訪問看護の口腔連携強化加算とは?

訪問看護の口腔連携強化加算は、1月に1回に限り50単位です。令和6年度介護報酬改定で新設されました。
単位数は小さいのですが、1人の利用者について、複数の事業所が同時に算定することはできません。訪問看護・訪問介護・通所介護など、どの事業所が算定するかをサービス担当者会議で決める必要があります。さらに口腔・栄養スクリーニング加算や歯科の居宅療養管理指導との重複も排除されています。この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費のチ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第9号の2、老企第36号 第2の2(23)の原文を確認して整理しました。
- 口腔連携強化加算は1月に1回50単位であること
- 令和6年度改定で新設された加算であること
- 歯科医療機関との連携体制を文書で取り決める必要があること
- 連携先は歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関であること
- 評価する8つの項目
- 情報提供先は歯科医療機関と介護支援専門員の両方であること
- 1人の利用者について1事業所しか算定できないこと
- 口腔・栄養スクリーニング加算などとの重複が排除されていること
ちびウルフ50単位なら、取れるところは全部取ったほうがいいですよね?
リハウルフそこは早い者勝ちにできません。同じ利用者について、他の事業所が口腔連携強化加算を算定していると算定できない、という基準が入っています。老企36号も「サービス担当者会議等を活用し決定する」と書いています。訪問介護と通所介護と訪問看護が同じ月に別々に算定する、ということは起きない設計です。
訪問看護の口腔連携強化加算とは?
口腔連携強化加算は、訪問看護の従業者が利用者の口腔の健康状態を評価し、その結果を歯科医療機関と介護支援専門員に情報提供した場合を評価する加算です。告示19号 訪問看護費のチに規定されています。
在宅で暮らす方の口の中は、専門職の目が届きにくい場所です。誤嚥性肺炎、低栄養、食べる楽しみの喪失。いずれも口腔の状態と直結しますが、歯科につながっていない方は少なくありません。
この加算は、日常的に居宅を訪問している職種が最初の気づきを担い、歯科につなぐ導線をつくることを狙っています。評価そのものより、歯科医療機関とケアマネジャーへ情報を渡すところまでが要件になっているのが特徴です。
令和6年度介護報酬改定で新設されました。訪問介護・訪問入浴介護・訪問リハビリテーション・通所介護など、多くのサービスに横並びで設けられています。
口腔連携強化加算の単位数
チ 口腔連携強化加算 50単位
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)届出を行った指定訪問看護事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果の情報提供を行ったときは、口腔連携強化加算として、1月に1回に限り所定単位数を加算する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 要支援 | 届出 |
|---|---|---|---|---|
| 口腔連携強化加算 | 50単位 | 1月に1回 | ○(同額50単位) | 必要 |
介護予防訪問看護費のヘにも、同じく50単位で規定されています。要支援の方でも同額です。
他サービスの口腔連携強化加算と同額
| サービス | 単位数 | 頻度 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 50単位 | 1月に1回 |
| 訪問介護 | 50単位 | 1月に1回 |
| 訪問リハビリテーション | 50単位 | 1月に1回 |
| 訪問入浴介護 | 50単位 | 1月に1回 |
横並びで50単位です。だからこそ「どの事業所が算定するか」が問題になります。
口腔連携強化加算の算定要件
①歯科医療機関との連携体制(告示95号 第9号の2 イ)
イ 指定訪問看護事業所の従業者が利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うに当たって、歯科診療報酬点数表の区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士に相談できる体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 相手方 | 歯科訪問診療料(C000)の算定実績がある歯科医療機関 |
| 相談相手 | 歯科医師、または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士 |
| 体制 | 相談できる体制を確保していること |
| 形式 | 文書等で取り決めていること |
近所の歯科医院ならどこでもよい、というわけではありません。訪問診療の実績があることが条件です。老企第36号によれば、この連携歯科医療機関は複数でも差し支えありません。
②評価する8つの項目(老企第36号 第2の2(23)⑤)
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| イ | 開口の状態 | |
| ロ | 歯の汚れの有無 | |
| ハ | 舌の汚れの有無 | |
| ニ | 歯肉の腫れ、出血の有無 | |
| ホ | 左右両方の奥歯のかみ合わせの状態 | |
| ヘ | むせの有無 | |
| ト | ぶくぶくうがいの状態 | 状態に応じ確認可能な場合に限る |
| チ | 食物のため込み、残留の有無 | 状態に応じ確認可能な場合に限る |
ト・チの2項目は、利用者の状態によって確認できない場合があることが前提になっています。意識障害や指示理解が難しい方でも、他の6項目で評価できる設計です。
③情報提供の相手は2者
評価の結果は、歯科医療機関と介護支援専門員の両方に、別紙様式6等により提供します。利用者の同意が必要です。
老企第36号 ④によれば、利用者・家族の意向とケアマネジャーの意見等を踏まえ、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医のいずれか、または両方に情報提供します。文書で取り決めた連携歯科医療機関に必ず出さなければならない、というわけではありません。
④重複算定の排除(告示95号 第9号の2 ロ)
次のいずれにも該当しないことが要件です。
| 号 | 該当すると算定できないケース |
|---|---|
| (1) | 当該利用者について口腔・栄養スクリーニング加算を算定していること(他の事業所で栄養状態のスクリーニングを行い、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合を除く) |
| (2) | 指定居宅療養管理指導事業所が歯科医師または歯科衛生士が行う居宅療養管理指導費を算定していること(口腔の健康状態の評価の結果、居宅療養管理指導が必要と歯科医師が判断し、初回の居宅療養管理指導を行った日の属する月を除く) |
| (3) | 当該事業所以外の介護サービス事業所において、当該利用者について口腔連携強化加算を算定していること |
(2)のかっこ書きは重要です。口腔連携強化加算で歯科につないだ結果、その月から歯科の居宅療養管理指導が始まった場合、その初回の月は算定できます。つなぐ役割を果たした月まで算定不可にすると、加算の趣旨と矛盾するためだと読めます。
口腔連携強化加算の注意点
どの事業所が算定するかを担当者会議で決める
⑧ 口腔連携強化加算の算定を行う事業所については、サービス担当者会議等を活用し決定することとし、原則として、当該事業所が当該加算に基づく口腔の健康状態の評価を継続的に実施すること。
「今月はうちが取る、来月は通所が取る」という運用は想定されていません。継続的に同じ事業所が実施することが原則です。
担当したケースでも、訪問介護と通所介護と訪問看護が入っている方で、誰が評価するかが決まらないまま誰も算定していないという状態がありました。ケアマネジャーが担当者会議で整理するのが現実的です。訪問看護は口腔内を直接観察する機会が多く、担い手として適していると思います。
「従業者」なので職種は限定されない
注は「指定訪問看護事業所の従業者が」と書いています。看護職員に限定されていません。訪問看護ステーションから訪問する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による評価も、条文上は含まれると読めます。とくにSTは口腔・嚥下の評価に近い専門性を持っています。
主治医への情報提供が必要な場合がある
老企第36号 ⑦は、口腔の健康状態によっては主治医の対応を要する場合もあるため、必要に応じて介護支援専門員を通じて主治医にも情報提供等の適切な措置を講ずるとしています。加算の要件そのものではありませんが、実務としては当然の流れです。
評価の考え方は別途通知を参照
老企第36号 ⑥は、「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」および「入院(所)中及び在宅等における療養中の患者に対する口腔の健康状態の確認に関する基本的な考え方」(令和6年3月 日本歯科医学会)等を参考にするよう求めています。
- 歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関と、文書で取り決めをしたか
- 都道府県知事への届出を済ませているか
- 同じ利用者について、他の事業所が口腔連携強化加算を算定していないか
- 口腔・栄養スクリーニング加算を算定していないか
- 歯科の居宅療養管理指導費が算定されていないか(初回月を除く)
- 評価結果を歯科医療機関と介護支援専門員の両方に提供したか
- 利用者の同意を得たか
- 担当者会議で算定事業所を決めているか
よくある質問
訪問看護の口腔連携強化加算はいくらですか?
1月に1回に限り50単位です。介護予防訪問看護でも同額の50単位です。
いつ新設された加算ですか?
令和6年度介護報酬改定で新設されました。
届出は必要ですか?
必要です。都道府県知事に対し、電子情報処理組織を使用する方法で届け出ます。
どんな歯科医療機関と連携すればよいですか?
歯科診療報酬点数表C000の歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関です。相談できる体制を確保し、文書等で取り決める必要があります。
連携先の歯科医療機関は1か所だけですか?
複数でも差し支えありません。
評価する項目は何ですか?
開口の状態、歯の汚れ、舌の汚れ、歯肉の腫れ・出血、左右の奥歯のかみ合わせ、むせの有無の6項目に加え、状態に応じてぶくぶくうがいの状態、食物のため込み・残留の有無を確認します。
情報提供先はどこですか?
歯科医療機関と介護支援専門員の両方です。別紙様式6等により提供します。
看護師以外でも評価できますか?
条文は「従業者」としており、職種を限定していません。取扱いは指定権者にご確認ください。
通所介護でも算定している場合はどうなりますか?
算定できません。当該事業所以外の介護サービス事業所が同じ利用者について口腔連携強化加算を算定している場合は要件を満たしません。
どの事業所が算定するかはどう決めますか?
サービス担当者会議等を活用して決定します。原則として同じ事業所が継続的に評価を実施します。
歯科の居宅療養管理指導が入っていると算定できませんか?
原則として算定できません。ただし、口腔の健康状態の評価の結果、歯科医師が必要と判断して初回の居宅療養管理指導を行った月は除かれます。
口腔・栄養スクリーニング加算と併算定できますか?
できません。ただし他の事業所が栄養状態のスクリーニングを行い、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合は除かれます。
要支援の方でも算定できますか?
できます。介護予防訪問看護費のヘに50単位で規定されています。
- 訪問看護の口腔連携強化加算は1月に1回50単位
- 令和6年度介護報酬改定で新設された
- 介護予防訪問看護でも同額の50単位
- 届出が必要な加算
- 歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関と文書で取り決めること
- 連携歯科医療機関は複数でも差し支えない
- 評価項目は8つ(うち2つは状態に応じて確認可能な場合に限る)
- 情報提供先は歯科医療機関と介護支援専門員の両方
- 提供先は連携歯科医療機関でもかかりつけ歯科医でもよい
- 1人の利用者について1事業所しか算定できない
- 算定する事業所はサービス担当者会議等で決定し、継続的に実施する
- 口腔・栄養スクリーニング加算とは重複算定できない
- 歯科の居宅療養管理指導が算定されている月も原則算定できない
- ただし歯科につないだ初回の居宅療養管理指導の月は算定できる
- 条文は「従業者」であり、職種を看護職員に限定していない
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表「訪問看護費」チ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第9号の2(訪問看護費における口腔連携強化加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第2の2(23)、第2の4(29)(全国老人保健施設協会 法令データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表「介護予防訪問看護費」ヘ(全国老人保健施設協会 法令データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。とくに評価を実施できる従業者の職種の範囲、文書による取り決めの様式、算定事業所を変更する場合の取扱いについては、指定権者の取扱いによります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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