老健の生産性向上推進体制加算とは?

老健の生産性向上推進体制加算は、(Ⅰ)が1月につき100単位、(Ⅱ)が1月につき10単位です。10倍の差がありますが、(Ⅱ)は介護機器を1つ活用していれば足りるのに対し、(Ⅰ)は複数種類の活用と「実績」が要ります。令和6年度改定で新設された、介護テクノロジーの導入を後押しする加算です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・(Ⅰ)と(Ⅱ)の要件の差・委員会で検討すべき事項・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の生産性向上推進体制加算(Ⅰ)100単位・(Ⅱ)10単位という単位数
- まず(Ⅱ)から始めて(Ⅰ)を目指すのが基本の順序だということ
- 委員会で検討すべき4つの事項
- (Ⅰ)に必要な「介護機器を複数種類活用」の意味
- (Ⅰ)だけに求められる業務分担の明確化
- 事業年度ごとの厚生労働省への実績報告が必要なこと
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できないこと
- 夜勤職員配置加算のテクノロジー要件との関係
老健の生産性向上推進体制加算とは?
生産性向上推進体制加算は、介護機器(介護テクノロジー)を活用して業務の効率化とケアの質の確保、職員の負担軽減に取り組んでいる施設を評価する加算です。令和6年度改定で新設されました。
この加算の特徴は、機器を入れたことそのものではなく、委員会で検討し、実際に取り組み、実績を国に報告するというサイクルを要件にしている点です。見守りセンサーを買って設置しただけでは算定できません。
老健は看護職員・介護職員に加えて医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・支援相談員・管理栄養士と職種が多く、業務分担の線引きが曖昧になりやすい施設です。この加算の(Ⅰ)は、その線引きの見直しまで要件に含んでいます。
ちびウルフ見守りセンサーを入れているので、(Ⅰ)の100単位を取れそうですか。
リハウルフ1種類だけなら(Ⅱ)です。(Ⅰ)は複数種類の活用に加えて、負担軽減の実績と業務分担の見直しまで求められます。まず(Ⅱ)で走らせて、記録を貯めてから(Ⅰ)に上げる順序が現実的です。
生産性向上推進体制加算の単位数
告示第21号の介護保健施設サービスのヤに定められています。
ヤ 生産性向上推進体制加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設において、入所者に対して介護保健施設サービスを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 生産性向上推進体制加算(Ⅰ) 100単位
(2) 生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 100床・年間の目安 |
|---|---|---|---|
| 生産性向上推進体制加算(Ⅰ) | 100単位 | 1月 | 120,000単位 |
| 生産性向上推進体制加算(Ⅱ) | 10単位 | 1月 | 12,000単位 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)は10倍の差です。100床規模なら年間で108,000単位、金額にして100万円以上の違いになります。要件の差は「複数種類」「実績」「業務分担」の3点なので、そこに到達できるかどうかが分かれ目です。
生産性向上推進体制加算の算定要件
要件は告示第95号の第92号の5にありますが、条文は「第三十七号の三の規定を準用する」とだけ書かれています。実体は短期入所生活介護費の生産性向上推進体制加算の基準(第37号の3)です。
加算(Ⅱ)の要件
- 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保および職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会において、後述の4事項について必要な検討を行い、その実施を定期的に確認していること
- 介護機器を活用していること
- 事業年度ごとに、介護機器の活用と委員会の取組に関する実績を厚生労働省に報告すること
委員会で検討すべき4つの事項
(Ⅰ)(Ⅱ)に共通する土台です。
| 検討事項 | 内容 |
|---|---|
| (一) | 業務の効率化および質の向上または職員の負担の軽減に資する機器(介護機器)を活用する場合における利用者の安全およびケアの質の確保 |
| (二) | 職員の負担の軽減および勤務状況への配慮 |
| (三) | 介護機器の定期的な点検 |
| (四) | 業務の効率化および質の向上並びに職員の負担軽減を図るための職員研修 |
「必要な検討を行い」だけでなく「当該事項の実施を定期的に確認していること」まで求められています。議事録に検討したことを書くだけでなく、その後どうなったかを追う記録が要ります。
加算(Ⅰ)の追加要件
- 委員会の取組および介護機器の活用による業務の効率化・ケアの質の確保・職員の負担軽減に関する実績があること
- 介護機器を複数種類活用していること
- 委員会において、職員の業務分担の明確化等による業務の効率化・ケアの質の確保・負担軽減について必要な検討を行い、当該検討を踏まえ必要な取組を実施し、その実施を定期的に確認すること
- 事業年度ごとに、委員会の取組・介護機器の複数種類活用・業務分担の取組に関する実績を厚生労働省に報告すること
| 要件 | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 委員会での4事項の検討と定期確認 | 必要 | 必要 |
| 介護機器の活用 | 複数種類 | 1種類でも可 |
| 業務の効率化・負担軽減の実績 | 必要 | 不要 |
| 業務分担の明確化等の検討と取組 | 必要 | 不要 |
| 事業年度ごとの厚生労働省への報告 | 必要 | 必要 |
(Ⅱ)には実績が要らない
ここが実務上いちばん重要な違いです。(Ⅱ)は委員会での検討・機器の活用・報告の3つで、「実績があること」という要件がありません。導入したその年度から算定を始められる構造です。まず(Ⅱ)を取って1年分の記録を貯め、翌年度に(Ⅰ)へ上げる。これが自然な進み方になります。
生産性向上推進体制加算で押さえておく実務
詳細は別途通知に置かれている
老企第40号 5の(49)は、次の一文だけです。
生産性向上推進体制加算の内容については、別途通知(「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」)を参照すること。
つまり告示と老企第40号だけでは、介護機器の具体的な範囲も、報告の様式も、「実績」の評価方法も分かりません。この加算に取り組むときは、必ずこの別途通知にあたってください。本記事で扱っているのは告示・大臣基準に書かれている骨格の部分です。
報告は事業年度ごと
(Ⅰ)(Ⅱ)とも、事業年度ごとに厚生労働省へ実績を報告することが要件です。報告を怠ると要件を満たさなくなります。LIFEのように月次で提出するものではなく、年に1回の作業ですが、そのぶん失念しやすいところです。年度末のスケジュールに組み込んでおいてください。
夜勤職員配置加算のテクノロジー要件とは別
介護機器に関する要件は、生産性向上推進体制加算だけのものではありません。老健の夜勤職員の勤務条件に関する基準(告示第29号)にも、見守り機器等を活用する場合に夜勤職員数を1.6以上に緩和する規定があり、そこでも委員会での検討事項が定められています。
委員会は1つにまとめられる
どちらの規定も「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」という同じ名前の委員会を指しています。別々の委員会を立てる必要はありません。検討事項が異なるので、議題として両方をカバーする形にしておけば足ります。加算ごとに委員会を作ると、現場は続きません。
ちびウルフ委員会が乱立して、どれが何の委員会か分からなくなっています。
リハウルフよくある話です。議題ごとに議事録の見出しを分けておけば、どの加算の要件を満たすための検討だったかを後から示せます。会議体を増やすより、議事録の作り方を整えるほうが早いです。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
告示の注に「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」とあります。施設として(Ⅰ)か(Ⅱ)のどちらかを選びます。
転換老健でも算定できる
告示のヤの注には「イ(1)、ロ(1)について」のような限定がありません。介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ)を算定する転換老健でも届出ができます。
生産性向上推進体制加算のQ&A
介護機器とは具体的に何を指しますか?
告示は「業務の効率化及び質の向上又は職員の負担の軽減に資する機器」と定義しています。具体的な範囲は別途通知「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」に示されているため、そちらを確認してください。
「複数種類」とは2種類でよいですか?
告示は「複数種類活用していること」とするのみで、数の下限を2としています。具体的な種類の区分は別途通知の考え方によります。
(Ⅱ)から(Ⅰ)に変更するには何が必要ですか?
介護機器の複数種類活用、実績、業務分担の明確化等の取組が追加で必要です。区分が変わるため都道府県知事への届出も必要になります。
委員会の開催頻度は決まっていますか?
告示は頻度を定めていません。「定期的に確認していること」が求められているため、実施状況を追える間隔で開催する必要があります。
報告を忘れた場合はどうなりますか?
事業年度ごとの報告は要件の一つです。満たさなければ算定要件を欠くことになります。取扱いは指定権者に確認してください。
夜勤職員配置加算と一緒に算定できますか?
できます。この加算の注が排除しているのは(Ⅰ)と(Ⅱ)の相互だけです。
委員会は他の委員会と兼ねられますか?
夜勤職員の基準で求められる委員会と同じ名称の委員会です。別々に設置する必要はありませんが、それぞれの検討事項を議題として扱う必要があります。
職員研修は外部研修でもよいですか?
告示は「業務の効率化及び質の向上並びに職員の負担軽減を図るための職員研修」とするのみで、内部・外部の別を定めていません。
ユニット型でも算定できますか?
算定できます。告示の注にユニット型を除く旨の記載はありません。
まとめ
- 老健の生産性向上推進体制加算は(Ⅰ)100単位・(Ⅱ)10単位(いずれも1月につき)
- 令和6年度改定で新設された
- 要件は告示第95号 第92号の5が第37号の3を準用する形で定められている
- (Ⅰ)(Ⅱ)共通の土台は、委員会での4事項の検討と実施の定期確認
- 4事項は「安全とケアの質の確保」「職員の負担軽減と勤務状況への配慮」「機器の定期点検」「職員研修」
- (Ⅱ)は介護機器を活用していれば足り、実績は要件になっていない
- (Ⅰ)は介護機器を複数種類活用し、業務効率化・負担軽減の実績が必要
- (Ⅰ)はさらに職員の業務分担の明確化等の検討と取組が必要
- (Ⅰ)(Ⅱ)とも事業年度ごとに厚生労働省へ実績を報告する
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
- まず(Ⅱ)で始めて記録を貯め、翌年度に(Ⅰ)へ上げるのが現実的な順序
- 介護機器の具体的範囲・報告様式は別途通知に置かれている
- 夜勤職員の基準で求められる委員会と同じ名称の委員会で、兼ねることができる
- 転換老健(介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ))でも算定できる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第37号の3・第92号の5
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)5の(49)、8の(52)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。介護機器の具体的な範囲、実績の考え方、報告様式は別途通知「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」に定められているため、実際の届出にあたっては同通知および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





