小規模多機能型居宅介護の認知症加算とは?(Ⅰ)〜(Ⅳ)4区分の単位数と要件を解説

小規模多機能型居宅介護(小多機)の認知症加算は、(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位・(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位(いずれも1月につき)の4区分です。令和6年度介護報酬改定で2区分から4区分に再編されました。
小多機の加算のなかで、もっとも算定されている加算のひとつです。厚生労働省の資料では、改定前の認知症加算(Ⅰ)を92.3%の事業所、(Ⅱ)を70.6%の事業所が算定していました(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。
ここで注意が必要なのは、その9割の事業所が算定していた「(Ⅰ)800単位」は、現在の(Ⅲ)760単位に相当するということです。区分の番号が同じでも中身が入れ替わっているため、改定前の感覚のままだと取り違えます。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のニ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第54号の5、同基準に適合する利用者等(同第94号)第38号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 認知症加算4区分の単位数と、改定前後の対応関係
- (Ⅰ)(Ⅱ)は事業所の体制、(Ⅲ)(Ⅳ)は利用者の状態で決まること
- (Ⅰ)(Ⅱ)に必要な研修修了者の人数の計算方法
- 「認知症看護に係る適切な研修」として認められる3つの研修
- (Ⅳ)だけが要介護2に限定されていること
- (Ⅰ)〜(Ⅲ)は同時に算定できず、いずれか1つであること
- (Ⅳ)は(Ⅰ)〜(Ⅲ)と重ねられるのかという論点
- 若年性認知症利用者受入加算800単位との排他関係
- 日常生活自立度の確認方法
- 看多機の認知症加算とまったく同じ基準であること
認知症加算は4区分。改定で番号の中身が入れ替わった
告示126号の小規模多機能型居宅介護費「ニ 認知症加算」が定める単位数と、改定前との対応は次のとおりです。
| 区分 | 改定後(令和6年度〜) | 改定前 | 決まり方 |
|---|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ) | 920単位(新設) | — | 事業所の体制 |
| 認知症加算(Ⅱ) | 890単位(新設) | — | 事業所の体制 |
| 認知症加算(Ⅲ) | 760単位 | (Ⅰ)800単位 | 利用者の状態 |
| 認知症加算(Ⅳ) | 460単位 | (Ⅱ)500単位 | 利用者の状態 |
改定前に認知症加算(Ⅰ)800単位を算定していた事業所は、何もしなければ(Ⅲ)760単位になります(40単位のマイナス)。(Ⅱ)500単位だった場合は(Ⅳ)460単位です。
新しい(Ⅰ)(Ⅱ)は研修修了者の配置という体制要件を満たして届け出た事業所だけが算定できる区分です。単位数を維持・増額するには、体制側の要件を取りに行く必要があります。
(Ⅰ)(Ⅱ)は体制加算。研修修了者の人数が要件
告示95号 第54号の5が定める(Ⅰ)の基準は4つです。
- 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を、対象者の数が20人未満の場合は1以上、20人以上の場合は1に対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること
- 当該事業所の従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催していること
- 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施していること
- 介護職員・看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、当該計画に従い研修(外部研修を含む)を実施または実施を予定していること
(Ⅱ)890単位は、このうち1つ目と2つ目だけで算定できます。差は30単位です。
必要な人数の数え方
1つ目の「対象者」とは、日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の者を指します。人数の計算は次のようになります。
| 対象者の数 | 必要な研修修了者 |
|---|---|
| 19人以下 | 1人以上 |
| 20〜29人 | 2人以上 |
| 30〜39人 | 3人以上 |
小多機の登録定員は本体29人までです。登録者全員が対象者に該当する事業所でも、必要なのは2人までという規模感になります。実務的には1〜2人の配置で足ります。
差額は30単位。年間で360単位(およそ3,600円)です。金額だけを見れば小さく見えます。
ただし3つ目の要件である認知症介護指導者研修の修了者がいれば、事業所全体の認知症ケアの質を引き上げる役割を担えます。30単位のために取る研修ではなく、取ったから30単位が付くという順番で考えるのが実際的です。
「認知症看護に係る適切な研修」として認められるもの
「認知症介護に係る専門的な研修」は、一般には認知症介護実践リーダー研修などを指します。あわせて認知症看護に係る研修も認められており、令和6年度改定に関するQ&A(Vol.1)問17は、現時点で次のいずれかとしています。
- 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
- 日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」および「精神看護」の専門看護師教育課程
- 日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」(認定証が発行されている者に限る)
看護職員が在籍している小多機なら、介護職員に研修を受けさせる以外の道があるということです。人員基準上、小多機には看護職員が1以上配置されているため、確認する価値があります。
(Ⅲ)(Ⅳ)は利用者の状態で決まる。(Ⅳ)は要介護2限定
告示94号 第38号は、対象者を次のように定めています。
| 区分 | 対象となる登録者 |
|---|---|
| (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | 日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の者 |
| (Ⅳ) | 要介護状態区分が要介護2である者であって、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症のもの |
実務上は認知症高齢者の日常生活自立度で判断されます。(Ⅳ)だけが要介護2に限定されており、要介護1の方や要介護3以上の方は(Ⅳ)の対象になりません。
日常生活自立度の確認方法
Q&A(Vol.1)問18は、確認方法を次のように示しています。
- 医師の判定結果または主治医意見書を用いる
居宅サービス計画または各サービスの計画に記載する。複数の判定結果がある場合は最も新しい判定を用いる。 - 医師の判定がない場合
認定調査員が記入した認定調査票(基本調査)7の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いる。 - 情報を共有する
介護支援専門員はサービス担当者会議などを通じて、日常生活自立度も含めて情報を共有する。
小多機は事業所の介護支援専門員が計画を作るサービスです。自立度の根拠が計画書に書かれているかが、そのまま加算の裏づけになります。
算定の組み合わせ|(Ⅰ)〜(Ⅲ)はいずれか1つ
告示126号 ニの注1は、次のように定めています。
(前略)当該基準に掲げる区分に従い、(1)及び(2)について1月につきそれぞれ所定単位数を加算する。ただし、(1)、(2)又は(3)のいずれかの加算を算定している場合は、その他の加算は算定しない。
そして注2が、(Ⅲ)(Ⅳ)について「別に厚生労働大臣が定める登録者に対して指定小規模多機能型居宅介護を行った場合は、(3)及び(4)について1月につきそれぞれ所定単位数を加算する」としています。
| 組み合わせ | 可否 |
|---|---|
| (Ⅰ)と(Ⅱ) | 不可 |
| (Ⅰ)と(Ⅲ)/(Ⅱ)と(Ⅲ) | 不可 |
| (Ⅰ)または(Ⅱ)または(Ⅲ)のいずれか1つ | ○ |
ただし書きが除外しているのは(1)(2)(3)の相互です。(4)=(Ⅳ)は、この文言に含まれていません。(Ⅳ)の対象は要介護2の方に限られ、(Ⅰ)〜(Ⅲ)の対象者とは要件が異なるため、条文上は別の利用者について並行して算定されることが想定された書き方になっています。同一の利用者について重ねられるかどうかは条文だけでは読み切れないため、市町村に確認してください。
ちびウルフ結局うちの事業所は、どれを狙えばいいんでしょう?
リハウルフ判断はシンプルです。研修修了者を配置できるなら(Ⅱ)890単位、指導者研修修了者までいるなら(Ⅰ)920単位。どちらも無理なら(Ⅲ)760単位です。
差は(Ⅲ)と(Ⅰ)で160単位/月。対象者が20人いれば月3,200単位、年間で38,400単位(約38万円)です。研修受講の費用と時間を回収できる水準だと思います。
それ以上に、9割の事業所が算定している加算だからこそ、ここで差が付くと相対的に不利になるという見方もできます。
若年性認知症利用者受入加算とは併算定できない
告示126号 ヘの注は、若年性認知症利用者受入加算800単位について「ただし、ニを算定している場合は、算定しない」としています。「ニ」は認知症加算です。
| 加算 | 単位数/月 | 対象 |
|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ) | 920単位 | 体制要件を満たす事業所の対象登録者 |
| 認知症加算(Ⅱ) | 890単位 | 同上 |
| 認知症加算(Ⅲ) | 760単位 | 対象登録者 |
| 若年性認知症利用者受入加算 | 800単位 | 若年性認知症利用者 |
| 認知症加算(Ⅳ) | 460単位 | 要介護2の対象登録者 |
若年性認知症の登録者について、どちらを算定するかを選ぶことになります。(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位を算定できる事業所なら、若年性認知症利用者受入加算800単位より有利です。逆に体制要件を満たしていない事業所では、(Ⅲ)760単位より若年性認知症利用者受入加算800単位のほうが高くなります。
若年性認知症利用者受入加算の要件は「受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別の担当者を定めていること」の1点で、届出が必要です。
看多機の認知症加算とまったく同じ基準
告示95号 第54号の5の見出しは「小規模多機能型居宅介護費及び看護小規模多機能型居宅介護費における認知症加算の基準」です。単位数(920/890/760/460単位)も、対象者の定義も、小多機と看多機で共通です。
両方の指定を受けている法人では、研修修了者の配置計画を一体で考えられるということでもあります。ただし届出は事業所ごとに必要です。
小多機の認知症加算はいくらですか?
1月につき(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位・(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位です。令和6年度改定で2区分から4区分になりました。
改定前の(Ⅰ)800単位はどこへ行きましたか?
現在の(Ⅲ)760単位に相当します。改定前の(Ⅱ)500単位は(Ⅳ)460単位です。何もしなければ単位数は下がります。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
(Ⅱ)は研修修了者の配置と会議の定期開催の2要件です。(Ⅰ)はこれに、認知症介護の指導に係る専門的な研修修了者を1名以上配置すること、職員ごとの研修計画を作成し研修を実施することが加わります。
研修修了者は何人必要ですか?
対象者が20人未満なら1人以上、20人以上なら1人に、対象者が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えた数以上です。小多機の登録定員(本体29人)なら、多くても2人です。
看護師の研修でも要件を満たしますか?
認知症看護に係る適切な研修として、日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」、日本看護協会が認定する看護系大学院の「老人看護」「精神看護」の専門看護師教育課程、日本精神科看護協会の「精神科認定看護師」(認定証が発行されている者に限る)が認められています。
(Ⅳ)は誰が対象ですか?
要介護2である者であって、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の方です。要介護度の限定があるのは(Ⅳ)だけです。
日常生活自立度はどう確認しますか?
医師の判定結果または主治医意見書を用い、計画に記載します。複数の判定がある場合は最も新しいものを使います。医師の判定がない場合は、認定調査票(基本調査)7の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄を用います。
(Ⅰ)と(Ⅲ)を同時に算定できますか?
できません。告示は「(1)、(2)又は(3)のいずれかの加算を算定している場合は、その他の加算は算定しない」としています。
若年性認知症利用者受入加算と両方算定できますか?
できません。若年性認知症利用者受入加算の注に「ニ(認知症加算)を算定している場合は、算定しない」とあります。単位数の高いほうを選ぶことになります。
届出は必要ですか?
(Ⅰ)(Ⅱ)は市町村長への届出が必要です。(Ⅲ)(Ⅳ)は利用者の状態で決まる区分で、告示上は届出の定めが置かれていません。運用は市町村にご確認ください。
看多機でも同じですか?
同じです。基準を定める告示95号第54号の5は「小規模多機能型居宅介護費及び看護小規模多機能型居宅介護費における認知症加算の基準」であり、単位数も対象者も共通です。
- 小多機の認知症加算は(Ⅰ)920・(Ⅱ)890・(Ⅲ)760・(Ⅳ)460単位(1月)
- 令和6年度改定で2区分から4区分に再編された
- 改定前の(Ⅰ)800単位は現在の(Ⅲ)760単位に相当する
- 改定前から何もしていない事業所は40単位のマイナスになっている
- (Ⅰ)(Ⅱ)は事業所の体制、(Ⅲ)(Ⅳ)は利用者の状態で決まる
- (Ⅱ)の要件は研修修了者の配置と会議の定期開催の2つ
- (Ⅰ)はこれに指導者研修修了者1名以上と研修計画の作成が加わる
- 研修修了者は対象者20人未満なら1人、20人以上なら2人以上
- 小多機の定員規模なら実質1〜2人で足りる
- 認知症看護に係る研修(認定看護師・専門看護師・精神科認定看護師)でも要件を満たす
- (Ⅳ)は要介護2の方に限定される
- 日常生活自立度は医師の判定または主治医意見書、なければ認定調査票で確認する
- (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)はいずれか1つしか算定できない
- 若年性認知症利用者受入加算800単位とは併算定できない
- 体制要件を満たせるなら認知症加算、満たせないなら若年性のほうが高い場合がある
- 看多機の認知症加算と基準・単位数は完全に共通
- 改定前の算定率は(Ⅰ)92.3%・(Ⅱ)70.6%(事業所ベース)と極めて高い
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 指定地域密着型サービス介護給付費単位数表「小規模多機能型居宅介護費」ニ(認知症加算)、ヘ(若年性認知症利用者受入加算)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第54号の5(小規模多機能型居宅介護費及び看護小規模多機能型居宅介護費における認知症加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第38号(認知症加算の対象登録者)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(介護保険最新情報Vol.1225・PDF)問17(認知症看護に係る適切な研修)、問18(日常生活自立度の確認方法)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)1.(7)④ (看護)小規模多機能型居宅介護における認知症対応力の強化
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第218回)資料2「小規模多機能型居宅介護」(PDF)小規模多機能型居宅介護の算定状況(介護給付費等実態統計 令和4年4月審査分)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、Q&Aおよび審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、届出の要否や加算の組み合わせの解釈が自治体によって異なる場合があります。(Ⅳ)と(Ⅰ)〜(Ⅲ)を同一の利用者について重ねられるかは条文だけでは読み切れないため、断定を避けています。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値であり、改定前の区分にもとづくものです。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。研修受講の費用対効果に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




