小規模多機能型居宅介護(小多機)に登録すると、ケアマネジャーは小多機の事業所に変わります。それまでの居宅介護支援事業所の担当を続けることはできません。

根拠は2つあります。1つは指定地域密着型サービス基準(省令34号)第63条第10項。「登録者に係る居宅サービス計画及び小規模多機能型居宅介護計画の作成に専ら従事する介護支援専門員を置かなければならない」。もう1つは告示第20号の居宅介護支援費 注11で、月を通じて小多機を受けている場合は居宅介護支援費を算定しないと定めています。

この「月を通じて」が実務の急所です。月の途中で小多機の利用を始めた月、あるいは終えた月は、居宅介護支援費を算定できます。ここを知らずに請求を落としている事業所が実際にあります。

この記事では、省令34号と告示第20号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 小多機のケアマネジャーは小多機の事業所が担当すること
  • その介護支援専門員が「専ら従事する」必要があること
  • 所定の研修を修了している必要があること
  • 居宅介護支援費が算定されない条件(「月を通じて」)
  • 開始月・終了月は居宅介護支援費を算定できること
  • 短期利用の場合は対象外であること
  • 作成する計画が2種類あること(居宅サービス計画と小多機計画)
  • 居宅サービス計画は居宅介護支援等基準第13条に沿って作ること
  • 事業所を変えるときの書類の交付義務
  • サテライト型では研修修了者を置ける特例

小多機の事業所に「専ら従事する」介護支援専門員を置く

省令34号 第63条第10項です。

指定小規模多機能型居宅介護事業者は、登録者に係る居宅サービス計画及び小規模多機能型居宅介護計画の作成に専ら従事する介護支援専門員を置かなければならない。ただし、当該介護支援専門員は、利用者の処遇に支障がない場合は、当該指定小規模多機能型居宅介護事業所の他の職務に従事し、又は(中略)併設される施設等の職務に従事することができる。

さらに第11項が資格要件を加えています。

前項の介護支援専門員は、別に厚生労働大臣が定める研修を修了している者でなければならない。

  • 配置するのは居宅サービス計画と小多機計画の両方の作成に専ら従事する介護支援専門員
  • ただし処遇に支障がなければ、事業所内の他の職務や併設施設の職務と兼務できる
  • 所定の研修を修了していることが要件
「専ら従事する」の意味

条文は「専ら従事する介護支援専門員を置かなければならない」としつつ、ただし書きで兼務を認めています。つまり「計画作成の担当者を明確に決めよ」という趣旨であって、他の業務を一切してはならないという意味ではありません。

実際、小規模な事業所では管理者や介護職員と兼務しているケースが普通にあります。兼務の可否より、誰が計画作成の責任者なのかが明確かどうかが問われます。

居宅介護支援費が算定されない条件

報酬側の根拠です。告示第20号 居宅介護支援費 注11です。

利用者が月を通じて特定施設入居者生活介護(短期利用特定施設入居者生活介護費を算定する場合を除く。)又は小規模多機能型居宅介護(短期利用居宅介護費を算定する場合を除く。)、認知症対応型共同生活介護(短期利用認知症対応型共同生活介護費を算定する場合を除く。)、地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用地域密着型特定施設入居者生活介護費を算定する場合を除く。)若しくは複合型サービス(短期利用居宅介護費を算定する場合を除く。)を受けている場合は、当該月については、居宅介護支援費は、算定しない。

状況居宅介護支援費
月を通じて小多機を利用算定しない
月の途中で小多機の利用を開始算定できる
月の途中で小多機の利用を終了算定できる
短期利用居宅介護費を算定する場合算定できる

条文は「月を通じて」と限定しています。登録を開始した月は、その月の一部しか小多機を受けていないため、居宅介護支援事業所が居宅介護支援費を算定できます。

開始月・終了月の請求を落とさない

小多機への移行月は、居宅介護支援事業所側で相当な業務が発生します。サービス担当者会議、関係事業所との調整、記録の引き継ぎ。それでいて「もう小多機に移ったから」と請求を控えてしまうケースがあります。

条文上、月の途中の移行なら居宅介護支援費は算定できます。もちろん、その月に指定居宅介護支援を実際に行い、基準第14条第1項の文書を提出しているなどの要件を満たすことが前提です。

逆に、小多機側も移行月の扱いを誤らないよう確認が要ります。二重に請求すれば返戻の対象です。

「短期利用居宅介護費」は別扱い

小多機には、登録によらず一時的に利用する短期利用居宅介護費という区分があります。この場合は括弧書きで除外されているため、居宅介護支援費を算定できます。

つまり、居宅介護支援事業所の担当を続けたまま、小多機を短期的に使うことは可能です。緊急時の泊まりなどで使われます。

作成する計画は2種類ある

小多機の介護支援専門員が作るのは、居宅サービス計画だけではありません。

計画根拠内容
居宅サービス計画省令34号 第74条併用する訪問看護・訪問リハビリ等も含めた全体の計画
小規模多機能型居宅介護計画省令34号 第77条通い・訪問・泊まりの具体的な内容

第74条は、居宅サービス計画の作成方法についても定めています。

指定小規模多機能型居宅介護事業所の管理者は、介護支援専門員に、登録者の居宅サービス計画の作成に関する業務を担当させるものとする。
2 介護支援専門員は、前項に規定する居宅サービス計画の作成に当たっては、指定居宅介護支援等基準第13条各号に掲げる具体的取組方針に沿って行うものとする。

第13条は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが従う運営基準そのものです。アセスメント、サービス担当者会議、モニタリング、複数事業所の紹介など、居宅介護支援と同じ水準が求められます。

そして第77条第2項は、小多機計画について独自の視点を加えています。

介護支援専門員は、小規模多機能型居宅介護計画の作成に当たっては、地域における活動への参加の機会が提供されること等により、利用者の多様な活動が確保されるものとなるように努めなければならない。

ちびウルフちびウルフ

自分の事業所のサービスを自分で計画するって、公正中立の問題はないんですか?

リハウルフリハウルフ

鋭い指摘です。構造としては「自社サービスを自社のケアマネが位置付ける」形になります。

ただ、小多機はそもそも通い・訪問・泊まりを一体で提供するサービスなので、外部のケアマネが細かく組んでも意味がないという設計思想です。1日の中で通いから訪問へ切り替える、といった柔軟な運用が売りですから。

そのぶん第74条第2項が「指定居宅介護支援等基準第13条各号に沿って行う」と縛りをかけています。居宅のケアマネと同じ基準を守れ、ということ。併用できる訪問看護や訪問リハビリを、必要なのに位置付けないのは、この基準に反します。

事業所を変えるときの書類交付は義務

省令34号 第76条です。

指定小規模多機能型居宅介護事業者は、登録者が他の指定小規模多機能型居宅介護事業者の利用を希望する場合その他登録者からの申出があった場合には、当該登録者に対し、直近の居宅サービス計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならない。

  • 他の小多機への移行を希望する場合
  • その他、登録者からの申出があった場合
  • 交付するのは直近の居宅サービス計画と実施状況に関する書類

「その他登録者からの申出があった場合」という文言が広く、小多機をやめて居宅介護支援に戻る場合も含まれると読むのが自然です。移行のたびに情報が途切れないための規定です。

サテライト型では研修修了者を置ける

省令34号 第63条第12項の特例です。

第10項の規定にかかわらず、サテライト型指定小規模多機能型居宅介護事業所については、本体事業所の介護支援専門員により当該サテライト型事業所の登録者に対して居宅サービス計画の作成が適切に行われるときは、介護支援専門員に代えて、小規模多機能型居宅介護計画の作成に専ら従事する研修修了者を置くことができる。

本体事業所サテライト型事業所
居宅サービス計画の作成介護支援専門員本体事業所の介護支援専門員
小多機計画の作成介護支援専門員研修修了者でも可

サテライト型では、居宅サービス計画は本体が作り、小多機計画だけをサテライトの研修修了者が作るという分担ができます。介護支援専門員の確保が難しい地域への配慮です。

移行時にケアマネジャーがすること

  • 本人・家族に、担当ケアマネジャーが変わることを事前に説明し、同意を得る
  • 小多機に移ると使えなくなるサービス(訪問介護・通所介護・ショートステイ等)を具体的に伝える
  • 併用できるサービス(訪問看護・訪問リハビリ・居宅療養管理指導・福祉用具貸与)を確認し、継続の要否を整理する
  • 移行日を確定し、既存の各サービス事業所に一斉に連絡する
  • サービス担当者会議を開き、小多機の介護支援専門員に引き継ぐ
  • 直近の居宅サービス計画、アセスメント、経過記録を文書で引き渡す
  • 移行月の居宅介護支援費の算定可否を確認する(月を通じてでなければ算定できる)

6つ目を形式的に済ませないでください。小多機の介護支援専門員は、その利用者を一から知ることになります。これまでの経過、家族との関係、うまくいかなかった手立て。ここを渡せるかどうかで、移行後の数か月が変わります。

よくある質問

小多機に登録するとケアマネジャーは変わりますか?

変わります。省令34号 第63条第10項により、小多機の事業所が登録者の居宅サービス計画の作成に専ら従事する介護支援専門員を置くこととされています。

今のケアマネジャーを続けることはできませんか?

月を通じて小多機を利用する場合、居宅介護支援費が算定されないため、実質的に続けられません。ただし短期利用居宅介護費を算定する場合は除かれます。

移行した月の居宅介護支援費は算定できますか?

できます。告示第20号 注11は「月を通じて」小多機を受けている場合に算定しないとしています。月の途中の移行であれば、要件を満たす限り算定できます。

小多機をやめた月はどうなりますか?

同様に「月を通じて」に当たらないため、居宅介護支援費を算定できます。

小多機の介護支援専門員に資格要件はありますか?

あります。省令34号 第63条第11項により、別に厚生労働大臣が定める研修を修了している必要があります。

小多機の介護支援専門員は他の業務と兼務できますか?

できます。条文は「専ら従事する」としつつ、利用者の処遇に支障がない場合は事業所内の他の職務や併設施設の職務に従事できるとしています。

作成する計画は何ですか?

居宅サービス計画(第74条)と小規模多機能型居宅介護計画(第77条)の2つです。

居宅サービス計画はどのように作りますか?

第74条第2項により、指定居宅介護支援等基準第13条各号に掲げる具体的取組方針に沿って作成します。居宅介護支援事業所のケアマネジャーと同じ基準です。

自社サービスばかり位置付けられませんか?

第74条第2項が居宅介護支援等基準第13条に沿うことを求めています。併用できる訪問看護・訪問リハビリ等を必要に応じて位置付けないことは、この基準に反します。

事業所を変えるとき、書類はもらえますか?

もらえます。第76条は、他の小多機の利用を希望する場合その他登録者からの申出があった場合に、直近の居宅サービス計画とその実施状況に関する書類を交付しなければならないとしています。

サテライト型でも介護支援専門員が必要ですか?

本体事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画を適切に作成する場合は、サテライト型には小多機計画の作成に専ら従事する研修修了者を置くことで足ります。

移行時に何を引き継げばよいですか?

直近の居宅サービス計画、アセスメント、経過記録に加え、これまでの経過や家族との関係、うまくいかなかった手立てまで伝えることが望まれます。

まとめ
  • 小多機に登録すると、ケアマネジャーは小多機の事業所に変わる
  • 根拠は省令34号 第63条第10項と告示第20号 居宅介護支援費 注11
  • 小多機は居宅サービス計画と小多機計画の作成に専ら従事する介護支援専門員を置く
  • その介護支援専門員は所定の研修を修了している必要がある
  • 処遇に支障がなければ他の職務との兼務は認められる
  • 居宅介護支援費は「月を通じて」小多機を受けている場合に算定しない
  • 月の途中で開始・終了した月は、居宅介護支援費を算定できる
  • 移行月の請求を落とさないよう確認する
  • 短期利用居宅介護費を算定する場合は除かれる
  • 作成する計画は居宅サービス計画と小規模多機能型居宅介護計画の2つ
  • 居宅サービス計画は居宅介護支援等基準第13条各号に沿って作成する
  • 居宅介護支援事業所のケアマネジャーと同じ水準が求められる
  • 小多機計画では地域における活動への参加の機会にも配慮する
  • 必要な訪問看護・訪問リハビリを位置付けないことは基準に反する
  • 事業所を変えるときは直近の居宅サービス計画等の交付が義務
  • 「その他登録者からの申出があった場合」も交付の対象
  • サテライト型は、本体の介護支援専門員が居宅サービス計画を作れば研修修了者で足りる
  • 移行時は担当者が変わることを事前に説明し、同意を得る
  • 使えなくなるサービスと併用できるサービスを具体的に伝える
  • 移行日は既存の全事業所へ一斉に連絡する
  • 経過や家族との関係まで引き継ぐことが、移行後の数か月を左右する
参考にした情報

※本記事の内容は、厚生労働省の省令、告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および保険者(市町村)の解釈をご確認ください。移行月における居宅介護支援費の算定可否は、その月に指定居宅介護支援を実際に行っているか、基準第14条第1項の文書を提出しているか等の要件を満たすことが前提です。取扱いが保険者によって異なる場合があるため、請求前に必ず保険者にご確認ください。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導監督は市町村が行うため、運用の細部が市町村によって異なります。介護支援専門員が修了すべき研修の名称・実施主体は都道府県によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。移行時の引き継ぎに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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