グループホームの新興感染症等施設療養費とは?

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の新興感染症等施設療養費は、1日につき240単位。1月に1回、連続する5日を限度に算定します。令和6年度改定で新設されました。
ただし、算定を検討する前に押さえておくべき前提があります。対象は「別に厚生労働大臣が定める感染症」であり、厚生労働省の令和6年度改定資料には「現時点において指定されている感染症はない」と注記されています。今後のパンデミック発生時に、必要に応じて指定する仕組みとして用意されたものです。
つまりこれは「平時には動かない報酬」です。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが発生しただけでは算定できません。指定が行われたときに、すぐ算定できる体制と手順を作っておくことに意味があります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)認知症対応型共同生活介護費のタおよび厚生労働省の令和6年度改定資料を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 新興感染症等施設療養費の単位数(240単位/日)と算定限度(1月1回・連続5日)
- 対象が「別に厚生労働大臣が定める感染症」であること
- 令和6年度改定資料の時点では指定された感染症がないこと
- 医療機関の確保と適切な感染対策という2つの要件
- 高齢者施設等感染対策向上加算との違い
- 「加算」ではなく「療養費」という名称の意味
- 介護予防(要支援2)でも算定できること
ちびウルフコロナが出たら算定できるんじゃないんですか?
リハウルフ対象は「厚生労働大臣が定める感染症」に限られます。令和6年度改定の時点では、指定されている感染症はありませんでした。現在どうなっているかは、算定を検討する時点で必ず最新の告示と市町村の案内を確認してください。ここは思い込みで請求すると危ない部分です。
単位数は240単位。1月1回・連続5日まで
告示126号の「タ 新興感染症等施設療養費(1日につき) 240単位」の注は、次のとおりです。
指定認知症対応型共同生活介護事業所が、利用者が別に厚生労働大臣が定める感染症に感染した場合に相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し、かつ、当該感染症に感染した利用者に対し、適切な感染対策を行った上で、指定認知症対応型共同生活介護を行った場合に、1月に1回、連続する5日を限度として算定する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 1日につき240単位 |
| 限度 | 1月に1回、連続する5日 |
| 最大 | 1,200単位/月 |
| 対象 | 別に厚生労働大臣が定める感染症に感染した利用者 |
| 要件 | 相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関の確保、適切な感染対策 |
「連続する5日」という限度に注意してください。飛び飛びの5日ではなく、連続していることが条件です。また1月に1回なので、同じ月に複数回の療養期間があっても算定は1回分です。
「加算」ではなく「療養費」
名称が「加算」ではない点に、この報酬の性格が表れています。基本報酬に上乗せして算定する点は加算と同じですが、想定しているのは「施設内で療養させたこと」に対する費用の補填です。
感染症が発生した際、入院先が確保できず施設内で療養を続けざるを得ない場面は、コロナ禍で多くの事業所が経験しました。その状況を制度としてあらかじめ用意しておく、という趣旨の報酬です。
要件は2つ
- 医療機関の確保:利用者が対象感染症に感染した場合に、相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関を確保していること
- 適切な感染対策:当該感染症に感染した利用者に対し、適切な感染対策を行ったうえでサービスを提供すること
1つ目の「医療機関の確保」は、平時から取り組む高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)の要件と重なります。
- 感染対策向上加算(Ⅰ)10単位/月 → 第二種協定指定医療機関との体制確保、協力医療機関等との取決め、研修・訓練への参加
- 新興感染症等施設療養費 240単位/日 → 実際に発生したときの療養
平時の体制づくりをしていない事業所は、有事に医療機関を確保できず、この療養費も算定できません。2つはセットで整えるものだと考えてください。
「厚生労働大臣が定める感染症」の確認方法
厚生労働省の令和6年度改定資料には、次の注記があります。
対象の感染症については、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとする。
※ 現時点において指定されている感染症はない。
この注記は令和6年度改定時点のものです。算定を検討する時点で、対象感染症が指定されているかどうかを、厚生労働省の告示および所在市町村の案内で必ず確認してください。指定がない状態で算定すれば過誤請求になります。
発生時に備えて決めておくこと
- 相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関を確保し、連絡手順を文書化する
- 感染者が出た場合のゾーニング、防護具、職員の動線を決めておく
- 療養の記録(発症日、対応内容、感染対策の実施状況)の様式を用意する
- 対象感染症の指定状況を定期的に確認する
- 指定があった場合の請求手順を、市町村に確認したうえで整理しておく
GHは9人前後のユニットで、居室以外を共用する構造です。感染者が出たときに個室隔離をどう成立させるかは、平時に図面を見ながら決めておかないと当日には決められません。(これは筆者の実務経験にもとづく整理で、制度上の定めではありません)
介護予防(要支援2)でも算定できる
介護予防認知症対応型共同生活介護費(平成18年厚生労働省告示第128号)にも新興感染症等施設療養費(カ)が設けられており、同じ240単位で算定できます。
よくある質問
新型コロナウイルス感染症は対象ですか?
対象は「別に厚生労働大臣が定める感染症」です。令和6年度改定資料の時点では指定された感染症はないと注記されています。現在の指定状況は最新の告示と市町村の案内で確認してください。
インフルエンザやノロウイルスでも算定できますか?
指定されていない感染症では算定できません。平時の感染症対応は、高齢者施設等感染対策向上加算の枠組みで整えることになります。
5日を超えて療養した場合はどうなりますか?
算定できるのは1月に1回、連続する5日が限度です。それを超える期間について算定はできません。
同じ月に2人の感染者が出た場合は?
算定は利用者ごとに行いますが、「1月に1回、連続する5日を限度」という制限は各利用者に適用されます。具体的な請求方法は市町村に確認してください。
医療機関の確保はどのように行いますか?
相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関を確保していることが要件です。協力医療機関や第二種協定指定医療機関との取決めを文書で残しておくのが現実的です。
高齢者施設等感染対策向上加算と同時に算定できますか?
別建ての報酬で、条文上の併算定禁止規定はありません。それぞれの要件に従って算定します。
届出は必要ですか?
この注には届出の文言がありません。ただし請求方法や事前の確認事項は市町村により異なる場合があるため、確認してください。
要支援2の入居者にも算定できますか?
できます。介護予防認知症対応型共同生活介護費にも同じ規定が設けられています。
- 新興感染症等施設療養費は1日240単位、1月に1回・連続する5日が限度
- 令和6年度改定で新設された
- 対象は「別に厚生労働大臣が定める感染症」
- 令和6年度改定資料には「現時点において指定されている感染症はない」と注記されている
- 算定時点での指定状況の確認が必須
- 要件は、相談対応・診療・入院調整等を行う医療機関の確保と、適切な感染対策
- 平時の高齢者施設等感染対策向上加算と地続きの関係にある
- 「連続する5日」であり、飛び飛びの5日ではない
- 介護予防(要支援2)でも算定できる
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 認知症対応型共同生活介護費のタ(新興感染症等施設療養費)、ヨ(高齢者施設等感染対策向上加算)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表 介護予防認知症対応型共同生活介護費のカ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)新興感染症等施設療養費の新設(対象感染症の指定に関する注記を含む)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および改定資料にもとづいて整理したものです。対象感染症の指定状況は変わり得るため、算定にあたっては必ず最新の告示および所在市町村の案内をご確認ください。実際の算定・請求にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。グループホームは地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、取扱いが自治体によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。備えに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




