特養の安全対策体制加算20単位と安全管理体制未実施減算5単位|同じ基準の表と裏

特養の事故防止体制には、同じ基準を軸にした「加算」と「減算」が対で置かれています。
基準を満たさなければ安全管理体制未実施減算5単位/日。満たしたうえで担当者が外部研修を受けていれば安全対策体制加算20単位。どちらも根拠は指定介護老人福祉施設基準第35条第1項です。
減算は入所者全員に毎日かかりますが、加算は入所初日に限り。金額のインパクトはまったく違います。100床の特養なら、減算は月15,000単位規模、加算は新規入所者の数だけ。まず減算を受けないことが最優先です。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)、老企第40号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 加算20単位・減算5単位/日という金額の非対称
- 加算は入所初日に限られること
- 減算は入所者全員に毎日かかること
- 両者の根拠が同じ第35条第1項であること
- 第35条第1項が求める4つの体制
- 加算に必要な「外部研修」の内容
- 安全管理対策部門の設置が求められること
- 減算が始まる時期と終わる時期
- 経過措置がすでに終了していること
- 老健の同名加算との違い
加算と減算を並べて整理する
| 項目 | 安全対策体制加算 | 安全管理体制未実施減算 |
|---|---|---|
| 単位数 | 20単位 | 5単位 |
| 算定・減算の単位 | 入所初日に限り | 1日につき |
| 対象 | その入所者1人 | 入所者全員 |
| 根拠 | 指定介護老人福祉施設基準第35条第1項 | |
| 届出 | 必要 | — |
100床の特養で考えます。
- 減算:5単位×100人×30日=月15,000単位(1単位10円換算で約15万円)
- 加算:20単位×新規入所者数。月に3人入所しても60単位(約600円)
加算を取りにいくより、減算を受けないことのほうが圧倒的に重要です。まず第35条第1項の体制が整っているかを確認してください。
共通の土台——第35条第1項が求める4つの体制
老企第40号が、加算の説明のなかで内容を示しています。
安全対策体制加算は、事故発生の防止のための指針の作成・委員会の開催・従業者に対する研修の実施及びこれらを適切に実施するための担当者の配置を備えた体制に加えて、当該担当者が安全対策に係る外部の研修を受講し、組織的に安全対策を実施する体制を備えている場合に評価を行うものである。
| 体制 | 内容 |
|---|---|
| ①指針の作成 | 事故発生の防止のための指針 |
| ②委員会の開催 | 事故発生の防止のための委員会 |
| ③研修の実施 | 従業者に対する研修 |
| ④担当者の配置 | ①〜③を適切に実施するための担当者 |
- この4つを備えていれば減算を受けない
- 1つでも欠けると減算5単位/日が入所者全員にかかる
- 4つに加えて担当者が外部研修を受講していれば加算20単位
安全管理体制未実施減算——翌月から解消月まで
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、安全管理体制未実施減算として、1日につき5単位を所定単位数から減算する。
減算の期間は老企第40号が定めています。
安全管理体制未実施減算については、介護老人福祉施設基準第35条第1項に規定する基準を満たさない事実が生じた場合に、その翌月から基準に満たない状況が解消されるに至った月まで、入所者全員について、所定単位数から減算することとする。
| 時点 | 取扱い |
|---|---|
| 基準を満たさない事実が生じた月 | 減算なし |
| その翌月 | 減算開始 |
| 解消されるに至った月 | その月まで減算 |
高齢者虐待防止措置未実施減算には「改善計画を都道府県知事に提出し、3月後に改善状況を報告する」という手続きがありますが、安全管理体制未実施減算にはこの規定がありません。
基準を満たさなくなった翌月から、満たすようになった月まで。シンプルなぶん、体制が途切れた瞬間に減算が始まります。
とくに注意したいのが担当者の退職です。第35条第1項第4号の担当者が不在になれば、それだけで基準を満たさない状態になり得ます。後任を決めるまでの空白を作らないでください。
経過措置はすでに終了している
安全管理体制未実施減算には令和3年9月30日までの経過措置がありましたが、この期間はとうに過ぎています。現在は適用中です。
安全対策体制加算20単位——入所初日に限り
ヰ 安全対策体制加算 20単位
注 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設が、入所者に対し、指定介護福祉施設サービスを行った場合、安全対策体制加算として、入所初日に限り所定単位数を加算する。
施設基準(告示第96号)は2つです。
イ 指定介護老人福祉施設基準第35条第1項に規定する基準に適合していること。
ロ 指定介護老人福祉施設基準第35条第1項第4号に規定する担当者が安全対策に係る外部における研修を受けていること。
ちびウルフ入所初日だけ20単位って、ずいぶん小さいですね。
リハウルフ金額としては小さい。ただ、この加算の意味は「外部研修を受けた担当者がいる」ことを外に示せる点にあると思っている。
要件は減算を受けないラインの一歩上。担当者を1人、外部研修に出すだけで届け出られる。
それに特養は入所期間が長いから、新規入所は年に数人〜十数人。加算収入としては年に数千円の世界だ。だから「収益のため」ではなく、事故防止の体制を一段引き上げる目標として使うのが実務的な位置づけだと思う。
外部研修の内容
安全対策に係る外部の研修については、介護現場における事故の内容、発生防止の取組、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含むものであること。
- 介護現場における事故の内容
- 発生防止の取組
- 発生時の対応
- 施設のマネジメント等
実施主体の指定はありませんが、上記4つの内容を含む研修である必要があります。受講証や研修プログラムを保管し、内容が要件に合致していることを示せるようにしてください。
安全管理対策部門の設置
また、組織的な安全対策を実施するにあたっては、施設内において安全管理対策部門を設置し、事故の防止に係る指示や事故が生じた場合の対応について、適切に従業者全員に行き渡るような体制を整備していることが必要であること。
減算を避けるだけなら、第35条第1項第4号の担当者を1人置けば足ります。
しかし加算では、通知が「安全管理対策部門を設置し」と求めています。担当者個人ではなく、組織として動く形にすることが条件です。
あわせて「事故の防止に係る指示や事故が生じた場合の対応について、適切に従業者全員に行き渡るような体制」も必要です。指示の伝達経路を文書化しておくのが確実です。
減算を受けないための月次点検
安全管理体制未実施減算は「基準を満たさない事実が生じた月の翌月から」始まります。つまり、体制が途切れた月のうちに気づけば減算を避けられます。
- 指針は現行のものが備え付けられているか(改定や体制変更を反映しているか)
- 委員会は定められた頻度で開催され、議事録が残っているか
- 研修は計画どおり実施され、参加記録が残っているか
- 担当者は現に在籍しているか(退職・異動していないか)
指針は作れば残ります。委員会と研修は年間計画に載せておけば回ります。しかし担当者の退職は突然起こります。
退職の申し出があった時点で後任を決め、引き継ぎの日付を記録に残す。これだけで、担当者不在という状態を作らずに済みます。
なお、担当者が不在となった場合の具体的な取扱いは通知に明示がありません。やむを得ず空白が生じた場合は、速やかに指定権者へ相談してください。
事故が起きたときとの関係
この減算は事故が起きたことに対する減算ではありません。高齢者虐待防止措置未実施減算と同じく、体制が整っているかどうかだけを見ています。
逆にいえば、事故が一度も起きていない施設でも、指針・委員会・研修・担当者のいずれかが欠ければ減算されます。「事故がないから大丈夫」ではありません。
他の減算との違い
| 減算 | 減算率・単位 | 改善計画の提出 | 開始 |
|---|---|---|---|
| 安全管理体制未実施減算 | 5単位/日 | 規定なし | 事実が生じた月の翌月 |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1% | 必要 | 事実が生じた月の翌月 |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の3%(施設系) | 規定なし | 翌月(月初日なら当該月) |
| 栄養管理の基準を満たさない場合の減算 | 14単位/日 | 規定なし | 翌々月 |
減算の始まり方が微妙に違います。栄養管理の減算だけが「翌々月」からで、他は翌月からです。
老健の安全対策体制加算との違い
| 項目 | 特養 | 老健 |
|---|---|---|
| 単位数 | 20単位 | |
| 算定 | 入所初日に限り | |
| 根拠となる基準 | 指定介護老人福祉施設基準第35条第1項 | 介護老人保健施設の基準の該当条項 |
単位数・算定の仕方は同じです。根拠となる基準の条項が施設種別ごとに違うだけで、求められる体制の中身(指針・委員会・研修・担当者+外部研修)は共通しています。
実務での確認ステップ
- 事故発生の防止のための指針を作成しているか確認する
- 事故発生の防止のための委員会を開催しているか確認する
- 従業者に対する研修を実施しているか確認する
- これらを適切に実施するための担当者を配置しているか確認する
- 担当者が退職・異動する場合は、空白を作らないよう後任を決める
- 4つのいずれかが欠けていないかを定期的に点検する(欠けた翌月から減算)
- 加算を目指す場合は、担当者を安全対策に係る外部研修に派遣する
- 研修が事故の内容・発生防止・発生時の対応・施設のマネジメントを含むか確認する
- 安全管理対策部門を設置し、指示の伝達経路を文書化する
- 都道府県知事へ届け出て、新規入所者の入所初日に20単位を算定する
1〜6が減算を避けるライン、7〜10が加算のラインです。まず前半を固めてください。
よくある質問
加算と減算の単位数は?
安全対策体制加算は20単位(入所初日に限り)、安全管理体制未実施減算は1日につき5単位です。
加算は毎日算定できますか?
できません。入所初日に限り算定します。
減算は誰にかかりますか?
入所者全員です。基準を満たさない事実が生じた月の翌月から、解消されるに至った月までかかります。
どんな体制が必要ですか?
事故発生の防止のための指針の作成、委員会の開催、従業者に対する研修の実施、これらを適切に実施するための担当者の配置の4つです。
担当者が退職したらどうなりますか?
担当者の配置は第35条第1項の要件に含まれるため、不在の状態は基準を満たさない状況になり得ます。取扱いは指定権者にご確認ください。
加算に必要な追加要件は?
担当者が安全対策に係る外部における研修を受けていることです。
外部研修の内容に決まりはありますか?
介護現場における事故の内容、発生防止の取組、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含むものであることとされています。
安全管理対策部門とは何ですか?
通知は、組織的な安全対策を実施するにあたって施設内に設置し、事故の防止に係る指示や事故が生じた場合の対応が従業者全員に行き渡る体制を整備することを求めています。
減算に改善計画の提出は必要ですか?
安全管理体制未実施減算には、高齢者虐待防止措置未実施減算のような改善計画の提出に関する規定は置かれていません。
経過措置はまだありますか?
安全管理体制未実施減算の経過措置は令和3年9月30日までで、すでに終了しています。
栄養管理の減算と開始時期は同じですか?
違います。安全管理体制未実施減算は事実が生じた月の翌月からですが、栄養管理の基準を満たさない場合の減算は翌々月からです。
老健の安全対策体制加算と同じですか?
単位数(20単位)と入所初日に限る点は同じです。根拠となる基準の条項が施設種別ごとに異なります。
- 特養の事故防止体制には加算と減算が対で置かれている
- 安全対策体制加算は20単位、入所初日に限り算定する
- 安全管理体制未実施減算は1日につき5単位、入所者全員が対象
- 100床なら減算は月15,000単位規模で、加算より影響が大きい
- まず減算を受けない体制を固めることが最優先
- 両者の根拠はいずれも指定介護老人福祉施設基準第35条第1項
- 必要な体制は指針・委員会・研修・担当者の4つ
- 1つでも欠けると減算の対象になり得る
- 減算は事実が生じた月の翌月から解消月まで
- 安全管理体制未実施減算に改善計画の提出の規定はない
- 担当者の退職・異動時に空白を作らないことが重要
- 経過措置は令和3年9月30日で終了している
- 加算には担当者の外部研修の受講が必要
- 外部研修は事故の内容・発生防止・発生時の対応・マネジメントを含むもの
- 加算では安全管理対策部門の設置も求められる
- 担当者1人ではなく組織として動く形にする
- 指示や対応が従業者全員に行き渡る体制を整備する
- 栄養管理の減算だけは翌々月から始まる
- 老健の同名加算も20単位・入所初日で構造は同じ
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) 介護福祉施設サービス ヰ 安全対策体制加算、イ及びロの注5(安全管理体制未実施減算)、附則(経過措置)(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号) 第54号の3
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号) 介護福祉施設サービス(8)安全管理体制未実施減算について、(45)安全対策体制加算について
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第40号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。指定介護老人福祉施設基準第35条第1項の各号の具体的な内容、担当者が不在となった場合の取扱い、外部研修が要件を満たすかの判断については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。判断に迷う場合は事前にご確認ください。経過措置など期日に関する記述は本記事の作成時点のものです。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額・減算額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。体制づくりや記録に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




