訪問入浴介護の基本報酬についてわかりやすく解説

訪問入浴介護の基本報酬は、1回につき1,266単位です。区分はこれ1つだけ。ただしこの1,266単位は「看護職員1人+介護職員2人」の3人体制で行った場合の額で、体制や実施内容が変わると95%、90%、85%と下がっていきます。実際に1,266単位を満額もらえる場面のほうが、条件としては限定的です。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)の原文を確認して、単位数・人員体制の要件・所定単位数が下がる4つの場面・併算定できないサービスを整理しました。
この記事でわかること
- 訪問入浴介護の基本報酬は1回1,266単位という単位数
- 「看護職員1人+介護職員2人」が前提だということ
- 介護職員3人で行うと95%になること
- 清拭・部分浴は90%になること
- 同一建物減算で90%または85%になること
- 減額が重なった場合の考え方
- 入所系サービスを受けている間は算定できないこと
- 介護予防訪問入浴介護との違い
訪問入浴介護の基本報酬とは?
訪問入浴介護は、浴槽を積んだ車で自宅を訪問し、その場で入浴を提供するサービスです。寝たきりの人や、自宅の浴槽では入浴が難しい人が対象になります。
報酬の構造は非常にシンプルで、区分は1つ、1回1,266単位だけです。訪問介護のように身体介護・生活援助の区分があるわけでも、通所介護のように時間区分があるわけでもありません。
そのかわり、「満額の1,266単位から、条件によって差し引かれていく」という作りになっています。どの場面でいくらになるかを押さえることが、この報酬を理解する要点です。
ちびウルフ1回1,266単位なら、他の訪問系サービスより高いですね。
リハウルフ3人で行くサービスなので、1人あたりで見れば妥当な水準です。ただ看護職員が同行できずに介護職員3人になる日は95%、全身浴ができずに清拭になれば90%。現場では満額にならない日が普通にあります。
訪問入浴介護の単位数
告示第19号の訪問入浴介護費のイに定められています。
イ 訪問入浴介護費 1,266単位
注1 利用者に対して、指定訪問入浴介護事業所の看護職員(看護師又は准看護師をいう。以下同じ。)1人及び介護職員2人が、指定訪問入浴介護を行った場合に算定する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 訪問入浴介護費 | 1,266単位 | 1回 |
単位数の前提は「看護職員1人+介護職員2人」
注1が定めているのは金額ではなく体制です。看護職員が1人、介護職員が2人。合わせて3人で訪問することが、1,266単位を算定する前提になっています。看護職員は看護師でも准看護師でも構いません。
所定単位数が下がる4つの場面
告示の注4から注6が、それぞれ減額の場面を定めています。
| 場面 | 算定する割合 | 単位数の目安 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 介護職員3人で行った場合 | 95% | 約1,203単位 | 注4 |
| 清拭または部分浴を実施した場合 | 90% | 約1,139単位 | 注5 |
| 同一建物等(20人以上/同一敷地内等) | 90% | 約1,139単位 | 注6 |
| 同一敷地内建物等に50人以上 | 85% | 約1,076単位 | 注6 |
介護職員3人で行った場合(95%)
看護職員が同行できないとき、介護職員3人で実施することが認められています。ただし条件があります。
4 利用者に対して、入浴により当該利用者の身体の状況等に支障を生ずるおそれがないと認められる場合に、その主治の医師の意見を確認した上で、指定訪問入浴介護事業所の介護職員3人が指定訪問入浴介護を行った場合は、所定単位数の100分の95に相当する単位数を算定する。
主治医の意見を確認することが前提です。看護師が休みだから今日は介護職員3人で、という運用は認められていません。事前に主治医の意見を得ておく必要があります。
清拭・部分浴を実施した場合(90%)
5 訪問時の利用者の心身の状況等から全身入浴が困難な場合であって、当該利用者の希望により清拭又は部分浴(洗髪、陰部、足部等の洗浄をいう。)を実施したときは、所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定する。
2つの条件が必要です。訪問時の心身の状況から全身入浴が困難であること、そして利用者の希望によること。事業所の都合で清拭に切り替えた場合は該当しません。
同一建物減算(90%または85%)
| 対象 | 算定する割合 |
|---|---|
| 事業所と同一敷地内・隣接敷地内の建物、または同一の建物に居住する利用者 | 90% |
| 同一の建物に20人以上居住する建物(同一敷地内建物等を除く)の利用者 | |
| 1月あたりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物の利用者 | 85% |
減額が重なる場面がある
たとえばサービス付き高齢者向け住宅(同一敷地内・20人未満)の利用者に、介護職員3人で清拭を行った場合。注4の95%、注5の90%、注6の90%がすべて該当します。複数の減額が重なる場合の計算方法は、請求実務上の取扱いを保険者・国保連に確認してください。
ちびウルフサ高住で介護職員3人の清拭だと、かなり下がりますね。
リハウルフ下がります。ただ、そういう日ほど手間はかかっていたりします。報酬の設計と現場の負担感が一致しないのは、訪問入浴に限らずありますが、ここは特に落差が大きい部分だと思います。
訪問入浴介護費に組み込まれている2つの減算
告示の注2・注3は、他の訪問系サービスと同じ2つの減算を定めています。
| 減算 | 減算率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1% | 注2 |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の1% | 注3 |
訪問入浴のBCP減算は1%
施設系(老健・特養・介護医療院)の業務継続計画未策定減算が3%であるのに対し、訪問入浴介護は1%です。サービス種別によって減算率が違うので、他サービスの記事の数字を持ち込まないでください。
訪問入浴介護費を算定できない場面
告示の注10は、次のサービスを受けている間は訪問入浴介護費を算定しないとしています。
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 特定施設入居者生活介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
いずれも入浴を含む包括的なサービスです。ショートステイ中や小多機の登録中に訪問入浴を使うことはできません。
訪問入浴介護の基本報酬の注意点
「1回につき」で数える
訪問入浴介護費は1回単位です。1日に2回訪問すれば2回分になりますが、実務上そうした利用はまれです。1か月の利用回数がそのまま単位数に直結するため、区分支給限度基準額への影響が大きいサービスでもあります。
看護職員は看護師・准看護師
告示は看護職員を「看護師又は准看護師」と定義しています。保健師は含まれていない書き方です。
介護予防訪問入浴介護は別の単位数
要支援の人が使う介護予防訪問入浴介護は、指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準で別に定められており、単位数も異なります。1,266単位は要介護の人の訪問入浴介護費です。
加算は別に確認する
訪問入浴介護には、初回加算・認知症専門ケア加算・看取り連携体制加算・サービス提供体制強化加算・介護職員等処遇改善加算・地域加算3種があります。基本報酬とは別に算定できるため、それぞれの要件を確認してください。
訪問入浴介護の基本報酬のQ&A
区分はいくつありますか?
1つだけです。1回1,266単位で、時間や内容による区分はありません。
何人で訪問する必要がありますか?
看護職員1人と介護職員2人の計3人が原則です。主治医の意見を確認したうえで、介護職員3人で行う場合は95%になります。
看護師が休みの日に介護職員3人で行けますか?
入浴により身体の状況等に支障を生ずるおそれがないと認められ、主治医の意見を確認していることが前提です。事業所の都合だけでは切り替えられません。
保健師は看護職員に含まれますか?
告示は看護職員を「看護師又は准看護師」と定義しています。
清拭に切り替えた場合は?
訪問時の心身の状況から全身入浴が困難で、かつ利用者の希望による場合に90%を算定します。事業所の都合による切り替えは該当しません。
減額が重なった場合はどう計算しますか?
告示はそれぞれの場面で算定する割合を定めていますが、重複した場合の計算方法は請求実務の取扱いによります。保険者・国保連に確認してください。
ショートステイ中に訪問入浴を使えますか?
使えません。短期入所生活介護・短期入所療養介護を受けている間は算定できません。
グループホームの入居者に訪問入浴を提供できますか?
認知症対応型共同生活介護を受けている間は算定できません。
介護予防訪問入浴介護も1,266単位ですか?
違います。介護予防訪問入浴介護は別の基準で定められており、単位数も異なります。
まとめ
- 訪問入浴介護の基本報酬は1回につき1,266単位、区分は1つだけ
- 1,266単位は看護職員1人+介護職員2人の3人体制が前提
- 看護職員は看護師または准看護師
- 主治医の意見を確認したうえで介護職員3人で行った場合は95%
- 全身入浴が困難で利用者の希望により清拭・部分浴を行った場合は90%
- 清拭への切り替えは事業所の都合では認められない
- 同一敷地内等・同一建物に20人以上の場合は90%
- 同一敷地内建物等に50人以上居住する建物の場合は85%
- 複数の減額が重なる場面があり、計算方法は請求実務の取扱いによる
- 高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算はいずれも1%
- 施設系のBCP減算(3%)とは率が違う
- ショートステイ・特定施設・小多機・グループホーム・看多機等を受けている間は算定できない
- 1回単位で数えるため、利用回数が区分支給限度基準額に直結する
- 介護予防訪問入浴介護は別の単位数
参考にした情報
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。取扱いは市町村(保険者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




