訪問看護のサービス提供体制強化加算とは?

訪問看護のサービス提供体制強化加算は、(Ⅰ)6単位・(Ⅱ)3単位です。1回につき算定します。
他サービスと決定的に違うのは、介護福祉士の割合という要件がまったくないことです。訪問看護で見るのは勤続年数だけ。(Ⅰ)は勤続7年以上が30%以上、(Ⅱ)は勤続3年以上が30%以上。しかも母数の「看護師等」には理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も含まれます。さらに勤続年数は同一法人の他事業所や病院での勤務年数を通算できます。この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費のリ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第10号、老企第36号 第2の3(12)の原文を確認して整理しました。
- サービス提供体制強化加算(Ⅰ)6単位・(Ⅱ)3単位であること
- 定期巡回連携型(ハ)は50単位・25単位であること
- 介護福祉士の割合要件がないこと
- 母数の「看護師等」にPT・OT・STが含まれること
- (Ⅰ)は勤続7年以上30%、(Ⅱ)は勤続3年以上30%
- 勤続年数は同一法人の他事業所・病院での勤務も通算できること
- 研修計画・会議・健康診断の3つの共通要件
- 介護予防訪問看護と一体的に運営している場合の計算
ちびウルフ勤続3年以上が30%なら、けっこう取れそうな気がします。
リハウルフそうです。しかも勤続年数は同一法人の他の介護サービス事業所や病院での勤務年数を含められます。病院から異動してきた看護師は、その病院での年数を持ってこられる。訪問看護ステーションは開設が新しくても、この通算で(Ⅱ)に届くことがあります。計算し直してみる価値はあります。
訪問看護のサービス提供体制強化加算とは?
サービス提供体制強化加算は、人材の育成と定着に取り組んでいる事業所を評価する加算です。告示19号 訪問看護費のリに規定されています。
訪問看護は、1人で利用者の居宅に入り、その場で判断する仕事です。経験の厚みが、そのまま安全性とサービスの質に直結します。加えて、教える人がいなければ新人は育ちません。
この加算は、研修・会議・健康管理という育成と労働環境の土台があること、そして経験のある職員が一定割合いることを、報酬で評価します。介護福祉士の割合を見る他サービスと違い、訪問看護は資格ではなく「経験年数」だけで測る設計になっています。看護師・保健師・PT・OT・STはいずれも国家資格であり、資格の有無で差をつける意味が薄いためだと読めます。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
サービス提供体制強化加算の単位数
リ サービス提供体制強化加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)届出を行った指定訪問看護事業所が、利用者に対し、指定訪問看護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、イ及びロについては1回につき、ハについては1月につき、次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) イ又はロを算定している場合
(一) サービス提供体制強化加算(Ⅰ) 6単位
(二) サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 3単位
(2) ハを算定している場合
(一) サービス提供体制強化加算(Ⅰ) 50単位
(二) サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 25単位
| 算定している区分 | (Ⅰ) | (Ⅱ) | 頻度 |
|---|---|---|---|
| イ(訪問看護ステーション)・ロ(病院・診療所) | 6単位 | 3単位 | 1回につき |
| ハ(定期巡回・随時対応型と連携/月額包括) | 50単位 | 25単位 | 1月につき |
| 介護予防訪問看護 | 6単位 | 3単位 | 1回につき |
(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できません。
月額でいくらになるか
| 月の訪問回数 | (Ⅰ)6単位 | (Ⅱ)3単位 |
|---|---|---|
| 週1回(月4回) | 24単位 | 12単位 |
| 週2回(月8回) | 48単位 | 24単位 |
| 週3回(月12回) | 72単位 | 36単位 |
1人あたりの金額は小さいのですが、訪問回数に比例するため、利用者数が多い事業所ほどまとまった額になります。延べ800回の月なら(Ⅰ)で4,800単位です。
サービス提供体制強化加算の算定要件
告示95号 第10号が定める要件です。
(Ⅰ)6単位
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) | 全ての看護師等に対し、看護師等ごとに研修計画を作成し、計画に従い研修(外部研修を含む)を実施または実施を予定していること |
| (2) | 利用者に関する情報・留意事項の伝達または技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること |
| (3) | 全ての看護師等に対し、健康診断等を定期的に実施すること |
| (4) | 看護師等の総数のうち、勤続年数7年以上の者が30%以上であること |
(Ⅱ)3単位
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) | (Ⅰ)の(1)から(3)までのいずれにも適合すること |
| (2) | 看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者が30%以上であること |
通所介護・ショートステイ・特養などは介護福祉士の割合が中心の要件ですが、訪問看護の第10号には介護福祉士という語が一度も出てきません。違いは勤続年数だけ。(Ⅰ)7年・(Ⅱ)3年の2択です。
母数の「看護師等」に誰が入るか
告示95号 第10号は「指定訪問看護事業所の全ての看護師等(指定居宅サービス等基準第60条第1項に規定する看護師等をいう)」としています。この「看護師等」は、告示19号 訪問看護費の注1で次のように定義されています。
指定訪問看護事業所の保健師、看護師、准看護師又は理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士(以下「看護師等」という。)
PT・OT・STも母数に入ります。看護体制強化加算のように「看護職員の割合60%以上」を見るものとは、母数の考え方が違います。リハビリ職の比率が高い事業所でも、この加算では不利になりません。
割合の計算方法(老企第36号 第2の3(12))
常勤換算・前年度平均
| ケース | 用いる数値 |
|---|---|
| 通常 | 常勤換算方法により算出した前年度(3月を除く)の平均 |
| 前年度の実績が6月に満たない事業所(新規開設・再開を含む) | 届出日の属する月の前3月について常勤換算方法により算出した平均 |
新規開設の事業所は、4月目以降に届出が可能になります。前3月で届け出た場合は、届出後も直近3月間の割合を毎月継続的に維持しなければなりません。割合は毎月記録し、下回った場合は直ちに届出を提出します。
勤続年数は他事業所の分を通算できる
⑥ 勤続年数とは、各月の前月の末日時点における勤続年数をいうものとする。
⑦ 勤続年数の算定に当たっては、当該事業所における勤務年数に加え、同一法人等の経営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設等においてサービスを利用者に直接提供する職員として勤務した年数を含めることができるものとする。
ここが訪問看護でいちばん効く規定です。同一法人が病院を経営していて、そこから異動してきた看護師なら、病院での勤務年数を通算できます。
担当したケースでも、開設3年目のステーションが「うちは勤続3年以上が足りない」と算定を見送っていました。法人の病院からの異動者が2名いて、通算すると30%を超えていました。開設年数と勤続年数は別物です。
介護予防訪問看護と一体的に運営している場合
老企第36号 ⑧により、同一の事業所で介護予防訪問看護を一体的に行っている場合は、本加算の計算も一体的に行います。要介護と要支援を分けて計算する必要はありません。
サービス提供体制強化加算の注意点
研修計画は「看護師等ごと」に作る
事業所全体の研修計画だけでは足りません。老企第36号 ①によれば、研修内容の全体像と勤務体制の確保を定めたうえで、職員ごとに研修の目標・内容・期間・実施時期を定めた計画を策定する必要があります。
会議は全員参加・おおむね月1回以上
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 参加者 | サービス提供に当たる看護師等のすべて(グループ別開催は可) |
| 頻度 | おおむね1月に1回以上 |
| 方法 | テレビ電話装置等の活用可(個人情報・安全管理のガイドライン遵守) |
| 記録 | 開催状況の概要を記録すること |
記載すべき内容は、利用者のADLや意欲、主な訴えやサービス提供時の特段の要望、家族を含む環境、前回のサービス提供時の状況、その他必要な事項です。その変化の動向を含めて記載します。
健康診断は事業主負担・年1回以上
労働安全衛生法で義務づけられた「常時使用する労働者」に該当しない職員も含め、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施します。登録型・非常勤の看護師も対象です。新たに算定する場合は、1年以内に実施されることが計画されていれば足ります。
- 看護師等ごとの研修計画を作成しているか
- 会議をおおむね月1回以上開催し、概要を記録しているか
- 非常勤も含め全員に健康診断を事業主負担で実施しているか
- 勤続年数に同一法人の他事業所・病院での年数を通算したか
- 母数にPT・OT・STを含めて計算したか
- 常勤換算・前年度(3月を除く)平均で計算したか
- 割合を毎月記録しているか
- 都道府県知事への届出を済ませているか
よくある質問
訪問看護のサービス提供体制強化加算はいくらですか?
(Ⅰ)6単位、(Ⅱ)3単位です。1回につき算定します。定期巡回連携型(ハ)を算定している場合は1月につき(Ⅰ)50単位・(Ⅱ)25単位です。
介護福祉士の割合は関係ありますか?
関係ありません。訪問看護の要件に介護福祉士の割合はなく、勤続年数だけで判定します。
(Ⅰ)の要件は何ですか?
研修計画の作成と実施、定期的な会議の開催、定期的な健康診断の実施に加え、看護師等の総数のうち勤続年数7年以上の者が30%以上であることです。
(Ⅱ)の要件は?
(Ⅰ)の(1)〜(3)を満たし、勤続年数3年以上の者が30%以上であることです。
母数にリハビリ職は入りますか?
入ります。「看護師等」は保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を指します。
勤続年数は前の職場の分も数えられますか?
同一法人等が経営する他の介護サービス事業所・病院・社会福祉施設等で、サービスを利用者に直接提供する職員として勤務した年数を含めることができます。法人が異なる場合は含められません。
割合はいつの時点で計算しますか?
常勤換算方法により算出した前年度(3月を除く)の平均です。前年度の実績が6月に満たない場合は届出日の属する月の前3月の平均を用います。
新規開設でも算定できますか?
前3月の平均で判定するため、4月目以降に届出が可能です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合はその他を算定できません。
会議はどのくらいの頻度で必要ですか?
「定期的」とはおおむね1月に1回以上とされています。テレビ電話装置等の活用も可能です。
非常勤の看護師にも健康診断が必要ですか?
必要です。労働安全衛生法上の「常時使用する労働者」に該当しない職員も含め、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施します。
介護予防と分けて計算しますか?
一体的に運営している場合は、加算の計算も一体的に行います。
割合が下回ったらどうしますか?
直ちに届出を提出しなければなりません。割合は毎月記録します。
- 訪問看護のサービス提供体制強化加算は(Ⅰ)6単位・(Ⅱ)3単位(1回につき)
- 定期巡回連携型(ハ)は(Ⅰ)50単位・(Ⅱ)25単位(1月につき)
- 介護予防訪問看護も6単位・3単位で同額
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできない
- 介護福祉士の割合要件がない。勤続年数だけで判定する
- (Ⅰ)は勤続7年以上30%以上、(Ⅱ)は勤続3年以上30%以上
- 共通要件は研修計画・定期的な会議・定期的な健康診断の3つ
- 母数の「看護師等」にはPT・OT・STも含まれる
- 勤続年数は同一法人の他事業所・病院での勤務年数を通算できる
- 開設年数が浅くても通算で届くことがある
- 割合は常勤換算・前年度(3月を除く)平均で計算
- 新規開設は前3月の平均で判定でき、4月目以降に届出可能
- 研修計画は「看護師等ごと」に個別具体的に作る
- 会議はおおむね月1回以上、全員参加(グループ別可)、概要を記録
- 健康診断は非常勤も含め年1回以上、事業主負担
- 介護予防と一体的に運営している場合は計算も一体的に行う
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表「訪問看護費」リ・注1(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第10号(訪問看護費におけるサービス提供体制強化加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第2の3(12)、第2の4(30)(全国老人保健施設協会 法令データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表「介護予防訪問看護費」ト(全国老人保健施設協会 法令データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。とくに勤続年数の通算が認められる「同一法人等」の範囲、常勤換算の具体的な計算方法については、指定権者の取扱いによります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




