訪問看護の介護職員等処遇改善加算とは?

訪問看護の介護職員等処遇改善加算は、イからリまでにより算定した単位数の1000分の18です。令和8年6月1日から新設されました。
他サービスの処遇改善加算は(Ⅰ)から(Ⅳ)までの区分があり、加算率も大きく異なります。ところが訪問看護には区分がありません。18/1000の1本だけです。要件も、賃金改善の計画・報告といった基本部分に加えて、「ケアプランデータ連携システムの利用」または「連携推進法人への所属」のどちらかを満たすという、他サービスにない形になっています。この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費のヌと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第10号の2の原文を確認して整理しました。
- 訪問看護の処遇改善加算は所定単位数の18/1000であること
- 令和8年6月1日施行の新しい加算であること
- (Ⅰ)〜(Ⅳ)のような区分がないこと
- 計算の基礎は「イからリまでにより算定した単位数」であること
- 賃金改善の対象が「介護職員」ではなく「職員」であること
- ケアプランデータ連携システムか連携推進法人が必須であること
- サービス提供体制強化加算の届出は要件になっていないこと
- 介護予防訪問看護にも同率で設定されていること
ちびウルフ訪問看護に介護職員はいませんよね。それでも「介護職員等処遇改善加算」なんですか?
リハウルフ名前は同じですが、中身が違います。告示95号 第10号の2は、一貫して「当該指定訪問看護事業所の職員」と書いています。「介護職員」ではありません。看護師も、PT・OT・STも、事務職員も対象にできる建て付けです。訪問看護に介護職員がいないからこそ、こう書かれていると読めます。
訪問看護の介護職員等処遇改善加算とは?
介護職員等処遇改善加算は、事業所で働く職員の賃金改善を進めることを条件に、報酬を上乗せする加算です。告示19号 訪問看護費のヌに規定されています。
訪問看護には長らく処遇改善加算がありませんでした。制度上、処遇改善加算は介護職員の賃金を対象とする仕組みであり、介護職員を配置しない訪問看護は対象外とされてきたためです。
一方で、訪問看護の現場は人材確保に苦しんでいます。病院との賃金差、オンコールの負担、24時間体制の維持。他サービスだけが処遇改善で賃金を上げていく状況は、訪問看護からの人材流出を招きかねません。この加算は、その構造に手を入れたものだと読めます。
令和8年6月1日から施行されました(令和8年厚生労働省告示第87号)。
介護職員等処遇改善加算の単位数
ヌ 介護職員等処遇改善加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護職員等の賃金の改善等を実施しているものとして、(略)届出を行った指定訪問看護事業所が、利用者に対し、指定訪問看護を行った場合は、イからリまでにより算定した単位数の1000分の18に相当する単位数を所定単位数に加算する。
| 区分 | 加算率 | 計算の基礎 | 要支援 |
|---|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算 | 18/1000 | イ〜リにより算定した単位数 | ○(同率) |
「イからリまで」に何が入るか
| 記号 | 内容 | 計算の基礎 |
|---|---|---|
| イ・ロ・ハ | 訪問看護費(基本報酬) | ○ |
| ニ | 初回加算 | ○ |
| ホ | 退院時共同指導加算 | ○ |
| ヘ | 看護・介護職員連携強化加算 | ○ |
| ト | 看護体制強化加算 | ○ |
| チ | 口腔連携強化加算 | ○ |
| リ | サービス提供体制強化加算 | ○ |
| ヌ | 介護職員等処遇改善加算 | ×(自分自身は除く) |
緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算・地域加算などは、イ〜ハの「注」に定められた加算なので、イ〜ハに含まれます。地域加算のように「所定単位数から緊急時・特別管理・ターミナルケア加算を除く」といった限定が、処遇改善加算にはありません。訪問看護費の総額に18/1000が掛かる、と読めます。
金額の目安
| 1か月の訪問看護費(加算込み) | 処遇改善加算(18/1000) |
|---|---|
| 10,000単位 | 180単位 |
| 100,000単位 | 1,800単位 |
| 1,000,000単位 | 18,000単位 |
18/1000は約1.8%です。月の総単位数が100万単位の事業所なら、月18,000単位=おおむね18万円前後の上乗せになります(1単位10円の地域の場合)。
介護職員等処遇改善加算の算定要件
告示95号 第10号の2は、イとロの両方に適合することを求めています。
イ=賃金改善に関する8つの基準
| 号 | 内容 |
|---|---|
| (1) | 賃金改善に要する費用の見込額が加算の算定見込額以上となる賃金改善計画を策定し、計画に基づき適切な措置を講じていること |
| (2) | 介護職員等処遇改善計画書を作成し、全ての職員に周知し、都道府県知事に届け出ていること |
| (3) | 加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること(経営悪化等でやむを得ず賃金水準を見直す場合は都道府県知事に届出) |
| (4) | 事業年度ごとに処遇改善の実績を都道府県知事に報告すること |
| (5) | 算定日が属する月の前12月間において、労働基準法・労働者災害補償保険法・最低賃金法・労働安全衛生法・雇用保険法その他の労働に関する法令に違反し、罰金以上の刑に処せられていないこと |
| (6) | 労働保険料の納付が適正に行われていること |
| (7) | 職責・職務内容等の要件(賃金に関するものを含む)を定め、書面で作成して全職員に周知し、資質向上支援に関する計画を策定して研修の実施または機会を確保し、それを全職員に周知していること(キャリアパス) |
| (8) | 計画期間中に実施する処遇改善の内容(賃金改善に関するものを除く)と費用の見込額を全ての職員に周知していること |
第10号の2のイは、すべての号で「当該指定訪問看護事業所の職員」と書かれています。他サービスの基準にある「介護職員」という限定がありません。看護職員・PT・OT・ST・事務職員を賃金改善の対象にできる建て付けだと読めます。ただし配分方法の詳細は別途通知(「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)によります。
ロ=データ連携か連携推進法人のどちらか
ロ 次に掲げる基準のいずれかに適合すること。
(1) ケアプランデータ連携システムを利用していること。
(2) 連携推進法人に所属していること。
これが訪問看護の処遇改善加算に固有の要件です。他サービスの処遇改善加算の基準にはありません。
| ルート | 内容 |
|---|---|
| (1) ケアプランデータ連携システム | 国民健康保険中央会が運用する、居宅介護支援事業所とサービス事業所の間でケアプラン・実績のデータをやり取りする仕組み。ライセンス登録が必要 |
| (2) 連携推進法人 | 介護サービス事業者の連携・協働を推進する法人制度(令和6年4月施行の介護サービス事業者経営情報の見える化等に併せて創設された仕組み) |
実務上は、(1)のケアプランデータ連携システムを利用するほうが現実的だと思います。連携推進法人はまだ数が限られています。
介護職員等処遇改善加算の注意点
サービス提供体制強化加算は要件になっていない
ショートステイや通所介護の処遇改善加算(Ⅰ)は、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出を要件に含んでいます。訪問看護の第10号の2には、この要件がありません。
サービス提供体制強化加算を算定していなくても、処遇改善加算は算定できます。区分がなく1本しかないため、上位区分の要件という考え方自体が存在しないためです。
加算率は1本だけ
| サービス | 処遇改善加算の構造 |
|---|---|
| 訪問介護・通所介護・特養など | (Ⅰ)〜(Ⅳ)の4区分。区分ごとに加算率が異なる |
| 訪問看護 | 区分なし・18/1000(1.8%)の1本 |
介護職員を対象とする従来の処遇改善加算は、区分ごとに加算率が大きく変わります。訪問看護はその構造をとらず、単一の率で設計されています。そもそも母集団の職種構成が違うため、加算率の高さだけを他サービスと比べても意味がありません。訪問看護の1.8%は、介護職員の処遇改善を目的とした従来の枠組みとは性格が異なるものだと読むのが自然です。
実績報告と法令違反に注意
- 介護職員等処遇改善計画書を作成し、全職員に周知し、届け出たか
- 賃金改善の見込額が加算の算定見込額以上になっているか
- 前12月間に労働関係法令違反で罰金以上の刑に処せられていないか
- 労働保険料の納付が適正か
- キャリアパス要件(職責・職務内容の要件、研修計画)を書面化し周知したか
- ケアプランデータ連携システムを利用しているか、連携推進法人に所属しているか
- 事業年度ごとの実績報告の準備ができているか
担当したケースでも、実績報告の期限を落として返還になった事業所がありました。加算は「取ったら終わり」ではなく、毎年の報告まで含めて一つの仕組みです。
要支援の方も同率
介護予防訪問看護費のチにも、同じくイからトまでにより算定した単位数の1000分の18と規定されています。要介護と要支援で率は変わりません。
よくある質問
訪問看護の処遇改善加算の加算率は?
イからリまでにより算定した単位数の1000分の18(約1.8%)です。
いつから算定できますか?
令和8年6月1日からです。令和8年厚生労働省告示第87号により施行されました。
(Ⅰ)〜(Ⅳ)の区分はありますか?
ありません。訪問看護は区分がなく、18/1000の1本だけです。
賃金改善の対象は介護職員だけですか?
告示95号第10号の2は「当該指定訪問看護事業所の職員」と規定しており、介護職員に限定していません。配分方法の詳細は別途通知によります。
ケアプランデータ連携システムは必須ですか?
ケアプランデータ連携システムの利用、または連携推進法人への所属のいずれかが必要です。
サービス提供体制強化加算を取っていないと算定できませんか?
算定できます。訪問看護の基準にサービス提供体制強化加算の届出要件はありません。
計算の基礎に緊急時訪問看護加算は含まれますか?
緊急時訪問看護加算は訪問看護費(イ〜ハ)の注に定められた加算であるため、イ〜ハに含まれると読めます。地域加算のような除外規定はありません。取扱いは指定権者にご確認ください。
届出は必要ですか?
必要です。介護職員等処遇改善計画書を作成し、全職員に周知したうえで都道府県知事に届け出ます。
実績報告は必要ですか?
必要です。事業年度ごとに処遇改善に関する実績を都道府県知事に報告します。
労働関係法令の違反があると算定できませんか?
算定日が属する月の前12月間に、労働基準法等に違反し罰金以上の刑に処せられていないことが要件です。
要支援の方でも算定できますか?
できます。介護予防訪問看護費のチに同じく1000分の18と規定されています。
区分支給限度基準額に含まれますか?
処遇改善加算は区分支給限度基準額の対象外として取り扱われるのが従来の考え方です。取扱いは指定権者にご確認ください。
- 訪問看護の介護職員等処遇改善加算は所定単位数の18/1000
- 令和8年6月1日施行の新しい加算
- (Ⅰ)〜(Ⅳ)のような区分はなく1本だけ
- 計算の基礎は「イからリまでにより算定した単位数」
- 緊急時・特別管理・ターミナルケア加算は注の加算なので基礎に含まれると読める
- 地域加算のような除外規定は置かれていない
- 賃金改善の対象は「介護職員」ではなく「職員」と書かれている
- イは賃金改善計画・届出・実績報告・法令遵守・キャリアパスなど8項目
- ロはケアプランデータ連携システムか連携推進法人のいずれかが必須
- このロの要件は訪問看護に固有
- サービス提供体制強化加算の届出は要件になっていない
- 前12月間に労働関係法令違反で罰金以上の刑に処せられていないこと
- 労働保険料の納付が適正であること
- 事業年度ごとの実績報告を落とすと返還になり得る
- 介護予防訪問看護も同じく1000分の18
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表「訪問看護費」ヌ、附則(令和8年3月13日厚生労働省告示第87号)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第10号の2(訪問看護費における介護職員等処遇改善加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第2の2(25)、第2の4(31)(全国老人保健施設協会 法令データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表「介護予防訪問看護費」チ(全国老人保健施設協会 法令データベース)
※本記事の加算率・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。賃金改善の配分方法、計算の基礎に含める加算の範囲、区分支給限度基準額の取扱い、連携推進法人の該当範囲については、別途通知(「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)および指定権者の取扱いによります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




