老健の退所時等支援等加算は、5つの加算をまとめた「傘」です。試行的退所時指導加算400単位、退所時情報提供加算(Ⅰ)500単位・(Ⅱ)250単位、入退所前連携加算(Ⅰ)600単位・(Ⅱ)400単位、そして訪問看護指示加算300単位。

組み合わせ次第で、1人の入所者について2,000単位を超えることがあります。それぞれ算定できる場面が違うため、退所の形(居宅か・医療機関か・他施設か)で使える加算が変わるのが特徴です。

なかでも入退所前連携加算(Ⅰ)600単位は、入所予定日前30日以内または入所後30日以内にケアマネジャーと連携することが要件。退所が近づいてからでは間に合いません。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 5つの加算の単位数と算定できる場面
  • 試行的退所時指導加算は3月の間、月1回算定できること
  • 試行的退所期間中は居宅サービス等を利用できないこと
  • 外泊時加算と併算定できる場合があること
  • 退所時情報提供加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の使い分け
  • 同一月の再入院では(Ⅱ)を算定できないこと
  • 入退所前連携加算(Ⅰ)は入所後30日以内の連携が必要なこと
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できないこと
  • 訪問看護指示加算の指示期間の扱い
  • 病院入院・他施設入所・死亡退所では算定できない加算

5つの加算を一覧で整理する

加算単位数算定の場面回数
試行的退所時指導加算400単位居宅で試行的に退所させたとき3月の間、1月1回
退所時情報提供加算(Ⅰ)500単位居宅・他の社会福祉施設等へ退所1人1回
退所時情報提供加算(Ⅱ)250単位医療機関に入院1人1回
入退所前連携加算(Ⅰ)600単位入所前後にケアマネと連携+退所時の調整1人1回
入退所前連携加算(Ⅱ)400単位退所時の情報提供と調整1人1回
訪問看護指示加算300単位退所時に訪問看護指示書を交付1人1回
在宅復帰なら積み上げられる

居宅へ退所し、試行的退所も行った場合を積み上げると——

試行的退所時指導400×3月=1,200+退所時情報提供(Ⅰ)500+入退所前連携(Ⅰ)600+訪問看護指示300=合計2,600単位

1単位10円換算で約2万6,000円。在宅復帰を丁寧に進めるほど積み上がる設計になっています。

試行的退所時指導加算400単位

注1 退所が見込まれる入所期間が1月を超える入所者をその居宅において試行的に退所させる場合において、当該入所者の試行的な退所時に、当該入所者及びその家族等に対して、退所後の療養上の指導を行った場合に、入所中最初に試行的な退所を行った月から3月の間に限り、入所者1人につき、1月に1回を限度として所定単位数を加算する。

指導の内容4つ

内容
食事、入浴、健康管理等在宅療養に関する指導
運動機能・日常生活動作能力の維持向上を目的とした体位変換、起座又は離床訓練、起立訓練、食事訓練、排泄訓練の指導
家屋の改善の指導
退所する者の介助方法の指導

試行的退所を行う前の検討

試行的退所を行うに当たっては、その病状及び身体の状況に照らし、退所して居宅において生活ができるかどうかについて医師、薬剤師(配置されている場合に限る。)、看護・介護職員、支援相談員、介護支援専門員等により、退所して、その居宅において療養を継続する可能性があるかどうか検討すること。当該入所者又は家族に対し、趣旨を十分説明し、同意を得た上で実施すること。

ちびウルフちびウルフ

試行的退所の間、デイサービスとかは使えるんですか?

リハウルフリハウルフ

使えないんだ。通知にはっきり書いてある。「試行的退所期間中は、居宅サービス、地域密着型サービス、介護予防サービス等の利用はできないこと」。

理由は単純で、この期間はまだ老健に入所している扱いだから。老健の報酬を算定しながら、居宅サービスも使うことはできない。

ケアマネ側から見ると、ここは要注意。「試行的退所だからデイに行ってみましょう」はできない。在宅の生活を試すのに在宅サービスが使えないというのは、正直やりにくさもある。

だからこそ、試行的退所の間に家族がどこまで支えられるかを見極める。それが本来の趣旨だと理解している。

外泊時加算との関係

  • 試行的退所中の入所者の状況の把握を行っている場合は、外泊時加算を併せて算定できる
  • 同意があり外泊時加算を算定していない場合は、そのベッドを短期入所療養介護に活用できる

算定できない3つの場合

試行的退所時指導加算は、次の場合には算定できないものであること。
(a) 退所して病院又は診療所へ入院する場合
(b) 退所して他の介護保険施設へ入院又は入所する場合
(c) 死亡退所の場合

この3つは、入退所前連携加算(Ⅰ)(Ⅱ)にも準用されます。いずれも「居宅への退所」を評価する加算だからです。

試行期間が終わっても戻れない場合

試行的退所期間が終了してもその居宅に退所できない場合においては、介護老人保健施設で療養を続けることとなるが、居宅において療養が続けられない理由等を分析した上でその問題解決に向けたリハビリ等を行うため、施設サービス計画の変更を行うとともに適切な支援を行うこと。

試行的退所は「うまくいかなかった理由を次に活かす」ことまで含めて設計されています。戻れなかった事実だけで終わらせず、計画を変更してください。

退所時情報提供加算——退所先で(Ⅰ)と(Ⅱ)が分かれる

区分単位数退所先提供先
(Ⅰ)500単位居宅/他の社会福祉施設等退所後の主治の医師/当該社会福祉施設等
(Ⅱ)250単位医療機関に入院当該医療機関

(Ⅰ)500単位——主治医への紹介

入所者が居宅又は他の社会福祉施設等へ退所する場合、退所後の主治の医師に対して入所者を紹介するに当たっては、事前に主治の医師と調整し、別紙様式2及び別紙様式13の文書に必要な事項を記載の上、入所者又は主治の医師に交付するとともに、交付した文書の写しを診療録に添付すること。また、当該文書に入所者の諸検査の結果、薬歴、退所後の治療計画等を示す書類を添付すること。

  • 事前に主治の医師と調整する
  • 別紙様式2および別紙様式13を使う
  • 交付した文書の写しを診療録に添付
  • 諸検査の結果、薬歴、退所後の治療計画等を添付

(Ⅱ)250単位——同一月の再入院は算定できない

入所者が医療機関に入院後、当該医療機関を退院し、同一月に再度当該医療機関に入院する場合には、本加算は算定できない。

短期間の入退院を繰り返すケースに注意

老健から病院へ入院し、退院して戻り、同じ月にまた同じ病院へ入院——という流れでは、2回目の情報提供について(Ⅱ)を算定できません。

状態が不安定な入所者では起こりうる状況です。入院日と医療機関名を記録し、同一月・同一医療機関への再入院でないかを確認してから請求してください。

入退所前連携加算——(Ⅰ)600単位と(Ⅱ)400単位

注4 (Ⅰ)については、次に掲げるいずれの基準にも適合する場合に、(Ⅱ)については、ロに掲げる基準に適合する場合に、入所者1人につき1回を限度として算定する。ただし、(Ⅰ)を算定している場合は、(Ⅱ)は算定しない。

イ 入所予定日前30日以内又は入所後30日以内に、入所者が退所後に利用を希望する指定居宅介護支援事業者と連携し、当該入所者の同意を得て、退所後の居宅サービス又は地域密着型サービスの利用方針を定めること。

ロ 入所期間が1月を超える入所者が退所し、その居宅において居宅サービス又は地域密着型サービスを利用する場合において、当該入所者の退所に先立って当該入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、当該入所者の同意を得て、当該入所者の診療状況を示す文書を添えて(中略)必要な情報を提供し、かつ、当該指定居宅介護支援事業者と連携して退所後の居宅サービス又は地域密着型サービスの利用に関する調整を行うこと。

要件(Ⅰ)600単位(Ⅱ)400単位
イ 入所前後30日以内のケアマネとの連携・利用方針の決定必要
ロ 退所に先立つ情報提供と調整必要必要
200単位の差は「入所直後の動き」で決まる

(Ⅱ)は退所時の情報提供と調整だけ。(Ⅰ)はそれに加えて入所予定日前30日以内または入所後30日以内にケアマネと連携し、退所後のサービス利用方針を定めることが必要です。

つまり入所して1か月以内に、退所後の話を始めているか——ここが200単位の差になります。

入所前後訪問指導加算(入所後7日以内の訪問)とあわせて、入所直後の1か月をどう動くかが老健の報酬を左右する構造です。

訪問看護指示加算300単位

注5 入所者の退所時に、介護老人保健施設の医師が、診療に基づき、指定訪問看護、指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護サービスを行う場合に限る。)又は指定看護小規模多機能型居宅介護(看護サービスを行う場合に限る。)の利用が必要であると認め、当該入所者の選定する事業所に対して、当該入所者の同意を得て、訪問看護指示書を交付した場合に、入所者1人につき1回を限度として算定する。

  • 交付先は訪問看護ステーション・定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所・看護小規模多機能型居宅介護事業所
  • 指示期間の記載がない場合は1月とみなす
  • 診療に基づき速やかに作成・交付する
  • 退所する者やその家族等を介して交付しても差し支えない
  • 交付した指示書の写しを診療録等に添付する
  • 交付後は訪問看護事業所からの相談等に懇切丁寧に応じる

老健の医師が訪問看護指示書を出せる、という点は意外に知られていません。退所後に医療的な管理が必要な方には、この加算とセットで訪問看護につなぐのが在宅復帰の定石です。

特養の退所時等相談援助加算との違い

項目老健特養
加算名退所時等支援等加算退所時等相談援助加算
訪問看護指示加算あり(300単位)なし
試行的退所時指導あり(400単位)なし

老健には試行的退所と訪問看護指示という、在宅復帰を目的とする施設ならではの区分があります。特養とは構成が異なるため、他施設の資料を流用しないでください。

算定にあたっての実務ステップ

  • 入所予定日前30日以内または入所後30日以内に、退所後に利用を希望する居宅介護支援事業者と連携する
  • 本人の同意を得て、退所後の居宅サービス等の利用方針を定める(入退所前連携加算(Ⅰ)の要件)
  • 試行的退所を検討する場合は、多職種で在宅療養の可能性を検討する
  • 本人・家族に趣旨を説明し、同意を得る
  • 試行的退所時に、在宅療養・訓練・家屋改善・介助方法について本人と家族の双方に指導する
  • 指導日と指導内容の要点を診療録等に記載する
  • 試行的退所期間中は居宅サービス等を利用しないよう、ケアマネと調整する
  • 退所に先立ち、診療状況を示す文書を添えてケアマネへ情報提供し、サービス利用の調整を行う
  • 居宅等へ退所する場合は、事前に主治医と調整し、別紙様式2・13で情報提供する(退所時情報提供加算(Ⅰ))
  • 医療機関へ入院する場合は、別紙様式13で情報提供する(同(Ⅱ))
  • 訪問看護等が必要と認めた場合は、同意を得て訪問看護指示書を交付する
  • 交付した文書の写しを診療録に添付する

1つ目と2つ目を入所後1か月のルーティンにしてください。ここを逃すと入退所前連携加算は(Ⅱ)400単位止まりになります。

よくある質問

退所時等支援等加算にはいくつの加算がありますか?

試行的退所時指導加算、退所時情報提供加算(Ⅰ)(Ⅱ)、入退所前連携加算(Ⅰ)(Ⅱ)、訪問看護指示加算です。

試行的退所時指導加算は何回算定できますか?

入所中最初に試行的な退所を行った月から3月の間に限り、入所者1人につき1月に1回です。

試行的退所期間中にデイサービスを利用できますか?

できません。通知は「試行的退所期間中は、居宅サービス、地域密着型サービス、介護予防サービス等の利用はできない」としています。

外泊時加算と併算定できますか?

試行的退所中の入所者の状況の把握を行っている場合は、外泊時加算を併せて算定することが可能とされています。

試行的退所中のベッドは使えますか?

同意があり外泊時加算を算定していない場合は、そのベッドを短期入所療養介護に活用することが可能とされています。

病院に入院する場合も試行的退所時指導加算を算定できますか?

できません。病院・診療所への入院、他の介護保険施設への入院・入所、死亡退所の場合は算定できません。

退所時情報提供加算の(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?

(Ⅰ)500単位は居宅または他の社会福祉施設等へ退所する場合、(Ⅱ)250単位は医療機関に入院する場合です。

同じ月に同じ病院へ再入院した場合は?

退所時情報提供加算(Ⅱ)は算定できません。

入退所前連携加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?

(Ⅰ)600単位は、入所予定日前30日以内または入所後30日以内にケアマネジャーと連携して退所後のサービス利用方針を定めることが加わります。(Ⅱ)400単位は退所時の情報提供と調整のみです。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。(Ⅰ)を算定している場合は(Ⅱ)は算定しないとされています。

老健の医師が訪問看護指示書を出せますか?

出せます。退所時に訪問看護等の利用が必要と認め、同意を得て訪問看護指示書を交付した場合に訪問看護指示加算300単位を算定できます。

訪問看護指示書に指示期間の記載がない場合は?

その指示期間は1月であるものとみなすこととされています。

まとめ
  • 老健の退所時等支援等加算は5つの加算をまとめたもの
  • 試行的退所時指導加算400単位、退所時情報提供加算(Ⅰ)500・(Ⅱ)250単位
  • 入退所前連携加算(Ⅰ)600・(Ⅱ)400単位、訪問看護指示加算300単位
  • 組み合わせれば1人につき2,600単位程度まで積み上がる
  • 試行的退所時指導は最初の試行的退所の月から3月の間、月1回
  • 対象は入所期間が1月を超える入所者
  • 指導は在宅療養・訓練・家屋改善・介助方法の4分野
  • 試行的退所の前に多職種で在宅療養の可能性を検討する
  • 本人・家族の同意を得て実施する
  • 試行的退所期間中は居宅サービス等を利用できない
  • 状況把握を行っていれば外泊時加算を併算定できる
  • 病院入院・他施設入所・死亡退所では算定できない
  • 戻れなかった場合は理由を分析し施設サービス計画を変更する
  • 退所時情報提供加算は退所先で(Ⅰ)(Ⅱ)が分かれる
  • 同一月に同一医療機関へ再入院した場合は(Ⅱ)を算定できない
  • 入退所前連携加算(Ⅰ)は入所前後30日以内のケアマネ連携が要件
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 訪問看護指示加算は老健の医師が指示書を交付した場合に算定
  • 指示期間の記載がなければ1月とみなす
  • 入所後1か月の動きが加算区分を左右する
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。試行的退所の実施方法、外泊時加算との併算定の可否、別紙様式の使用方法、情報提供の範囲については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。本文中の「合計2,600単位」は各加算を最大限算定した場合の単純合計であり、すべての入所者について算定できることを意味するものではありません。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。連携や記録の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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