老健の排せつ支援加算とは?

老健の排せつ支援加算は、(Ⅰ)が1月につき10単位、(Ⅱ)が15単位、(Ⅲ)が20単位です。(Ⅰ)は要件を満たせば入所者全員に付きますが、(Ⅱ)(Ⅲ)は排せつの状態が実際に改善した人にしか付きません。結果を出さないと上がらない、成果連動型の加算です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・算定要件・(Ⅱ)(Ⅲ)の判定ルール・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の排せつ支援加算(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)15単位・(Ⅲ)20単位という単位数
- 評価する4項目(排尿・排便・おむつ・尿道カテーテル)
- 評価できるのは医師または医師と連携した看護師に限られること
- 3か月に1回という評価とLIFE提出のサイクル
- (Ⅱ)と(Ⅲ)の判定条件の違い
- 「職員が忙しくておむつにしていた」ケースは加算の対象にならないこと
- 支援計画を施設サービス計画で代替できるのは特養だけという落とし穴
- リハビリ職が支援計画にどう関わるか
老健の排せつ支援加算とは?
排せつ支援加算は、入所者が排せつに介護を要する要因を多職種で分析し、支援計画を立てて実施し、評価して見直すというサイクルを回したことを評価する加算です。老企第40号 5の(42)①は、この加算の目的をPDCAの構築を通じて継続的に排せつ支援の質の管理を行うことと説明しています。
おむつ交換の回数を減らすことを評価する加算ではありません。評価しているのは、排せつに介護を要する原因を分析して手を打ち、状態が改善したかどうかです。令和3年度改定で3区分に再編され、令和6年度改定での見直しはありません。
ちびウルフトイレ誘導を増やしておむつが外れたら、それで(Ⅱ)が算定できるということですか。
リハウルフ条件によります。通知は「職員が適時に排せつを介助できるとは限らないことを主たる理由としておむつにしていた」場合を、はっきり対象外にしています。人手の問題を解消しただけでは評価されません。
排せつ支援加算の単位数
告示第21号の介護保健施設サービスのムに定められています。
ム 排せつ支援加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設において、継続的に入所者ごとの排せつに係る支援を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 排せつ支援加算(Ⅰ) 10単位
(2) 排せつ支援加算(Ⅱ) 15単位
(3) 排せつ支援加算(Ⅲ) 20単位
| 区分 | 単位数 | 対象 |
|---|---|---|
| 排せつ支援加算(Ⅰ) | 1月につき10単位 | 原則として入所者全員((Ⅱ)(Ⅲ)を算定する人を除く) |
| 排せつ支援加算(Ⅱ) | 1月につき15単位 | 排尿・排便が改善した人、またはおむつ・尿道カテーテルが外れた人 |
| 排せつ支援加算(Ⅲ) | 1月につき20単位 | 排尿・排便が改善し、かつおむつも外れた人 |
3つは重ねられません。同じ入所者について、その月に該当する区分を1つだけ算定します。
排せつ支援加算の算定要件
加算(Ⅰ)の3要件
告示第95号の第71号の3イに定められています。
- 入所者ごとに、要介護状態の軽減の見込みについて、医師または医師と連携した看護師が施設入所時に評価し、その後少なくとも3か月に1回評価するとともに、その評価結果等の情報を厚生労働省に提出し、排せつ支援の実施にあたって当該情報等を活用していること
- 評価の結果、排せつに介護を要する入所者であって、適切な対応を行うことにより要介護状態の軽減が見込まれるものについて、医師・看護師・介護支援専門員その他の職種の者が共同して、排せつに介護を要する原因を分析し、それに基づいた支援計画を作成し、当該支援計画に基づく支援を継続して実施していること
- 評価に基づき、少なくとも3か月に1回、入所者ごとに支援計画を見直していること
評価できる職種が限定されている
排せつ支援加算の評価は「医師又は医師と連携した看護師」に限られます。褥瘡マネジメント加算が評価者の職種を特定していないのとは対照的です。さらに老企第40号 5の(42)⑥は、看護師が評価した場合は「その内容を支援の開始前に医師へ報告する」こと、入所者の背景疾患の状況を勘案する必要がある場合等は医師へ相談することを求めています。
評価する4項目
老企第40号 5の(42)④は、別紙様式6を用いて次の4つを評価するとしています。
| 項目 | 評価の区分 |
|---|---|
| (ア) 排尿の状態 | 介助の要否(一部介助・全介助など) |
| (イ) 排便の状態 | 介助の要否(一部介助・全介助など) |
| (ウ) おむつの使用 | あり/なし |
| (エ) 尿道カテーテルの留置 | あり/なし |
「排せつに介護を要する入所者」とは、(ア)または(イ)が「一部介助」「全介助」と評価される者、あるいは(ウ)(エ)が「あり」の者を指します(老企第40号 5の(42)⑧)。
既入所者の入所時評価
老企第40号 5の(42)⑤は、届出の日の属する月の前月以前から入所している人(既入所者)について、介護記録等に基づいて施設入所時における評価を行うとしています。届出時点の状態を入所時の値として使うのではなく、記録をさかのぼって入所時の状態を再現する必要があります。
排せつ支援加算(Ⅱ)(Ⅲ)の判定条件
(Ⅱ)(Ⅲ)は、施設入所時と比較した改善の内容で分かれます。老企第40号 5の(42)⑭⑮の条件を整理します。
| 区分 | 判定条件 |
|---|---|
| 排せつ支援加算(Ⅱ) | (ア)排尿または(イ)排便の少なくとも一方が改善し、かつ両方とも悪化がない場合。または(ウ)おむつを使用しなくなった場合、もしくは(エ)尿道カテーテルが抜去された場合 |
| 排せつ支援加算(Ⅲ) | (ア)または(イ)の少なくとも一方が改善し、いずれにも悪化がなく、かつ(ウ)おむつを使用しなくなった場合 |
整理すると、(Ⅱ)は「排尿・排便が改善」か「おむつ・カテーテルが外れた」のどちらか一方でよく、(Ⅲ)はその両方が揃った場合です。20単位を狙うなら、排せつ動作そのものの改善とおむつの離脱をセットで組み立てることになります。
人手不足を解消しただけでは加算にならない
老企第40号 5の(42)③は、こう釘を刺しています。「例えば、施設入所時において、入所者が尿意・便意を職員へ訴えることができるにもかかわらず、職員が適時に排せつを介助できるとは限らないことを主たる理由としておむつへの排せつとしていた場合、支援を行って排せつの状態を改善させたとしても加算の対象とはならない」。入所時の評価で「なぜおむつなのか」の要因を正しく記録していないと、後から加算の可否を説明できなくなります。
排せつ支援加算の注意点
支援計画を施設サービス計画で代替できるのは特養だけ
老企第40号 5の(42)⑩の末尾には、こうあります。「なお、介護福祉施設サービスにおいては、支援計画に相当する内容を施設サービス計画の中に記載する場合は、その記載をもって支援計画の作成に代えることができるものとするが、下線又は枠で囲う等により、他の記載と区別できるようにすること」。
この一文は「介護福祉施設サービスにおいては」と限定されています。老健はこの規定を準用する形をとっており、読み替えの明示がありません。別紙様式6で支援計画を作成しておくほうが安全です。運用を変える場合は指定権者に確認してください。
計画作成の職種が指定されている
老企第40号 5の(42)⑩は、要因分析と支援計画の作成に関わる職種を次のように定めています。
- 評価を行った医師または看護師
- 介護支援専門員
- 支援対象の入所者の特性を把握している介護職員
- 疾患、使用している薬剤、食生活、生活機能の状態等に応じて、薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士等を適宜加える
前の3つは必須です。リハビリ職は「適宜加える」側ですが、生活機能の状態が要因になっている場合には参加する意味が大きくなります。トイレまでの移動、便座への移乗、下衣の上げ下ろし、座位保持。排せつが自立しない原因が動作にあるなら、そこはリハ職の領域です。排尿・排便の機能面だけで要因分析を組むと、動作が理由でおむつになっている人を取りこぼします。
本人・家族への説明と同意が必要
老企第40号 5の(42)⑫は、支援計画の実施にあたって、排せつの状態と今後の見込み、支援の必要性、要因分析と支援計画の内容、そして支援開始後であってもいつでも本人・家族の希望に応じて中断・中止できることを説明し、理解と希望を確認したうえで行うよう求めています。同意を取るだけでなく、中止できることまで伝える必要があります。
画一的な支援計画は認められない
老企第40号 5の(42)⑪は「要因分析の結果と整合性が取れた計画を、個々の入所者の特性に配慮しながら個別に作成することとし、画一的な支援計画とならないよう留意する」としています。テンプレートを全員に貼り付ける運用は、通知が明示的に否定している形です。
排せつ支援加算のQ&A
排せつに問題のない入所者にも(Ⅰ)は算定できますか?
できます。老企第40号 5の(42)②は、加算(Ⅰ)を「原則として入所者全員を対象として入所者ごとに要件を満たした場合に、当該施設の入所者全員((Ⅱ)又は(Ⅲ)を算定する者を除く)に対して算定できる」としています。ただし評価は全員に行う必要があります。
評価を介護職員が行ってもよいですか?
できません。評価は「医師又は医師と連携した看護師」に限られます。看護師が行った場合は支援の開始前に医師へ報告することも求められています。
(Ⅱ)と(Ⅲ)は同時に算定できますか?
できません。告示の注が併算定を排除しています。該当する区分のうち1つだけを算定します。
いったん(Ⅱ)を算定した人が、翌月に状態が戻った場合はどうなりますか?
その月は判定条件を満たさないため(Ⅱ)は算定できません。要件を満たしていれば(Ⅰ)の対象になります。
尿道カテーテルが抜けたら(Ⅲ)になりますか?
なりません。(Ⅲ)の条件は「(ア)または(イ)の改善」かつ「(ウ)おむつを使用しなくなったこと」です。カテーテルの抜去は(Ⅱ)の条件には含まれますが、(Ⅲ)には含まれていません。
LIFEへの提出頻度はどれくらいですか?
大臣基準は施設入所時と、その後少なくとも3か月に1回の評価を求め、その情報を提出するとしています。提出情報・提出頻度の詳細は「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」を参照するよう通知が指示しています。
支援計画の見直しは3か月ごとだけでよいですか?
最低ラインが3か月に1回です。老企第40号 5の(42)⑬は「支援計画に実施上の問題があれば直ちに実施すること」としており、問題が見つかった時点での見直しを求めています。
リハビリ職は必ず計画に参加しなければなりませんか?
必須ではありません。通知は理学療法士・作業療法士等を「適宜加える」職種としています。ただし排せつ動作が要因になっている場合は、参加しないと要因分析が不十分になります。
転換老健でも算定できますか?
算定できます。褥瘡マネジメント加算のような基本型・在宅強化型に限る規定は付いていません。
まとめ
- 老健の排せつ支援加算は(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)15単位・(Ⅲ)20単位(いずれも1月につき)
- 3区分は重ねて算定できず、該当する1つだけを算定する
- (Ⅰ)は要件を満たせば原則として入所者全員が対象
- 評価できるのは医師または医師と連携した看護師に限られる
- 看護師が評価した場合は支援の開始前に医師へ報告する
- 評価は入所時と、その後少なくとも3か月に1回
- 評価には別紙様式6を用い、排尿・排便・おむつ・尿道カテーテルの4項目を見る
- 既入所者の入所時評価は介護記録等をさかのぼって行う
- (Ⅱ)は排尿・排便の改善か、おむつ・カテーテルの離脱のいずれか
- (Ⅲ)は排尿・排便の改善とおむつの離脱の両方が必要
- 人手の問題でおむつにしていたケースは、改善しても加算の対象にならない
- 支援計画は医師または看護師・介護支援専門員・担当介護職員の共同で作成する
- 支援計画を施設サービス計画で代替する取扱いは、通知上「介護福祉施設サービスにおいては」と限定されている
- 実施には本人・家族への説明と、いつでも中止できることの説明が必要
- 画一的な支援計画は通知が明示的に否定している
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の3
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)5の(42)、8の(45)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。





