老健の口腔衛生管理加算は(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位、いずれも1月につき。差はLIFEへの提出だけで20単位です。

ただし、この加算には単位数以上の意味があります。口腔衛生管理加算(Ⅱ)は、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位の前提要件になっているからです。(Ⅰ)90単位のままでは、リハの加算も上位区分に届きません。

要件の中心は歯科衛生士が月2回以上、口腔衛生等の管理を行うこと。そして介護職員への技術的助言・指導と、相談への対応まで含まれます。歯科衛生士が入所者にケアをするだけでは足りません。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第69号、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位という単位数と差の理由
  • (Ⅱ)がリハマネ計画書情報加算(Ⅰ)の前提であること
  • 歯科衛生士による月2回以上の管理が必要なこと
  • 介護職員への技術的助言・指導が要件に入っていること
  • 計画作成に歯科医師等の技術的助言が要ること
  • 医療保険の訪問歯科衛生指導との関係
  • 訪問歯科衛生指導料3回以上の月は算定できないこと
  • 歯科訪問診療料が算定された月でも算定できること
  • 実施記録(別紙様式3)の作成と保管
  • 特養・介護医療院と共通の基準であること

単位数は90単位と110単位

区分単位数LIFE提出
口腔衛生管理加算(Ⅰ)90単位/月不要
口腔衛生管理加算(Ⅱ)110単位/月必要

注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合し、かつ、(中略)届出を行った介護老人保健施設において、入所者に対し、歯科衛生士が口腔衛生の管理を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。

20単位の差以上の意味がある

(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は20単位。金額だけ見れば小さな差です。

しかし口腔衛生管理加算(Ⅱ)は、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位の算定要件に組み込まれています。(Ⅰ)90単位のままだと、リハの加算は(Ⅱ)33単位止まり。

20単位+20単位=40単位の差になる、と考えると判断が変わってきます。

(Ⅰ)の5つの要件

イ 口腔衛生管理加算(Ⅰ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

(1) 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言及び指導に基づき、入所者の口腔衛生等の管理に係る計画が作成されていること。
(2) 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔衛生等の管理を月2回以上行うこと。
(3) 歯科衛生士が、(中略)入所者に係る口腔衛生等の管理について、介護職員に対し、具体的な技術的助言及び指導を行うこと。
(4) 歯科衛生士が、(中略)入所者の口腔に関する介護職員からの相談等に必要に応じ対応すること。
(5) (定員超過利用・人員基準欠如等の)基準のいずれにも該当しないこと。

要件ポイント
①計画の作成歯科医師等の技術的助言及び指導に基づく
②歯科衛生士による管理月2回以上
③介護職員への助言・指導具体的な技術的助言及び指導
④相談への対応介護職員からの相談等に必要に応じ対応
⑤減算状態でないこと定員超過利用・人員基準欠如等
ちびウルフちびウルフ

歯科衛生士が来て口腔ケアをしてくれれば、それで算定できるんですか?

リハウルフリハウルフ

それだけでは足りない。要件の③と④に注目してほしい。介護職員への具体的な技術的助言・指導と、介護職員からの相談への対応が入っている。

つまりこの加算が評価しているのは、歯科衛生士が直接ケアすることだけでなく、施設の介護職員の口腔ケアの質を上げることなんだ。

考えてみれば当然で、歯科衛生士が来るのは月2回、日々の口腔ケアをするのは介護職員。歯科衛生士の関わりが介護職員に伝わらなければ、残りの28日は何も変わらない。

だから記録にも「介護職員への技術的助言及び指導の内容」を書く欄がある。助言した内容を残すところまでが要件だと理解してほしい。

(Ⅱ)の追加要件——LIFEへの提出と活用

ロ 口腔衛生管理加算(Ⅱ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1) イ(1)から(5)までに掲げる基準のいずれにも適合すること。
(2) 入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報を厚生労働省に提出し、口腔衛生の管理の実施に当たって、当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。

提出するだけでなく活用することが要件です。通知はPDCAサイクルによる質の管理を求めています。

  • Plan:入所者の状態に応じた口腔衛生の管理の内容の決定
  • Do:決定に基づく支援の提供
  • Check:支援内容の評価
  • Action:評価結果を踏まえた支援内容の見直し・改善

医療保険との関係——ここが最大の注意点

本加算は、医療保険において歯科訪問診療料が算定された日の属する月であっても算定できるが、訪問歯科衛生指導料が算定された日の属する月においては、訪問歯科衛生指導料が3回以上(令和6年6月以降、(中略)緩和ケアを実施するものの場合は、7回以上)算定された場合には算定できない。

医療保険の算定状況口腔衛生管理加算
歯科訪問診療料が算定された月算定できる
訪問歯科衛生指導料が1〜2回算定された月算定できる
訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された月算定できない
緩和ケアの場合は7回以上算定できない
同一月内の確認が要件になっている

通知②は、こう定めています。

「当該サービスを実施する同一月内において医療保険による訪問歯科衛生指導の実施の有無を入所者又はその家族等に確認するとともに、当該サービスについて説明し、その提供に関する同意を得た上で行うこと。」

訪問歯科衛生指導が行われていないかを確認することが、要件そのものに含まれています。歯科医療機関と連携して、月内の算定回数を把握できる仕組みを作ってください。

記録は別紙様式3を参考に

歯科医師の指示を受けて当該施設の入所者に対して口腔衛生の管理を行う歯科衛生士は、口腔に関する問題点、歯科医師からの指示内容の要点(中略)、当該歯科衛生士が実施した口腔衛生の管理の内容、当該入所者に係る口腔清掃等について介護職員への具体的な技術的助言及び指導の内容及びその他必要と思われる事項に係る記録を別紙様式3を参考として作成し、当該施設に提出すること。当該施設は、当該記録を保管するとともに、必要に応じてその写しを当該入所者に対して提供すること。

記録項目
口腔に関する問題点
歯科医師からの指示内容の要点
歯科衛生士が実施した口腔衛生の管理の内容
介護職員への具体的な技術的助言及び指導の内容
その他必要と思われる事項
  • 記録を作成するのは歯科衛生士
  • 作成した記録は施設に提出する
  • 施設は記録を保管する
  • 必要に応じて写しを入所者に提供する

医療が必要な場合の対応

当該歯科衛生士は、介護職員から当該入所者の口腔に関する相談等に必要に応じて対応するとともに、当該入所者の口腔の状態により医療保険における対応が必要となる場合には、適切な歯科医療サービスが提供されるよう当該歯科医師及び当該施設への情報提供を行うこと。

口腔衛生の管理の中で治療が必要な状態を見つけたら、歯科医師と施設の双方へ情報提供する——ここまでが歯科衛生士の役割として書かれています。

リハマネ計画書情報加算(Ⅰ)との関係

加算単位数関係
口腔衛生管理加算(Ⅰ)90単位/月
口腔衛生管理加算(Ⅱ)110単位/月リハマネ計画書情報加算(Ⅰ)の前提
栄養マネジメント強化加算11単位/日同上
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位/月上記2つの算定が要件
口腔・栄養・リハが連結している

令和6年度改定で、老健の加算は口腔衛生管理加算(Ⅱ)+栄養マネジメント強化加算 → リハマネ計画書情報加算(Ⅰ)という連結構造になりました。

口腔衛生管理加算を(Ⅰ)から(Ⅱ)に上げる判断は、リハの加算まで含めて考えるのが正しい見方です。

差は口腔で20単位、リハで20単位。あわせて月40単位。100人分なら月4,000単位(1単位10円換算で約4万円)になります。

特養・介護医療院と共通の基準

厚生労働大臣が定める基準(第69号)は、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護医療院サービスを一括して定めています。

施設口腔衛生管理加算
老健(Ⅰ)90単位/(Ⅱ)110単位
要件は共通
特養
地域密着型特養
介護医療院

4施設で単位数も要件も共通です。ただし、この加算を前提とする上位の加算(老健のリハマネ計画書情報加算、特養の個別機能訓練加算等)は施設ごとに異なります。

算定にあたっての実務ステップ

  • 歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士から技術的助言・指導を受ける
  • その助言・指導に基づき、入所者の口腔衛生等の管理に係る計画を作成する
  • 同一月内に医療保険の訪問歯科衛生指導が行われていないかを本人・家族に確認する
  • サービスについて説明し、提供に関する同意を得る
  • 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、月2回以上の口腔衛生等の管理を行う
  • 歯科衛生士が介護職員に対し、具体的な技術的助言・指導を行う
  • 介護職員からの相談に必要に応じて対応する
  • 歯科衛生士が別紙様式3を参考に記録を作成し、施設へ提出する
  • 施設は記録を保管し、必要に応じて写しを入所者へ提供する
  • (Ⅱ)を算定する場合はLIFEへ情報を提出し、フィードバックを活用する
  • 訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された月は算定しない
  • リハマネ計画書情報加算(Ⅰ)を目指す場合は、栄養マネジメント強化加算とあわせて(Ⅱ)を算定する

3つ目を毎月のルーティンにしてください。訪問歯科衛生指導料の算定回数は、後から判明すると返戻の原因になります。

よくある質問

単位数はいくらですか?

(Ⅰ)は1月90単位、(Ⅱ)は1月110単位です。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。いずれかを算定している場合は、その他の加算は算定しないとされています。

(Ⅱ)の追加要件は何ですか?

入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報をLIFEへ提出し、その情報等を活用していることです。

歯科衛生士は何回来ればよいですか?

入所者に対し、口腔衛生等の管理を月2回以上行うことが要件です。

歯科衛生士が入所者にケアをするだけで算定できますか?

できません。介護職員に対する具体的な技術的助言・指導と、介護職員からの相談への対応も要件に含まれます。

計画は誰が作りますか?

歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言および指導に基づき作成します。

歯科訪問診療料が算定された月でも算定できますか?

算定できます。

訪問歯科衛生指導料が算定された月は?

1〜2回なら算定できますが、3回以上算定された月は算定できません。緩和ケアを実施する場合は7回以上で算定できなくなります。

訪問歯科衛生指導の実施を確認する必要がありますか?

あります。同一月内において医療保険による訪問歯科衛生指導の実施の有無を、入所者またはその家族等に確認することとされています。

記録は誰が作りますか?

口腔衛生の管理を行う歯科衛生士が別紙様式3を参考として作成し、施設に提出します。施設は記録を保管し、必要に応じて写しを入所者に提供します。

治療が必要な状態を見つけたらどうしますか?

適切な歯科医療サービスが提供されるよう、歯科医師および施設への情報提供を行うこととされています。

リハビリの加算と関係がありますか?

あります。口腔衛生管理加算(Ⅱ)は、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位の算定要件に含まれています。

まとめ
  • 老健の口腔衛生管理加算は(Ⅰ)90単位・(Ⅱ)110単位(1月につき)
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 差はLIFEへの提出と活用の有無
  • (Ⅱ)はリハマネ計画書情報加算(Ⅰ)53単位の前提要件
  • 口腔で20単位、リハで20単位、あわせて月40単位の差になる
  • 計画は歯科医師等の技術的助言・指導に基づき作成する
  • 歯科衛生士による口腔衛生等の管理は月2回以上
  • 介護職員への具体的な技術的助言・指導が要件
  • 介護職員からの相談への対応も要件
  • 歯科衛生士が直接ケアするだけでは足りない
  • 歯科訪問診療料が算定された月でも算定できる
  • 訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された月は算定できない
  • 緩和ケアの場合は7回以上で算定できない
  • 同一月内の訪問歯科衛生指導の実施の有無を確認することが要件
  • サービスについて説明し同意を得たうえで行う
  • 記録は歯科衛生士が別紙様式3を参考に作成し施設へ提出する
  • 施設は記録を保管し、必要に応じ写しを入所者へ提供する
  • 医療が必要な場合は歯科医師と施設へ情報提供する
  • 基準は老健・特養・地域密着型特養・介護医療院で共通
  • ただし前提とする上位の加算は施設ごとに異なる
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。医療保険の訪問歯科衛生指導料の算定回数の確認方法、歯科医療機関との連携の取り方については、指定権者および連携先の歯科医療機関にご確認ください。診療報酬側の算定要件は歯科診療報酬点数表によります。記録の様式(別紙様式3)は「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」等の別途通知によります。LIFEへの提出情報・提出頻度は「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」によります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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