老健の入所前後訪問指導加算は(Ⅰ)450単位・(Ⅱ)480単位。入所中1回限りですが、単位数は老健の加算のなかでも大きい部類です。

そしてこの加算には、単位数以上の意味があります。在宅復帰・在宅療養支援等指標の「入所前後訪問指導割合」に直結するからです。令和6年度改定でこの指標の基準が引き上げられ、10点を取るには35%以上が必要になりました。超強化型・在宅強化型を目指す施設にとっては、基本報酬を左右する加算です。

算定の要は「退所後生活する居宅を訪問すること」。病院だけ、他の介護保険施設だけを訪問した場合は算定できません。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)450単位・(Ⅱ)480単位という単位数
  • 訪問できる期間(入所予定日前30日以内〜入所後7日以内)
  • 対象は入所期間が1月を超えると見込まれる者であること
  • (Ⅱ)で追加される2つの共同作成事項
  • 支援計画に看取りの話し合いが含まれること
  • 算定日が「入所日」か「訪問日」かの分かれ方
  • 算定できない3つのケース
  • 居宅以外を訪問する場合の扱い
  • 在宅復帰・在宅療養支援等指標との関係
  • 認知症短期集中リハビリテーション実施加算との連動

単位数は450単位と480単位

区分単位数内容
入所前後訪問指導加算(Ⅰ)450単位退所を目的とした施設サービス計画の策定・診療方針の決定
入所前後訪問指導加算(Ⅱ)480単位(Ⅰ)に加え、生活機能の改善目標と退所後の支援計画を策定

注 入所期間が1月を超えると見込まれる者入所予定日前30日以内又は入所後7日以内に当該者が退所後生活する居宅を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針の決定を行った場合に、次に掲げる区分に応じ、入所中1回を限度として算定する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。

なお、当該者が退所後にその居宅でなく、他の社会福祉施設等に入所する場合であって、当該者の同意を得て、当該社会福祉施設等を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針の決定を行った場合も、同様に算定する。

差は30単位、要件の差は小さくない

(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は30単位。ただし(Ⅱ)には多職種会議を開いて2つの事項を共同で定めるという上乗せがあります。

金額だけを見れば小さな差ですが、(Ⅱ)で求められる「生活機能の具体的な改善目標」と「退所後の生活に係る支援計画」は、そのまま在宅復帰に向けたケアの設計図になります。取りにいく価値は単位数以上にあります。

訪問できる期間——前30日から入所後7日まで

タイミング可否算定日
入所予定日の31日以上前対象外
入所予定日前30日以内入所日に算定
入所後7日以内訪問日に算定
入所後8日以降対象外

入所前に居宅を訪問した場合は入所日に算定し、入所後に訪問した場合は訪問日に算定すること。

ちびウルフちびウルフ

入所前に訪問したのに、算定するのは入所日なんですね。

リハウルフリハウルフ

そう。介護報酬は入所していない日には算定できないから、入所前の訪問は入所日にまとめて算定するという整理になっている。

ここで気をつけたいのが「予定の変更に伴い、入所しなかった場合」は算定できないという規定。訪問したのに入所に至らなかったら、その労力は報酬にならない。

でもね、それでも入所前訪問には意味があると思っている。実際に家を見ると「この段差では戻れない」「この動線ならいける」が一目でわかる。リハの目標設定がまるで変わるんだ。

入所後7日以内でも算定できるから、入所前に行けなかったら最初の1週間で行く。これを運用として固めている老健は強い。

算定できない3つのケース

入所前後訪問指導加算は、次の場合には算定できないものであること。
イ 病院又は診療所のみを訪問し、居宅を訪問しない場合
ロ 他の介護保険施設のみを訪問し、居宅を訪問しない場合
ハ 予定の変更に伴い、入所しなかった場合

入院先を訪問しただけでは算定できない

老健への入所は、病院からの転院という形が多数です。入院先へ本人を見に行くことはよくありますが、病院だけを訪問して居宅を訪問しなければ算定できません。

この加算が評価しているのは「退所後に生活する場所を見ること」です。本人の状態把握ではなく、生活環境の把握が目的だと理解してください。

ただし、退所後に居宅ではなく他の社会福祉施設等へ入所する予定の場合は、本人の同意を得てその施設を訪問すれば算定できます。

(Ⅱ)で追加される2つの共同作成事項

入所前後訪問指導加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)における施設サービス計画の策定等にあたり、⑤に掲げる職種が会議を行い、次のイ及びロを共同して定めた場合に、入所中に1回に限り加算を行うものである。なお、会議は、テレビ電話装置等を活用して行うことができる。

イ 生活機能の具体的な改善目標

当該入所予定者が退所後生活する居宅の状況に合わせ、また入所予定者及びその家族等の意向を踏まえ、入浴や排泄等の生活機能について、入所中に到達すべき具体的な改善目標を定めること。

「居宅の状況に合わせ」がポイントです。一般的な自立度の目標ではなく、その家の浴室・トイレ・段差を見たうえで、何ができるようになれば戻れるのかを定めます。訪問して初めて書ける目標、という位置づけです。

ロ 退所後の生活に係る支援計画

入所予定者の生活を総合的に支援するため、入所予定者およびその家族等の意向を踏まえた施設及び在宅の双方にわたる切れ目のない支援計画を作成すること。当該支援計画には、反復的な入所や併設サービスの利用、インフォーマルサービスの活用等を広く含み得るものであること。当該支援計画の策定に当たっては、終末期の過ごし方及び看取りについても話し合いを持つように努め、入所予定者およびその家族等が希望する場合には、その具体的な内容を支援計画に含むこと。

  • 施設と在宅の双方にわたる切れ目のない支援計画
  • 反復的な入所(在宅と入所を繰り返す形)も含み得る
  • 併設サービスの利用インフォーマルサービスも含み得る
  • 終末期の過ごし方と看取りについて話し合うよう努める
入所の入口で看取りの話をする

意外に感じるかもしれませんが、通知は入所前後の支援計画の段階で「終末期の過ごし方及び看取りについても話し合いを持つように努め」としています。

老健は在宅復帰を目的とする施設ですが、実際には状態が変化して看取りに至る方もいます。入口の段階で、本人と家族がどう過ごしたいかを聞いておく——ACPの考え方が加算の要件に織り込まれています。

希望があれば支援計画に具体的な内容を含めます。強制ではなく「努める」ですが、話題にした記録は残しておきたいところです。

誰が行い、誰に行うか

⑤ 入所前後訪問指導は、医師、看護職員、支援相談員、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士、管理栄養士、介護支援専門員等が協力して行うこと。
⑥ 入所前後訪問指導は、入所者及びその家族等のいずれにも行うこと。
⑦ 入所前後訪問指導を行った場合は、指導日及び指導内容の要点を診療録等に記載すること。

項目内容
行う職種医師・看護職員・支援相談員・PT/OT/ST・管理栄養士・介護支援専門員等が協力して
対象入所者およびその家族等のいずれにも
記録指導日と指導内容の要点を診療録等に記載

家族への指導も必須です。本人だけに説明した記録では要件を満たしません。訪問時に家族が同席できるよう、日程調整の段階で依頼してください。

在宅復帰・在宅療養支援等指標との関係

老健の基本報酬(超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型)は、在宅復帰・在宅療養支援等指標の合計点で決まります。その評価項目のひとつが入所前後訪問指導割合です。

入所前後訪問指導割合改定前改定後
10点30%以上35%以上
5点10%以上15%以上
0点10%未満15%未満
令和6年度改定で基準が引き上げられた

改定資料は「入所前後訪問指導割合に係る指標について、それぞれの区分の基準を引き上げる」としています。従来30%で10点だった水準が35%になりました。

この加算を算定できる入所者の割合が、そのまま施設類型の判定に効きます。450単位・480単位という加算収入だけでなく、基本報酬の水準にも影響する——それがこの加算の本当の重みです。

なお改定にあたっては6月の経過措置期間が設けられていました。

認知症短期集中リハビリテーション実施加算との連動

(6の)(24)の入所前後訪問指導加算の算定に当たって行う訪問により把握した生活環境を踏まえてリハビリテーション計画を作成している場合についても、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)を算定できる。

認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)240単位/日は、退所後に生活する居宅等を訪問して生活環境を把握し、それを踏まえてリハビリ計画を作成することが要件です。

入所前後訪問指導のために行った訪問を、そのまま認知症短期集中リハ(Ⅰ)の要件にも使えます。訪問を1回すれば2つの加算につながる、という関係です。

算定にあたっての実務ステップ

  • 入所相談の段階で、入所期間が1月を超える見込みかを確認する
  • 退所後に生活する場所(居宅か、他の社会福祉施設等か)を確認する
  • 居宅以外を訪問する場合は、本人の同意を得る
  • 入所予定日前30日以内、または入所後7日以内に訪問日程を組む
  • 訪問時に家族等が同席できるよう日程を調整する
  • 医師・看護職員・支援相談員・リハ職・管理栄養士・ケアマネ等が協力して訪問・指導を行う
  • (Ⅱ)を狙う場合は多職種で会議を開き、生活機能の改善目標と退所後の支援計画を共同で定める(テレビ電話可)
  • 支援計画の策定にあたり、終末期の過ごし方や看取りについても話し合う
  • 退所を目的とした施設サービス計画を策定し、診療方針を決定する
  • 指導日と指導内容の要点を診療録等に記載する
  • 入所前訪問なら入所日、入所後訪問なら訪問日に算定する
  • 把握した生活環境をリハビリ計画に反映し、認知症短期集中リハ(Ⅰ)の要件にも活用する

4つ目が実務の要です。入所前に行けなくても、入所後7日以内なら間に合います。最初の1週間で訪問する運用を固めてください。

よくある質問

単位数はいくらですか?

(Ⅰ)450単位、(Ⅱ)480単位です。いずれも入所中1回を限度として算定します。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。いずれかの加算を算定している場合は、その他の加算は算定しないとされています。

いつ訪問すればよいですか?

入所予定日前30日以内、または入所後7日以内です。

入所前に訪問した場合、いつ算定しますか?

入所日に算定します。入所後に訪問した場合は訪問日に算定します。

入院先の病院を訪問した場合は算定できますか?

できません。病院または診療所のみを訪問し、居宅を訪問しない場合は算定できないとされています。

退所後に他の施設へ移る場合は?

本人の同意を得て当該社会福祉施設等を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定・診療方針の決定を行った場合も算定できます。

訪問したのに入所しなかった場合は?

算定できません。予定の変更に伴い入所しなかった場合は対象外とされています。

(Ⅱ)で追加される要件は?

多職種による会議を行い、生活機能の具体的な改善目標と、退所後の生活に係る支援計画を共同して定めることです。

会議はオンラインでよいですか?

テレビ電話装置等を活用して行うことができるとされています。

支援計画に看取りの内容も入れるのですか?

終末期の過ごし方および看取りについて話し合いを持つよう努め、本人・家族等が希望する場合には具体的な内容を支援計画に含めることとされています。

本人だけに指導すればよいですか?

いいえ。入所者およびその家族等のいずれにも行うこととされています。

認知症短期集中リハビリテーション実施加算にも使えますか?

使えます。入所前後訪問指導加算のための訪問で把握した生活環境を踏まえてリハビリテーション計画を作成している場合、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)も算定できるとされています。

まとめ
  • 老健の入所前後訪問指導加算は(Ⅰ)450単位・(Ⅱ)480単位
  • 入所中1回が限度で、(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 対象は入所期間が1月を超えると見込まれる者
  • 訪問できるのは入所予定日前30日以内または入所後7日以内
  • 入所前訪問は入所日、入所後訪問は訪問日に算定する
  • 訪問先は退所後に生活する居宅
  • 病院・診療所のみの訪問では算定できない
  • 他の介護保険施設のみの訪問でも算定できない
  • 予定変更で入所しなかった場合も算定できない
  • 退所後に他の社会福祉施設等へ移る場合は同意を得てその施設を訪問すればよい
  • (Ⅱ)は多職種会議で改善目標と支援計画を共同で定める
  • 改善目標は退所後の居宅の状況に合わせて具体的に定める
  • 支援計画は施設と在宅の双方にわたる切れ目のないもの
  • 反復的な入所やインフォーマルサービスも含み得る
  • 終末期の過ごし方と看取りについて話し合うよう努める
  • 会議はテレビ電話装置等を活用できる
  • 指導は入所者と家族等のいずれにも行う
  • 指導日と指導内容の要点を診療録等に記載する
  • 在宅復帰・在宅療養支援等指標の入所前後訪問指導割合に直結する
  • 令和6年度改定で10点の基準が30%から35%に引き上げられた
  • この訪問は認知症短期集中リハ(Ⅰ)の要件にも活用できる
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、老企第40号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「退所後生活する居宅」の範囲、他の社会福祉施設等を訪問する場合の取扱い、在宅復帰・在宅療養支援等指標における入所前後訪問指導割合の算出方法については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。本文中の指標の点数・基準は令和6年度改定資料の記載を整理したものであり、施設類型の判定は他の評価項目との合計で決まります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。訪問の運用や記録に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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