訪問リハビリの口腔連携強化加算とは?

訪問リハビリの口腔連携強化加算は、1月に1回、50単位です。令和6年度改定で新設されました。PT・OT・STが口腔の健康状態を評価し、歯科医療機関とケアマネジャーに情報提供すると算定できます。歯科医師でなくてもよいという点が、この加算の要点です。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)、老企第36号の原文を確認して、単位数・評価する8項目・算定要件・他の加算との排他関係を整理しました。
この記事でわかること
- 訪問リハビリの口腔連携強化加算は1月1回・50単位という単位数
- 評価を行うのはPT・OT・STでよいこと
- 評価する8項目の中身
- そのうち2項目は状態に応じて省略できること
- 歯科医療機関との連携体制を文書で取り決める必要があること
- 情報提供先は歯科医療機関とケアマネジャーの両方だということ
- 算定できなくなる3つのケース
- 他の事業所と算定が重複しないよう調整する仕組み
訪問リハビリの口腔連携強化加算とは?
口腔連携強化加算は、訪問系サービスの従業者が利用者の口腔の健康状態を評価し、その結果を歯科医療機関と介護支援専門員に情報提供したことを評価する加算です。令和6年度改定で、訪問介護・訪問看護・訪問リハビリなどに共通して新設されました。
在宅では、口腔の問題が見過ごされやすい構造があります。歯科医院に通えなくなり、家族も口の中まで確認しない。気づいたときには誤嚥性肺炎、というのが典型的な経過です。この加算は、定期的に自宅を訪問する専門職が「口の中を見る」ことを制度に組み込むために置かれました。
ちびウルフ口の中の評価となると、STでないと難しいのでは。
リハウルフ通知が挙げているのは、開口の状態、歯や舌の汚れ、歯肉の腫れ、奥歯のかみ合わせ、むせの有無。PTやOTでも見られる項目です。診断をするわけではなく、気づいて歯科につなぐための評価だと考えてください。
口腔連携強化加算の単位数
告示第19号の訪問リハビリテーション費の注11に定められています。
11 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定訪問リハビリテーション事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果の情報提供を行ったときは、口腔連携強化加算として、1月に1回に限り50単位を所定単位数に加算する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 口腔連携強化加算 | 50単位 | 1月に1回 |
「従業者が」と書かれている
告示は「指定訪問リハビリテーション事業所の従業者が」としており、職種を限定していません。訪問リハの場合、実際に訪問するのは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士ですから、この3職種が評価してよいということになります。歯科医師や歯科衛生士でなければならない、という規定ではありません。
口腔連携強化加算の算定要件
3つの行為が必要
- 口腔の健康状態の評価を実施する
- 利用者の同意を得る
- 歯科医療機関および介護支援専門員に評価結果を情報提供する
情報提供先は「歯科医療機関及び介護支援専門員」です。「または」ではありません。ケアマネジャーにだけ送った、という運用では要件を満たさない読み方になります。
歯科医療機関との連携体制
告示第95号の第12号の2イは、次の体制を求めています。
指定訪問リハビリテーション事業所の従業者が利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うに当たって、歯科診療報酬点数表の区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士に相談できる体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること。
- 相談先は歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関に限られる
- 相談できる体制を確保し、文書等で取り決めておく
- 老企第36号 (23)②により、連携歯科医療機関は複数でも差し支えない
近所の歯科医院ならどこでもよいわけではありません。訪問診療をやっている歯科医院を探して、事前に取り決めを交わす必要があります。
評価する8項目
老企第36号 (23)⑤は、確認すべき項目を具体的に列挙しています。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| イ | 開口の状態 | — |
| ロ | 歯の汚れの有無 | — |
| ハ | 舌の汚れの有無 | — |
| ニ | 歯肉の腫れ、出血の有無 | — |
| ホ | 左右両方の奥歯のかみ合わせの状態 | — |
| ヘ | むせの有無 | — |
| ト | ぶくぶくうがいの状態 | 状態に応じて確認可能な場合に限る |
| チ | 食物のため込み、残留の有無 | 状態に応じて確認可能な場合に限る |
トとチは省略できる
通知は「ただし、ト及びチについては、利用者の状態に応じて確認可能な場合に限って評価を行うこと」としています。うがいができない人、経管栄養で食事をしていない人に無理に確認する必要はありません。
様式と情報提供の方法
老企第36号 (23)③は、評価した情報を歯科医療機関と介護支援専門員に別紙様式6等により提供することとしています。
また(23)④は、歯科医療機関への情報提供にあたって「利用者又は家族等の意向及び当該利用者を担当する介護支援専門員の意見等を踏まえ、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医等のいずれか又は両方に情報提供を行うこと」としています。かかりつけ歯科医がいる場合は、そちらに送る選択肢もあります。
口腔連携強化加算を算定できない3つのケース
告示第95号の第12号の2ロは、次のいずれにも該当しないことを要件としています。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 1 | 他の介護サービスの事業所において、その利用者について口腔・栄養スクリーニング加算を算定していること(栄養状態のスクリーニングを行い(Ⅱ)を算定している場合を除く) |
| 2 | 口腔の健康状態の評価の結果、居宅療養管理指導が必要と歯科医師が判断し、歯科医師または歯科衛生士による居宅療養管理指導費を算定していること(初回の居宅療養管理指導を行った日の属する月を除く) |
| 3 | 当該事業所以外の介護サービス事業所において、その利用者について口腔連携強化加算を算定していること |
同じ利用者に複数の事業所が算定することはできない
ケース3が効きます。訪問看護と訪問リハの両方が入っている利用者について、両方が口腔連携強化加算を算定することはできません。老企第36号 (23)⑧は「口腔連携強化加算の算定を行う事業所については、サービス担当者会議等を活用し決定することとし、原則として、当該事業所が当該加算に基づく口腔の健康状態の評価を継続的に実施すること」としています。
ちびウルフどこが算定するかは、早い者勝ちですか。
リハウルフ通知はサービス担当者会議で決めるとしています。しかも「継続的に実施すること」とあるので、月ごとに事業所が変わるような運用は想定されていません。ケアマネジャーを交えて、最初に決める話です。
口腔連携強化加算の注意点
ケアマネジメントの一環として行う
老企第36号 (23)①は「利用者に対する適切な口腔管理につなげる観点から、利用者ごとに行われるケアマネジメントの一環として行われることに留意すること」としています。加算のために形だけ評価するのではなく、その結果が実際のケアにつながることが前提です。
必要に応じて主治医にも情報提供する
老企第36号 (23)⑦は「口腔の健康状態によっては、主治医の対応を要する場合もあることから、必要に応じて介護支援専門員を通じて主治医にも情報提供等の適切な措置を講ずること」としています。歯科だけでなく、医科への連携も視野に入っています。
評価の方法は歯科医師に相談できる
老企第36号 (23)②は、評価の実施にあたって「必要に応じて、(中略)歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士に口腔の健康状態の評価の方法や在宅歯科医療の提供等について相談すること」としています。連携体制は、単に情報提供先を確保するためだけのものではありません。
参考にすべき資料
老企第36号 (23)⑥は、評価にあたって「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」および「入院(所)中及び在宅等における療養中の患者に対する口腔の健康状態の確認に関する基本的な考え方」(令和6年3月 日本歯科医学会)等を参考にするよう示しています。
リハ職にとっての意味
訪問リハでは、嚥下や食事姿勢を扱う場面が日常的にあります。奥歯のかみ合わせが崩れていれば食形態の設定が変わりますし、義歯が合っていなければ座位の訓練より先に歯科につなぐべきです。この加算は、そうした判断を報酬の上で位置づけたものだと考えています。
口腔連携強化加算のQ&A
評価は誰が行うのですか?
告示は「指定訪問リハビリテーション事業所の従業者」としており、職種を限定していません。訪問リハでは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が該当します。
歯科医師の関与は必要ですか?
評価そのものは事業所の従業者が行います。ただし歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関に相談できる体制を確保し、文書等で取り決めておく必要があります。
情報提供先はどこですか?
歯科医療機関と介護支援専門員の両方です。歯科医療機関については、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医のいずれかまたは両方に提供します。
評価項目は必ず8つ全部見る必要がありますか?
ぶくぶくうがいの状態と、食物のため込み・残留の有無の2項目は、利用者の状態に応じて確認可能な場合に限ります。
訪問看護も入っている利用者はどうなりますか?
同じ利用者について複数の事業所が算定することはできません。サービス担当者会議等で算定する事業所を決めることとされています。
口腔・栄養スクリーニング加算との関係は?
他の事業所で口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合は算定できません。ただし栄養状態のスクリーニングを行い(Ⅱ)を算定している場合は除かれます。
連携歯科医療機関は1か所でなければいけませんか?
複数でも差し支えないとされています。
毎月算定できますか?
1月に1回が限度です。ただし通知は継続的に評価を実施することを求めています。
様式は決まっていますか?
別紙様式6等により提供することとされています。
まとめ
- 訪問リハビリの口腔連携強化加算は1月に1回、50単位
- 令和6年度改定で新設された
- 評価を行うのは事業所の従業者で、職種は限定されていない(PT・OT・STでよい)
- 要件は評価の実施・利用者の同意・情報提供の3つ
- 情報提供先は歯科医療機関と介護支援専門員の両方
- 歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関に相談できる体制を文書等で取り決める
- 連携歯科医療機関は複数でもよい
- 評価項目は開口・歯の汚れ・舌の汚れ・歯肉の腫れ/出血・奥歯のかみ合わせ・むせの6項目が基本
- ぶくぶくうがい・食物のため込み/残留の2項目は状態に応じて省略できる
- 情報提供は別紙様式6等による
- 他事業所が口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合は算定できない
- 歯科医師・歯科衛生士の居宅療養管理指導費を算定している場合も算定できない(初回月を除く)
- 他の事業所が口腔連携強化加算を算定している場合も算定できない
- 算定する事業所はサービス担当者会議等で決め、継続的に評価を実施する
- 必要に応じて介護支援専門員を通じて主治医にも情報提供する
参考にした情報
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問リハビリテーション費 注11
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第12号の2
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。取扱いは市町村(保険者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。


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