訪問看護の遠隔死亡診断補助加算とは?

訪問看護の遠隔死亡診断補助加算は、死亡月につき150単位です。令和6年度介護報酬改定で新設されました。
ただし算定できる事業所はかなり限られます。対象になるのは特別地域に居住する利用者だけで、しかも「情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修」を修了した看護師の配置と届出が必要です。医師がすぐに駆けつけられない離島やへき地で、看護師がICTを使って医師の死亡診断を補助する場面を想定した加算です。この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費の注16、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第8号の2、老企第36号 第2の4(22)の原文を確認して整理しました。
- 遠隔死亡診断補助加算は死亡月につき150単位であること
- 令和6年度改定で新設された加算であること
- 対象は特別地域(告示120号の地域)に居住する利用者に限られること
- 医科診療報酬の死亡診断加算を算定する利用者であることが前提
- 「情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修」の修了者が必要
- 厚労省のICT死亡診断ガイドラインに沿う必要があること
- ターミナルケア加算との関係
- 介護予防訪問看護には設定がないこと
ちびウルフ看護師が死亡診断をしていいということですか?
リハウルフ違います。診断するのは医師です。看護師が行うのは、情報通信機器を用いた医師の死亡診断の「補助」です。死亡確認の所見を医師に伝え、医師が遠隔で診断する。その流れを支える役割で、加算の名前も「補助加算」になっています。
訪問看護の遠隔死亡診断補助加算とは?
遠隔死亡診断補助加算は、医師がただちに駆けつけることが難しい地域で、看護師がICTを用いた医師の死亡診断を補助した場合を評価する加算です。告示19号 訪問看護費の注16に規定されています。
離島やへき地では、在宅で亡くなった方のもとに医師が到着するまでに何時間もかかることがあります。その間、ご遺体をそのままにして家族が待つという状況が生まれます。本人が自宅で最期を迎えることを望んでいても、この事情が在宅看取りをためらわせる要因になってきました。
この加算は、その場に居合わせた訪問看護師が、医師の指示のもとで所見を確認し、情報通信機器を通じて医師に伝える。医師はそれをもとに遠隔で死亡診断を行う。この一連の補助行為を、介護報酬で評価する仕組みです。
令和6年度介護報酬改定で新設されました。
遠隔死亡診断補助加算の単位数
16 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)届出を行った指定訪問看護事業所の情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が、医科診療報酬点数表の区分番号C001の注8(略)に規定する死亡診断加算を算定する利用者(別に厚生労働大臣が定める地域に居住する利用者に限る。)について、その主治の医師の指示に基づき、情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合は、遠隔死亡診断補助加算として、当該利用者の死亡月につき150単位を所定単位数に加算する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | 要支援 |
|---|---|---|---|
| 遠隔死亡診断補助加算 | 150単位 | 死亡月につき | ×(設定なし) |
介護予防訪問看護費には、この加算の規定がありません。ターミナルケア加算と同じく、要支援の方は対象外です。
ターミナルケア加算と合わせるといくらか
| 加算 | 単位数 | 頻度 |
|---|---|---|
| ターミナルケア加算 | 2,500単位 | 死亡月 |
| 遠隔死亡診断補助加算 | 150単位 | 死亡月 |
| 合計 | 2,650単位 | 死亡月 |
150単位という金額は、加算単体で見れば大きくありません。ただし、この加算が成立するために必要な体制(研修修了者の配置、ICT環境、医師との事前の取り決め)を整えることが、在宅看取りそのものを可能にします。金額より、体制づくりを促す性格の加算だと読めます。
遠隔死亡診断補助加算の算定要件
要件は4つあり、すべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①事業所の体制 | 情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が配置されていること。都道府県知事への届出が必要 | 告示95号 第8号の2 |
| ②利用者の居住地 | 特別地域(告示120号の地域)に居住する利用者であること | 告示19号 注16、老企36号 |
| ③医療保険側の算定 | 医科診療報酬点数表 C001の注8に規定する死亡診断加算を算定する利用者であること | 告示19号 注16 |
| ④行為 | 主治の医師の指示に基づき、研修修了看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行うこと | 告示19号 注16 |
①研修修了看護師の配置(告示95号 第8号の2)
八の二 訪問看護費における遠隔死亡診断補助加算の基準
情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が配置されていること。
基準はこの1行だけです。「配置されていること」なので、実際に補助を行った看護師が研修修了者であることも当然求められます。注16が「研修を受けた看護師が……補助を行った場合」と書いているためです。
②対象地域は特別地域と同じ
告示120号は、訪問看護費の注9(特別地域訪問看護加算)と注16(遠隔死亡診断補助加算)の両方の「厚生労働大臣が定める地域」を定めています。老企第36号 第2の4(22)も「特別地域に居住する利用者に限る」と言い換えています。
| 号 | 地域 |
|---|---|
| 一 | 離島振興対策実施地域 |
| 二 | 奄美群島 |
| 三 | 振興山村 |
| 四 | 小笠原諸島 |
| 五 | 沖縄振興特別措置法に規定する離島 |
| 六 | 豪雪地帯・辺地・過疎地域等のうち、厚生労働大臣が別に定めるもの |
特別地域訪問看護加算(15%)は事業所がどこにあるかで判定しますが、遠隔死亡診断補助加算は利用者がどこに住んでいるかで判定します。事業所が特別地域になくても、利用者が特別地域に住んでいれば対象になり得ます。
③医療保険の死亡診断加算が前提
医科診療報酬点数表のC001は在宅患者訪問診療料(Ⅰ)で、その注8が死亡診断加算です。医師側が医療保険でこの加算を算定していることが前提になります。つまり、算定の可否は訪問看護事業所だけでは決められません。
主治医が死亡診断加算を算定するかどうかを、事前に確認しておく必要があります。看取りが起きてから確認するのでは間に合いません。
④ICT死亡診断ガイドラインに沿うこと
老企第36号 第2の4(22)に明記があります。
遠隔死亡診断補助加算は、(略)主治の医師の指示により、情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が、厚生労働省「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」に基づき、主治の医師による情報通信機器を用いた死亡診断の補助を行った場合に算定する。
ガイドラインは、法医学等に関する研修の受講、対面での死亡診断が困難な事情、生前の本人・家族の同意、通信環境や記録の要件などを定めています。加算の算定は、このガイドラインの手続きを踏むことが前提です。
遠隔死亡診断補助加算の注意点
「補助」であって「診断」ではない
死亡診断は医師法により医師の行為です。看護師が行うのは、医師の指示に基づく死亡確認の所見の観察と情報通信機器を通じた伝達であり、診断そのものではありません。記録上も「死亡診断を行った」と書かないよう注意してください。
体制は看取りが起きる前に整える
- 研修修了看護師が誰か、オンコール体制に入っているか
- 主治医が医療保険で死亡診断加算を算定する方針か
- ICT死亡診断ガイドラインの手続きについて医師と取り決めがあるか
- 本人・家族から生前に同意を得ているか(ガイドラインの要件)
- 使用する情報通信機器と通信環境の確認・セキュリティ対策
- 利用者の住所が特別地域に該当するかを確認したか
- 都道府県知事への届出を済ませているか
担当したケースでも、看取りが近づいてから体制の話を始めると、まず間に合いません。ターミナルケア加算の算定を見込む段階で、この加算の要件も同時に点検しておくのが現実的です。
ターミナルケア加算とは要件が別
| ターミナルケア加算 | 遠隔死亡診断補助加算 | |
|---|---|---|
| 単位数 | 2,500単位 | 150単位 |
| 頻度 | 死亡月 | 死亡月 |
| 地域の限定 | なし | 特別地域に居住する利用者のみ |
| 必要な体制 | 24時間連絡体制、計画・支援体制の説明と同意、記録 | ICT看取り研修修了看護師の配置 |
| 訪問の実績 | 死亡日・死亡日前14日以内に2日(一定の状態なら1日)以上 | 規定なし |
| 要支援 | × | × |
両方の要件を満たせば併算定できます。ただしターミナルケア加算の要件を満たしていなくても、遠隔死亡診断補助加算だけを算定することは、条文上は否定されていません。
介護保険と医療保険のどちらで算定するか
末期の悪性腫瘍や別表第七の疾病等に該当する利用者、特別訪問看護指示書が出ている期間は、訪問看護は医療保険の給付対象になります。その場合、介護保険の訪問看護費は算定しないため、遠隔死亡診断補助加算も算定できません。
看取り期は医療保険に切り替わることが多いため、実際にこの加算を介護保険で算定できる場面は限られます。医療保険側にも訪問看護療養費の遠隔死亡診断補助加算が別に設けられているため、どちらの保険で算定するのかを整理してください。
よくある質問
訪問看護の遠隔死亡診断補助加算はいくらですか?
死亡月につき150単位です。
いつ新設された加算ですか?
令和6年度介護報酬改定で新設されました。
看護師が死亡診断をするのですか?
違います。死亡診断を行うのは医師です。看護師は医師の指示に基づき、情報通信機器を用いた死亡診断の補助を行います。
どの利用者でも算定できますか?
できません。告示120号に定める特別地域に居住する利用者に限られます。
事業所が特別地域になくても算定できますか?
条文は利用者の居住地を要件としています。事業所の所在地は問われません。取扱いは指定権者にご確認ください。
どんな研修が必要ですか?
情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修です。厚生労働省の「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」に定める研修が該当します。
届出は必要ですか?
必要です。都道府県知事に対し、電子情報処理組織を使用する方法で届け出ます。
医師側の算定状況は関係しますか?
関係します。医科診療報酬点数表C001の注8に規定する死亡診断加算を算定する利用者であることが要件です。事前に主治医と確認してください。
ターミナルケア加算と併算定できますか?
両方の要件を満たせば併算定できます。合わせて2,650単位です。
要支援の方でも算定できますか?
できません。介護予防訪問看護費にはこの加算の規定がありません。
医療保険の訪問看護でも算定できますか?
医療保険には訪問看護療養費側の遠隔死亡診断補助加算が別にあります。介護保険の訪問看護費を算定しない期間は、介護保険側の加算は算定できません。
電話だけでも算定できますか?
条文は「情報通信機器を用いて」としており、ガイドラインが求める要件を満たす必要があります。音声のみの通話で足りるかは、ガイドラインおよび指定権者の解釈をご確認ください。
- 訪問看護の遠隔死亡診断補助加算は死亡月につき150単位
- 令和6年度介護報酬改定で新設された
- 看護師が行うのは死亡診断ではなく、医師の死亡診断の「補助」
- 対象は特別地域(告示120号)に居住する利用者に限られる
- 判定するのは事業所の所在地ではなく利用者の居住地
- 情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修の修了者の配置が必要
- 都道府県知事への届出が必要
- 医科診療報酬C001注8の死亡診断加算を医師が算定することが前提
- 厚労省のICT死亡診断ガイドラインに沿った手続きが必要
- ガイドラインは生前の本人・家族の同意も求めている
- ターミナルケア加算2,500単位と併算定でき、合計2,650単位
- 介護予防訪問看護には設定がなく、要支援は対象外
- 看取り期は医療保険に切り替わることが多く、介護保険で算定できる場面は限られる
- 体制は看取りが近づく前に整えておく必要がある
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表「訪問看護費」注16(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第8号の2(訪問看護費における遠隔死亡診断補助加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める地域(平成24年3月13日厚生労働省告示第120号)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第2の4(22)(全国老人保健施設協会 法令データベース)
- 診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一 医科診療報酬点数表 C001 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)注8(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。とくに研修の該当範囲、事業所の所在地が特別地域でない場合の取扱い、使用する情報通信機器の要件については、厚生労働省「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」および指定権者の取扱いによります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




