ショートステイの認知症専門ケア加算とは?

ショートステイ(短期入所生活介護)の認知症専門ケア加算は、(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位です。1日につき算定します。
単位数は小さいのですが、要件は軽くありません。入口となる(Ⅰ)の第1要件が「対象者の割合が2分の1以上」だからです。利用者の半数が、日常生活に支障を来すおそれのある症状・行動により介護を必要とする認知症の方であること。これは事業所が選べる条件ではなく、受け入れている利用者の構成で決まります。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)短期入所生活介護費のヘ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の5、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第23号の2の原文を確認して整理しました。
- 認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位の違い
- 対象者の割合2分の1以上という入口要件
- 「対象者」の定義(告示94号第23号の2)
- 専門研修修了者の必要人数の計算式
- (Ⅱ)で追加される指導者の配置と研修計画
- 訪問系サービスの同名加算とは要件が違うこと
- 若年性認知症利用者受入加算との関係
- 特養と一体で要件を満たせるか
ちびウルフ(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は1単位ですよね。要件が増えるのに1単位しか変わらないんですか?
リハウルフ1日1単位です。ただ全利用者・全日に付くので、定員20人で毎日埋まれば月600単位。そして(Ⅱ)で求められる指導者の配置と研修計画は、認知症加算や他サービスの加算でも使える体制です。1単位のためではなく、体制整備の一環として見るほうが実態に合います。
ショートステイの認知症専門ケア加算とは?
短期入所生活介護の認知症専門ケア加算は、認知症の方への専門的なケアを行う体制を整えた事業所を評価する加算です。告示19号 短期入所生活介護費のヘに規定されています。
ショートステイを利用する方には、認知症のある方が多く含まれます。環境が変わることで症状が強く出やすく、帰宅願望や夜間の不穏、他の利用者とのトラブルが生じやすい場面でもあります。
そうした状況に、経験だけで対応するのか、専門的な研修を受けた職員がチームとして関わるのか。この加算は後者の体制を評価します。個々の利用者への支援内容ではなく、事業所としての体制が問われる加算です。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
認知症専門ケア加算の単位数
ヘ 認知症専門ケア加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)届出を行った指定短期入所生活介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める者に対して専門的な認知症ケアを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
イ 認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位
ロ 認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 届出 |
|---|---|---|---|
| 認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 3単位 | 1日につき | 必要 |
| 認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 4単位 | 1日につき | 必要 |
(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできません。
年間の規模感
| 1日あたりの延べ利用者数 | (Ⅰ)3単位・月 | (Ⅱ)4単位・月 | (Ⅱ)年間 |
|---|---|---|---|
| 10人 | 900単位 | 1,200単位 | 14,400単位 |
| 20人 | 1,800単位 | 2,400単位 | 28,800単位 |
| 30人 | 2,700単位 | 3,600単位 | 43,200単位 |
※30日稼働で計算した概算です。
認知症専門ケア加算の算定要件
告示95号 第3号の5が定める要件です。短期入所生活介護のほか、特定施設・グループホーム・特養・老健・介護医療院などに共通の条文です。
(Ⅰ)3単位の3要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 対象者の割合 | 事業所における利用者の総数のうち、対象者の占める割合が2分の1以上であること |
| (2) 専門研修修了者の配置 | 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を、対象者の数が20人未満の場合は1以上、20人以上の場合は1に対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること |
| (3) 会議の定期開催 | 従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催していること |
「対象者」の定義
二十三の二 指定居宅サービス介護給付費単位数表の短期入所生活介護費のヘの注の厚生労働大臣が定める者
日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者
認知症の診断があるだけでは対象になりません。症状・行動により介護を必要とする状態であることが要件です。実務では認知症高齢者の日常生活自立度に照らして整理することになりますが、告示本文に自立度の区分は書かれていません。指定権者の取扱いを確認してください。
専門研修修了者は何人必要か
| 対象者の数 | 必要な専門研修修了者 |
|---|---|
| 20人未満 | 1以上 |
| 20人以上 | 1に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上 |
- 対象者15人 → 1人以上
- 対象者20人 → 1+(20−19=1、10の端数で1)=2人以上
- 対象者29人 → 1+(29−19=10、10で1)=2人以上
- 対象者30人 → 1+(30−19=11、10とその端数で2)=3人以上
(Ⅱ)4単位で追加される要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) | (Ⅰ)の(1)〜(3)すべてに適合すること |
| (2) 指導者の配置 | 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施していること |
| (3) 研修計画 | 介護職員・看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、計画に従い研修(外部研修を含む)を実施または実施を予定していること |
(Ⅱ)は(Ⅰ)の完全な上位区分です。追加されるのは「指導する側の研修を修了した者」の配置と、職員個別の研修計画。いずれも人材育成の体制に関わる要件です。
訪問系サービスの同名加算との違い
| 項目 | ショートステイ(第3号の5) | 訪問介護等(第3号の4) |
|---|---|---|
| (Ⅰ)の対象者の割合 | 介護を必要とする認知症の者が2分の1以上 | 注意を必要とする認知症の者が2分の1以上 |
| (Ⅱ)の割合要件 | 追加なし | 介護を必要とする認知症の者が20%以上を追加 |
| (Ⅱ)の構成 | (Ⅰ)の全要件+2つ | イ(2)(3)+3つ |
訪問介護・訪問入浴介護などが参照する第3号の4では、(Ⅰ)の対象者が「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」と、より広い定義になっています。ショートステイ側は「介護を必要とする」でスタートするため、入口の水準が違います。
同じ「認知症専門ケア加算」でも、サービス類型ごとに要件の組み立てが異なります。他サービスの解説をそのまま当てはめないでください。
他の加算との関係
| 加算 | 単位数 | 認知症専門ケア加算との関係 |
|---|---|---|
| 認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 200単位/日(7日限度) | 告示に併算定を制限する定めはない |
| 若年性認知症利用者受入加算 | 120単位/日 | 注16のただし書きは注15(BPSD緊急対応)との関係のみ。認知症専門ケア加算との制限はない |
認知症関連の加算どうしで、認知症専門ケア加算を制限する定めは告示に見当たりません。要件を満たせば併算定できると読めますが、取扱いは指定権者に確認してください。
認知症専門ケア加算の注意点
対象者の割合は変動する
ショートステイは利用者の入れ替わりが激しいサービスです。対象者の割合も専門研修修了者の必要人数も、月によって変わります。
担当したケースでも、対象者が19人から20人に増えた月に配置が1人のままで、要件を満たさなくなっていた事業所がありました。月ごとに集計する仕組みを持っておかないと、気づかないまま算定を続けることになります。
「専門的な研修」の範囲
(2)の「認知症介護に係る専門的な研修」、(Ⅱ)の「認知症介護の指導に係る専門的な研修」がどの研修を指すかは、告示本文に列挙がありません。実務では認知症介護実践リーダー研修・認知症介護指導者養成研修などが想定されますが、告示からは確定できません。指定権者の取扱いを確認してください。
「専門的な認知症ケアを行った場合」
ヘの注は「別に厚生労働大臣が定める者に対して専門的な認知症ケアを行った場合」としています。体制の届出をしていれば自動的に算定できるのではなく、対象の利用者に対して実際にケアを行っていることが前提です。記録を残してください。
特養と一体で要件を満たせるか
併設型のショートステイは、本体の特別養護老人ホームと運営が一体です。専門研修修了者の配置や会議の開催を本体と一体的に行えるかは、告示本文からは読み取れません。対象者の割合をどちらの単位で計算するのかも含め、指定権者に確認してください。
- 都道府県知事等への届出を済ませているか
- 対象者の割合が2分の1以上あるか(月ごとに集計)
- 対象者の数に対して専門研修修了者が足りているか
- (Ⅱ)なら指導に係る研修の修了者を1名以上配置しているか
- (Ⅱ)なら介護職員・看護職員ごとの研修計画があるか
- 認知症ケアに関する会議を定期的に開催した記録があるか
- 対象者に専門的なケアを行った記録があるか
よくある質問
ショートステイの認知症専門ケア加算はいくらですか?
(Ⅰ)が3単位、(Ⅱ)が4単位です。いずれも1日につき算定します。
(Ⅰ)の要件は何ですか?
対象者の割合が2分の1以上であること、専門研修修了者を必要数配置しチームとしてケアを実施していること、認知症ケアに関する会議を定期的に開催していることの3つです。
(Ⅱ)で追加される要件は?
認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了した者を1名以上配置すること、介護職員・看護職員ごとの研修計画を作成し研修を実施することの2つです。
「対象者」とは誰ですか?
日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の方です。診断があるだけでは対象になりません。
専門研修修了者は何人必要ですか?
対象者が20人未満なら1以上、20人以上なら1に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えた数以上です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合はその他を算定できません。
訪問介護の認知症専門ケア加算と同じ要件ですか?
違います。訪問系は第3号の4、ショートステイは第3号の5を参照し、対象者の定義や(Ⅱ)の構成が異なります。
体制を届け出れば自動的に算定できますか?
できません。対象者に対して専門的な認知症ケアを行っていることが前提です。
「専門的な研修」とは具体的にどの研修ですか?
告示本文に列挙はありません。指定権者の取扱いを確認してください。
認知症行動・心理症状緊急対応加算と併算定できますか?
告示に併算定を制限する定めは見当たりません。取扱いは指定権者に確認してください。
特養と一体で要件を満たせますか?
告示本文からは読み取れません。対象者の割合をどの単位で計算するかも含め、指定権者に確認してください。
対象者の割合はいつ判定しますか?
告示に判定時期の定めはありません。利用者の入れ替わりが激しいため、月ごとに集計する運用が安全です。
- ショートステイの認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位(1日につき)
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
- 都道府県知事等への届出が必要
- 入口の要件は対象者の割合が2分の1以上
- 対象者は「介護を必要とする認知症の者」で、診断があるだけでは該当しない
- 専門研修修了者は対象者20人未満で1以上、20人以上で計算式による
- チームとして専門的な認知症ケアを実施していることが要件
- 認知症ケアに関する会議の定期開催が要件
- (Ⅱ)は(Ⅰ)の全要件に指導者の配置と研修計画が加わる
- 訪問系サービス(第3号の4)とは対象者の定義も(Ⅱ)の構成も異なる
- 体制の届出だけでは足りず、実際に専門的なケアを行っていることが前提
- ショートステイは利用者の入れ替わりが激しく、割合も必要人数も月ごとに変動する
- 「専門的な研修」の具体的な範囲は告示本文からは確定できない
- 他の認知症関連加算との併算定を制限する定めは告示に見当たらない
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表「短期入所生活介護費」ヘ、注15、注16(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第3号の5(短期入所生活介護費等における認知症専門ケア加算の基準)、第3号の4(訪問介護費等における同加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)第23号の2(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。とくに「認知症介護に係る専門的な研修」「認知症介護の指導に係る専門的な研修」に該当する研修の範囲、対象者の判定方法(認知症高齢者の日常生活自立度との対応)、対象者の割合を判定する時期、併設型において本体施設と一体的に要件を満たせるかについては告示本文に明記がなく、留意事項通知および指定権者の取扱いによります。指定権者にご確認ください。記事中の単位数の計算例は概算です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




