「サ高住は老人ホームより自由で安い」。よく聞く説明ですが、半分しか合っていません。サ高住は制度としては「住宅」です。そして住宅であるがゆえに、入居者を守るルールが老人ホームより明確に決まっている部分と、逆に何も保証されていない部分の両方があります。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方に関わってきた立場から、高齢者住まい法と国土交通省・厚生労働省令の条文にもとづいてサ高住を整理します。パンフレットには書かれない「前払金は返ってくるのか」「入院したら追い出されるのか」まで、条文で答えます。

この記事でわかること
  • サ高住の法律上の定義と登録基準
  • 入居条件(年齢・同居できる人)
  • 必ず提供される2つのサービス
  • 費用の内訳と介護費の考え方
  • 前払金が返ってくる条件(90日ルール)
  • 入院を理由に解約されない権利
  • 有料老人ホーム・特養との違い

サ高住とは何か

正式名称はサービス付き高齢者向け住宅。「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)第5条にもとづき、都道府県知事の登録を受けた住宅です。

高齢者住まい法第5条(要旨)高齢者向けの賃貸住宅又は有料老人ホームであって、居住の用に供する専用部分を有するものに高齢者を入居させ、状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービス)、生活相談サービス(日常生活を支障なく営めるよう相談に応じ必要な助言を行うサービス)その他の福祉サービスを提供する事業を行う者は、建築物ごとに都道府県知事の登録を受けることができる。

条文を読むと、はっと気づく点があります。定義の中に「又は有料老人ホーム」と書かれていることです。

ここが混乱の正体サ高住と有料老人ホームは、並んで比べるものではありません。食事や介護を提供していれば老人福祉法上の有料老人ホームに該当し、その上でサ高住の登録も受けている──という二重の性格を持つ物件がたくさんあります。「サ高住か有料老人ホームか」ではなく、「そのサ高住は、何を提供している物件なのか」という見方が正確です。
リハウルフリハウルフ

だから「サ高住だから安い」は成り立ちません。中身は物件ごとにまったく違います。ここを前提に読み進めてください。

登録の基準で決まっていること

登録を受けるには、法第7条と省令の基準を満たす必要があります。ここがサ高住の最低保証ラインです。

広さと設備

床面積各居住部分が25平方メートル以上。ただし居間・食堂・台所など共同利用部分が十分な面積を有する場合は18平方メートル以上
設備原則として各居住部分に台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室を備える。ただし共用部分に適切な台所・収納設備・浴室があり同等以上の居住環境が確保される場合は、その3つは各室になくてよい
バリアフリー加齢対応構造等の基準に適合すること(床の段差解消、手すりの設置、廊下幅の確保など)

読み落としやすいのが、共用で代替できるのが台所・収納・浴室の3つだけだという点です。水洗便所と洗面設備は、各居住部分に必要とされています。18平方メートルの物件でも、トイレと洗面は部屋の中にあるということです。

状況把握サービスと生活相談サービス

サ高住の「サービス付き」の中身は、この2つです。省令第11条が提供方法を細かく定めています。

  • 日中は有資格者が常駐する|医師、看護師、准看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、介護職員初任者研修修了者等のいずれかが、原則として夜間を除き、敷地内または隣接・近接する建物に常駐して提供する
  • 状況把握は毎日1回以上|各居住部分への訪問その他の適切な方法により、毎日1回以上提供する
  • 訪問を希望できる|近接建物に常駐している場合、入居者から居住部分への訪問を希望する申出があったときは、訪問による方法とする
  • 常駐していない時間は通報装置|常駐していない時間帯は、各居住部分に緊急通報装置を設置して状況把握サービスを提供する
ちびウルフちびウルフ

毎日1回は必ず確認してくれるんだ。それは安心かも

夜間は義務ではない常駐が求められているのは「夜間を除き」です。夜間に人がいることは、登録基準では保証されていません。夜間の体制は物件ごとに大きく違います。見学時に「夜間は誰が何人いますか」と必ず聞いてください。ここがサ高住選びで最も差が出る部分です。

契約のルール

法第7条第1項第6号は、入居契約が満たすべき条件を列挙しています。実務的に効くのは次の3つです。

  • 権利金の受領は禁止|敷金、家賃等、前払金を除き、権利金その他の金銭を受領しない契約であること
  • 工事完了前に受け取れない|整備を伴う場合、工事完了前に敷金・前払金を受領しないこと
  • 前払金には保全措置|返還債務に備え、銀行による保証その他の措置が講じられること

入居条件は年齢か要介護認定

省令第3条が定めています。

本人60歳以上の者、または要介護認定・要支援認定を受けている60歳未満の者
同居できる人配偶者(事実婚を含む)/60歳以上の親族/要介護・要支援認定を受けている60歳未満の親族/その他、病気等の特別の事情により同居させることが必要と都道府県知事が認める者

要介護認定は登録の要件ではありません。自立していても、60歳以上なら対象になります。ここは特別養護老人ホーム(原則要介護3以上)と大きく違う点です。

ただしこれは制度上の下限であって、物件ごとに独自の入居条件(要介護度の上限、認知症の程度、医療的処置の可否など)を設けているのが実情です。制度で入れることと、その物件で受け入れてもらえることは別です。

サ高住の費用は3層で考える

費用の話が分かりにくいのは、性質の違うお金が1枚の請求書に載るからです。分けて考えると整理できます。

1住まいの費用:家賃、共益費(管理費)、敷金。全額自己負担。立地と広さで決まり、地域差が非常に大きい部分です。
2サービスの費用:状況把握・生活相談サービス費(必須)、食費(提供がある場合)、水道光熱費。これも全額自己負担。介護保険は使えません。
3介護の費用:訪問介護、デイサービス、福祉用具などを使った分。ここだけが介護保険の対象で、原則1割(所得により2〜3割)負担です。

1と2は介護保険とまったく関係ありません。「介護保険があるから安い」という発想は通用しないと考えてください。

介護費は在宅と同じ計算になる

多くのサ高住では、介護は外部の在宅サービスとして利用します。担当ケアマネジャーがつき、区分支給限度基準額の範囲でケアプランを組む形です。

要介護116,355単位/月
要介護218,362単位/月
要介護320,490単位/月
要介護422,435単位/月
要介護524,533単位/月

1単位を10円として要介護3で計算すると、上限は約20万5千円。1割負担なら自己負担は月およそ2万円が上限です(概算。1単位の単価は地域とサービス種類で10円〜11.40円の幅があります)。限度額を超えた分は全額自己負担になります。

特定施設の指定を受けたサ高住もある

一部のサ高住は特定施設入居者生活介護(=介護付き)の指定を受けており、その場合は在宅サービスではなく1日あたり定額になります。要介護3で679単位/日です。

使い放題に近い代わりに、外部の事業所は原則選べません。同じ「サ高住」でも、この2つは費用の計算方法が根本的に違います。資料請求の段階で「特定施設の指定はありますか」と聞いてください。

リハウルフリハウルフ

訪問リハビリで多くのサ高住に伺ってきましたが、月額表示だけを比べるのは危険です。食費とサービス費に何が含まれるかが物件ごとに違い、後から積み上がります。おむつ代、通院同行、買い物代行、居室清掃──ここを1枚の表にしてもらって比べてください。

前払金は返ってくるのか(90日ルール)

ここは条文がはっきり答えています。省令第12条です。

施行規則第12条(要旨)入居後3月が経過するまでの間に契約が解除され、または入居者の死亡により終了した場合、家賃等の月額を30で除した額に、入居の日から終了した日までの日数を乗じた額を控除した残りを返還する。それ以降は、前払金の算定の基礎として想定した入居期間について、終了日以降の期間を日割計算して控除する。

つまり入居して3か月以内に亡くなったり退去したりした場合、実際に住んだ日数分だけを日割りで払い、残りは戻ってくるということです。これは登録の基準そのものなので、サ高住である以上、契約書に書いてあるかどうかにかかわらず満たされていなければなりません。

ちびウルフちびウルフ

入ってすぐ具合が悪くなったら……って心配してた。ちょっと安心した

3か月を過ぎた後も、想定入居期間が経過するまでの間なら日割りで返還されます。「想定した入居期間」が何年に設定されているかは、返還額を左右する重要な数字です。契約前に必ず確認してください。

入院を理由に部屋を変えられない

もう一つ、家族に知っておいてほしい条文があります。法第7条第1項第6号ヘと省令第13条です。

施行規則第13条(要旨)事業者が居住部分を変更し、または契約を解約することができない理由は、①入居者の病院への入院、②入居者の心身の状況の変化とする。ただし、その理由が生じた後に入居者と事業者が変更・解約について合意した場合は、この限りでない。

入院したことを理由に、あるいは要介護度が重くなったことを理由に、事業者の側から部屋を移したり契約を解約したりすることはできません。賃貸住宅としての借家権に加え、登録基準としても定められています。

ただし合意すれば別条文には「合意した場合はこの限りでない」とあります。入院中に「もう戻れないので解約しましょう」と説明され、その場で署名してしまうと、合意になります。判断を急かされたら、いったん持ち帰ってケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。

サ高住と老人ホームの違い

ここまでを踏まえて整理します。

サ高住根拠法は高齢者住まい法。都道府県知事の登録制。必須は状況把握と生活相談。25平方メートル以上・原則個室設備。契約は賃貸借が中心で権利金は禁止。介護は原則外部
住宅型有料老人ホーム根拠法は老人福祉法。都道府県知事への届出制。面積の全国一律基準はない。契約は利用権方式が多い。介護は外部から
介護付有料老人ホーム特定施設入居者生活介護の指定を受けたホーム。介護は施設職員が提供し、費用は1日定額。指定がなければ「介護付き」と表示できない
特別養護老人ホーム老人福祉法の老人福祉施設。有料老人ホームでもサ高住でもない。原則要介護3以上。費用は低いが待機が生じやすい

実務上の差を一言でまとめるなら、こうなります。

  • サ高住は「住まい」の保証が厚い|面積、設備、権利金禁止、前払金の返還、入院を理由とした解約の禁止が法令で決まっている
  • 介護の保証は薄い|必須なのは状況把握と生活相談だけ。夜間の人員も介護体制も、登録基準では担保されていない
  • 介護付有料老人ホームはその逆|人員基準(常勤換算3:1以上)で介護が担保される代わりに、住まいとしてのルールは緩やか
リハウルフリハウルフ

だから私は、自立度が保たれているうちはサ高住、介護量が増えたら介護付きや特養という流れを想定して見ておくことをすすめています。サ高住で最期まで過ごせる物件もありますが、それは登録基準の効果ではなく、その事業者が頑張っているからです。個別に確かめてください。

見学で確認すべき6つ

1夜間は誰が何人いますか:常駐義務は日中だけです。夜勤者の人数、資格、緊急時に誰へつながるかを具体的に。
2特定施設の指定はありますか:あれば介護費は1日定額、なければ在宅サービスの積み上げ。費用構造がまるで違います。
3ケアマネと事業所は選べますか:系列以外も使えるか。即答できるかどうかも判断材料になります。
4前払金の想定入居期間は何年ですか:3か月以降の返還額を決める数字です。保全措置の方法も併せて確認を。
5どうなったら退去になりますか:入院と心身の状況の変化は理由にできません。それ以外にどんな条項があるかを文書で。
6介護保険外の費用の一覧をください:おむつ代、通院同行、買い物代行、居室清掃、理美容。月額表示に入っていない項目こそ比べるべきです。
ちびウルフちびウルフ

「サービス付き」の中身をちゃんと聞かないとダメなんだね

よくある質問
サ高住は要介護になったら出なければいけませんか?
登録基準上は違います。省令第13条は、入居者の病院への入院および心身の状況の変化を理由として、事業者が居住部分を変更したり契約を解約したりできないと定めています。ただし、その理由が生じた後に入居者と事業者が合意した場合は例外とされています。また、物件ごとに独自の退去要件を設けている場合があるため、契約書の解除条項を必ず確認してください。
サ高住と住宅型有料老人ホームは何が違いますか?
根拠法が違います。サ高住は高齢者住まい法にもとづく登録住宅で、床面積25平方メートル以上、権利金の受領禁止、前払金の返還ルールなど住まいとしての基準が法令で定められています。住宅型有料老人ホームは老人福祉法にもとづく届出施設です。ただし食事等を提供するサ高住は有料老人ホームにも該当するため、両方の性格を持つ物件が多く存在します。
介護保険のサービスは自由に選べますか?
特定施設入居者生活介護の指定を受けていないサ高住であれば、在宅と同じように事業所を選べます。実際には同一建物や系列の事業所を利用する形が多いですが、選択権は入居者にあります。特定施設の指定を受けているサ高住では、原則としてその施設のサービスを利用します。
60歳未満でも入居できますか?
要介護認定または要支援認定を受けていれば、60歳未満でも対象になります。省令第3条が定める入居資格です。
入居してすぐ亡くなったら、前払金はどうなりますか?
入居後3か月が経過するまでの間に契約が終了した場合は、家賃等の月額を30で除した額に実際の入居日数を乗じた額を控除し、残額が返還されます。3か月経過後も、前払金の算定の基礎として想定された入居期間内であれば、終了日以降の期間について日割計算で控除した残額が返還されます。
まとめ
  • サ高住は高齢者住まい法第5条にもとづき都道府県知事の登録を受けた住宅で、定義には「又は有料老人ホーム」が含まれる。両方の性格を持つ物件が多い。
  • 登録基準は、床面積25平方メートル以上(共用が十分なら18平方メートル以上)、原則各室に台所・水洗便所・収納・洗面・浴室、バリアフリー構造。
  • 共用で代替できるのは台所・収納・浴室のみ。水洗便所と洗面設備は各居住部分に必要。
  • 必須サービスは状況把握と生活相談の2つ。日中は有資格者が常駐し、状況把握は毎日1回以上提供する。
  • 常駐義務は「夜間を除き」。夜間の人員は登録基準では保証されていない。
  • 入居資格は60歳以上、または要介護・要支援認定を受けている60歳未満の者。
  • 費用は「住まい」「サービス」「介護」の3層。介護保険が使えるのは介護部分だけ。
  • 介護は在宅と同じ区分支給限度基準額の範囲(要介護3で20,490単位/月)。特定施設の指定があれば1日定額(要介護3で679単位/日)。
  • 権利金その他の金銭の受領は禁止。前払金には保全措置が必要。
  • 入居後3か月以内に終了した場合、実際の入居日数分を日割りで控除した残額が返還される。
  • 入院や心身の状況の変化を理由に、事業者から居住部分の変更・解約はできない。ただし事後の合意があれば例外。
  • サ高住は住まいの保証が厚く介護の保証は薄い。介護付有料老人ホームはその逆。
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、高齢者の居住の安定確保に関する法律および同法施行規則、老人福祉法、介護保険法の条文にもとづきます。条文は要旨として整理しており、正確な文言は原典をご確認ください。単位数は令和8年6月改定の算定構造の基本部分であり、各種加算・減算は含みません。金額の試算は1単位10円として計算した概算で、実際の1単位の単価は地域とサービス種類により異なります。家賃・共益費・食費・サービス費の水準は物件ごとに大きく異なり、全国一律の基準は存在しません。実務に関する記述は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の経験にもとづくものです。個別の判断は担当ケアマネジャー・地域包括支援センター・各事業者にご相談ください。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶