介護医療院の認知症チームケア推進加算とは?

介護医療院の認知症チームケア推進加算は、(Ⅰ)150単位/月、(Ⅱ)120単位/月です。令和6年度改定で新設されました。
評価しているのはBPSD(認知症の行動・心理症状)が出てからの対応ではなく、出さないための平時の取り組みです。対象者ごとにBPSDを計画的に評価し、その評価に基づく値を測定することが要件に書き込まれています。感覚ではなく尺度でとらえることを求める加算です。
ただし介護医療院で導入を検討するときは、認知症専門ケア加算(3単位・4単位/日)と併算定できない点が最大の論点になります。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護医療院サービスのナ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位という単位数
- 対象者が「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」であること
- 認知症専門ケア加算とは対象者の定義が違うこと
- BPSDの評価と「値の測定」という要件の意味
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違いが研修の種類だけであること
- 介護医療院では専門ケア加算のほうが有利になりやすい理由
ちびウルフ新しい加算だから、こちらに切り替えたほうがいいですか?
リハウルフ金額だけで見れば逆です。チームケア推進加算は施設として月150単位。専門ケア加算は入所者ごとに1日4単位です。100床なら専門ケア加算(Ⅱ)で月1万2千単位。桁が2つ違います。それでもこちらを選ぶ理由があるとすれば、専門ケア加算の割合要件や研修修了者数を満たせない場合です。
介護医療院の認知症チームケア推進加算とは?
介護医療院の認知症チームケア推進加算は、BPSDの予防と早期対応に向けて、複数の職員でチームを組み、計画的に評価しながらケアを行うことを評価する加算です。
BPSDは、本人の不快や不安が行動として表れたものです。痛い、眠れない、居場所がない、便が出ていない。原因を探らずに「落ち着かない人」として扱えば、対応は身体拘束や向精神薬に流れていきます。
この加算が求めているのは、その手前で、チームとして原因を分析し、記録し、評価を数値で追いかける仕組みです。カンファレンスの開催、計画の作成、定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直しまでが一続きの要件になっています。
認知症チームケア推進加算の単位数
| 区分 | 単位数 | 違い |
|---|---|---|
| 認知症チームケア推進加算(Ⅰ) | 150単位/月 | 指導に係る専門的な研修の修了者等を配置 |
| 認知症チームケア推進加算(Ⅱ) | 120単位/月 | 専門的な研修の修了者を配置 |
注のただし書きにより、(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できず、認知症専門ケア加算を算定している場合も算定できません。
認知症チームケア推進加算の算定要件
(Ⅰ)の4要件
- 施設における入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者(対象者)の占める割合が2分の1以上であること
- BPSDの予防等に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者、又は認知症介護に係る専門的な研修+BPSDの予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了している者を1名以上配置し、かつ複数人の介護職員から成るチームを組んでいること
- 対象者に対し、個別にBPSDの評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、予防等に資するチームケアを実施していること
- BPSDの予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、BPSDの有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を行っていること
(Ⅱ)の要件
- (Ⅰ)の(1)(割合要件)、(3)(評価と測定)、(4)(カンファレンス等)に適合すること
- BPSDの予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、複数人の介護職員から成るチームを組んでいること
違いは研修のレベルだけで、ケアの中身の要件は(Ⅰ)と(Ⅱ)で同じです。差は30単位/月です。
認知症チームケア推進加算の注意点
2つの加算は、割合要件はどちらも「2分の1以上」ですが、対象者の定義が異なります。
- 認知症専門ケア加算:日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者
- 認知症チームケア推進加算:周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者
専門ケア加算の判定表をそのまま流用すると、判定を誤ります。それぞれの定義で数え直してください。
「評価に基づく値を測定」が核心
この加算がほかと違うのは、BPSDを数値でとらえることを求めている点です。「最近落ち着かない」ではなく、尺度でスコアを取り、その推移でケアの効果を確認します。
使用する尺度は告示に指定がありません。どの尺度を用いるか、どの頻度で測るかを決めて、カンファレンス記録に数値と推移が残る形にしてください。運用の妥当性は都道府県に確認しておくと安全です。
介護医療院では専門ケア加算との比較が必須
| 入所者数 | 認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位/日 | チームケア推進加算(Ⅰ) |
|---|---|---|
| 60人 | 約7,200単位/月 | 150単位/月 |
| 100人 | 約12,000単位/月 | 150単位/月 |
※入所者数×単位数×30日で計算した概算です。介護医療院の規模では、金額面で専門ケア加算が圧倒的に有利になります。
特別介護医療院サービス費との関係
注16が列挙する「算定しない加算」の範囲に、認知症チームケア推進加算(ナ)は含まれていません。ただし請求上の取扱いは都道府県に確認してください。
認知症チームケア推進加算のQ&A
認知症専門ケア加算と併算定できますか?
できません。専門ケア加算を算定している場合はチームケア推進加算を算定できず、逆も同様です。
どちらが有利ですか?
介護医療院の規模では、入所者ごと・1日ごとに算定できる認知症専門ケア加算のほうが金額面で有利になるのが通常です。
対象者は専門ケア加算と同じ判定でよいですか?
違います。チームケア推進加算は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」で、専門ケア加算とは文言が異なります。
BPSDの評価はどの尺度を使いますか?
告示に指定はありません。個別に計画的に評価し、その評価に基づく値を測定することが要件です。使用尺度は都道府県に確認しておくと安全です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
研修要件だけです。(Ⅰ)は指導に係る専門的な研修の修了者等、(Ⅱ)は専門的な研修の修了者を1名以上配置します。
チームは何人で組めばよいですか?
「複数人の介護職員から成る」とされ、人数の下限は示されていません。
カンファレンスの頻度は決まっていますか?
頻度の数値は示されていません。開催、計画作成、定期的な評価、振り返り、計画の見直しを行うことが要件です。
届出は必要ですか?
必要です。都道府県知事に対して届出を行います。
- 認知症チームケア推進加算は(Ⅰ)150単位/月、(Ⅱ)120単位/月
- 令和6年度改定で新設された
- 対象者は「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」で、割合は2分の1以上
- 認知症専門ケア加算とは対象者の定義が異なる
- BPSDを個別に計画的に評価し、その値を測定することが要件
- カンファレンス・計画作成・定期評価・振り返り・見直しまでが一続きの要件
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは研修のレベルのみ
- 認知症専門ケア加算とは併算定できない
- 介護医療院の規模では、金額面で専門ケア加算が有利になりやすい
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 介護医療院サービスのナ(認知症チームケア推進加算)、ネ(認知症専門ケア加算)、注16(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の5の2(認知症チームケア推進加算の基準)、第3号の5(認知症専門ケア加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)1.(7)⑤ 平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および改定資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および都道府県・保険者の解釈をご確認ください。対象者の判定方法、使用する評価尺度、カンファレンスの頻度については指定権者に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の月額の試算は単位数を単純に乗じた概算です。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




