老健のサービス提供体制強化加算とは?

老健のサービス提供体制強化加算は(Ⅰ)22単位・(Ⅱ)18単位・(Ⅲ)6単位、いずれも1日につき。単位数は通所介護や通所リハビリと同じですが、求められる介護福祉士の割合はまったく違います。
(Ⅰ)は介護福祉士80%以上。通所リハビリの70%、訪問介護等の水準と比べても高く設定されています。さらに老健の(Ⅰ)だけには「サービスの質の向上に資する取組」という要件が加わります。
一方で(Ⅲ)には、他サービスにない独自のルートがあります。看護・介護職員の総数のうち常勤職員が75%以上——介護福祉士の割合ではなく、常勤割合で判定できる道です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第93号、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- (Ⅰ)22単位・(Ⅱ)18単位・(Ⅲ)6単位という単位数
- 介護福祉士80%・60%・50%という割合の水準
- (Ⅰ)だけに「質の向上に資する取組」が要件であること
- (Ⅲ)に常勤職員75%以上という独自ルートがあること
- 「直接提供する職員」に支援相談員が含まれること
- 勤続年数ルートの分母が広いこと
- 割合の算出方法(前年度・3月を除く平均)
- 新規開設は4月目以降に届出できること
- 質の向上に資する取組の具体例
- 通所リハビリ・特養との水準の違い
単位数と割合の一覧
| 区分 | 単位数 | ルート① | ルート② | ルート③ |
|---|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 22単位 | 介護福祉士80%以上 | 勤続10年以上の介護福祉士35%以上 | — |
| (Ⅱ) | 18単位 | 介護福祉士60%以上 | — | — |
| (Ⅲ) | 6単位 | 介護福祉士50%以上 | 看護・介護職員の常勤職員75%以上 | 直接提供職員の勤続7年以上30%以上 |
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った介護老人保健施設が、入所者に対し介護保健施設サービスを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
1日22単位。100床の老健で稼働率95%なら、22×95×30=62,700単位。1単位10円換算で月約63万円、年間750万円規模になります。
(Ⅲ)6単位でも月約17万円。老健の加算のなかでは収益インパクトが最上位クラスです。
(Ⅰ)22単位——介護福祉士80%以上
イ サービス提供体制強化加算(Ⅰ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1) 次のいずれかに適合すること。
(一) 介護老人保健施設の介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が百分の八十以上であること。
(二) 介護老人保健施設の介護職員の総数のうち、勤続年数十年以上の介護福祉士の占める割合が百分の三十五以上であること。
(2) 提供する介護保健施設サービスの質の向上に資する取組を実施していること。
(3) (定員超過利用・人員基準欠如等の)基準のいずれにも該当しないこと。
(Ⅱ)と(Ⅲ)にはこの要件がありません。(Ⅰ)を算定するには、割合の要件に加えて取組の実施が必要です。
通知は、この取組を「サービスの質の向上や利用者の尊厳の保持を目的として、事業所として継続的に行う取組」としています。
質の向上に資する取組の例
| 取組の例 |
|---|
| LIFEを活用したPDCAサイクルの構築 |
| ICT・テクノロジーの活用 |
| 高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化 |
| ケアに当たり、居室の定員が2以上である場合、原則としてポータブルトイレを使用しない方針を立てて取組を行っていること |
実施に当たっては、当該取組の意義・目的を職員に周知するとともに、適時のフォローアップや職員間の意見交換等により、当該取組の意義・目的に則ったケアの実現に向けて継続的に取り組むものでなければならない。
ちびウルフ「多床室でポータブルトイレを使わない」が例に入っているのが意外です。
リハウルフこれは尊厳の保持の話なんだ。カーテン1枚隔てた隣に人がいる部屋で排泄する——臭いも音も伝わる。本人がどう感じるか。
もちろん夜間の転倒リスクを考えれば、ポータブルトイレを置く判断もある。だから「原則として使用しない方針を立てて取組を行う」という書き方になっている。ゼロにしろとは言っていない。
方針を決めて、そこに向けて動いているかどうか。トイレへの誘導の仕組み、夜間の人員配置、福祉用具の見直し——そこまで含めた取組を求めていると読んでいる。
リハ職の立場でも、「トイレまで歩ける」ことを目標にする理由がここにある。加算の要件と現場の目標が、めずらしく素直につながっている例だと思う。
(Ⅱ)18単位——介護福祉士60%以上
ロ サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1) 介護老人保健施設の介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が百分の六十以上であること。
(2) イ(3)に該当するものであること。
(Ⅱ)は介護福祉士60%以上の1ルートのみ。勤続年数のルートも、質の向上の取組の要件もありません。シンプルです。
(Ⅲ)6単位——3つのルートから選べる
ハ サービス提供体制強化加算(Ⅲ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1) 次のいずれかに適合すること。
(一) 介護老人保健施設の介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が百分の五十以上であること。
(二) 介護老人保健施設の看護・介護職員の総数のうち、常勤職員の占める割合が百分の七十五以上であること。
(三) 指定短期入所療養介護又は介護保健施設サービスを利用者又は入所者に直接提供する職員の総数のうち、勤続年数七年以上の者の占める割合が百分の三十以上であること。
(2) イ(3)に該当するものであること。
| ルート | 分母 | 分子 | 割合 |
|---|---|---|---|
| (一) | 介護職員の総数 | 介護福祉士 | 50%以上 |
| (二) | 看護・介護職員の総数 | 常勤職員 | 75%以上 |
| (三) | 直接提供する職員の総数 | 勤続7年以上の者 | 30%以上 |
ここが判定でつまずくところです。(一)は介護職員だけ、(二)は看護・介護職員、(三)は直接提供する職員全体——分母が3段階で広がります。
とくに(二)の常勤職員75%以上は、介護福祉士の割合ではなく雇用形態で判定します。非常勤が少ない施設なら、資格の割合に関係なく満たせる可能性があります。
3つとも計算してから判断してください。1つのルートだけ見て諦めるのはもったいない。
「直接提供する職員」に支援相談員が入る
介護保健施設サービスを利用者に直接提供する職員とは、看護職員、介護職員、支援相談員、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士として勤務を行う職員を指すものとする。
| サービス | 「直接提供する職員」の範囲 |
|---|---|
| 老健 | 看護職員・介護職員・支援相談員・PT・OT・ST |
| 通所リハビリ | PT・OT・ST・看護職員・介護職員 |
| 特定施設 | 生活相談員・介護職員・看護職員・機能訓練指導員 |
老健では支援相談員が分母に入ります。支援相談員は在宅復帰支援の要となる職種で、勤続年数が長い傾向があります。(三)の勤続年数ルートを計算するときは、必ず支援相談員を含めてください。
割合の算出方法
訪問入浴介護の規定を準用する形で、算出方法が定められています。
- 常勤換算方法により算出した前年度(3月を除く)の平均を用いる
- 前年度の実績が6月に満たない事業所は、届出日の属する月の前3月の平均
- 新たに事業を開始・再開した場合は4月目以降に届出が可能
- 介護福祉士は各月の前月の末日時点で資格を取得している者
- 勤続年数は各月の前月の末日時点における勤続年数
- 同一法人等の他の介護サービス事業所・病院・社会福祉施設等での直接提供職員としての勤務年数を通算できる
前3月の実績で届け出た施設は、届出後も直近3月間の割合を毎月継続的に維持しなければなりません。割合は毎月記録し、下回った場合は直ちに届出を提出します。
医療法人母体の老健では、病院からの異動者が少なくありません。同一法人の病院での勤務年数を通算できることを見落とすと、勤続年数ルートを取り逃がします。
他サービスとの水準の違い
| サービス | (Ⅰ) | (Ⅱ) | (Ⅲ) |
|---|---|---|---|
| 老健 | 介護福祉士80% | 60% | 50% |
| 特養 | 22単位 | 18単位 | 6単位 |
| 通所リハビリ | 介護福祉士70% | 50% | 40% |
単位数は22・18・6単位で共通ですが、老健の割合要件は通所リハビリより10ポイント高い設定です。施設系のほうが介護福祉士の配置を厚く求められています。
介護職員の8割が介護福祉士——これはかなりの水準です。(Ⅰ)を狙うなら、もう一方のルート「勤続10年以上の介護福祉士35%以上」も計算してみてください。
長く勤める職員が多い施設なら、80%には届かなくても35%を満たせることがあります。両方計算するのが鉄則です。
算定にあたっての実務ステップ
- 前年度(3月を除く4月〜2月)の常勤換算での職員数を、職種別に集計する
- 介護職員を分母にした介護福祉士の割合を算出する(80%/60%/50%のどこに届くか)
- 介護職員を分母にした勤続10年以上の介護福祉士の割合を算出する(35%に届くか)
- 看護・介護職員を分母にした常勤職員の割合を算出する(75%に届くか)
- 看護職員・介護職員・支援相談員・PT・OT・STを分母にした勤続7年以上の割合を算出する(30%に届くか)
- 同一法人の他事業所・病院・社会福祉施設等での勤務年数を通算して数え直す
- 定員超過利用・人員基準欠如に該当していないことを確認する
- (Ⅰ)を狙う場合は、質の向上に資する取組を決めて実施する
- 取組の意義・目的を職員に周知し、フォローアップと意見交換を継続する
- もっとも上位で満たせる区分を選び、都道府県知事に届け出る
- 前3月実績で届け出た場合は、毎月割合を算出して記録する
2つ目から5つ目を4通りすべて計算してください。1つのルートで届かなくても、別のルートで上位区分に手が届くことがあります。
よくある質問
単位数はいくらですか?
(Ⅰ)22単位、(Ⅱ)18単位、(Ⅲ)6単位で、いずれも1日につきです。
(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は重ねて算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合は、その他の加算は算定しないとされています。
(Ⅰ)に必要な介護福祉士の割合は?
介護職員の総数のうち80%以上、または勤続年数10年以上の介護福祉士が35%以上です。
(Ⅰ)だけの追加要件はありますか?
あります。提供する介護保健施設サービスの質の向上に資する取組を実施していることが必要です。
質の向上に資する取組とは何ですか?
LIFEを活用したPDCAサイクルの構築、ICT・テクノロジーの活用、高齢者の活躍等による役割分担の明確化、多床室で原則ポータブルトイレを使用しない方針を立てた取組などが例として挙げられています。
(Ⅲ)に常勤割合のルートがあると聞きました。
あります。看護・介護職員の総数のうち常勤職員の占める割合が75%以上であれば、介護福祉士の割合にかかわらず(Ⅲ)の要件を満たせます。
「直接提供する職員」には誰が含まれますか?
看護職員、介護職員、支援相談員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士です。
支援相談員も分母に入りますか?
入ります。(Ⅲ)の勤続年数ルートでは、支援相談員を含めた直接提供職員の総数が分母になります。
割合はいつの実績で計算しますか?
常勤換算方法により算出した前年度(3月を除く)の平均です。前年度の実績が6月に満たない場合は届出日の属する月の前3月の平均を用います。
開設したばかりでも届け出られますか?
新たに事業を開始または再開した場合は、4月目以降に届出が可能とされています。
前職の経験は勤続年数に含められますか?
同一法人等が経営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設等で、サービスを利用者に直接提供する職員として勤務した年数は含められます。
通所リハビリと同じ要件ですか?
単位数は同じですが、割合の水準が違います。老健は(Ⅰ)80%・(Ⅱ)60%・(Ⅲ)50%、通所リハビリは70%・50%・40%です。
- 老健のサービス提供体制強化加算は(Ⅰ)22単位・(Ⅱ)18単位・(Ⅲ)6単位
- いずれも1日につきで、区分の重複算定はできない
- 入所者全員に毎日算定できるため収益インパクトが大きい
- (Ⅰ)は介護福祉士80%以上、または勤続10年以上の介護福祉士35%以上
- (Ⅰ)だけに「質の向上に資する取組」の要件がある
- 取組の例はLIFE活用・ICT活用・役割分担の明確化・多床室のポータブルトイレ方針
- 取組は職員への周知と継続的なフォローアップが求められる
- (Ⅱ)は介護福祉士60%以上の1ルートのみ
- (Ⅲ)は3つのルートから選べる
- (Ⅲ)の分母は3つとも異なる
- 看護・介護職員の常勤職員75%以上という独自ルートがある
- 「直接提供する職員」に支援相談員が含まれる
- 勤続年数ルートの計算では支援相談員を忘れない
- 割合は常勤換算方法による前年度(3月を除く)の平均
- 前年度実績6月未満は前3月の平均、新規開設は4月目以降に届出可
- 同一法人の他事業所・病院等での勤務年数を通算できる
- 前3月実績で届け出た場合は毎月の維持義務と記録義務がある
- 定員超過利用・人員基準欠如に該当していないことが共通要件
- 老健の割合要件は通所リハビリより10ポイント高い
- 4通りすべて計算してから区分を決める
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) 介護保健施設サービス マ サービス提供体制強化加算(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号) 第93号
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号) 介護保健施設サービス(53)サービス提供体制強化加算について、特定施設入居者生活介護費(24)
- 厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号) 第13号
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。割合の算出方法、勤続年数の通算範囲、「質の向上に資する取組」が要件を満たすかの判断、届出の様式・提出方法については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。本文中の収益の試算は1単位10円で計算した概算です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。区分選択や取組の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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