老健の室料相当額控除とは?

老健の室料相当額控除は、1日につき26単位を所定単位数から控除する仕組みです。令和7年8月に始まりました。対象になるのはその他型・療養型の老健にある、床面積8平方メートル以上の多床室だけ。基本型・在宅強化型の多床室は対象になりません。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、控除額・対象になる施設と部屋・2つの要件・令和9年8月以降の判定ルールを整理しました。
この記事でわかること
- 老健の室料相当額控除は1日26単位という控除額
- 令和7年8月から始まった仕組みだということ
- 対象になるのは介護保健施設サービス費の特定の区分だけだということ
- 床面積の合計を入所定員で除した数が8以上という要件
- 床面積は内法(うちのり)で測ること
- 「その他型・療養型で過ごした月が7か月以上」という要件
- 令和9年8月以降は判定の基準となる年度が変わること
- 減算ではなく「控除」と呼ばれる理由
老健の室料相当額控除とは?
室料相当額控除は、多床室を利用している入所者について、介護保健施設サービス費から室料に相当する額を差し引く仕組みです。介護保険の給付から室料相当分を外し、その分を利用者の負担に切り替える整理にあたります。
もともと個室(ユニット型・従来型個室)では室料が利用者負担とされてきました。多床室ではその区分がなく、給付に含まれていました。この差を埋めるために設けられたのが室料相当額控除です。令和6年度改定で方針が示され、令和7年8月から施行されています。
ただし多床室のすべてが対象になるわけではありません。在宅復帰の機能が高い基本型・在宅強化型は対象外で、その他型・療養型として運営している老健の多床室に限られます。長期の療養の場として使われている多床室を、特養や介護医療院と同じ扱いに近づける、という考え方です。
ちびウルフうちは多床室があるので、全員が26単位下がるということですか。
リハウルフそうとは限りません。まず自施設がどの類型を算定しているかを確認してください。基本型・在宅強化型で回っているなら対象外です。それと床面積の要件もあります。
室料相当額控除の控除額
告示第21号の介護保健施設サービスの注8に定められています。
8 介護保健施設サービス費(Ⅰ)の介護保健施設サービス費(iii)及び(iv)、介護保健施設サービス費(Ⅱ)の介護保健施設サービス費(ii)、介護保健施設サービス費(Ⅲ)の介護保健施設サービス費(ii)並びに介護保健施設サービス費(Ⅳ)の介護保健施設サービス費(ii)について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に該当する介護老人保健施設については、室料相当額控除として、1日につき26単位を所定単位数から控除する。
| 区分 | 控除額 | 頻度 | 30日分の目安 |
|---|---|---|---|
| 室料相当額控除 | 26単位 | 1日 | 780単位 |
「減算」ではなく「控除」
告示は「減算」ではなく「控除」という言葉を使っています。身体拘束廃止未実施減算などが基準を満たさないことへのペナルティであるのに対し、室料相当額控除は給付の範囲を整理するもので、施設の落ち度を問うものではありません。要件を満たせば回避できる性質のものでもありません。ハブ記事や一覧表では減算の欄に並びますが、性格は別物です。
室料相当額控除の対象になる部屋
注8が挙げているのは、介護保健施設サービス費のうち次の区分です。いずれも多床室に対応する区分にあたります。
| 類型 | 対象になる区分 |
|---|---|
| 介護保健施設サービス費(Ⅰ) | 介護保健施設サービス費(iii)および(iv) |
| 介護保健施設サービス費(Ⅱ) | 介護保健施設サービス費(ii) |
| 介護保健施設サービス費(Ⅲ) | 介護保健施設サービス費(ii) |
| 介護保健施設サービス費(Ⅳ) | 介護保健施設サービス費(ii) |
ユニット型・従来型個室の区分は含まれていません。個室は室料がもともと利用者負担として整理されているためです。
室料相当額控除の2つの要件
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に該当する介護老人保健施設」の中身は、老企第40号 8の(12)に示されています。要件は2つで、両方に該当した場合に控除されます。
要件1:床面積の合計÷入所定員が8以上
① 当該介護老人保健施設の療養室に係る床面積の合計を入所定員で除した数が8以上であること。なお、療養室に係る床面積の合計については、内法による測定とすること。
1人あたりの療養室の床面積が8平方メートル以上あるかどうかを見ます。ここで押さえておきたいのは2点です。
- 分母は入所定員であって、実際の入所者数ではない
- 床面積は内法(うちのり)で測る。壁芯(かべしん)ではない
内法と壁芯で結論が変わることがある
内法は壁の内側の寸法、壁芯は壁の中心線で囲まれた寸法です。壁芯のほうが数値は大きく出ます。図面上の面積が壁芯で書かれている場合、そのまま計算すると8を超えていても、内法で測り直すと8を下回ることがあります。老健の療養室の基準面積は1人あたり8平方メートル以上とされているため、多くの施設がこの境界線の近くにいます。図面の面積がどちらの測り方かを、まず確認してください。
要件2:その他型・療養型で過ごした月が多いこと
もう一つの要件は、施設としてどの類型を算定してきたかです。時期によってルールが変わります。
② 令和7年8月から令和9年7月までの間は、令和6年度において、介護保健施設サービス費(Ⅱ)、介護保健施設サービス費(Ⅲ)又は介護保健施設サービス費(Ⅳ)を算定した月が、介護保健施設サービス費(Ⅰ)を算定した月より多い、つまり7か月以上であること。
| 算定する時期 | 判定に使う年度 | 条件 |
|---|---|---|
| 令和7年8月〜令和9年7月 | 令和6年度 | (Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が7か月以上 |
| 令和9年8月〜令和12年7月 | 令和8年度 | (Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が7か月以上 |
令和9年8月以降の一般ルールは、老企第40号が次のように定めています。「算定日が属する計画期間の前の計画期間(算定日が計画期間の開始後4月以内の日である場合は、前の計画期間の前の計画期間)の最終年度において、介護保健施設サービス費(Ⅱ)、(Ⅲ)又は(Ⅳ)を算定した月が、介護保健施設サービス費(Ⅰ)を算定した月より多いこと」。
要するに、介護保険事業計画期間の最終年度の実績で、その後3年間の扱いが決まる構造です。判定される年度が来る前に類型を戻しておけば、控除は始まりません。
ちびウルフ令和6年度に(Ⅱ)を7か月算定していたら、もう変えられないんですか。
リハウルフ令和9年7月までは変えられません。ただ次の判定は令和8年度の実績なので、そこで基本型に戻せていれば令和9年8月からは控除されなくなります。判定年度が先に決まっているというのは、逆に言えば準備する時間があるということです。
室料相当額控除の注意点
基本型・在宅強化型なら対象外
要件2は「(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が(Ⅰ)を算定した月より多い」という条件です。基本型・在宅強化型(介護保健施設サービス費(Ⅰ))を主に算定している老健は、この条件に当たりません。
老健の類型は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の点数で決まります。在宅復帰率とベッド回転率を上げて類型を維持することが、そのまま室料相当額控除の回避につながります。加算の取り方の話ではなく、施設の運営方針そのものが効いてくる仕組みです。
床面積が8未満なら対象外
要件1は「8以上であること」です。1人あたりの療養室面積が8平方メートル未満の老健は、その他型・療養型であっても控除されません。古い建物ほど面積に余裕がなく、結果として対象外になるという逆転が起こります。
利用者への説明を先に整える
控除されると、入所者の1割負担で1日あたり数十円、月にして数百円の負担増になります。金額としては大きくありませんが、請求額が変わる以上、事前の説明は避けられません。重要事項説明書や利用料金表の改定も必要になります。「制度が変わったので」で済ませず、多床室の室料が給付から外れたという整理を伝えられるようにしておいてください。
ハブ記事の一覧では減算欄に並ぶ
先に書いたとおり、これは施設の落ち度に対するペナルティではありません。ただ請求上は所定単位数から差し引かれるため、加算・減算の一覧表では減算の側に並びます。表を見て「うちは何か基準を満たしていないのか」と誤解しないでください。
室料相当額控除のQ&A
いつから始まった仕組みですか?
令和7年8月からです。老企第40号 8の(12)が「令和7年8月以降、次に掲げる要件に該当する場合」としています。
ユニット型や従来型個室も対象ですか?
対象外です。注8が挙げているのは多床室に対応する区分だけで、ユニット型・従来型個室の区分は含まれていません。
基本型の老健でも控除されますか?
要件2の「(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が(Ⅰ)を算定した月より多い」に当たらなければ控除されません。基本型・在宅強化型で回っている施設は対象外です。
床面積はどう測りますか?
内法による測定です。壁の内側の寸法で測ります。図面が壁芯で書かれている場合は測り直しが必要です。
分母は入所者数ですか、定員ですか?
入所定員です。実際に何人入所しているかではありません。
7か月以上とは何のことですか?
1年12か月のうち過半数という意味です。(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が(Ⅰ)を算定した月より多い状態は、実質的に7か月以上になります。
令和9年8月以降はどの年度で判定しますか?
令和9年8月から令和12年7月までは令和8年度の実績で判定します。一般ルールは、算定日が属する計画期間の前の計画期間の最終年度の実績です。
途中で類型を変えた場合、すぐに控除は止まりますか?
止まりません。判定は年度単位で行われ、次の判定年度の実績が反映されるまで扱いは変わりません。
利用者負担はどれくらい増えますか?
1日26単位分です。1割負担であれば1日あたり数十円、1か月で数百円程度の増加になります(地域区分により金額は変わります)。
まとめ
- 老健の室料相当額控除は1日につき26単位を所定単位数から控除する
- 令和7年8月から始まった
- 「減算」ではなく「控除」で、施設の落ち度を問うものではない
- 対象は介護保健施設サービス費(Ⅰ)の(iii)(iv)、(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)の各(ii)=多床室の区分
- ユニット型・従来型個室は対象外
- 要件は2つあり、両方に該当した場合に控除される
- 要件1は療養室の床面積の合計÷入所定員が8以上であること
- 床面積は内法で測定する(壁芯ではない)
- 分母は入所定員であって実際の入所者数ではない
- 要件2は(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)を算定した月が(Ⅰ)を算定した月より多いこと(実質7か月以上)
- 令和7年8月〜令和9年7月は令和6年度の実績で判定する
- 令和9年8月〜令和12年7月は令和8年度の実績で判定する
- 基本型・在宅強化型を維持していれば対象にならない
- 1人あたり床面積が8平方メートル未満なら、その他型・療養型でも対象にならない
- 控除が始まる場合、重要事項説明書や利用料金表の改定と利用者への説明が必要になる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護保健施設サービス 注8
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)8の(12)
※本記事の控除額・要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の請求にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





