介護保険の手続きを進めると、必ず出てくるのが「要支援」と「要介護」という2つの言葉です。「うちの親は要支援って言われたけど、要介護とどう違うの?」「受けられるサービスは変わるの?」——初めて介護に向き合うご家族にとって、ここは最初につまずきやすいポイントです。

この記事では、要支援と要介護の違いを「状態」「受けられるサービス」「使えるお金の上限」「窓口」という4つの角度から、介護の専門職がやさしく整理します。全部で8つある区分の全体像もつかめるので、ご家族の認定結果の意味がスッと理解できるようになります。

この記事でわかること
  • 要支援と要介護の「状態」としての違い
  • それぞれで受けられるサービス(予防給付と介護給付)の違い
  • 使えるお金の上限(区分支給限度基準額)の差
  • 相談窓口・ケアプランを作る人の違い

要支援と要介護の違いを一言で

結論からいうと、両者の違いは「今は基本的に自分で生活できるが支えが必要な状態(要支援)」か「日常生活に継続的な介護が必要な状態(要介護)」かです。

要支援は、家事や身の回りの一部にサポートは要るものの、大きくは自立して暮らせる状態を指します。ねらいは「これ以上悪くならないよう予防する」こと。一方の要介護は、食事・入浴・排せつなど日常生活の動作に継続的な介助が必要な状態で、「今ある生活を支える」ことが目的になります。

ちびウルフちびウルフ

「支援」と「介護」って言葉が似てるけど、そんなに意味が違うの?

リハウルフリハウルフ

大きく違うんだ。要支援は「悪化を防ぐための予防」が中心、要介護は「必要な介護を届ける」のが中心。だから使えるサービスやお金の上限、相談する窓口まで変わってくるんだよ。

介護保険の区分は全部で8段階

介護保険の認定区分は、軽いほうから要支援1・要支援2、要介護1〜要介護5の合計7区分あり、これに「自立(非該当)」を加えて考えます。数字が大きいほど、必要な介護の量が多い状態です。

この区分は、心身の状態を調べる認定調査と主治医意見書をもとに、「要介護認定等基準時間」という物差しで判定されます。これは実際の介護時間そのものではなく、介護の手間を推計するための目安の時間です。

区分大まかな状態の目安給付の種類
要支援1ほぼ自立。複雑な生活動作の一部に支えが必要予防給付
要支援2要支援1より支えが必要な場面が増える予防給付
要介護1立ち上がり・歩行が不安定。生活の一部に介護が必要介護給付
要介護2食事・排せつなどにも部分的な介助が必要介護給付
要介護3日常生活全般に介助が必要。認知面の低下も介護給付
要介護4介助なしでは生活が難しい介護給付
要介護5ほぼ寝たきりなど、全面的な介護が必要介護給付

状態の違い:予防か、介護か

要支援と要介護は、「自立して生活できるかどうか」が分かれ目です。

要支援の方は、食事やトイレはおおむね自分でできるものの、掃除・買い物・薬の管理といった「手のかかる生活動作」に見守りや手助けが必要なイメージです。これに対して要介護の方は、立ち上がりや歩行が不安定になり、入浴や排せつにも介助が要るなど、生活そのものに継続的な支えが必要になります。

ポイント認知症の症状も判定に影響します。日付を忘れる程度の軽い物忘れなら要支援と判定されることがありますが、生活に支障が出るほどの認知機能の低下や見守りが必要な状態だと、要介護と判定されやすくなります。

受けられるサービスの違い

要支援の方が受けるのは「介護予防サービス」、要介護の方が受けるのは「介護サービス」です。制度上は、要支援に対する給付を「予防給付」、要介護に対する給付を「介護給付」と呼びます。

介護予防サービスは、その名のとおり状態の悪化を防ぎ、要介護への進行を遅らせることが目的です。訪問型・通所型のサービスや、住宅改修、福祉用具のレンタルなどが利用できます。一方、要介護になると、特別養護老人ホームなどの施設サービスや、より手厚い在宅サービスまで幅広く利用できるようになります。

注意要支援の方は、原則として特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入所することはできません。また、掃除・買い物などの生活援助サービスの一部は、市区町村が運営する「総合事業」として提供される点も、要介護と異なります。
ちびウルフちびウルフ

要支援だと、デイサービスや訪問のサービスは使えないの?

リハウルフリハウルフ

使えるよ。ただし「介護予防」向けのメニューとして提供されるんだ。回数や内容が要介護向けより控えめになることが多いけれど、悪化を防ぐための大事なサービスなんだよ。

使えるお金の上限(区分支給限度基準額)の違い

介護保険では、1か月に保険を使ってサービスを利用できる上限が区分ごとに決まっています。これを「区分支給限度基準額」といい、単位(1単位=おおむね10円が目安)で表されます。数字が大きい区分ほど、多くのサービスを保険で使えます。

区分区分支給限度基準額(1か月)
要支援15,032単位(約5万円)
要支援210,531単位(約10.5万円)
要介護116,765単位(約16.8万円)
要介護219,705単位(約19.7万円)
要介護327,048単位(約27万円)
要介護430,938単位(約30.9万円)
要介護536,217単位(約36.2万円)

このように、要支援と要介護では上限に大きな差があります。上限を超えた分は全額自己負担になるため、限度額の範囲でサービスを組み立てることが、ケアプランづくりの基本になります。実際の自己負担は、原則としてこのうち1〜3割(所得に応じて)です。

相談する窓口・ケアプランを作る人の違い

意外と知られていませんが、要支援と要介護では相談窓口とケアプランを作る担当者が異なります

要支援の方のケアプラン(介護予防サービス計画)は、原則として地域包括支援センターが担当します。地域の高齢者の総合相談窓口で、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーが在籍しています。一方、要介護の方のケアプランは、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)が作成します。どこに相談すればよいか迷ったら、まずお住まいの市区町村の窓口か地域包括支援センターに連絡すれば案内してもらえます。

認定を受けるまでの流れ

要支援・要介護のどちらであっても、サービスを使うにはまず要介護認定を受ける必要があります。流れを知っておくと、初めてでも落ち着いて進められます。

  1. お住まいの市区町村の窓口、または地域包括支援センターで申請する(本人・家族のほか、ケアマネジャー等による代行申請も可能)。
  2. 認定調査員が自宅などを訪問し、心身の状態を聞き取り・確認する。
  3. 市区町村が主治医に「主治医意見書」の作成を依頼する。
  4. コンピュータによる一次判定と、専門家による介護認定審査会の二次判定を経て区分が決まる。
  5. 認定結果(要支援1〜要介護5、または非該当)が通知され、ケアプランを作ってサービス利用を開始する。

申請から結果通知までは、原則として30日程度が目安です。認定には有効期間があり、期間満了前に更新の手続きが必要になります。状態が変わったときは、有効期間の途中でも区分変更を申請できます。

専門職からのアドバイス(在宅の現場から)

現場で私たちがご家族によくお伝えしているのは、「要支援=軽いから安心、と油断しないこと」です。要支援は「予防が効く大切な時期」でもあります。この段階で運動やリハビリ、生活の工夫にしっかり取り組むことで、要介護への進行を遅らせられる方は少なくありません。

また、状態は一定ではありません。体調やケガ、認知症の進行によって、要支援から要介護へ、あるいは要介護度が変わることもあります。「最近できないことが増えた」と感じたら、区分変更の申請ができます。判定に納得がいかないときも、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに遠慮なく相談してください。制度を上手に使うほど、ご本人もご家族も無理なく暮らせるようになります。

要支援と要介護、どちらが軽い状態ですか?
要支援のほうが軽い状態です。軽いほうから要支援1・2、続いて要介護1〜5の順で介護の必要度が高くなります。
要支援から要介護に変わることはありますか?
あります。体調の変化などで状態が重くなった場合は「区分変更申請」を行い、改めて認定を受けることができます。逆に状態が改善して区分が軽くなることもあります。
認定結果に納得できないときはどうすればいいですか?
まず市区町村やケアマネジャーに相談しましょう。それでも納得できない場合は「介護保険審査会」への不服申し立てや、区分変更申請という方法があります。
要支援でも福祉用具はレンタルできますか?
できます。ただし要支援の方は対象となる福祉用具が一部に限られます。手すりや歩行器など予防に役立つものが中心で、ケアマネジャーと相談して選びます。
まとめ
  • 要支援は「予防が中心の状態」、要介護は「継続的な介護が必要な状態」。
  • 区分は要支援1・2、要介護1〜5の7区分(+自立)で構成される。
  • 要支援は予防給付(介護予防サービス)、要介護は介護給付(介護サービス)を利用できる。
  • 使えるお金の上限は区分で大きく異なり、要支援1で5,032単位、要介護5で36,217単位。
  • 要支援の相談は地域包括支援センター、要介護は居宅介護支援のケアマネジャーが窓口。

出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」、区分支給限度基準額(介護給付費分科会資料)。数値は目安であり、詳細はお住まいの市区町村でご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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