訪問リハビリテーションの介護保険と医療保険は併用できるのか?

「介護保険の訪問リハビリと、医療保険の訪問リハビリは同時に使えるの?」——ケアマネジャーや訪問セラピスト、ご家族から現場でよく受ける質問です。保険が2種類あるぶん、どちらを使うのか、両方併用できるのかが分かりにくいところです。
結論を先にお伝えすると、訪問リハビリの介護保険と医療保険は併用できません。この記事では、なぜ併用できないのか、その根拠と例外、そして現場で迷いやすいケースを、訪問リハ歴10年以上の現役理学療法士の視点で整理します。読み終えるころには、目の前の利用者さんがどちらの保険を使うのかを自信を持って判断できるようになります。
- 訪問リハビリの介護保険と医療保険は併用できるのか(結論)
- 併用できない2つの理由(介護保険優先の原則と例外)
- 急性増悪時に医療保険へ切り替えられる要件(バーセル指数・FIM)
- 医療保険の訪問リハビリを使えるのはどんな人か
- ケアマネ・リハ職が押さえておきたい実務ポイント
訪問リハビリの介護保険と医療保険は併用できる?【結論】
結論から言うと、訪問リハビリの介護保険と医療保険は同時に併用することはできません。
ここで言う訪問リハビリ(介護保険)とは、指定訪問リハビリテーション事業所が提供する「訪問リハビリテーション費(いわゆる訪問リハ1・2・3)」を指します。一方の訪問リハビリ(医療保険)とは、医療機関の医師の指示のもとで算定する「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」のことです。
ちびウルフどっちも「訪問リハビリ」なのに、両方は使えないの?
リハウルフそうなんだ。同じ「訪問リハビリ」でも保険の根拠が違うからね。日本の制度では、原則としてどちらか一方しか使えないルールになっているんだよ。理由を順番に見ていこう。
そもそも介護保険と医療保険の訪問リハビリは何が違う?
併用の話に入る前に、2つの訪問リハビリの違いを整理しておきましょう。根拠となる制度が違うため、対象者も算定方法もまったく別物です。
| 項目 | 介護保険の訪問リハビリ | 医療保険の訪問リハビリ |
|---|---|---|
| 名称 | 訪問リハビリテーション費(訪問リハ1・2・3) | 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料 |
| 根拠 | 介護保険法 | 健康保険法(診療報酬) |
| 主な対象 | 要支援・要介護の認定を受けた人 | 要介護認定を受けていない人、急性増悪時 など |
| 提供主体 | 指定訪問リハ事業所(病院・診療所・老健等) | 保険医療機関(病院・診療所) |
| 指示 | 事業所の医師の指示 | 当該医療機関の医師の指示 |
このように、介護保険と医療保険の訪問リハビリは「入口」が異なります。どちらを使うかは、利用者さんが要介護認定を受けているかどうかが大きな分かれ目になります。それぞれの対象者については、こちらの記事で詳しく解説しています。
併用できない理由①:要介護認定者は介護保険が優先される
1つ目の理由は、介護保険と医療保険には「介護保険優先」の原則があるためです。
原則として、要介護認定(要支援1・2、要介護1〜5)を受けている人は、疾患名に関わらず介護保険のサービスが優先されます。これは訪問リハビリに限った話ではなく、訪問看護なども含めた給付調整の基本ルールです。
したがって、要介護認定を受けている人は介護保険の訪問リハビリを利用することになり、同じ目的で医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)を併せて使うことはできません。
併用できない理由②:例外(急性増悪時)も「切り替え」であって併用ではない
2つ目の理由は、介護保険優先の原則には例外があるものの、それはあくまで一時的な「切り替え」であって併用ではないからです。
要介護認定者であっても、急性増悪等により一時的に頻回の訪問リハビリが必要になった場合には、医療保険(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)に切り替えて高頻度のリハビリを提供できます。具体的な要件は次のとおりです。
- 医師が診療に基づき、1か月にバーセル指数またはFIMが5点以上悪化し、一時的に頻回の訪問リハビリが必要と認める
- 6か月に1回に限り、その診療を行った日から14日以内の期間において、14日を限度に算定する
- この期間は1日あたり4単位まで算定できる
ちびウルフ急性増悪のときは医療保険も使えるなら、それって併用じゃないの?
リハウルフ気持ちは分かるけど、これは介護保険を一時的に止めて医療保険に「切り替える」仕組みなんだ。同じ期間に両方を算定するわけじゃないから、やっぱり併用ではないんだよ。
医療保険の訪問リハビリを使えるのはどんな人?
「併用できない」と分かると、次に気になるのが「では医療保険の訪問リハビリは誰が使うのか」という点でしょう。主に次のようなケースです。
| ケース | 使う保険 |
|---|---|
| 要介護・要支援の認定を受けていない人 | 医療保険 |
| 要介護認定者が急性増悪した一時期(6か月に1回・14日間) | 医療保険へ切り替え |
| 要介護・要支援の認定を受けている人(通常時) | 介護保険 |
ポイントは、医療保険の訪問リハビリは要介護認定を受けていない人が基本の対象だということ。介護認定を受けた時点で、原則は介護保険の訪問リハビリへ移行すると覚えておくと整理しやすくなります。
要介護でも医療保険が優先される人もいる
「介護保険優先」が原則とはいえ、すべてのケースで介護保険が優先されるわけではありません。要介護認定を受けていても、厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる別表第7の疾患)に該当する場合は、訪問看護は医療保険が優先されます。
別表第7には、末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、重症筋無力症、脊髄小脳変性症などが含まれます。また、特別訪問看護指示書が交付された期間も医療保険の訪問看護が優先されます。
このように、保険の優先順位は「要介護認定の有無」だけでなく「疾患」や「指示書の有無」によっても変わります。判断に迷うケースほど、自治体や保険者への確認が確実です。
訪問看護からのリハビリ(PT・OT・STの訪問)はどう違う?
もう一つ混同しやすいのが、訪問看護ステーションから理学療法士等が訪問して行うリハビリです。これは「訪問リハビリ」ではなく、訪問看護の一環として提供されるリハビリで、看護職員の代わりにPT・OT・STが訪問する位置づけです。
こちらも介護保険優先の原則が適用され、要介護認定者は介護保険の訪問看護として算定します。訪問看護と訪問リハビリの関係は混乱しやすいので、こちらの記事もあわせて確認しておくと安心です。
ケアマネ・リハ職が押さえておきたい実務ポイント
制度を理解したうえで、現場で迷わないための実務的なチェックポイントをまとめます。
- まず利用者さんが要介護認定を受けているかを確認する(認定の有無が保険の入口)
- 要介護認定者は原則介護保険の訪問リハビリ
- 急性増悪で頻回リハが必要なときだけ、要件を満たせば医療保険へ一時切り替え
- 切り替えは6か月に1回・14日間・1日4単位までの上限を厳守
- 判断に迷ったら自己判断せず、保険者(市町村)や都道府県に確認する
制度は数年ごとに見直されます。報酬や算定要件の最新の取り扱いは、厚生労働省の通知や自治体の手引きで必ず確認しましょう。
訪問リハビリの併用に関するよくある質問(FAQ)
介護保険と医療保険の訪問リハビリを同じ月に両方使えますか?
急性増悪のときはどのくらい医療保険の訪問リハビリを使えますか?
要介護認定を受けていない人はどちらの訪問リハビリになりますか?
外来リハビリと介護保険の訪問リハビリは併用できますか?
- 訪問リハビリの介護保険と医療保険は併用できない
- 理由は「介護保険優先の原則」。要介護認定者は原則として介護保険の訪問リハビリ
- 急性増悪時は医療保険へ切り替え可能だが、これは併用ではなく一時的な切り替え
- 切り替え要件は「1か月にバーセル指数またはFIMが5点以上悪化」「6か月に1回・14日間・1日4単位まで」
- 医療保険の訪問リハビリは要介護認定を受けていない人が基本の対象
- 判断に迷ったら自己判断せず、保険者・都道府県に確認するのが安全
出典:厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び担当者会議資料」、診療報酬「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」算定要件。制度・報酬は改定される場合があるため、最新の取り扱いは厚生労働省・各自治体の資料でご確認ください。

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