特養の若年性認知症入所者受入加算とは?

特養の若年性認知症入所者受入加算は、1日につき120単位です。要件は驚くほど単純で、若年性認知症の入所者ごとに担当者を定め、その特性やニーズに応じたサービスを提供すること。それだけです。ただし認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定している月は算定できません。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)と老企第40号の原文を確認して、単位数・対象になる入所者・要件・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 特養の若年性認知症入所者受入加算は1日120単位という単位数
- 対象は「初老期における認知症によって要介護者となった入所者」だということ
- 65歳の誕生日を境に算定できなくなるのか
- 要件は担当者を定めることだけだということ
- 認知症行動・心理症状緊急対応加算とは併算定できないこと
- 認知症専門ケア加算とは併算定できること
- 担当者は誰でもよいのか
- 実際に何をすれば「特性やニーズに応じたサービス」になるのか
特養の若年性認知症入所者受入加算とは?
若年性認知症入所者受入加算は、若年性認知症の人を受け入れ、その人に合わせた支援を行うことを評価する加算です。1日120単位は、特養の加算のなかでは大きい部類に入ります。
若年性認知症の人は、65歳以上の認知症の人とは置かれた状況が大きく違います。就労していた、子育ての途中だった、住宅ローンが残っている、体力があるので行動範囲が広い。高齢者向けのレクリエーションや日課がそのまま合うことは少ないというのが実際のところです。この加算は、その人に合わせた支援を組み立てる手間を評価しています。
ちびウルフ1日120単位は大きいですね。何か特別な体制が要るのですか。
リハウルフ通知は2行だけです。担当者を定めて、その人を中心に特性やニーズに応じたサービスを提供する。研修も人員配置も求められていません。要件が軽いぶん、実態が伴っているかを説明できる記録が要ります。
若年性認知症入所者受入加算の単位数
告示第21号の介護福祉施設サービスの注16に定められています。
16 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設において、若年性認知症入所者(介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第2条第6号に規定する初老期における認知症によって要介護者となった入所者をいう。以下同じ。)に対して指定介護福祉施設サービスを行った場合は、若年性認知症入所者受入加算として、1日につき120単位を所定単位数に加算する。ただし、ネを算定している場合は、算定しない。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 30日分の目安 |
|---|---|---|---|
| 若年性認知症入所者受入加算 | 120単位 | 1日 | 3,600単位 |
1人あたり月3,600単位です。対象になる入所者だけに算定する加算なので、施設全体の入所者数は関係ありません。
対象になるのはどういう入所者か
告示は「介護保険法施行令第2条第6号に規定する初老期における認知症によって要介護者となった入所者」としています。
介護保険法施行令第2条は、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が介護保険を使える特定疾病を列挙した条文で、その第6号が「初老期における認知症」です。つまり、40歳以上65歳未満で認知症を発症し、それによって要介護認定を受けた人が対象になります。
65歳になったら算定できなくなるのか
条文が指しているのは「初老期における認知症によって要介護者となった」という発症時点・要介護になった時点の状態です。65歳を過ぎたら直ちに対象外になると読むか、発症時点で該当していれば継続できると読むかは、条文の文言だけでは断定できません。この点の取扱いは指定権者によって解釈が分かれる可能性があるため、確認してください。
若年性認知症入所者受入加算の算定要件
老企第40号 5の(14)は2の(18)を準用しており、その中身は次の1文だけです。
受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別に担当者を定め、その者を中心に、当該利用者の特性やニーズに応じたサービス提供を行うこと。
- 受け入れた若年性認知症の入所者ごとに、個別に担当者を定めること
- その担当者を中心に、入所者の特性やニーズに応じたサービス提供を行うこと
研修の受講、専門職の配置、委員会の開催。いずれも求められていません。特養の加算のなかでは、要件が最も軽い部類です。
担当者は誰でもよいのか
通知は担当者の職種・資格を特定していません。介護職員でも、生活相談員でも、機能訓練指導員でも構いません。ただし「その者を中心に」サービス提供を行うことが要件である以上、名前を書いただけで実際には関わっていない、という状態では要件を満たしません。
「特性やニーズに応じたサービス」とは
通知は具体的な内容を示していません。ここは施設が組み立てる部分です。実務で考えられるのは次のような視点です。
- 年齢に合った活動の用意(高齢者向けの唱歌やレクリエーションが合わないことが多い)
- 体力に見合った活動量の確保(動ける人を座らせ続けない)
- 就労経験を活かせる役割の提供
- 配偶者がまだ現役世代であることを踏まえた面会・連絡の調整
- 子どもがまだ若い場合の家族支援
- 障害年金・自立支援医療・障害者手帳など、介護保険以外の制度の情報提供
記録として残すのは「その人向けに何を変えたか」
要件が軽いぶん、実地指導で問われるのは実態です。担当者を定めた記録と、その人の特性に合わせて何を変えたのかが分かる記録。この2つを施設サービス計画やケース記録に残しておけば、説明できます。
若年性認知症入所者受入加算の併算定
認知症行動・心理症状緊急対応加算とは併算定できない
告示の但し書きにある「ネ」とは、認知症行動・心理症状緊急対応加算(1日200単位・7日限度)です。
| 加算 | 単位数 | 併算定 |
|---|---|---|
| 認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 1日200単位(7日限度) | この加算と併算定不可 |
| 若年性認知症入所者受入加算 | 1日120単位 | — |
両方の要件を満たす場面はあり得ます。若年性認知症の人が在宅で行動・心理症状を起こし、緊急に特養へ入所したケースです。その場合、入所後7日間は200単位のほうが高いので、緊急対応加算を選ぶことになります。8日目以降は若年性認知症入所者受入加算に切り替わります。
ちびウルフ最初の7日だけ緊急対応加算、その後は若年性の加算、という切り替えでいいんですか。
リハウルフ告示は同時算定を禁じているだけなので、日を分ければ理屈は通ります。ただ請求実務の扱いは保険者に確認してください。ここは自己判断で走らないほうがいい部分です。
認知症専門ケア加算とは併算定できる
告示の但し書きが排除しているのは「ネ」=認知症行動・心理症状緊急対応加算だけです。認知症専門ケア加算や認知症チームケア推進加算との併算定を排除する規定はありません。若年性認知症の人は日常生活自立度がⅢ以上になることも多く、認知症専門ケア加算の対象者としても数えられます。
若年性認知症入所者受入加算の注意点
届出が必要
告示の注は「別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設において」としています。対象者を受け入れてから届け出るのでは、その間の算定ができません。該当者がいなくても、受け入れの可能性があるなら先に届出を済ませておく判断はあり得ます。
入所前に該当を把握する
要介護認定の情報から、第2号被保険者かどうか、特定疾病が初老期における認知症かどうかは確認できます。入所判定の段階でここを見ておかないと、算定できたはずの月を取り逃がします。
他サービスにも同名の加算がある
若年性認知症の人を受け入れる加算は、通所介護・通所リハ・ショートステイ・グループホーム・小多機・看多機などにも設けられています。単位数はサービスごとに異なるため、他サービスの記事の数字をそのまま持ち込まないでください。
若年性認知症入所者受入加算のQ&A
対象になるのはどういう人ですか?
介護保険法施行令第2条第6号に規定する初老期における認知症によって要介護者となった入所者です。40歳以上65歳未満で認知症を発症し、要介護認定を受けた人が該当します。
65歳を過ぎたら算定できなくなりますか?
条文は発症時点・要介護になった時点の状態を指す書き方になっています。65歳到達後の取扱いについては明確な記載がないため、指定権者に確認してください。
担当者に資格は必要ですか?
通知は職種・資格を特定していません。ただし「その者を中心に」サービス提供を行うことが要件です。
研修は必要ですか?
不要です。通知に研修に関する要件はありません。
認知症専門ケア加算と併算定できますか?
できます。告示の但し書きが排除しているのは認知症行動・心理症状緊急対応加算だけです。
認知症行動・心理症状緊急対応加算とはなぜ併算定できないのですか?
告示の注16の但し書きが「ネを算定している場合は、算定しない」としているためです。「ネ」が認知症行動・心理症状緊急対応加算にあたります。
届出は必要ですか?
必要です。該当者を受け入れる前に届出を済ませておかないと、その間の算定ができません。
担当者は複数人でもよいですか?
通知は「個別に担当者を定め」としており、人数の上限は定めていません。ただし誰が中心的に関わっているかを示せる形にしておいてください。
他のサービスの若年性認知症の加算と単位数は同じですか?
異なります。サービスごとに単位数が定められているため、それぞれ確認してください。
まとめ
- 特養の若年性認知症入所者受入加算は1日につき120単位
- 対象になる入所者だけに算定する(施設全体ではない)
- 対象は介護保険法施行令第2条第6号の初老期における認知症によって要介護者となった入所者
- 40歳以上65歳未満で認知症を発症し、要介護認定を受けた人が該当する
- 65歳到達後の取扱いは条文に明示がないため指定権者に確認する
- 要件は入所者ごとに担当者を定め、その者を中心に特性やニーズに応じたサービスを提供すること
- 研修・専門職の配置・委員会の開催は求められていない
- 担当者の職種・資格は特定されていない
- 担当者を定めた記録と、その人向けに何を変えたかの記録を残す
- 認知症行動・心理症状緊急対応加算(1日200単位)とは併算定できない
- 認知症専門ケア加算・認知症チームケア推進加算とは併算定を排除する規定がない
- 届出が必要で、受け入れ前に済ませておく必要がある
- 入所判定の段階で第2号被保険者・特定疾病を確認しておく
- 他サービスにも同名の加算があるが単位数は異なる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護福祉施設サービス 注16
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)2の(18)、5の(14)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





