老健の退所時栄養情報連携加算は、1月につき1回、70単位です。令和6年度改定で新設されました。管理栄養士が栄養管理の情報を提供すれば算定できる比較的とりやすい加算ですが、栄養マネジメント強化加算を算定している月は算定できません。ここを見落とすと返戻になります。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・対象者・提供先・情報の中身・併算定のルールを整理しました。

この記事でわかること

  • 老健の退所時栄養情報連携加算は1月に1回・70単位という単位数
  • 対象になるのは特別食が必要な人と、低栄養状態と医師が判断した人
  • 退所先によって情報の提供先が変わること
  • 提供する栄養管理の情報5項目
  • 療養食加算の9種類より特別食の範囲が広いこと
  • 高血圧の減塩食と嚥下困難者の流動食が対象に含まれること
  • 栄養マネジメント強化加算との併算定ができないこと
  • 栄養管理の基準を満たさない場合の減算中は算定できないこと

老健の退所時栄養情報連携加算とは?

退所時栄養情報連携加算は、入所者が退所するときに、施設の管理栄養士が退所先へ栄養管理に関する情報を渡したことを評価する加算です。老企第40号 5の(23)①は、その目的を施設と医療機関等の有機的連携の強化により、継続的な栄養管理の確保等を図ることと説明しています。

老健は在宅復帰を前提とした施設です。退所後に自宅で食事を作るのは家族であり、支えるのは居宅のケアマネジャーと主治医になります。施設内でどれだけ丁寧な栄養管理をしていても、その内容が退所とともに途切れてしまえば、体重が落ちて再入所という流れになりかねません。この加算は、その断絶を埋めるために令和6年度改定で新設されました。

ちびウルフちびウルフ

退所するときに情報提供書を出せば、それだけで算定できるということですか。

リハウルフリハウルフ

対象者の条件と、誰に出すかが決まっています。それと栄養マネジメント強化加算を取っている施設は、そもそもこの加算を算定できません。老健は強化加算を取っているところが多いので、まずそこの確認からです。

退所時栄養情報連携加算の単位数

告示第21号の介護保健施設サービスのニに定められています。

ニ 退所時栄養情報連携加算 70単位
注 別に厚生労働大臣が定める特別食を必要とする入所者又は低栄養状態にあると医師が判断した入所者が、介護老人保健施設から退所する際に、その居宅に退所する場合は当該入所者の主治の医師の属する病院又は診療所及び介護支援専門員に対して、病院、診療所又は他の介護保険施設(以下この注において「医療機関等」という。)に入院又は入所する場合は当該医療機関等に対して、当該入所者の同意を得て、管理栄養士が当該入所者の栄養管理に関する情報を提供したときは、1月につき1回を限度として所定単位数を加算する。ただし、イ及びロの注7又は栄養マネジメント強化加算を算定している場合は、算定しない。

区分単位数算定頻度
退所時栄養情報連携加算70単位1月につき1回

老企第40号 5の(23)②は「当該入所者が退所した日の属する月において、1月に1回を限度として算定できる」としています。退所した月に1回、が算定のタイミングです。

退所時栄養情報連携加算の算定要件

対象になる入所者

  • 別に厚生労働大臣が定める特別食を必要とする入所者
  • 低栄養状態にあると医師が判断した入所者

どちらか一方に当てはまれば対象です。低栄養状態のルートは医師の判断が必要で、管理栄養士の評価だけでは足りません。

情報の提供先

退所先によって、誰に渡すかが変わります。

退所先情報の提供先
居宅(自宅)主治の医師の属する病院または診療所 および 介護支援専門員
病院・診療所への入院当該医療機関
他の介護保険施設への入所当該施設

居宅退所は「医療機関と介護支援専門員の両方」

告示は居宅退所の場合について「主治の医師の属する病院又は診療所及び介護支援専門員に対して」と書いています。「または」ではありません。ケアマネジャーにだけ渡した、主治医にだけ渡した、では要件を満たさない読み方になります。老健は在宅復帰が本来の姿ですから、実務上はこのパターンが最も多くなります。

提供する情報の中身

老企第40号 5の(23)③は、栄養管理に関する情報を次のとおり定義しています。

  • 提供栄養量
  • 必要栄養量
  • 食事形態(嚥下食コードを含む)
  • 禁止食品
  • 栄養管理に係る経過等

様式については、老企第40号 5の(23)④が「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」を参照するよう指示しています。

本人の同意が必要

告示の注に「当該入所者の同意を得て」とあります。情報提供の前に同意を取り、その記録を残してください。

退所時栄養情報連携加算の特別食は療養食加算より広い

ここが実務でいちばん混乱するところです。「特別食」と「療養食」は別の概念で、範囲が違います。

告示第94号の第65号の2が第12号を引いており、老健の特別食は次のとおりです。

疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づき提供された適切な栄養量及び内容を有する腎臓病食、肝臓病食、糖尿病食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓病食、脂質異常症食、痛風食、嚥下困難者のための流動食、経管栄養のための濃厚流動食及び特別な場合の検査食(単なる流動食及び軟食を除く。)

療養食加算の9種類と比べると、嚥下困難者のための流動食と、経管栄養のための濃厚流動食が加わっています。さらに老企第40号 5の(23)⑤が、これに加えて次のものも対象になるとしています。

追加で対象になるもの条件
心臓疾患等に対する減塩食
十二指腸潰瘍に対する潰瘍食
侵襲の大きな消化管手術後の潰瘍食
クローン病・潰瘍性大腸炎等の低残渣食腸管の機能が低下している場合
高度肥満症の治療食肥満度+40%以上またはBMI30以上
高血圧の入所者に対する減塩食食塩相当量の総量6.0g未満
嚥下困難者のための流動食そのために摂食不良となった者も含む

高血圧の減塩食は療養食加算では対象外、この加算では対象

老企第40号 5の(23)⑤は、はっきりこう書いています。「高血圧の入所者に対する減塩食(食塩相当量の総量が6.0グラム未満のものに限る。)及び嚥下困難者(そのために摂食不良となった者も含む。)のための流動食は、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス、介護医療院サービス及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の療養食加算の場合と異なり、退所時栄養情報連携加算の対象となる特別食に含まれる」。通知がわざわざ書き分けているということは、混同する施設が多いということです。

また高度肥満症の基準も違います。療養食加算では肥満度+70%以上またはBMI35以上でしたが、こちらは+40%以上またはBMI30以上と緩くなっています。同じ言葉でも加算ごとに数字が違うので、コピーして使わないでください。

退所時栄養情報連携加算の注意点

栄養マネジメント強化加算とは併算定できない

告示の注の但し書きに「栄養マネジメント強化加算を算定している場合は、算定しない」とあります。栄養マネジメント強化加算(1日11単位)は管理栄養士を50対1で配置する体制加算で、老健では算定している施設が多い加算です。

状況退所時栄養情報連携加算
栄養マネジメント強化加算を算定している算定できない
栄養管理の基準を満たさない減算(注7)を受けている算定できない
上記のいずれにも当たらない要件を満たせば算定できる

但し書きの「イ及びロの注7」とは、栄養管理について厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合の1日14単位の減算です。栄養管理の体制が崩れている期間は、情報提供をしても加算にならないという構造になっています。

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栄養マネジメント強化加算を外してこちらを取る、という選び方はありますか。

リハウルフリハウルフ

単位数を比べると答えは出ます。強化加算は1日11単位で入所者全員、こちらは退所した人だけ1回70単位。100床なら強化加算のほうが桁違いに大きいので、実質的に選択の余地はありません。

算定できなくても情報提供はする

栄養マネジメント強化加算を算定している施設では、この加算は算定できません。ただし加算にならないことと、情報提供が不要であることは別です。退所後の栄養管理が途切れる問題は、加算の有無とは関係なく起こります。特に嚥下食コードは、家族が食事形態を判断するときの共通言語になります。

退所時栄養情報連携加算のQ&A

1人の入所者に複数回算定できますか?

1月につき1回が限度です。退所した日の属する月に1回算定します。

情報提供は管理栄養士でなければいけませんか?

告示が「管理栄養士が当該入所者の栄養管理に関する情報を提供したときは」としています。栄養士では要件を満たしません。

居宅に退所する場合、ケアマネジャーだけに渡せば足りますか?

告示は主治の医師の属する病院・診療所「及び」介護支援専門員としています。両方への提供が前提の書き方です。

低栄養状態の判断基準は決まっていますか?

告示・通知とも具体的な数値基準を置いていません。「低栄養状態にあると医師が判断した入所者」とされているため、医師の判断とその記録が根拠になります。

嚥下調整食は特別食に含まれますか?

「嚥下困難者のための流動食」として含まれます。療養食加算では対象外だったものが、この加算では対象になります。

栄養マネジメント強化加算を月の途中で取り下げた場合は算定できますか?

告示は「算定している場合は、算定しない」とするのみで、月内の期間按分は規定していません。具体的な扱いは指定権者に確認してください。

特別食の対象かどうかは何で判断しますか?

「医師の発行する食事箋に基づき提供された」ものが前提です。食事箋の記載と、提供した食事の内容で判断します。

再入所時栄養連携加算と同時に算定できますか?

両者は場面が異なります(退所時と再入所時)。同一月に両方の場面が生じることは通常想定されませんが、告示上、相互の併算定を排除する規定は置かれていません。

転換老健でも算定できますか?

算定できます。基本型・在宅強化型に限る規定は付いていません。

まとめ

  • 老健の退所時栄養情報連携加算は1月につき1回、70単位
  • 令和6年度改定で新設された
  • 対象は特別食を必要とする入所者、または低栄養状態と医師が判断した入所者
  • 低栄養状態のルートは医師の判断が必要
  • 居宅に退所する場合は主治医の病院・診療所と介護支援専門員の両方に提供する
  • 医療機関・他の介護保険施設に移る場合はその施設に提供する
  • 提供する情報は提供栄養量・必要栄養量・食事形態(嚥下食コード含む)・禁止食品・栄養管理に係る経過等
  • 情報提供は管理栄養士が行う
  • 本人の同意が必要
  • 特別食の範囲は療養食加算の9種類より広く、嚥下困難者のための流動食と経管栄養のための濃厚流動食を含む
  • 高血圧の減塩食(食塩相当量6.0g未満)も対象に含まれる(療養食加算では対象外)
  • 高度肥満症の基準は+40%以上またはBMI30以上(療養食加算は+70%以上またはBMI35以上)
  • 栄養マネジメント強化加算を算定している場合は算定できない
  • 栄養管理の基準を満たさない減算(1日14単位)を受けている場合も算定できない

参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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