特養・老健の入所中に訪問リハビリは使える?介護保険法から解説

特別養護老人ホームや介護老人保健施設に入所している方は、訪問リハビリテーションを利用できません。訪問看護も、訪問介護も同じです。
理由は報酬のルールではなく、介護保険法そのものにあります。法第41条第1項は、居宅介護サービス費を支給する対象を「要介護被保険者のうち居宅において介護を受けるもの(居宅要介護被保険者)」と定めています。施設に入所している方は「居宅において介護を受けるもの」に当たらないため、そもそも居宅サービス費の支給対象になりません。
つまり「併用が制限されている」のではなく、そもそも土俵が違うのです。この構造を理解すると、住まいの種類ごとの可否が一本の線で説明できます。
この記事では、介護保険法、老企第36号、各施設の人員基準(省令39号・40号)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員で、訪問リハビリが主戦場です。
- 施設入所者が居宅サービスを使えない法的な理由
- 「居宅要介護被保険者」という法律上の区分
- 住まいの種類ごとの可否の一覧
- 特定施設・グループホームで算定できない根拠(通知の原文)
- その事業者の費用負担でなら利用させられるという例外
- サ高住・住宅型有料老人ホームでは使える理由
- 特養でリハビリを受ける方法(機能訓練指導員・個別機能訓練加算)
- 老健にはPT・OT・STの配置義務があること
- 入所中に医療保険の訪問リハビリが使えるかどうか
- 入所前後の切り替えで注意すべきこと
法律が「居宅において介護を受けるもの」と限定している
介護保険法第41条第1項です。
市町村は、要介護認定を受けた被保険者(以下「要介護被保険者」という。)のうち居宅において介護を受けるもの(以下「居宅要介護被保険者」という。)が、都道府県知事が指定する者から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業所により行われる居宅サービスを受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、(中略)居宅介護サービス費を支給する。
- 居宅介護サービス費が支給されるのは「居宅要介護被保険者」だけ
- その定義は「要介護被保険者のうち居宅において介護を受けるもの」
- 施設に入所している方は、この定義に当たらない
訪問リハビリテーション、訪問看護、訪問介護、通所介護はいずれも居宅サービスです。したがって、施設入所中はこれらの給付を受けられません。「使ってはいけない」ではなく「保険から支給されない」というのが正確な整理です。
施設サービス費には、その施設で必要な介護・看護・機能訓練が包括的に含まれています。特養なら介護職員・看護職員・機能訓練指導員が配置され、老健ならさらに理学療法士等の配置が義務づけられています。
外部の訪問サービスを別に給付すると、同じ内容を二重に給付することになります。だから法律の入口で切り分けている、という設計です。
住まいの種類ごとの可否
| 住まい・サービス | 訪問リハビリ等の居宅サービス | 根拠 |
|---|---|---|
| 自宅 | 使える | 居宅要介護被保険者 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 使える(同一建物減算の対象になりうる) | 同上 |
| 住宅型有料老人ホーム | 使える(同上) | 同上 |
| 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護を受けている間) | 算定しない | 老企第36号 第二の1(2) |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護を受けている間) | 算定しない | 同上 |
| 地域密着型特定施設 | 算定しない | 同上 |
| ショートステイ利用中 | 算定しない | 同上 |
| 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 支給対象外 | 介護保険法第41条第1項 |
| 介護老人保健施設 | 支給対象外 | 同上 |
| 介護医療院 | 支給対象外 | 同上 |
判断軸は「建物の名前」ではなく「どのサービスを受けているか」です。同じ有料老人ホームでも、特定施設入居者生活介護を受けているかどうかで結論が変わります。
特定施設・グループホームは通知が明示している
施設入所(特養・老健・介護医療院)は法律の建て付けで外れますが、特定施設とグループホームは老企第36号 第二の1(2)が明示的に定めています。
特定施設入居者生活介護又は認知症対応型共同生活介護若しくは地域密着型特定施設入居者生活介護を受けている間については、その他の指定居宅サービス又は指定地域密着型サービスに係る介護給付費(居宅療養管理指導費を除く。)は算定しないものであること。ただし、特定施設入居者生活介護又は認知症対応型共同生活介護の提供に必要がある場合に、当該事業者の費用負担により、その利用者に対してその他の居宅サービス又は地域密着型サービスを利用させることは差し支えないものであること。
- 括弧書きで居宅療養管理指導費だけは除かれている(医師・歯科医師・薬剤師等による訪問は算定できる)
- ただし書きにより、事業者の費用負担でなら利用させられる
この「ただし書き」は実務上の逃げ道です。グループホームが自らの費用で訪問リハビリを依頼することはできます。介護保険からは給付されず、事業者の持ち出しになります。
ちびウルフ特養に入ったら、もうリハビリは受けられないってことですか?
リハウルフ違います。「外から訪問リハビリが入れない」だけで、施設の中で機能訓練は行われます。
特養には機能訓練指導員を1以上置くことが義務づけられています(省令39号 第2条第1項第5号)。加えて個別機能訓練加算があり、これを算定している施設なら、より計画的な訓練が提供されます。
ただ、正直に言えば機能訓練指導員は他の職務と兼務できる(同第8項)ので、専従で張り付いているとは限りません。入所前に「機能訓練指導員は誰が務めていて、週にどれくらい関われるのか」を聞くのが実務的です。
特養でリハビリを受ける方法
機能訓練指導員の配置は義務
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第5号は、機能訓練指導員を1以上置くこととしています。
7 第一項第五号の機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能を改善し、又はその減退を防止するための訓練を行う能力を有すると認められる者でなければならない。
8 第一項第五号の機能訓練指導員は、当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができる。
注意すべきは第8項です。兼務が認められているため、看護職員が機能訓練指導員を兼ねている施設は珍しくありません。理学療法士や作業療法士が配置されているとは限りません。
個別機能訓練加算を算定しているか
より計画的な訓練を求めるなら、個別機能訓練加算の算定状況が目安になります。加算を算定している施設は、専従の機能訓練指導員の配置など、上乗せの要件を満たしています。
介護サービス情報公表システムや重要事項説明書で、算定している加算を確認できます。入所先を選ぶ段階での確認事項です。
老健にはPT・OT・STの配置義務がある
リハビリテーションという観点では、老健は特養と設計が違います。介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第2条は、次のとおり定めています。
五 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 常勤換算方法で、入所者の数を百で除して得た数以上
| 特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 | |
|---|---|---|
| リハビリ職の配置 | 義務なし(機能訓練指導員1以上) | PT・OT・STを入所者100人につき1以上 |
| 兼務 | 他の職務と兼務可 | — |
| 役割 | 生活の場 | 在宅復帰・在宅療養支援 |
在宅復帰を目指してリハビリを受けたいなら、老健が制度上の受け皿です。特養は生活の場であり、リハビリテーションを主目的とした施設ではありません。ここは制度設計として明確に分かれています。
医療保険の訪問リハビリは使えるか
介護保険が使えないなら医療保険で、と考えたくなりますが、これも原則としてできません。
- 医療保険の在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料等は、在宅で療養を行っている患者を対象としている
- 施設入所者は「在宅で療養を行っている患者」に当たらないと解される
- 施設の類型ごとに算定の可否が細かく定められており、原則として算定できない
ただし訪問看護については、末期の悪性腫瘍など特定の状態にある方について、施設の類型に応じた例外的な取扱いがあります。訪問看護の医療保険での算定については、別記事で詳しく整理しています。
特養、老健、介護医療院、特定施設、グループホームでは、それぞれ医療保険で算定できる診療報酬の項目が異なります。「施設に入ったから医療保険は一切使えない」も「医療保険なら使える」も、どちらも不正確です。
個別の可否は診療報酬の告示・通知によるため、医療機関または訪問看護ステーションに確認してください。
入所前後の切り替えで注意すること
実務でトラブルになるのは、制度の可否そのものより切り替えのタイミングです。
- 入所日が決まったら、訪問リハビリ等の居宅サービス事業所に日付を伝える
- 入所日当日以降の訪問予定を止める(入所後に訪問しても算定できない)
- 福祉用具貸与は、入所日の前日までで契約を終了する(施設の設備で対応するため)
- 居宅介護支援から施設のケアマネジャーへ引き継ぐ
- リハビリの経過(できていた動作、注意点、目標)を文書で申し送る
- 退所が決まったら、逆に居宅サービスの再開時期を調整する
5つ目は制度上の義務ではありませんが、やるかやらないかで入所後の生活が変わります。特養の機能訓練指導員が理学療法士とは限らない以上、外部から引き継ぐ情報の価値は大きい。担当したケースでも、退所時の申し送りが後の在宅復帰につながったことがあります。
老健の外泊時は別の論点
老健に入所している方が外泊する場合、老健側で外泊時費用を算定できます。ただし外泊中に居宅サービスを算定できるかは別の問題であり、ここは切り分けて考える必要があります。この論点は別記事で整理します。
ちびウルフ入所した日にうっかり訪問しちゃったら、どうなるんですか?
リハウルフ算定できません。サービスは提供したのに報酬がゼロという、事業所にとって最悪の形です。
これが起きるのは、たいてい入所日の変更が事業所まで伝わっていないときです。施設の空き待ちで日程が動くのは普通なので、担当したケースでも何度かひやりとしました。
入所日が動いたら、ケアマネから全事業所に一斉に流す。これに尽きます。事業所同士の横の連絡に期待しないでください。
よくある質問
特養に入所すると訪問リハビリは使えませんか?
使えません。介護保険法第41条第1項は、居宅介護サービス費の支給対象を「居宅において介護を受けるもの(居宅要介護被保険者)」に限定しています。施設入所者はこれに当たりません。
老健や介護医療院でも同じですか?
同じです。介護老人保健施設、介護医療院も施設サービスであり、入所中は居宅サービス費の支給対象になりません。
グループホームではどうですか?
認知症対応型共同生活介護を受けている間は、居宅療養管理指導費を除く他の居宅サービス・地域密着型サービスの介護給付費は算定しないとされています(老企第36号 第二の1(2))。
サービス付き高齢者向け住宅ではどうですか?
特定施設入居者生活介護を受けていなければ、居宅サービスを利用できます。ただし同一建物減算の対象になりうる点に注意してください。
施設が費用を負担すれば訪問リハビリを入れられますか?
特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護については、通知が「当該事業者の費用負担により、その利用者に対してその他の居宅サービス等を利用させることは差し支えない」としています。介護保険からの給付はありません。
居宅療養管理指導だけ別扱いなのはなぜですか?
通知の括弧書きで居宅療養管理指導費が除外されているためです。医師・歯科医師・薬剤師等による医学的管理は、施設サービスに包括されていないという整理と読めます。
特養でリハビリは受けられますか?
機能訓練指導員の配置が義務づけられており、機能訓練は行われます。個別機能訓練加算を算定している施設なら、より計画的な訓練が提供されます。
特養に理学療法士はいますか?
配置義務はありません。機能訓練指導員は「訓練を行う能力を有すると認められる者」であればよく、他の職務との兼務も認められています。看護職員が兼ねている施設も多くあります。
老健にはリハビリ職がいますか?
います。省令40号第2条は、理学療法士・作業療法士または言語聴覚士を常勤換算方法で入所者の数を100で除して得た数以上置くこととしています。
医療保険の訪問リハビリなら使えますか?
原則として使えません。医療保険の訪問リハビリは在宅で療養を行っている患者を対象としており、施設入所者は対象になりません。訪問看護には施設の類型に応じた例外的な取扱いがあります。
入所日に訪問した場合は算定できますか?
できません。入所日以降は居宅サービス費の支給対象外です。入所日の変更は必ず全事業所に共有してください。
退所したら再開できますか?
できます。退所して居宅に戻れば居宅要介護被保険者に戻るため、居宅サービスを利用できます。再開時期は事前に調整しておいてください。
- 特養・老健・介護医療院の入所中は、訪問リハビリ等の居宅サービスを利用できない
- 理由は報酬のルールではなく介護保険法第41条第1項の建て付け
- 居宅介護サービス費の対象は「居宅において介護を受けるもの」に限られる
- 施設入所者は「居宅要介護被保険者」に当たらない
- 「使ってはいけない」ではなく「保険から支給されない」が正確
- 施設サービス費に介護・看護・機能訓練が包括されているため
- 特定施設・グループホームは老企第36号 第二の1(2)が明示している
- 居宅療養管理指導費だけは括弧書きで除外されている
- 特定施設等が自らの費用負担で利用させることは差し支えない
- 判断軸は建物の名前ではなく「どのサービスを受けているか」
- サ高住・住宅型有料老人ホームでは居宅サービスを利用できる
- ただし同一建物減算の対象になりうる
- 特養には機能訓練指導員を1以上置く義務がある
- 機能訓練指導員は他の職務と兼務でき、リハビリ職とは限らない
- 個別機能訓練加算の算定状況が、訓練体制の目安になる
- 老健にはPT・OT・STを入所者100人につき1以上置く義務がある
- 在宅復帰を目指すリハビリの受け皿は制度上は老健
- 医療保険の訪問リハビリも、施設入所者は原則対象外
- 訪問看護には施設の類型に応じた例外的な取扱いがある
- 入所日以降の訪問は算定できないため、日程変更の共有が要
- 福祉用具貸与は入所日の前日までで終了する
- リハビリの経過の申し送りは義務ではないが、入所後の生活を左右する
- 退所して居宅に戻れば、居宅サービスを再開できる
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第41条第1項(居宅介護サービス費の支給)(e-Gov法令検索)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)第二の1(2)サービス種類相互の算定関係について(全国老人保健施設協会 法令・Q&A検索システム)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条(従業者の員数)第1項第5号、第7項、第8項(e-Gov法令検索)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第2条(従業者の員数)第1項第5号(e-Gov法令検索)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)(e-Gov法令検索)
※本記事の内容は、介護保険法、厚生労働省の省令および通知にもとづいて整理したものです。実際の判断にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。医療保険(診療報酬)における訪問リハビリテーション・訪問看護の算定の可否は、施設の類型・患者の状態・診療報酬の告示および通知により細かく定められており、本記事では概要のみを示しています。個別の可否は医療機関、訪問看護ステーションまたは地方厚生局にご確認ください。特定施設等が費用負担して居宅サービスを利用させる場合の取扱いは、保険者によって解釈が異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。入所前後の引き継ぎや施設選びの確認事項に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




