訪問リハビリと通所リハビリの機能訓練、何が違う?家族向けに解説

訪問リハビリと通所リハビリ(デイケア)は、制度の目的が同じで、違うのは「どこでリハビリをするか」です。国が定めた条文はほとんど同じ文章で、訪問リハビリにだけ「利用者の居宅において」という一言が入っています。つまり優劣ではなく、生活のどこを立て直したいかで選ぶものです。
この記事では、訪問リハビリを本業としてきた理学療法士・介護支援専門員の立場から、ご家族が判断できるように2つの違いを整理します。機能訓練の中身、1回あたりの時間と回数、1割負担での料金の目安、どちらが向いているかの見分け方まで、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
- 訪問リハビリと通所リハビリの違いを一覧で比較
- 制度上の目的は同じで、違うのは「場所」だけということ
- 機能訓練の中身がどう変わるのか(できること・できないこと)
- 訪問は1回20分・週6回まで、通所は1回1〜8時間という時間の違い
- 1割負担の場合の料金の目安(要介護2で試算)
- 通所リハビリでは食費・おむつ代などの実費がかかること
- 退院直後は訪問リハビリが週12回まで使えること
- どちらが向いているかを判断する具体的な目安
- 訪問と通所を両方使えるのかどうか
- 迷ったときに誰に相談すればよいか
ちびウルフ父のリハビリ、家に来てもらうのと通うのと、どっちがいいんでしょう?
リハウルフよくいただく質問です。判断の軸はシンプルで、「家の中で困っていること」を直したいなら訪問、「体力をつけたい・人と関わってほしい」なら通所です。どちらが優れているという話ではなく、目的が違います。まず一覧で違いを見てみましょう。
訪問リハビリと通所リハビリの違いを一覧で比較
| 項目 | 訪問リハビリ | 通所リハビリ(デイケア) |
|---|---|---|
| 場所 | 自宅 | 病院・診療所・老健などの施設 |
| 1回の時間 | 20分〜60分程度 | 1時間〜8時間(施設により幅がある) |
| 回数の上限 | 週6回まで(=週120分) 退院後3か月以内は週12回まで | ケアプランと限度額の範囲内 |
| 担当する人 | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 同左+看護職員・介護職員 |
| マンツーマンか | 完全に1対1 | 個別対応の時間と集団の時間がある |
| 送迎 | 不要(来てもらう) | あり |
| 入浴・食事 | なし(入浴は動作の練習として扱う) | 提供する施設が多い |
| 他の利用者との交流 | なし | あり |
| 自宅の環境に合わせた練習 | できる(本来の強み) | できない(環境が違う) |
| 運動の設備・機器 | 持ち込める範囲に限られる | 充実している |
| 家族が同席できるか | しやすい | しにくい |
| 医師の指示 | 必要 | 必要 |
ここだけ見ると通所のほうが充実しているように見えますが、「自宅の環境に合わせた練習ができる」という一点が、訪問リハビリにしかない価値です。施設でどれだけ歩けても、自宅の廊下の幅やトイレの高さは変えられません。
制度上の目的は同じ。違うのは「場所」だけ
意外に知られていませんが、2つのサービスは国の基準でほぼ同じ文章で定義されています。並べてみます。
(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第75条より引用)
(同基準 第110条より引用)
違いは「利用者の居宅において」という一言があるかどうかだけです。どちらも目指しているのは「自宅で、自分の力でできる生活を続けること」。通所リハビリも、施設で楽しく過ごすことが目的ではなく、家での生活を良くするために通う場所だという点は、ご家族に知っておいてほしい部分です。
機能訓練の中身は何が違うのか
訪問リハビリの機能訓練
自宅で行うため、「その家でしか練習できないこと」が中心になります。
- ベッドからの起き上がり、そのベッドの高さでの立ち上がり
- 実際の廊下・段差・階段を使った移動の練習
- 自宅のトイレ・浴室での動作の練習
- 手すりをどこに付けるか、どの福祉用具が合うかの判断
- ご家族への介助方法の指導(腰を痛めない介助の仕方など)
- 近所への外出、買い物、ゴミ出しといった屋外の練習
設備は持ち込めるものに限られるので、負荷の高い筋力トレーニングは苦手です。その代わり、「トイレに間に合わない」「玄関の段差が下りられない」といった具体的な困りごとに直接手を打てます。
通所リハビリの機能訓練
施設の設備を使えるため、体力・筋力そのものを底上げする訓練が得意です。
- マシンやエルゴメーター(自転車型の機器)を使った運動
- 平行棒や広いスペースを使った歩行訓練
- 集団での体操、レクリエーション
- 他の利用者との交流(気力の維持に効果が大きい)
- 入浴・食事(施設による)
- 看護職員による血圧・体調の管理
ご家族にとっては、通っている数時間が休息時間になる(レスパイト)という価値も大きいです。介護の負担を下げるという意味では、通所のほうが直接的です。
同じ「短期集中リハビリ」でも量が違う
退院後3か月以内に集中的にリハビリを行う仕組みは両方にありますが、国が定める実施量が違います。
| 訪問リハビリ | 通所リハビリ | |
|---|---|---|
| 期間 | 退院(所)日または認定日から3か月以内 | 同左 |
| 頻度 | 1週につきおおむね2日以上 | 1週につきおおむね2日以上 |
| 1日あたりの時間 | 20分以上 | 40分以上(個別に実施) |
(平成12年老企第36号より整理)
通所のほうが1日あたりの個別リハビリ時間は長く設定されています。ただし通所は移動と待ち時間を含めて半日〜1日かかるので、体力が落ちている時期は、短時間で終わる訪問のほうが負担が小さいという面もあります。
時間と回数の違い
訪問リハビリには、はっきりした上限が決められています。
(平成12年3月1日老企第36号より引用)
この「1回20分」を1回と数えるため、実際には次のような使い方になります。
- 40分の訪問を週1回=2回分を使う(もっとも多いパターン)
- 60分の訪問を週1回=3回分
- 40分を週2回=4回分
- 上限は週6回=合計120分(2時間)まで
一方、通所リハビリは1回あたり1時間以上2時間未満から、7時間以上8時間未満まで、施設によって時間区分が分かれています。回数の上限は決められておらず、ケアプランと支給限度額(使える上限額)の範囲で決めます。
料金の違い(1割負担の目安)
介護保険の料金は「単位」で決められており、おおむね1単位=10円前後(地域により変動)です。ここでは1割負担・1単位10円として計算した目安を示します。加算は含みません。
| サービス | 単位数 | 1割負担の目安 |
|---|---|---|
| 訪問リハビリ(1回20分) | 308単位 | 約308円 |
| 訪問リハビリ(40分=2回分) | 616単位 | 約616円 |
| 通所リハビリ 要介護2・1〜2時間 | 398単位 | 約398円 |
| 通所リハビリ 要介護2・3〜4時間 | 565単位 | 約565円 |
| 通所リハビリ 要介護2・6〜7時間 | 850単位 | 約850円 |
| 通所リハビリ 要介護2・7〜8時間 | 903単位 | 約903円 |
(令和6年度の指定居宅サービス介護給付費単位数表・通常規模型の場合。加算・地域区分による変動は含まず)
また、どちらのサービスも要介護度ごとの支給限度額(使える上限額)の中で使います。他のサービスと合わせて上限を超えると、超えた分は全額自己負担になります。
ちびウルフ本人が「家から出たくない」と言うんですが、それでも通所のほうがいいですか?
リハウルフ無理に通わせても続きません。担当したケースでも、まず訪問リハビリで体力と自信をつけてから、通所へ移った方が何人もいます。「訪問リハビリは通所に行けない人のもの」ではなく、通所に行けるようにするための助走にも使えます。そこは目的をはっきりさせてケアマネジャーに伝えてください。
どちらを選ぶ?判断の目安
訪問リハビリが向いている場合
- 家の中の動作(トイレ、入浴、階段、玄関)で困っている
- 退院したばかりで、まだ外出する体力がない
- 通うこと自体が本人の負担になる(乗り物酔い、疲労、失禁の不安)
- 家族が介助の方法を教えてほしい
- 手すりの設置や福祉用具の選定について相談したい
- 人が多い場所が苦手、集団が合わない
- 認知症があり、慣れない環境では力を発揮できない
通所リハビリが向いている場合
- 体力・筋力そのものを上げたい
- 閉じこもりがちで、外との関わりを増やしたい
- 家族が日中不在、または介護の休息時間が必要
- 自宅では入浴が難しい
- 機器を使った本格的な運動をしたい
- 生活のリズムをつくりたい(曜日の感覚が薄れている)
両方を組み合わせることもできる
訪問リハビリと通所リハビリは、同じ月に併用できます(ケアプランに位置づけられ、支給限度額の範囲内であることが前提です)。ただし同じ日に両方を使う場合には条件があるため、ケアマネジャーに確認してください。
実際に多いのは、「週2回は通所で体力づくり、月2回は訪問で自宅の動作を確認」という組み合わせです。通所で得た体力を、自宅の生活で使えるようにつなぐ役割を訪問が担います。
訪問リハビリと通所リハビリ、効果が高いのはどちらですか?
目的が違うため、一概に比較できません。体力・筋力を底上げしたいなら通所、自宅での具体的な動作を改善したいなら訪問が向いています。制度上はどちらも「自宅で自立した生活を送れるようにする」ことを目的としており、優劣はありません。
訪問リハビリは何分来てもらえますか?
1回20分を1回として数え、週6回(合計120分)までが上限です。40分の訪問を週1回、または40分を週2回といった使い方が一般的です。退院・退所から3か月以内は週12回(240分)まで利用できます。
両方を同時に使えますか?
同じ月に併用できます。ケアプランに位置づけられ、支給限度額の範囲内であることが条件です。同じ日に両方使う場合は条件があるため、ケアマネジャーに確認してください。
通所リハビリとデイサービスは違うのですか?
違います。通所リハビリ(デイケア)は医師の指示のもとでリハビリを行う医療系のサービスで、病院・診療所・介護老人保健施設などが提供します。デイサービス(通所介護)は生活の支援と機能訓練が中心で、医師の配置は必須ではありません。
訪問リハビリを受けるのに医師の指示は必要ですか?
必要です。訪問リハビリも通所リハビリも、医師の指示にもとづいて計画を立てて実施します。まずはかかりつけ医とケアマネジャーに相談してください。
要支援でも利用できますか?
できます。要支援の方は「介護予防訪問リハビリテーション」「介護予防通所リハビリテーション」という名称になり、料金の計算方法が変わります。利用が12か月を超えると減算される仕組みがあるため、詳細はケアマネジャー(地域包括支援センター)にご確認ください。
本人が外出を嫌がります。訪問から始めてもよいですか?
問題ありません。訪問リハビリで体力と自信をつけてから通所に移行するケースは多くあります。「通所に行けるようになること」を目標として訪問リハビリを使う方法もあります。
家族が同席したほうがよいですか?
訪問リハビリでは、可能であれば同席をおすすめします。介助方法の指導は制度上も位置づけられた業務で、家族が実際にやってみることでいちばん定着します。毎回でなくてもかまいません。
料金は結局いくらかかりますか?
1割負担・1単位10円で計算すると、訪問リハビリ40分で約616円、通所リハビリは要介護2・6〜7時間で約850円が目安です(加算を含まず)。通所は別途、食費などの実費がかかります。実際の金額は事業所に総額で確認してください。
どちらにするか決められないときは?
ケアマネジャーに「どちらがいいか」ではなく、困りごとを具体的に伝えてください。「トイレが間に合わない」「日中ひとりにするのが不安」といった内容から、適切なサービスが提案されます。見学や体験ができる通所リハビリも多くあります。
- 訪問リハビリと通所リハビリは、制度上の目的が同じで違うのは「場所」
- 国の基準の条文は、訪問に「利用者の居宅において」が入るだけでほぼ同じ
- 通所リハビリも、施設で過ごすことではなく自宅での生活の改善が目的
- 訪問は自宅の環境(廊下・トイレ・段差)に合わせた練習ができる
- 通所は機器や広い空間を使え、体力・筋力の底上げが得意
- 訪問は完全に1対1、通所は個別と集団が組み合わさる
- 通所には送迎・入浴・食事・他者との交流があり、家族の休息にもなる
- 訪問は1回20分を1回と数え、週6回(120分)まで
- 退院・退所から3か月以内は週12回(240分)まで使える
- 短期集中リハビリの1日あたりの時間は訪問20分以上、通所40分以上
- 1割負担の目安は訪問40分で約616円、通所(要介護2・6〜7時間)で約850円
- 通所は食費・おむつ代などの実費が別途かかる
- 家の中の困りごと・退院直後・外出が負担な人は訪問が向く
- 体力づくり・閉じこもり対策・家族の休息が必要な場合は通所が向く
- 同じ月に両方を併用できる(支給限度額の範囲内)
- 迷ったらサービス名ではなく「困りごと」をケアマネジャーに伝える
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第75条・第110条
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問リハビリテーション費・通所リハビリテーション費
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス等に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)
※本記事の単位数・回数・要件は、厚生労働省の省令・告示・通知にもとづいて整理したものです。料金は1単位10円・自己負担1割として計算した目安であり、地域区分・加算・負担割合によって実際の金額は変わります。実費負担の内容や金額は事業所によって異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。サービスの選び方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。個別のご利用の判断は、担当のケアマネジャー・主治医にご相談ください。

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