する際は注意してください。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の口腔衛生管理加算は存在しません。
この加算は地域密着型特養・特養・老健・介護医療院の施設系4種に設定されており、要件は大臣基準第69号に一本化されています。単位数も(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位で共通です。自立支援促進加算のような施設種別による単位数の違いはありません。
口腔衛生管理加算は入所者全員に算定できますか?
できません。通知は「当該入所者ごとに算定するものである」としており、歯科衛生士が月2回以上の口腔衛生等の管理を行い、介護職員への技術的助言・指導を行った入所者だけが対象です。
「月2回以上」は施設への訪問回数ですか?
入所者1人あたりの管理回数です。歯科衛生士が月に2回来訪しても、ある入所者を1回しか見ていなければ、その方については算定できません。
歯科衛生士が入所者に口腔ケアを実施すれば要件を満たしますか?
満たしません。介護職員への具体的な技術的助言・指導(要件(3))と、介護職員からの相談への対応(要件(4))も要件です。助言・指導の内容が記録に残っている必要があります。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違いますか?
(Ⅱ)は(Ⅰ)の要件に加えて、入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報をLIFEに提出し、活用していることが必要です。単位数の差は20単位(90単位と110単位)です。同時算定はできません。
歯科訪問診療料が算定された月でも算定できますか?
できます。通知は「歯科訪問診療料が算定された日の属する月であっても算定できる」と明記しています。
訪問歯科衛生指導料が算定された月はどうなりますか?
3回以上算定された月は算定できません。ただし令和6年6月以降、緩和ケアを実施する場合は7回以上で算定不可となります。1〜2回(緩和ケアの場合は1〜6回)であれば算定できます。
医療保険の利用状況はどう確認すればよいですか?
通知は「同一月内において医療保険による訪問歯科衛生指導の実施の有無を入所者又はその家族等に確認する」ことを求めています。歯科医院ではなく本人・家族への確認です。あわせてサービスの説明と同意も必要なので、同意書に確認欄を設けておくと運用しやすくなります。
記録は施設が作成するのですか?
いいえ。歯科衛生士が別紙様式3を参考に作成し、施設に提出します。施設はその記録を保管し、必要に応じて写しを入所者に提供します。歯科医院との契約段階で、記録の提出を取り決めておいてください。
個別機能訓練加算(Ⅲ)を取るには(Ⅰ)でもよいですか?
よくありません。個別機能訓練加算(Ⅲ)の要件は「口腔衛生管理加算(Ⅱ)および栄養マネジメント強化加算を算定していること」です。(Ⅱ)である必要があります。
口腔衛生管理体制加算と併算定できますか?
特養に口腔衛生管理体制加算は設定されていません。この加算が設定されているのは認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護および介護予防認知症対応型共同生活介護です。
- 口腔衛生管理加算は(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位/月。同時算定は不可
- 入所者全員ではなく「入所者ごと」に算定する
- 要件は歯科衛生士による月2回以上の口腔衛生等の管理
- 「月2回以上」は施設への訪問回数ではなく入所者1人あたりの回数
- 歯科医師または歯科衛生士の技術的助言・指導に基づく計画の作成が必要
- 介護職員への具体的な技術的助言・指導が要件に含まれる
- 介護職員からの口腔に関する相談への対応も要件
- (Ⅱ)の追加要件はLIFEへの提出と活用のみ。差は20単位
- LIFE提出は計画作成月・変更月・3月に1回、翌月10日まで
- 提出項目に「介護職員への技術的助言等の内容」が含まれる
- 歯科訪問診療料が算定された月でも算定できる
- 訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された月は算定できない
- 緩和ケアを実施する場合は7回以上で算定不可(令和6年6月以降)
- 同一月内の訪問歯科衛生指導の有無を入所者・家族に確認する義務がある
- サービスの説明と同意も必要なため、同意書に確認欄を設けると運用しやすい
- 記録は歯科衛生士が別紙様式3を参考に作成し、施設に提出する
- 施設は記録を保管し、必要に応じて写しを入所者に提供する
- 個別機能訓練加算(Ⅲ)の要件は(Ⅱ)であって(Ⅰ)では足りない
- 特養に口腔衛生管理体制加算は設定されていない
- 介護予防(要支援)版は存在しない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」ル(口腔衛生管理加算)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第69号(口腔衛生管理加算の基準)、第68号(口腔衛生管理体制加算の基準)、第86号の3の2(個別機能訓練加算の基準)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(31)口腔衛生管理加算について、別紙様式3
- 科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月15日老老発0315第4号)第2の10
- 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第2 歯科診療報酬点数表 区分番号C001(訪問歯科衛生指導料)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。医療保険との併算定の可否については、歯科診療報酬側の算定状況によって判断が変わるため、個別のケースでは指定権者および歯科医療機関にご確認ください。訪問歯科衛生指導料の回数は歯科医療機関側の算定実績によるため、施設側で完全に把握することが難しい場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。同意書の様式や歯科医院との契約に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




