老健の認知症専門ケア加算は、(Ⅰ)が1日につき3単位、(Ⅱ)が1日につき4単位です。1日あたり数円という水準ですが、100床の老健が(Ⅱ)を通年で算定すると年間およそ146,000単位になります。そして令和6年度改定で新設された認知症チームケア推進加算とは、どちらか一方しか算定できません。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・算定要件・対象者の数え方・併算定のルールを整理しました。

この記事でわかること

  • 老健の認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位という単位数
  • 対象者は日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する入所者だということ
  • 対象者が入所者総数の2分の1以上という割合要件
  • 研修修了者を何人配置すればよいかの計算方法
  • (Ⅰ)は認知症介護実践リーダー研修、(Ⅱ)は認知症介護指導者研修という違い
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は重ねて算定できないこと
  • 認知症チームケア推進加算とは併算定できないこと
  • 認知症ケア加算・若年性認知症入所者受入加算との関係

老健の認知症専門ケア加算とは?

認知症専門ケア加算は、認知症介護の専門的な研修を修了した職員を配置し、チームとして専門的な認知症ケアを提供する体制を評価する加算です。個々の入所者に何をしたかではなく、施設としてどういう体制を組んでいるかを見る体制加算にあたります。

評価の軸は3つあります。認知症の重い入所者が一定割合を占めていること、専門研修を修了した職員が人数に応じて配置されていること、そして認知症ケアについて職員に伝達・指導する会議を定期的に開いていること。(Ⅱ)はここに、指導者クラスの研修修了者の配置と、職種別の研修計画が加わります。

令和6年度改定では、認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを評価する認知症チームケア推進加算が新設されました。両者は目的が近いため、告示の注で明確に併算定が排除されています。

ちびウルフちびウルフ

研修を受けた職員が1人いれば算定できるものだと思っていました。

リハウルフリハウルフ

配置人数は対象者の数で決まります。しかも「入所者の数」ではなく「対象者の数」なので、そこを間違えると必要人数が変わってきます。

認知症専門ケア加算の単位数

告示第21号の介護保健施設サービスのソに、次のとおり定められています。

ソ 認知症専門ケア加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設が、別に厚生労働大臣が定める者に対し専門的な認知症ケアを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定せず、認知症チームケア推進加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない。
(1) 認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位
(2) 認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位

区分単位数算定頻度
認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位1日
認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位1日

(Ⅰ)と(Ⅱ)の差はわずか1単位です。ただしこの加算は対象者だけでなく、届出を行った施設の入所者に対して1日単位で算定するものであり、床数が多いほど積み上がります。100床で(Ⅱ)を1年間算定すれば4単位×100人×365日=146,000単位です。

認知症専門ケア加算の算定要件

加算(Ⅰ)の3要件

要件は告示第95号の第3号の5イに定められています。老健だけでなく、特養・ショートステイ・グループホーム・介護医療院などに共通して適用される基準です。

  • 施設における入所者の総数のうち、日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の者(対象者)の占める割合が2分の1以上であること
  • 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を、対象者の数が20人未満なら1以上、20人以上なら「1に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えて得た数」以上配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること
  • 従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催していること

「対象者」とは日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・M

老企第40号 5の(38)①は、「日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症の者」を「日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する入所者」と定義しています。ランクⅡ以下の人は、認知症の診断があっても対象者に数えません。

研修修了者の必要人数

条文の書き方が読みにくいので、実際の人数に置き換えます。

対象者(ランクⅢ・Ⅳ・M)の数必要な研修修了者数
1〜19人1人以上
20〜29人2人以上
30〜39人3人以上
40〜49人4人以上
50〜59人5人以上

20人を超えたら10人ごとに1人ずつ増える、という理解で足ります。注意すべきは、分母が入所者総数ではなく対象者の数だという点です。100床の老健で対象者が60人なら、必要な研修修了者は6人。入所者数で計算して10人必要だと考える必要はありません。

加算(Ⅱ)の追加要件

  • 加算(Ⅰ)の基準のいずれにも適合すること
  • 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、施設全体の認知症ケアの指導等を実施していること
  • 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、当該計画に従い研修(外部における研修を含む)を実施または実施を予定していること

2つの研修の違い

老企第40号 5の(38)②④は、それぞれの研修を次のように特定しています。

要件上の呼び方該当する研修どちらの加算で必要か
認知症介護に係る専門的な研修認知症介護実践リーダー研修、および認知症看護に係る適切な研修(Ⅰ)(Ⅱ)とも
認知症介護の指導に係る専門的な研修認知症介護指導者研修、および認知症看護に係る適切な研修(Ⅱ)のみ

認知症介護実践者研修は含まれません。実践者研修の修了者をいくら揃えても要件は満たしません。必要なのは実践リーダー研修以上です。

なお会議については、老企第40号 5の(38)③が「テレビ電話装置等を活用して行うことができる」としています。その際は個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンス、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン等を遵守することが求められます。

認知症専門ケア加算の注意点

認知症チームケア推進加算とは選択になる

告示の注に「認知症チームケア推進加算を算定している場合においては、次に掲げる加算は算定しない」とあります。(Ⅰ)(Ⅱ)相互も同様で、どれか1つだけです。

組み合わせ可否
認知症専門ケア加算(Ⅰ)と(Ⅱ)不可(いずれか一方)
認知症専門ケア加算と認知症チームケア推進加算不可(いずれか一方)
認知症専門ケア加算と認知症ケア加算告示上の排除規定はない(後述)

どちらが得かは単位数だけでは決まらない

認知症チームケア推進加算は(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位で、いずれも1月につきです。1日単位の認知症専門ケア加算(Ⅱ)は月30日で120単位になるため、金額としては近い水準になります。チームケア推進加算は対象者ごとに算定するのに対し、専門ケア加算は施設の入所者に対して算定するため、どちらが有利かは対象者の割合によって変わります。要件の重さも違うので、単位数だけで選ばないでください。

ちびウルフちびウルフ

両方の要件を満たしていたら、月ごとに有利なほうを選んでもいいんですか。

リハウルフリハウルフ

告示は同時算定を禁じているだけで、期間の縛りは書いていません。ただ届出が必要な加算なので、実際に切り替えられるかどうかは指定権者に確認したほうが確実です。

認知症ケア加算とは別物

老健には認知症ケア加算(1日76単位)が別にあります。こちらは認知症専門棟で認知症の入所者にケアを行った場合の加算で、専門棟という構造要件が入る点が大きく違います。名前が似ているため混同されますが、告示上の位置づけも要件もまったく別です。

認知症ケア加算を算定していると夜勤職員配置加算の基準が厳しくなる

老企第40号 8の(13)②は「認知症ケア加算を算定している介護老人保健施設の場合にあっては、夜勤職員配置加算の基準は、認知症専門棟とそれ以外の部分のそれぞれで満たさなければならない」としています。認知症関係の加算を組むときは、夜勤体制への波及も併せて確認してください。

割合要件は継続的に満たす必要がある

対象者が入所者総数の2分の1以上という要件は、届出時点だけの話ではありません。入退所によって割合は動きます。ランクⅢ以上の入所者が減って2分の1を割った場合、要件を満たさなくなります。日常生活自立度は認定調査票や主治医意見書で確認できるため、入退所のたびに割合を再計算する運用を組んでおくのが安全です。

認知症専門ケア加算のQ&A

対象者は誰が判定するのですか?

老企第40号は日常生活自立度のランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する入所者としています。日常生活自立度は要介護認定の認定調査票および主治医意見書に記載されるため、これを根拠に整理するのが実務上の一般的な扱いです。

認知症介護実践者研修の修了者では要件を満たしませんか?

満たしません。(Ⅰ)で必要なのは認知症介護実践リーダー研修、または認知症看護に係る適切な研修です。

研修修了者は常勤でなければなりませんか?

告示・通知とも常勤要件は置いていません。ただし「チームとして専門的な認知症ケアを実施していること」が要件であるため、実態として指導・実践に関与している必要があります。

会議はどのくらいの頻度で開けばよいですか?

告示は「定期的に開催していること」とするのみで、回数を定めていません。指定権者が独自の目安を示している場合があるため、確認してください。

加算は対象者だけに算定するのですか?

告示の注は「介護老人保健施設が、別に厚生労働大臣が定める者に対し専門的な認知症ケアを行った場合」としています。専門的な認知症ケアを行った対象者について算定する構造です。請求の実務は指定権者・国保連の取扱いを確認してください。

認知症チームケア推進加算に切り替えるメリットはありますか?

チームケア推進加算は1月につき(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)120単位で、行動・心理症状の予防等に資するチームケアを評価するものです。要件は別途通知で細かく定められており、単位数だけでなく体制づくりの負担を含めて比較する必要があります。

ユニット型でも算定できますか?

算定できます。告示の注にユニット型を除く旨の記載はありません。

転換老健でも算定できますか?

算定できます。褥瘡マネジメント加算のような「イ(1)、ロ(1)について」という限定は付いていません。

対象者が一時的に2分の1を下回った場合はどうなりますか?

要件を満たさない状態になります。届出の内容と実態が異なる場合の取扱いは指定権者の判断によるため、割合が下がる見込みが立った時点で相談してください。

まとめ

  • 老健の認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位(いずれも1日につき)
  • 対象者は日常生活自立度ランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する入所者
  • 対象者が入所者総数の2分の1以上であることが前提
  • 研修修了者は対象者20人未満で1人、以降10人ごとに1人ずつ増える
  • 人数計算の分母は入所者総数ではなく対象者の数
  • (Ⅰ)で必要なのは認知症介護実践リーダー研修または認知症看護に係る適切な研修
  • 認知症介護実践者研修の修了者では要件を満たさない
  • (Ⅱ)はさらに認知症介護指導者研修の修了者を1名以上配置する
  • (Ⅱ)は介護職員・看護職員ごとの研修計画の作成と実施が必要
  • 認知症ケアに関する会議を定期的に開催すること(テレビ電話装置等の活用可)
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)、および認知症チームケア推進加算とは併算定できない
  • 認知症ケア加算(76単位・認知症専門棟)とは別の加算
  • 認知症ケア加算を算定していると、夜勤職員配置加算の基準を専門棟とそれ以外で別々に満たす必要がある
  • 割合要件は入退所で変動するため、継続的な確認が必要

参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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