老健の認知症ケア加算と若年性認知症入所者受入加算を解説

老健には認知症の入所者に関する加算が複数ありますが、このうち認知症ケア加算76単位と若年性認知症入所者受入加算120単位は、性格がまったく違います。
認知症ケア加算は「認知症専門棟」という設備をつくらなければ算定できません。入所定員40人を標準とし、定員の1割以上の個室、1人当たり2㎡以上のデイルーム、30㎡以上の家族指導用の施設——ハード面の要件が並びます。しかもユニット型では算定できません。
一方、若年性認知症入所者受入加算は「受け入れた入所者ごとに個別の担当者を定める」だけ。設備も人員配置も不要です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 認知症ケア加算76単位と若年性認知症入所者受入加算120単位の違い
- 認知症ケア加算に必要な認知症専門棟の設備基準
- 入所定員40人・個室1割以上・デイルーム2㎡以上という数値
- 家族への介護方法の指導用に30㎡以上の施設が要ること
- 単位ごとの入所者数10人・固定した職員配置
- 日中10対1・夜間20対1という職員配置の標準
- ユニット型では認知症ケア加算を算定できないこと
- 対象者は自立度Ⅲ以上かつ医師が適当と認めた者であること
- 若年性認知症入所者受入加算の唯一の要件
- 認知症行動・心理症状緊急対応加算との排他関係
2つの加算を並べて整理する
| 項目 | 認知症ケア加算 | 若年性認知症入所者受入加算 |
|---|---|---|
| 単位数 | 76単位/日 | 120単位/日 |
| 要件 | 認知症専門棟の設備・人員 | 個別の担当者を定めること |
| ハード要件 | あり(面積・定員・個室等) | なし |
| ユニット型 | 算定できない | 制限なし |
| 排他 | — | 認知症行動・心理症状緊急対応加算 |
単位数は若年性認知症入所者受入加算のほうが高い(120単位)のに、要件は認知症ケア加算のほうが圧倒的に重い——設備投資を伴います。
ただし認知症ケア加算は認知症専門棟の入所者全員に毎日算定できるのに対し、若年性認知症入所者受入加算は該当する入所者のみ。該当者の数がまったく違います。
認知症ケア加算76単位——認知症専門棟が前提
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った介護老人保健施設において、日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の入所者に対して介護保健施設サービスを行った場合は、1日につき76単位を所定単位数に加算する。
対象者——自立度Ⅲ以上+医師の判断
「日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の入所者」とあるのは日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当し、認知症専門棟において認知症に対応した処遇を受けることが適当であると医師が認めた者をいうものであること。
- 日常生活自立度がランクⅢ・Ⅳ・Mに該当すること
- かつ認知症専門棟での処遇が適当であると医師が認めたこと
自立度だけでは足りません。医師が「専門棟での処遇が適当」と認めた記録が必要です。
認知症専門棟の設備基準
イ (対象となる認知症の入所者)と他の入所者とを区別していること。
ロ 他の入所者と区別して(中略)サービスを行うのに適当な次に掲げる基準に適合する施設及び設備を有していること。
(1) 専ら(対象者)を入所させるための施設であって、原則として、同一の建物又は階において、他の(中略)入所者を入所させるものでないもの。
(2) (1)の施設の入所定員は、40人を標準とすること。
(3) (1)の施設に入所定員の1割以上の数の個室を設けていること。
(4) (1)の施設に療養室以外の生活の場として入所定員1人当たりの面積が2平方メートル以上のデイルームを設けていること。
(5) (1)の施設に(対象者)の家族に対する介護方法に関する知識及び技術の提供のために必要な施設であって、30平方メートル以上の面積を有するものを設けていること。
ハ 単位ごとの入所者の数について、10人を標準とすること。
ニ 単位ごとに固定した介護職員又は看護職員を配置すること。
| 要件 | 基準 |
|---|---|
| 入所定員 | 40人を標準 |
| 個室 | 入所定員の1割以上 |
| デイルーム | 入所定員1人当たり2㎡以上 |
| 家族指導用の施設 | 30㎡以上 |
| 1単位の入所者数 | 10人を標準 |
| 職員配置 | 単位ごとに固定した介護職員または看護職員 |
ちびウルフ家族のための30㎡の部屋、というのは何に使うんですか?
リハウルフ条文には「家族に対する介護方法に関する知識及び技術の提供のために必要な施設」と書いてある。つまり家族に介護の仕方を教えるための場所だね。
老健は在宅復帰が目的の施設だから、認知症の方を家で見るための技術を家族に伝える必要がある。「話をする部屋」ではなく「実際にやってみせる部屋」として30㎡という広さが求められているんだと理解している。
それにしても、定員40人・個室4室以上・デイルーム80㎡以上・家族指導用30㎡以上。後から作るのはかなり大変な要件だよ。既存の建物で認知症ケア加算を新たに取りにいくのは、現実的にはハードルが高い。
職員配置の標準
認知症専門棟の従業者の勤務体制を定めるに当たっては、継続性を重視したサービスの提供に配慮しなければならない。これは、従業者が一人一人の入居者について個性、心身の状況、生活歴などを具体的に把握した上で、その日常生活上の活動を適切に援助するためにはいわゆる「馴染みの関係」が求められる。以上のことから認知症専門棟における介護職員等の配置については、次の配置を行うことを標準とする。
イ 日中については利用者10人に対し常時1人以上の介護職員又は看護職員を配置すること。
ロ 夜間及び深夜については、20人に1人以上の看護職員又は介護職員を夜間及び深夜の勤務に従事する職員として配置すること。
| 時間帯 | 配置の標準 |
|---|---|
| 日中 | 入所者10人に対し常時1人以上 |
| 夜間・深夜 | 20人に1人以上 |
通知が「馴染みの関係」という言葉を使い、単位ごとに固定した職員を配置することを求めているのが特徴的です。人を入れ替えないこと自体が要件になっています。
ユニット型では算定できない
ユニット型介護保健施設サービス費を算定している場合は、認知症ケア加算は算定しない。
ユニット型はもともと少人数のユニットで固定した職員が関わる形です。認知症専門棟が求める「馴染みの関係」は、ユニットケアの中で既に実現されているという整理でしょう。
したがってユニット型介護保健施設サービス費を算定している場合、この加算は算定できません。従来型の施設に限られる加算です。
若年性認知症入所者受入加算120単位
別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った介護老人保健施設において、若年性認知症入所者に対して介護保健施設サービスを行った場合は、若年性認知症入所者受入加算として、1日につき120単位を所定単位数に加算する。ただし、ネを算定している場合は、算定しない。
要件は「個別の担当者を定めること」だけ
受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別に担当者を定め、その者を中心に、当該利用者の特性やニーズに応じたサービス提供を行うこと。
- 受け入れた入所者ごとに個別の担当者を定める
- その担当者を中心に、特性やニーズに応じたサービス提供を行う
- 担当者の資格要件は示されていない
- 人員の上乗せ配置も不要
設備投資も人員増も不要で、担当者を決めて届け出るだけ。1日120単位ですから、該当者が1人いれば月3,600単位(1単位10円換算で約3万6,000円)になります。
老健で若年性認知症の方を受け入れる機会は多くありませんが、該当者がいるのに算定していないという取りこぼしは避けたいところです。
認知症行動・心理症状緊急対応加算とは併算定できない
| 加算 | 単位数 | 併算定 |
|---|---|---|
| 若年性認知症入所者受入加算 | 120単位/日 | 不可 |
| 認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 200単位/日 |
告示は「ただし、ネを算定している場合は、算定しない」としています。認知症行動・心理症状緊急対応加算(200単位・7日限度)を算定している期間は、若年性認知症入所者受入加算を算定できません。
単位数は緊急対応加算のほうが高いため、その7日間は緊急対応加算を算定し、期間が終わってから若年性認知症入所者受入加算に戻る、という形になります。
老健の認知症関連加算を整理する
| 加算 | 単位数 | 性格 |
|---|---|---|
| 認知症ケア加算 | 76単位/日 | 認知症専門棟という設備を評価 |
| 若年性認知症入所者受入加算 | 120単位/日 | 個別の担当者を評価 |
| 認知症専門ケア加算 | — | 研修修了者の配置を評価 |
| 認知症チームケア推進加算 | — | BPSDへのチーム対応を評価 |
| 認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 200単位/日 | 緊急入所を評価 |
| 認知症短期集中リハビリテーション実施加算 | 240単位/120単位 | リハビリを評価 |
老健には認知症に関わる加算が6つあります。評価している対象がそれぞれ違うため、要件を満たすものは重ねて算定できるのが基本です(若年性認知症入所者受入加算と緊急対応加算の関係のような例外を除く)。
算定にあたっての実務ステップ
- 【認知症ケア加算】自施設が従来型か、ユニット型介護保健施設サービス費を算定していないかを確認する
- 【認知症ケア加算】認知症専門棟の設備要件(定員40人標準・個室1割以上・デイルーム2㎡以上・家族指導用30㎡以上)を確認する
- 【認知症ケア加算】対象者と他の入所者を区別し、同一建物・同一階に他の入所者を入所させていないことを確認する
- 【認知症ケア加算】単位ごとの入所者数を10人を標準とし、固定した職員を配置する
- 【認知症ケア加算】日中10対1、夜間・深夜20対1の配置を標準とする
- 【認知症ケア加算】入所者の日常生活自立度を確認し、ランクⅢ以上かつ専門棟での処遇が適当と医師が認めた記録を残す
- 【若年性認知症】被保険者証と特定疾病から、若年性認知症入所者を把握する
- 【若年性認知症】入所者ごとに個別の担当者を決める
- 【若年性認知症】担当者を中心に、特性やニーズに応じたサービス提供の記録を残す
- 【若年性認知症】認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定している期間は算定しない
- いずれも都道府県知事へ届け出る
7つ目から9つ目は今日から着手できる内容です。設備要件のある認知症ケア加算と違い、若年性認知症入所者受入加算は体制づくりだけで算定できます。
よくある質問
2つの加算の単位数は?
認知症ケア加算は1日76単位、若年性認知症入所者受入加算は1日120単位です。
認知症ケア加算はどんな施設で算定できますか?
認知症専門棟の施設基準を満たす介護老人保健施設です。設備・面積・職員配置の要件があります。
認知症専門棟の入所定員は?
40人を標準とすることとされています。
個室はいくつ必要ですか?
入所定員の1割以上の数の個室を設けることとされています。
デイルームの広さは?
療養室以外の生活の場として、入所定員1人当たりの面積が2平方メートル以上のデイルームを設けることとされています。
30平方メートルの施設とは何ですか?
認知症の入所者の家族に対する介護方法に関する知識および技術の提供のために必要な施設です。
職員配置の標準は?
日中は入所者10人に対し常時1人以上、夜間・深夜は20人に1人以上の介護職員または看護職員です。単位ごとに固定した職員を配置します。
ユニット型でも算定できますか?
できません。ユニット型介護保健施設サービス費を算定している場合は認知症ケア加算は算定しないとされています。
認知症ケア加算の対象者は?
日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当し、認知症専門棟において認知症に対応した処遇を受けることが適当であると医師が認めた者です。
若年性認知症入所者受入加算の要件は?
受け入れた入所者ごとに個別の担当者を定め、その者を中心に特性やニーズに応じたサービス提供を行うことです。
担当者に資格は必要ですか?
告示・通知に資格の定めはありません。人員の上乗せ配置も求められていません。
認知症行動・心理症状緊急対応加算と併算定できますか?
できません。告示は「ネ(認知症行動・心理症状緊急対応加算)を算定している場合は、算定しない」としています。
- 老健の認知症ケア加算は1日76単位
- 若年性認知症入所者受入加算は1日120単位
- 単位数は若年性認知症のほうが高いが、要件は認知症ケア加算のほうが重い
- 認知症ケア加算は認知症専門棟の設備基準を満たすことが前提
- 入所定員は40人を標準
- 入所定員の1割以上の個室が必要
- 入所定員1人当たり2㎡以上のデイルームが必要
- 家族への介護方法の指導用に30㎡以上の施設が必要
- 単位ごとの入所者数は10人を標準
- 単位ごとに固定した介護職員または看護職員を配置する
- 日中は10人に1人以上、夜間・深夜は20人に1人以上が標準
- 通知は「馴染みの関係」を重視している
- ユニット型介護保健施設サービス費を算定している場合は算定できない
- 対象者は自立度ランクⅢ以上かつ医師が専門棟での処遇が適当と認めた者
- 若年性認知症入所者受入加算の要件は個別の担当者を定めることだけ
- 担当者の資格要件や人員の上乗せ配置はない
- 認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定している場合は算定しない
- 老健には認知症関連の加算が6つあり、評価する対象がそれぞれ違う
- 要件を満たすものは基本的に重ねて算定できる
- 若年性認知症入所者受入加算は体制づくりだけで着手できる
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) 介護保健施設サービス イ及びロの注12・注13(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号) 第17号・第59号
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号) 介護保健施設サービス(16)認知症ケア加算について、(17)若年性認知症入所者受入加算について、短期入所生活介護費(18)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。認知症専門棟の設備基準における「標準」の解釈、既存施設で要件を満たすかの判断、単位の区分の考え方については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。設備要件を伴う加算の算定にあたっては、届出前に必ず指定権者へ図面等を示してご確認ください。若年性認知症入所者の範囲は介護保険法施行令第2条第6号に規定する初老期における認知症によるものです。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




