訪問看護指示書とは、そもそも何のための書類なのか」「どの医師が、どんな様式で、どのくらいの期間で出せるのか」――訪問看護の現場に入ったばかりの看護師やリハビリ職、これから訪問看護ステーションを運営する方が、最初に必ずつまずくのがこの指示書のしくみです。

この記事では、理学療法士として訪問の現場に長く関わってきた立場から、訪問看護指示書の定義・有効期間・算定(訪問看護指示料)・書き方・種類までを、令和6年度の制度をふまえてどこよりもわかりやすく整理しました。読み終えるころには、医師への依頼や請求時の判断に迷わなくなるはずです。

この記事でわかること
  • 訪問看護指示書とは何か、誰が・誰に向けて発行する書類なのか
  • 訪問看護指示書の有効期間(最長6か月)と訪問看護指示料(300点)のしくみ
  • 厚生労働省の様式に沿った書き方・記入項目
  • 特別訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書など指示書の種類と違い
  • 「指示書を書いてくれない」ときの現場での対応のコツ

訪問看護指示書とは?わかりやすく解説

訪問看護指示書とは、利用者の主治医が交付する「訪問看護を実施してよい」という指示の書類です。訪問看護は、看護師やリハビリ職が独自の判断で始められるものではなく、必ず主治医の指示にもとづいて行わなければなりません。その根拠となるのが訪問看護指示書です。

本来は利用者やその家族からの申し込みを受けて、かかりつけの医師(主治医)が診察に基づいて交付するものです。ただし実務では、手続きをスムーズに進めるため、訪問看護ステーション側が医師への依頼を代行するケースが多くなっています。

ちびウルフちびウルフ

利用者さんが何人もの先生にかかっている場合は、誰に指示書を書いてもらえばいいの?

リハウルフリハウルフ

その利用者さんを「主として診療している医師」が指示を出すのが原則だよ。複数の医療機関にかかっていても、訪問看護の指示を出す主治医は1人に決めておこうね。

訪問看護指示書を書ける医師

訪問看護指示書を交付できるのは、次のいずれかに該当する医師に限られます。

  • 保険医療機関の保険医
  • 介護老人保健施設の医師
  • 介護医療院の医師

利用者が公費負担医療を受ける場合は、指定医療機関の医師の指示が必要です。なお、歯科医師は訪問看護指示書を交付できません。訪問看護の指示を出せるのは医師のみである点に注意しましょう。

訪問看護指示書の有効期間は最長6か月

訪問看護は、訪問看護ステーションが主治医から訪問看護指示書の交付を受け、その指示書に記載された指示期間(有効期間)内に、訪問看護計画書にもとづいて看護師等が訪問した場合に給付されます。

この有効期間は最長6か月です。6か月以内であれば、1か月でも3か月でも構いません。医師は利用者の状態に応じて必要な期間の指示を出し、訪問看護師はその指示期間を守って訪問します。

ポイント指示期間が切れると、それ以降の訪問看護は給付の対象外になります。期間満了の前に、余裕をもって次の指示書を依頼しておきましょう。

訪問看護指示料は300点(月1回)

医師が訪問看護指示書を交付すると、医師側は「訪問看護指示料」として300点を算定します。これは令和6年度の診療報酬改定後も変わっていません。算定は1人につき月1回が原則です。

同じ利用者に複数の訪問看護ステーションが入る場合でも、医師が算定できる訪問看護指示料は月1回(300点)のみです。ただし、後述のとおり各ステーションにはそれぞれ原本の交付が必要になります。

項目内容
訪問看護指示料300点(月1回)
特別訪問看護指示加算100点(原則月1回)
在宅患者訪問点滴注射管理指導料100点(週1回を限度)
注意介護老人保健施設・介護医療院の退所時や介護療養型医療施設の退院時に1回限り交付される指示書にかかる訪問看護指示加算(300単位)は、介護保険から支給されます。診療報酬と介護報酬で扱いが分かれる点に注意してください。

複数の訪問看護ステーションに交付する場合

同じ利用者に対して複数の訪問看護ステーションが訪問する場合は、それぞれのステーションが同じ主治医から訪問看護指示書を交付してもらう必要があります。

ポイント・各訪問看護ステーションに訪問看護指示書の原本が必要(コピー不可)
・主治医が算定できる訪問看護指示料は、1人の利用者につき月1回(300点)のみ

訪問看護指示書の様式と書き方

訪問看護指示書は、厚生労働省が定めた様式(雛形)に沿って記入します。最新様式は厚生労働省や各自治体のホームページから入手できます。法律上、様式そのものに厳密な規定はありませんが、トラブルを避けるためにも厚労省の標準様式を使うことが推奨されます。

訪問看護指示書のおもな記入項目

厚労省様式には、おおむね次の項目があります。

区分記入項目
基本情報訪問看護指示期間/利用者氏名/生年月日/住所/電話番号
病状・治療主たる傷病名/現在の病状・治療状態/投与中の薬剤の用法・用量
状態評価日常生活自立度/要介護認定の状態/褥瘡の深さ/装着・使用医療機器等
指示事項療養生活指導上の留意事項/リハビリテーションに関する指示/緊急時の連絡先/特記事項
その他他の訪問看護ステーションへの指示の有無/喀痰吸引等のための訪問介護事業所への指示
ちびウルフちびウルフ

リハビリの訪問でも、指示書って看護とは別に必要なの?

リハウルフリハウルフ

理学療法士などの訪問も「訪問看護」の一部だから、指示書は1通でOKだよ。ただし、リハビリテーションの必要性を指示書に記載してもらう必要があるんだ。

訪問看護指示書の種類

「訪問看護指示書」と一口に言っても、利用者の状態や目的に応じていくつかの種類があります。

種類交付される場面
訪問看護指示書通常の訪問看護を実施するとき(最長6か月)
在宅患者訪問点滴注射指示書週3回以上の点滴注射が必要なとき(7日ごとに指示)
特別訪問看護指示書急性増悪等で頻回の訪問看護が必要なとき(最長14日)
精神科訪問看護指示書精神疾患のある利用者へ精神科訪問看護を実施するとき

在宅患者訪問点滴注射指示書

週に3回以上の点滴注射が必要な場合に交付される指示書です。指示は7日ごとに受ける必要があります。

特別訪問看護指示書

利用者が急性増悪等により、一時的に頻回の訪問看護が必要になった場合に交付されます。特別訪問看護指示書が交付されると、介護保険の対象者であっても医療保険の訪問看護に切り替わります

注意特別訪問看護指示書の指示期間は最長14日で、交付は原則として月1回までです。ただし、気管カニューレを使用している場合や、真皮を超える褥瘡の状態にある場合は、月2回まで交付できます。

精神科訪問看護指示書

精神疾患を有する利用者やその家族等に対して訪問看護を実施し、精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅲ)を算定する際に交付される指示書です。通常の訪問看護指示書とは様式が異なります。

訪問看護指示書を書いてくれないときの対応

医師に依頼しても、なかなか指示書を書いてもらえないことが現場では起こります。そんなときは、頭ごなしに催促するのではなく、医師が書きやすい環境を整えることが大切です。

  1. 何度かていねいに問い合わせをする
  2. 様式を用意して書き方を具体的に伝える
  3. 訪問看護の制度や必要性を地域・医療機関に周知する
  4. 「他の先生にはこのように書いていただいています」と実例を伝える
  5. 希望する指示期間や指示内容を具体的に示して依頼する
ポイント指示書を書いてもらえないからといって、勝手に訪問看護を始めてはいけません。訪問看護はあくまで医師の指示にもとづいて行うものです。指示が出るまでは開始しないのが原則です。

看護師・リハビリ職が押さえておきたい実務の注意点

現場で訪問看護指示書を扱ううえで、トラブルになりやすいポイントを整理しておきます。

注意・指示書は原本で受け取る(コピーは不適切)
・主治医が変わったら、速やかに新しい主治医に指示書を書き直してもらう
・入院をはさんだ場合は、指示内容が変わっている可能性が高いため出し直しを依頼する
・パーキンソン病ではホーエン・ヤールの重症度分類等の記載が、医療保険・介護保険の判断に関わる
ちびウルフちびウルフ

指示書の有効期間中に主治医が変わったら、前の指示書はもう使えないの?

リハウルフリハウルフ

期間内なら直ちに無効になるわけではないけれど、新しい主治医に速やかに指示書を出し直してもらうのが安心だよ。指示の責任の所在をはっきりさせておこうね。

訪問看護指示書に関するよくある質問

訪問看護指示書の有効期間は必ず6か月ですか?
いいえ。1か月から6か月の範囲で設定できます。6か月はあくまで上限で、利用者の状態に応じて医師が必要な期間を設定します。
医師が独自様式で指示書を出してきました。有効ですか?
法律上、様式に厳密な規定はないため、独自様式でも直ちに無効とはなりません。ただし、記載漏れを防ぐ意味でも厚生労働省が定める標準様式の使用が推奨されます。
主治医から渡された指示書がコピーでした。問題ありませんか?
コピーの指示書は適切ではありません。必ず原本を交付してもらうよう依頼しましょう。複数のステーションが入る場合も、それぞれに原本が必要です。
歯科医師に訪問看護指示書を依頼できますか?
できません。訪問看護の指示を出せるのは医師のみです。
訪問診療を受けていない利用者にも指示書は交付されますか?
訪問看護は原則として通院が困難な方が対象ですが、主治医の診療により訪問看護の必要性が認められれば、訪問診療でなくても指示書は交付されます。
1つのステーションから看護師とリハビリ職が訪問する場合、指示書は2通必要ですか?
1通で構いません。リハビリ職の訪問も訪問看護に含まれるためです。ただし、リハビリテーションの必要性を指示書に記載してもらう必要があります。
まとめ
  • 訪問看護指示書とは、主治医が交付する「訪問看護を実施してよい」という指示の書類で、訪問看護は必ずこの指示にもとづいて行う
  • 交付できるのは保険医療機関の保険医・介護老人保健施設・介護医療院の医師。歯科医師は不可
  • 有効期間は最長6か月、訪問看護指示料は300点(月1回・令和6年度改定後も同じ)
  • 複数ステーションが入る場合は、それぞれに原本が必要(指示料は医師1人につき月1回)
  • 特別訪問看護指示書は最長14日・原則月1回(気管カニューレ・真皮を超える褥瘡は月2回)
  • 指示書を書いてもらえないときも、勝手に訪問看護を始めてはいけない

参考:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連資料/「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」等の告示・通知

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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