退院時カンファレンスでケアマネジャーがやるべきことは、情報を聞くことではありません。聞いた情報をもとに、退院後の生活を前提としたアセスメントをやり直すことです。

老企第22号は、介護保険施設等からの退院・退所について、こう書いています。「あらかじめ、居宅での生活における介護上の留意点等の情報を介護保険施設等の従業者から聴取する等の連携を図るとともに、居宅での生活を前提とした課題分析を行った上で居宅サービス計画を作成する等の援助を行うことが重要である。」

「聴取する等の連携」と「居宅での生活を前提とした課題分析」が、並列で書かれている点が要点です。カンファレンスに出て情報をもらって終わり、では条文の求めに届きません。

この記事では、指定居宅介護支援等基準(省令38号)と老企第22号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員で、訪問リハビリの立場でも退院時カンファレンスに参加してきました。

この記事でわかること
  • 退院時に求められるのは情報聴取+居宅前提の課題分析であること
  • アセスメントは居宅を訪問して面接する義務があること
  • その義務が退院前でも免除されないこと
  • 医療サービスを位置付けるには主治医等の指示の確認が必要なこと
  • あらかじめ利用者の同意を得て主治医等の意見を求める義務
  • 医療サービス以外でも医学的な留意事項は尊重すること
  • サービス担当者会議をテレビ電話等で行える条件
  • 末期の悪性腫瘍の患者について会議を省略できる例外
  • カンファレンスで必ず持ち帰るべき項目
  • 退院日に算定できないサービスがあること

求められているのは「聴取」と「居宅前提の課題分析」の両方

まず省令38号 第13条第18号です。

介護支援専門員は、介護保険施設等から退院又は退所しようとする要介護者から依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、あらかじめ、居宅サービス計画の作成等の援助を行わなければならない。

老企第22号が、この「援助」の中身を具体化しています。

介護支援専門員は、介護保険施設等から退院又は退所しようとする要介護者から居宅介護支援の依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、あらかじめ、居宅での生活における介護上の留意点等の情報を介護保険施設等の従業者から聴取する等の連携を図るとともに、居宅での生活を前提とした課題分析を行った上で居宅サービス計画を作成する等の援助を行うことが重要である。

  • ①情報の聴取:居宅での生活における介護上の留意点等を、施設等の従業者から聴取する
  • ②居宅前提の課題分析:居宅での生活を前提とした課題分析を行う
  • ③計画作成:そのうえで居宅サービス計画を作成する
「居宅での生活を前提とした」が効いている

病院や施設の中でできていることと、自宅でできることは違います。手すりのある病院の廊下で歩けても、自宅の段差で転ぶ。看護師が管理していた服薬が、自宅では飲めない。

だから通知は「居宅での生活を前提とした課題分析」とわざわざ書いています。カンファレンスで得られるのは病院の中の情報です。それを自宅の条件に翻訳する作業が、ケアマネジャーの仕事の本体です。

アセスメントは居宅訪問・面接が原則

省令38号 第13条第7号です。

介護支援専門員は、前号に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、介護支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。

「居宅を訪問し」と明記されています。退院前で本人が入院中であっても、この義務が消えるわけではありません。

場面すべきこと
入院中病院で本人・家族に面接し、状態と意向を把握する
退院前自宅を訪問し、住環境(段差・手すり・動線・トイレ・浴室)を確認する
退院後居宅を訪問し、利用者・家族に面接してアセスメントを行う

退院前の家屋訪問は、条文上の「アセスメント」そのものとは位置づけが異なりますが、「居宅での生活を前提とした課題分析」を行うためには事実上不可欠です。退院してから初めて自宅の状況を見る形では、必要な福祉用具も住宅改修も間に合いません。

ちびウルフちびウルフ

カンファレンスで、リハビリの先生から何を聞けばいいんですか?

リハウルフリハウルフ

「ADLはどうですか」は聞かないでください。返ってくるのは「歩行は見守りです」みたいな、翻訳しようのない言葉です。

私が病院側で出るときに答えやすかったのは、条件を指定した質問でした。「手すりのない廊下を10メートル歩けますか」「夜間トイレに1人で行けますか」「靴下は自分で履けますか」。

場面と条件を絞って聞くと、病院側は正確に答えられます。そして、その答えはそのまま自宅の条件に翻訳できる。ADLという抽象語で聞くと、抽象的な答えしか返りません。

医療サービスは主治医等の指示の確認が必要

退院直後は医療サービスを入れることが多くなります。ここに明確な義務があります。老企第22号です。

訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護サービスを利用する場合に限る。)及び複合型サービス(訪問看護サービスを利用する場合に限る。)については、主治の医師又は歯科医師等がその必要性を認めたものに限られるものであることから、介護支援専門員は、これらの医療サービスを居宅サービス計画に位置付ける場合にあっては主治の医師等の指示があることを確認しなければならない。

このため、利用者がこれらの医療サービスを希望している場合その他必要な場合には、介護支援専門員は、あらかじめ、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めなければならない。

サービス主治医等の指示の確認
訪問看護必要
訪問リハビリテーション必要
通所リハビリテーション必要
居宅療養管理指導必要
短期入所療養介護必要
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護を利用する場合)必要
複合型サービス(訪問看護を利用する場合)必要

退院時カンファレンスは、この確認を取る絶好の機会です。主治医が同席している場で、訪問看護・訪問リハビリの必要性について意見を得ておけば、退院後に改めて依頼する手間が省けます。

医療サービス以外にも留意事項は及ぶ

同じ通知の続きです。

「なお、医療サービス以外の指定居宅サービス等を居宅サービス計画に位置付ける場合にあって、当該指定居宅サービス等に係る主治の医師等の医学的観点からの留意事項が示されているときは、介護支援専門員は、当該留意点を尊重して居宅介護支援を行うものとする。」

訪問介護や通所介護であっても、医師から医学的な留意事項が示されていれば尊重する義務があります。「入浴は血圧を確認してから」「10分以上の連続歩行は避ける」といった指示は、カンファレンスで必ず記録してください。

サービス担当者会議の運用

退院時カンファレンスと、居宅介護支援のサービス担当者会議は別のものですが、実務では一体で行われることがあります。省令38号 第13条第9号です。

介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために、利用者及びその家族の参加を基本としつつ、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者を招集して行う会議(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。ただし、利用者又はその家族が参加する場合にあっては、テレビ電話装置等の活用について当該利用者等の同意を得なければならない。))の開催により、利用者の状況等に関する情報を担当者と共有するとともに、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。

  • 基本は利用者及びその家族の参加
  • テレビ電話装置等の活用が認められている
  • ただし利用者等が参加する場合はその同意が必要

末期の悪性腫瘍の患者についての例外

同じ第9号のただし書きです。

ただし、利用者(末期の悪性腫瘍の患者に限る。)の心身の状況等により、主治の医師又は歯科医師の意見を勘案して必要と認める場合その他のやむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。

末期の悪性腫瘍の患者については、状態の変化が速く、会議の開催を待っていられない場面があります。主治医等の意見を勘案して必要と認めれば、照会等で代替できます。ただし対象は「末期の悪性腫瘍の患者に限る」と明示されています。

退院日に算定できないサービスがある

見落とすと事故になる論点です。老企第36号 第二の1(3)です。

介護老人保健施設、介護療養型医療施設若しくは介護医療院の退所(退院)日又は短期入所療養介護のサービス終了日については、訪問看護費、訪問リハビリテーション費、居宅療養管理指導費及び通所リハビリテーション費は算定できない。訪問介護等の福祉系サービスは別に算定できるが、施設サービスや短期入所サービスでも、機能訓練やリハビリテーションを行えることから、退所(退院)日に通所介護サービスを機械的に組み込むといった居宅サービス計画は適正でない。

サービス介護保険施設等の退所(退院)日
訪問看護算定できない
訪問リハビリテーション算定できない
居宅療養管理指導算定できない
通所リハビリテーション算定できない
訪問介護等の福祉系サービス算定できる
通所介護算定できるが、機械的な組み込みは不適正

この規定は介護保険施設等からの退所(退院)についてのものです。医療機関からの退院日の取扱いは別に定められており、訪問看護については医療保険での算定を含めて例外的な扱いがあります。退院元がどこかによって結論が変わるため、個別に確認してください。

カンファレンスで必ず持ち帰る項目

  • 退院日と、退院時の移動手段(誰が、どうやって連れて帰るか)
  • 医学的な留意事項と中止基準(血圧・体温・症状の閾値、禁忌動作)
  • 服薬の内容と、自己管理できるかどうかの評価
  • 訪問看護・訪問リハビリの必要性についての主治医の意見(指示の確認を兼ねる)
  • ADLについて、場面と条件を指定した具体的な能力(手すりの有無、夜間、履物)
  • 退院後に予想される急変・悪化のサインと、その際の連絡先
  • 次回受診の日程と、通院の手段
  • 病院側の窓口となる職員の氏名と連絡先

最後の項目を必ず取ってください。退院後に疑問が出たとき、「病院に電話しても誰に聞けばいいか分からない」という事態が最も困ります。カンファレンスの場で名前を聞いておけば、その後の数か月が変わります。

病院側から見た「良いケアマネジャー」

私は訪問リハビリの立場でカンファレンスに出ますが、病院の担当者から評価が高いのは「自宅の写真を持ってくるケアマネジャー」です。

玄関の段差、トイレの広さ、廊下の幅、浴室の出入り口。写真が1枚あるだけで、病院のリハビリ職は具体的な助言ができます。「その段差なら、退院までに踏み台昇降を追加します」といった話になる。

言葉で「段差があります」と伝えても、高さも幅も分かりません。事前の家屋訪問には、この副次的な価値があります。

よくある質問

退院時に求められることは何ですか?

老企第22号は、施設等の従業者から居宅での生活における介護上の留意点等を聴取する連携と、居宅での生活を前提とした課題分析を行ったうえで居宅サービス計画を作成することを求めています。

アセスメントは居宅を訪問しないといけませんか?

省令38号 第13条第7号は「利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない」と定めています。

退院前に自宅を見に行く必要がありますか?

条文上の「アセスメント」とは位置づけが異なりますが、居宅での生活を前提とした課題分析を行うためには事実上不可欠です。福祉用具や住宅改修の準備にも必要です。

訪問看護を位置付けるときに必要な確認は?

主治の医師等の指示があることの確認です。老企第22号は、訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ・居宅療養管理指導・短期入所療養介護等について、指示の確認を義務づけています。

主治医の意見はいつ求めますか?

「あらかじめ、利用者の同意を得て」求めなければならないとされています。退院時カンファレンスは、この確認を取る機会として有効です。

訪問介護にも医師の指示は必要ですか?

指示の確認は不要ですが、医学的観点からの留意事項が示されている場合は、それを尊重して居宅介護支援を行うこととされています。

サービス担当者会議はオンラインでできますか?

できます。ただし利用者またはその家族が参加する場合は、テレビ電話装置等の活用について同意を得る必要があります。

サービス担当者会議を省略できる場合はありますか?

利用者が末期の悪性腫瘍の患者であり、心身の状況等により主治の医師等の意見を勘案して必要と認める場合その他やむを得ない理由がある場合は、担当者への照会等で意見を求めることができます。

退院日に訪問リハビリは入れられますか?

介護保険施設等の退所(退院)日については、訪問看護費・訪問リハビリテーション費・居宅療養管理指導費・通所リハビリテーション費は算定できません。医療機関からの退院日の取扱いは別に定められています。

退院日に訪問介護は入れられますか?

訪問介護等の福祉系サービスは別に算定できるとされています。

退院日に通所介護を入れてもよいですか?

算定はできますが、通知は「退所(退院)日に通所介護サービスを機械的に組み込むといった居宅サービス計画は適正でない」としています。

カンファレンスでADLをどう聞けばよいですか?

「ADLはどうですか」ではなく、場面と条件を指定して聞いてください。「手すりのない廊下を10メートル歩けますか」「夜間トイレに1人で行けますか」といった聞き方なら、自宅の条件に翻訳できます。

まとめ
  • 退院時に求められるのは、情報の聴取と居宅前提の課題分析の両方
  • 老企第22号は「聴取する等の連携」と「居宅での生活を前提とした課題分析」を並列で書いている
  • カンファレンスで得られるのは病院の中の情報にすぎない
  • それを自宅の条件に翻訳する作業がケアマネジャーの仕事の本体
  • アセスメントは居宅を訪問し、利用者・家族に面接して行う義務がある
  • 面接の趣旨を説明し、理解を得ることも条文上の義務
  • 退院前の家屋訪問は、課題分析のために事実上不可欠
  • 医療サービスの位置付けには主治医等の指示の確認が必要
  • 対象は訪問看護・訪問リハ・通所リハ・居宅療養管理指導・短期入所療養介護等
  • あらかじめ利用者の同意を得て主治医等の意見を求めなければならない
  • 退院時カンファレンスは、この確認を取る機会として有効
  • 医療サービス以外でも、医学的観点からの留意事項は尊重する
  • サービス担当者会議は利用者・家族の参加が基本
  • テレビ電話等を活用できるが、利用者等が参加する場合は同意が必要
  • 末期の悪性腫瘍の患者については照会等で代替できる例外がある
  • 介護保険施設等の退所日は、訪問看護・訪問リハ・居宅療養管理指導・通所リハが算定できない
  • 訪問介護等の福祉系サービスは算定できる
  • 退院日に通所介護を機械的に組み込む計画は不適正とされている
  • ADLは場面と条件を指定して聞く(抽象語では抽象的な答えしか返らない)
  • 中止基準・禁忌動作・急変のサインと連絡先を必ず持ち帰る
  • 病院側の窓口となる職員の氏名と連絡先を確保しておく
  • 自宅の写真を持参すると、病院側から具体的な助言を引き出せる
参考にした情報

※本記事の内容は、厚生労働省の省令、告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の運用・算定にあたっては原文および保険者・指定権者の解釈をご確認ください。退院日における各サービスの算定の可否は、退院元が医療機関か介護保険施設等かによって取扱いが異なり、訪問看護については医療保険での算定を含めた別の定めがあります。個別のケースについては保険者にご確認ください。退院・退所加算をはじめとする各加算の算定要件は本記事では扱っていません。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。カンファレンスでの聞き方、持ち帰るべき項目、家屋の写真の活用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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