「安全対策体制加算って、結局どの施設が・いくらで・どんな要件で取れるの?」——介護施設の運営者や管理者の方から、こうした質問をよくいただきます。令和3年度に新設された比較的新しい加算でありながら、算定し損ねている施設や、逆に減算(安全管理体制未実施減算)を取られてしまっている施設が今も少なくありません。

この記事では、安全対策体制加算の単位数・対象サービス・算定要件を、厚生労働省の告示・通知・解釈通知をもとに正確に整理します。令和6年度介護報酬改定での扱い、混同しやすい「安全管理体制未実施減算」との違い、外部研修の中身、届出の流れまで、施設の運営者・管理者が知っておくべきポイントを一気にまとめました。

この記事でわかること
  • 安全対策体制加算の単位数(20単位)と「入所時に1回だけ」という算定ルール
  • 算定できる対象施設(特養・老健・介護医療院など)と令和6年度改定での扱い
  • 算定要件の核心=「外部研修を受けた安全対策担当者の配置」と「安全対策部門の設置」
  • 混同しやすい「安全管理体制未実施減算(5単位/日)」との関係
  • 外部研修の受講先・内容と、届出から算定開始までの実務手順

安全対策体制加算とは?令和3年度に新設された施設向けの加算

安全対策体制加算とは、入所者の事故を未然に防ぐための組織的な安全対策体制を整えた介護施設を評価する加算です。令和3年度(2021年度)介護報酬改定で、施設におけるリスクマネジメント強化の一環として新設されました。

背景にあるのは、介護施設で発生する転倒・転落・誤嚥・誤薬といった事故の多さです。事故を「起きてから対応する」のではなく、あらかじめ予測・分析し、再発防止の仕組みを組織として回す——その体制づくりを後押しするのが、この加算の狙いです。

ちびウルフちびウルフ

新しい加算なんだね。毎月もらえる加算なの?

リハウルフリハウルフ

そこが大事なポイントなんだ。安全対策体制加算は入所したときに1回だけ算定する加算で、毎月もらえるタイプじゃないんだよ。次の章でくわしく見ていこう。

安全対策体制加算の単位数は20単位|入所時に1回のみ

安全対策体制加算の単位数は、入所者1人につき20単位です。施設の種別を問わず一律で、ここに区分(ⅠやⅡ)はありません。

最大の特徴は、入所者が入所した日に1回限り算定するという点です。毎日や毎月ではなく、新たに入所者を受け入れたタイミングで一度だけ算定します。短期入所のように繰り返し利用するサービスとは性質が異なり、長期入所する施設サービスで「入所時の初期評価・体制確認」を評価するイメージです。

ポイントすでに入所している既存の入所者には算定できません。算定要件を満たした後に新規で受け入れた入所者に対してのみ、入所時に1回算定します。要件を整える前から入所している方は対象外になる点に注意しましょう。

安全対策体制加算の対象サービス(算定できる施設)

安全対策体制加算を算定できるのは、長期入所を前提とした施設系サービスです。具体的には次の施設が対象です。

対象となる施設サービス備考
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入所定員30人以上
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護定員29人以下の地域密着型特養
介護老人保健施設(老健)
介護医療院
注意制度創設時は「介護療養型医療施設」も対象に含まれていましたが、介護療養型医療施設は令和6年3月末(2024年3月31日)をもって廃止されました。現行で対象となるのは上記4類型です。通所介護や訪問系など居宅サービスには、この加算はありません。

安全対策体制加算の算定要件|カギは「外部研修」と「安全対策部門」

安全対策体制加算の算定要件は、厚生労働省の告示・解釈通知で次のように定められています。要点は2つです。

  1. 外部の研修を受けた担当者(安全対策担当者)が配置されていること。社内研修ではなく、必ず外部のリスクマネジメント研修を受講した担当者であることが求められます。
  2. 施設内に安全対策を担当する部門を設置し、組織的に安全対策を実施する体制が整備されていること。担当者が1人で抱えるのではなく、組織として安全対策を回す仕組みが必要です。

このうち特に重要なのが「外部研修を受けた担当者の配置」です。施設内の自前研修だけでは要件を満たせません。リスクマネジメントについて体系的に学んだ担当者を外部研修で養成し、その人を中心に施設全体で事故防止に取り組む——この形が要件の核心になります。

ちびウルフちびウルフ

担当者を1人決めて、外部研修を受けてもらえばOKってこと?

リハウルフリハウルフ

担当者の配置は必須条件だけど、それだけじゃ足りないんだ。運営基準で求められている事故防止の取り組みがきちんと回っていることが前提になる。次で確認しよう。

前提となる「運営基準上の事故防止措置」も満たす必要がある

安全対策体制加算は、運営基準(指定基準)で施設に義務づけられている事故発生防止の措置を満たしていることが前提です。運営基準では、施設は事故の発生・再発を防止するため、次の措置を講じなければならないとされています。

運営基準で求められる事故防止措置
事故が発生した場合の対応や報告方法を定めた「事故発生防止のための指針」を整備すること
事故やヒヤリハットが報告され、その分析を通じた改善策を職員に周知徹底する体制を整備すること
事故発生防止のための委員会(テレビ電話等の活用可)と、職員研修を定期的に行うこと
これらの措置を適切に実施するための担当者(安全対策担当者)を置くこと

つまり、指針の整備・報告分析体制・委員会と研修の定期実施・担当者の設置という土台があったうえで、さらに「担当者が外部研修を修了している」「安全対策部門を設置している」という上乗せ要件を満たすことで、加算の算定が可能になります。

混同注意|「安全管理体制未実施減算(5単位/日)」との違い

安全対策体制加算とよく混同されるのが「安全管理体制未実施減算」です。両者は名前が似ていますが、まったく別物です。

項目安全対策体制加算安全管理体制未実施減算
方向プラス(加算)マイナス(減算)
単位20単位(入所時に1回)5単位/日
対象者新規入所者のみ入所者全員
趣旨外部研修受講者の配置+安全対策部門の設置を評価運営基準上の事故防止措置(担当者設置など)が未実施の場合のペナルティ

安全対策担当者の設置は、令和3年4月の運営基準改正で義務化され、経過措置を経て令和3年10月から完全義務化されました。担当者の設置など基本的な事故防止措置を満たしていない施設は、入所者全員について1日5単位が減算されます。減算は毎日効くため、年間で見れば影響は決して小さくありません。

注意「加算が取れていない」だけなら収入機会の損失ですが、「減算を取られている」と日々のマイナスが積み上がります。まずは減算を受けない体制(担当者設置・指針・委員会・研修)を固め、そのうえで加算の算定要件(外部研修・安全対策部門)まで引き上げるのが正しい順番です。

外部研修はどこで受ける?内容と受講先

加算の要件となる「外部研修」について、厚生労働省の通知では、介護現場における事故の内容、発生防止の取り組み、発生時の対応、施設のマネジメント等を含む研修とされています。受講先としては、次のような関係団体が開催する研修が想定されています。

想定される研修の主催団体(例)
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
公益社団法人 全国老人保健施設協会
一般社団法人 日本慢性期医療協会 ほか

これらの団体ではeラーニング形式のオンライン研修が実施されることが多く、受講資格を問わず誰でも受けられるものもあります。研修内容は、制度の説明と目的、介護事故の実態とリスクマネジメント、ヒヤリハットの活用、苦情・クレーム対応、身体拘束廃止・虐待防止などで構成されます。受講後に発行される修了証は、届出時の証明書類として保管しておきましょう。

ポイント研修の開催時期・申込期間は年度ごとに変わります。受講予定の団体の公式サイトで最新の開催スケジュールを必ず確認し、届出に間に合うよう早めに受講しておくと安心です。

算定(届出)までの流れ

安全対策体制加算は、要件を満たしたうえで自治体(指定権者)に届け出ることで算定できます。基本的な流れは次のとおりです。

  1. 運営基準上の事故防止措置(指針・委員会・研修・担当者設置)を整える。
  2. 安全対策担当者が外部のリスクマネジメント研修を受講し、修了証を取得する。
  3. 施設内に安全対策部門を設置し、組織的な安全対策の体制を整備する。
  4. 「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」「体制等状況一覧表」「安全対策体制加算に係る届出書(別紙様式)」を作成し、研修修了を証する書類を添えて自治体に提出する。
  5. 届出が受理されると、原則として受理日の翌月から算定を開始できる。
注意届出様式(「安全対策体制加算に係る届出書」など)は自治体によって名称や様式が異なります。提出期限(多くは算定開始月の前月15日や末日など)も自治体ごとに違うため、必ず管轄の指定権者のホームページで最新の様式・期限・提出方法を確認してください。

運営者・管理者が押さえる実務ポイント

施設の運営者・管理者の立場で、安全対策体制加算を「取りこぼさない」ための実務ポイントを整理します。

まず、減算の回避が最優先です。安全対策担当者の設置は義務であり、満たしていなければ毎日5単位の減算が続きます。加算20単位(入所時1回)よりも、減算5単位×入所者全員×日数の影響のほうが大きくなりがちです。減算を受けていないか、まず自施設の体制を点検しましょう。

次に、外部研修の修了者を切らさないこと。担当者の退職・異動で研修修了者が不在になると要件を満たせなくなります。複数名に外部研修を受講させておくと、人事異動があっても体制を維持しやすくなります。

そして、加算は新規入所者にのみ算定できる仕組みのため、入所手続きのフローに「加算算定の確認」を組み込むのが実務的です。入所時の事務処理チェックリストに加算項目を加えておけば、算定漏れを防げます。安全対策は事故防止という本来の目的に加え、こうした体制づくりが結果的にBCP(業務継続計画)や虐待防止の取り組みとも連動します。

ちびウルフちびウルフ

20単位だけ見ると小さいけど、減算を防ぐ意味でも体制づくりは大事なんだね。

リハウルフリハウルフ

そのとおり。加算と減算はセットで考えるのがコツだよ。安全対策の体制が整えば、事故そのものも減って、入所者にも職員にも良い循環が生まれるんだ。

安全対策体制加算のよくある質問(FAQ)

安全対策体制加算は毎月算定できますか?
いいえ。入所者が入所した日に1回限り算定する加算です。毎日・毎月の算定はできません。要件を満たした後に新規で受け入れた入所者にのみ、入所時に20単位を算定します。
令和6年度の介護報酬改定で単位数や要件は変わりましたか?
安全対策体制加算そのものの単位数(20単位)・要件に大きな変更はありません。ただし令和6年度改定では、高齢者虐待防止措置未実施減算や業務継続計画(BCP)未策定減算などが本格適用された点が関連します。安全対策・リスクマネジメント全体の体制を見直すタイミングといえます。
すでに入所している方にも算定できますか?
できません。算定要件を満たす前から入所している方は対象外です。要件を満たした後に新規入所した方にのみ算定できます。
社内研修だけでも要件を満たせますか?
満たせません。安全対策担当者は「外部の研修」を受講している必要があります。関係団体が開催するリスクマネジメント研修などを受講し、修了証を取得してください。
通所介護や訪問系のサービスでも算定できますか?
できません。安全対策体制加算は、介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護・介護老人保健施設・介護医療院といった入所施設が対象です。
まとめ
  • 安全対策体制加算は令和3年度新設の施設向け加算で、単位数は20単位(入所時に1回のみ)
  • 対象は特養・地域密着型特養・老健・介護医療院の4類型(介護療養型医療施設は令和6年3月末で廃止)。
  • 算定要件の核心は「外部研修を受けた安全対策担当者の配置」と「安全対策部門の設置・組織的な安全対策体制の整備」。
  • 名前の似た「安全管理体制未実施減算(5単位/日・入所者全員)」とは別物。まず減算を受けない体制を固めることが最優先。
  • 担当者の外部研修修了者を切らさず、入所手続きに加算確認を組み込むことで算定漏れを防げる。届出様式・期限は自治体ごとに要確認。

出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定」関連告示・解釈通知、介護保険最新情報Vol.948(令和3年3月23日)、指定介護老人福祉施設の人員・設備及び運営に関する基準 ほか。算定にあたっては、必ず管轄自治体(指定権者)の最新の取扱い・様式をご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶