「訪問看護ステーションを立ち上げたのに、なかなか黒字にならない」「毎月の収支に追われて、安定した運営の見通しが立たない」——そんな悩みを抱える経営者・管理者の方は少なくありません。訪問看護ステーションは年々増え続けている一方で、廃業に追い込まれる事業所も確実に存在します。

この記事では、訪問看護ステーションの経営者・管理者、そしてこれから開業を目指す方に向けて、黒字化に欠かせない2つの条件と、もっとも重要な「採用」の考え方を、現場と経営の両面からわかりやすく整理します。読み終えるころには、自分の事業所で何から手をつければよいかが見えてくるはずです。

この記事でわかること
  • 訪問看護ステーションが黒字化するために必要な2つの条件
  • 売上の構造(訪問件数×単価)と、利用者を増やす具体策
  • 「職員を増やす」と「離職させない」がなぜ黒字化の鍵なのか
  • コストをかけずに安定採用するための仕組みづくりの考え方

訪問看護ステーションの黒字化に必要な2つの条件

黒字化とは、収入が支出を上回り、利益が残る状態のことです。収支には人件費・家賃・車両費・システム費などさまざまな要素が関わりますが、つきつめると訪問看護ステーションの黒字化に必要なことは、次の2つに集約されます。

黒字化の2つの条件
  1. 利用者を増やす(=売上をつくる)
  2. 職員を増やし、かつ離職させない(=売上を支える体制をつくる)
ちびウルフちびウルフ

たった2つでいいんですか?もっと複雑なものだと思ってました。

リハウルフリハウルフ

シンプルだけど、この2つが両輪なんだ。片方だけ頑張っても黒字は安定しないんだよ。順番に見ていこう。

条件1:利用者を増やす

当たり前のようで、ここがすべての出発点です。黒字化するには売上を上げる必要があり、訪問看護ステーションの売上は、ざっくり次の式で表せます。

売上の基本式 売上 = 訪問件数 × 訪問単価(加算・保険の種類などで変動)

訪問件数を増やすには、その前提となる利用者数を増やすことが欠かせません。利用者を増やすために有効なのは、特別な裏ワザではなく、地道で本質的な取り組みの積み重ねです。

取り組みねらい
目の前の利用者さんに丁寧に関わる満足度が口コミ・継続利用につながる
訪問看護の存在を地域に周知する「困ったら相談できる先」として認知される
職員一人ひとりが地域でブランディングする担当者個人への信頼が依頼を呼ぶ
ケアマネジャーに事業所を知ってもらう新規依頼の入り口を増やす
誰に対しても上から目線にならない多職種・家族との関係が長期的な紹介を生む

とくにケアマネジャーとの関係構築は、新規利用者の依頼ルートとして影響が大きい部分です。日々の報告・連絡・相談を丁寧に行い、「この事業所なら安心して任せられる」と思ってもらえるかどうかが、紹介数を左右します。集患の具体的な方法は、別記事でくわしく解説しています。

条件2:職員を増やす&離職させない

売上づくりと同じくらい大切なのが、職員を増やし、辞めさせないことです。理由は次のとおりです。

職員体制が黒字化を左右する理由
  • 訪問看護ステーションは大規模化したほうが経営が安定するから
  • 1人の職員が訪問できる件数には上限があるから
  • 離職率が高いと採用・教育コストがかさむから
  • 離職が続くと同行訪問や引き継ぎの負担が増えるから

規模が大きいほど、オンコールの分担や休みの取りやすさといった働きやすさも向上し、結果として離職しにくい環境につながります。一方で、大規模化には職員の増員が必要で、新しい職員が入れば教育や同行が発生します。教育や同行をしている時間は、直接の売上にはなりません。だからこそ、無駄な教育・同行を増やさないために、離職率を下げることが重要になるのです。

ちびウルフちびウルフ

採用ってそんなにお金がかかるものなんですか?

リハウルフリハウルフ

人材紹介会社を使うと、看護師1人の採用に80万円前後かかることも珍しくないんだ。そのコストを売上で回収するのは、想像以上に大変なんだよ。

人材紹介会社を利用すると、看護師1人の採用に約80万円かかるケースも一般的です。仮に訪問単価8,000円とすると、80万円を回収するには約100件もの訪問が必要で、しかもそこにさらに人件費や経費が乗ります。だからこそ、なるべく安く・効率よく職員を採用できる「仕組み」を持つことが、黒字化の決め手になります。

訪問看護ステーションの黒字化に1番重要な「採用方法」

2つの条件を踏まえると、黒字化のために最重要なのは採用方法だと言えます。意識すべきポイントは次の2つです。

採用で意識する2点
  • コストをかけずに「職員を増やす」
  • 離職しない職員を「増やす」

しかも、1回採用して終わりではなく、何度でも採用できる「自動化された仕組み」をつくることが理想です。ここで、ありがちな失敗例と、目指したい好循環を比べてみましょう。

ダメな運営例良い運営例
人材会社に頼り続ける自社のホームページを強化する
毎回まとまった紹介料を支払う自社の理念に合う人材が集まる
離職が多くなりやすい離職率の低い状態を保てる
採用コストが下がらない人材が入る好循環を仕組み化できる

人材紹介で離職しやすい看護師を約80万円かけて1名採用するより、その費用より低いコストで一度ホームページを強化し、自社に合った人材が継続的に応募してくる状態をつくるほうが、長い目で見れば経営に効きます。求人広告や紹介に依存し続けるのではなく、「自社で採用できる入り口」を育てるという発想が大切です。

ちびウルフちびウルフ

ホームページを強くするって、具体的に何をすればいいんですか?

リハウルフリハウルフ

事業所の理念・働き方・職員の声を発信して、検索から見つけてもらえるようにSEOを整えること。応募者が「ここで働きたい」と思える情報を載せておくのが第一歩だよ。

採用の仕組みづくりを進めるステップ

  1. 自社の理念・働き方・強みを言語化し、応募者に伝わる形にまとめる
  2. 採用専用ページ(または採用情報の充実したホームページ)を用意する
  3. 検索で見つけてもらえるよう、求職者が知りたい情報をSEOを意識して掲載する
  4. 応募から面接・入職までの導線と対応フローを整える
  5. 入職後の教育・フォロー体制を整え、離職率を継続的に下げる

採用の仕組みは一朝一夕には完成しませんが、整えば「広告費をかけ続けなくても応募が来る」状態に近づきます。これは、毎月の固定費を圧迫する人材紹介料からの脱却にもつながり、黒字化を後押しします。

経営の土台を固める:報酬・加算の理解も忘れずに

採用と集患で売上と体制を整えるのと並行して、制度・報酬の正しい理解も経営の土台になります。算定できる加算を取りこぼしていないか、処遇改善加算を適切に取得できているかは、収支に直結します。

あわせて確認したいポイント
  • 取得可能な加算を取りこぼしていないか
  • 処遇改善加算を適切に算定し、職員の待遇向上につなげられているか
  • 最新の報酬改定の内容を運営に反映できているか

処遇改善加算は、職員の賃金改善を通じて離職率の低下にもつながるため、採用の安定化という観点でも重要です。制度面は変更が多いので、最新情報を定期的に確認しておきましょう。

数字で運営を「見える化」する

黒字化を継続するには、感覚ではなく数字で経営状況を把握することも欠かせません。とくに次のような指標を毎月チェックしておくと、収支の変化に早く気づけます。

毎月確認したい主な指標
  • 1人あたり訪問件数:職員の稼働状況と生産性の目安
  • 新規利用者数・終了者数:利用者数が増えているか減っているか
  • 採用コストと離職率:採用の仕組みが機能しているかの判断材料
  • 加算の算定状況:取りこぼしがないかの確認

これらを毎月の振り返りに組み込み、課題が見えたら早めに手を打つサイクルをつくることが、安定した黒字運営への近道です。「利用者を増やす」「職員を増やす&離職させない」という2つの条件が、いま自分の事業所でどの程度満たせているのかを、数字で点検していきましょう。

よくある質問(FAQ)

訪問看護ステーションはどのくらいの規模で黒字化しやすいですか?
一般的に、看護師などの常勤換算人数が多い大規模なステーションほど、オンコールや訪問件数の分散が効き、経営が安定しやすいとされています。ただし規模拡大には採用と教育が伴うため、離職率を抑えながら段階的に増員することが現実的です。
人材紹介会社は使ってはいけないのでしょうか?
絶対に使ってはいけないわけではありません。急な欠員などで活用する場面はあります。ただし紹介料は高額になりやすく、紹介経由は離職率が高い傾向も指摘されます。紹介に依存せず、自社で採用できる入り口を並行して育てることが大切です。
利用者を増やすのに一番効果的なのは何ですか?
単一の万能策はありませんが、目の前の利用者への丁寧な関わりと、ケアマネジャーをはじめとする地域の多職種との信頼関係づくりが土台になります。良い評判と紹介の循環ができると、安定的に新規依頼が入りやすくなります。
ホームページ強化はどれくらいで効果が出ますか?
検索からの流入が育つには一定の期間がかかるのが一般的で、すぐに応募が殺到するものではありません。中長期の投資と捉え、理念や職員の声、働き方などの情報を継続的に充実させていくことで、自社に合う人材からの応募につながりやすくなります。
まとめ
  • 訪問看護ステーションの黒字化の条件は「利用者を増やす」+「職員を増やす&離職させない」の2つ
  • 売上は「訪問件数×訪問単価」。件数を増やすには利用者数の増加が前提になる
  • 大規模化は経営を安定させるが、増員には採用と教育が伴うため離職率を下げることが重要
  • もっとも重要なのは採用方法。コストをかけず、離職しない職員を継続的に増やす仕組みづくりを目指す
  • おすすめはSEOを意識した自社ホームページの強化。人材紹介への依存から脱却し、自社に合う人材が集まる好循環をつくる
  • あわせて加算・処遇改善加算など報酬面の理解を深め、経営の土台を固める

なお、組織づくりの参考書としては『訪問看護の社長業-最高のサービスを生み出す組織のつくり方-』なども、経営者・管理者の視点で読みやすい一冊です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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