特養のADL維持等加算とは?(Ⅰ)30単位・(Ⅱ)60単位とADL利得の計算を解説

特養のADL維持等加算は、(Ⅰ)30単位・(Ⅱ)60単位(いずれも1月につき)です。入所者全員に算定できます。
この加算の要は「ADL利得」の計算式です。ここを理解していないと、取れるはずの(Ⅱ)を逃します。ADL利得は「6月目のADL値 − 開始月のADL値」ではありません。開始月のADL値に応じた調整値(3〜5)を必ず足します。
つまりADLがまったく変わらなくても、ADL利得は3〜5になります。(Ⅱ)の基準は「ADL利得の平均が3以上」。悪化させずに維持できていれば、(Ⅱ)60単位に届く設計です。「ADL維持等加算」という名前のとおりで、改善させないと取れない加算ではありません。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の注15、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第16号の2、厚生労働大臣が定める基準に適合する入所者等(平成12年厚生省告示第94号)第56号の2・第28号の3、老企第40号第二の5(17)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- (Ⅰ)30単位・(Ⅱ)60単位で、入所者全員に算定できること
- ADL利得の計算式と、開始月ADL値に応じた調整値3〜5
- ADLを維持できていれば(Ⅱ)に届く仕組み
- 評価対象者は「利用期間が6月を超える者」で10人以上必要なこと
- ADL利得の平均から上位10%・下位10%を除くこと
- 評価対象期間は算定開始月の前年同月から12月間であること
- 算定できるのは評価対象期間の満了月の翌月から12月以内であること
- 評価はBarthel Indexを用い、一定の研修を受けた者が行うこと
単位数は(Ⅰ)30単位・(Ⅱ)60単位
告示21号の注15は、次のとおりです。
別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして(中略)届出を行った指定介護老人福祉施設において、入所者に対して指定介護福祉施設サービスを行った場合は、評価対象期間(別に厚生労働大臣が定める期間をいう。)の満了日の属する月の翌月から12月以内の期間に限り、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる単位数を所定単位数に加算する。
| 区分 | 単位数(1月につき) | ADL利得の平均 |
|---|---|---|
| ADL維持等加算(Ⅰ) | 30単位 | 1以上 |
| ADL維持等加算(Ⅱ) | 60単位 | 3以上 |
注には「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」とあり、(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できません。
定員100人なら(Ⅱ)で月6,000単位(1単位10円換算で約6万円・地域区分単価は考慮せず)。(Ⅰ)との差は月3,000単位です。
ADL利得の計算式が、この加算のすべて
老企第40号③が、計算方法を定めています。
ADL利得は、評価対象利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から、評価対象利用開始月に測定したADL値を控除して得た値に、次の表の上欄の評価対象利用開始月に測定したADL値に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる値を加えた値を平均して得た値とする。
式にすると、こうです。
| ADL利得 | =(6月目のADL値 − 開始月のADL値)+ 調整値 |
|---|
調整値は、開始月のADL値によって決まります。
| 開始月に測定したADL値 | 加える値(調整値) |
|---|---|
| 0以上25以下 | 3 |
| 30以上50以下 | 3 |
| 55以上75以下 | 4 |
| 80以上100以下 | 5 |
表をよく見ると、25と30の間、50と55の間、75と80の間が空いています。
これはBarthel Indexの合計点が5点刻み(0・5・10……100)でしか出ないからです。各項目の配点が0・5・10・15点なので、合計は必ず5の倍数になります。26点や51点という値は存在しないため、表に隙間があっても実務上は問題になりません。
ADLが変わらなければ、ADL利得は3〜5になる
ここが決定的です。具体例で計算します。
| 開始月ADL値 | 6月目ADL値 | 差 | 調整値 | ADL利得 |
|---|---|---|---|---|
| 20 | 20(維持) | 0 | 3 | 3 |
| 45 | 45(維持) | 0 | 3 | 3 |
| 60 | 60(維持) | 0 | 4 | 4 |
| 85 | 85(維持) | 0 | 5 | 5 |
| 60 | 55(5点低下) | −5 | 4 | −1 |
| 45 | 55(10点改善) | +10 | 3 | 13 |
維持できれば全員が3以上。つまり(Ⅱ)60単位の基準を満たします。逆に、5点でも下がれば一気にマイナスに振れます。
ちびウルフ特養で6か月間ADLを維持するって、そんなに簡単ではない気がします。
リハウルフおっしゃるとおりです。ただ2つ、押さえておきたいことがあります。
1つは平均で判定すること。全員が維持する必要はなく、下がった人がいても改善した人が補えば平均は保てます。上の表のとおり、10点改善した人は利得13。1人の改善が数人の低下を吸収します。
もう1つは上位10%と下位10%が除外されること。大きく悪化した方は下位10%として計算から外れます。「一部の重度化で平均が壊れる」構造にはなっていません。
上位10%・下位10%を除いて平均する
老企第40号④は、次のとおりです。
ADL利得の平均を計算するに当たって対象とする者は、ADL利得の多い順に、上位100分の10に相当する利用者(その数に1未満の端数が生じたときは、これを切り捨てるものとする。)及び下位100分の10に相当する利用者(同)を除く利用者とする。
人数別に計算すると、こうなります。
| 評価対象者 | 10% | 端数処理後 | 平均の母数 |
|---|---|---|---|
| 10人 | 1.0 | 上位1人・下位1人を除外 | 8人 |
| 15人 | 1.5 | 切り捨てて上位1人・下位1人 | 13人 |
| 19人 | 1.9 | 切り捨てて上位1人・下位1人 | 17人 |
| 20人 | 2.0 | 上位2人・下位2人を除外 | 16人 |
| 100人 | 10.0 | 上位10人・下位10人を除外 | 80人 |
端数は切り捨てなので、19人でも除外されるのは上下1人ずつです。
評価対象者は「利用期間が6月を超える者」で10人以上
大臣基準告示95号 第16号の2イ(1)は、次のとおりです。
- 評価対象者=当該施設の利用期間が6月を超える者
- その総数が10人以上であること
評価対象者が10人に満たない施設は、そもそも算定できません。地域密着型特養(定員29人以下)では、入退所の状況によって届かないことがありえます。
「6月を超える者」なので、入所後6か月未満の方はカウントされません。開設直後や、入退所が多い時期は要注意です。
ADL値の測定は2回。開始月と6月目
大臣基準イ(2)は、次のとおりです。
| 測定タイミング | 内容 |
|---|---|
| 評価対象利用開始月 | 評価対象利用期間の初月にADLを評価・測定 |
| その翌月から起算して6月目 | 再度ADLを評価・測定 |
6月目にサービスの利用がない場合は、当該サービスの利用があった最終の月の測定値を用います。退所や長期入院があっても、直前の測定値で判定するということです。
そして、測定した日が属する月ごとに厚生労働省へ提出することが要件に含まれています。LIFE通知によれば、提出期限は評価対象利用開始月および6月目の月の翌月10日までです。
評価はBarthel Indexを用い、研修を受けた者が行う
老企第40号①は、簡潔ですが重要です。
ADLの評価は、一定の研修を受けた者により、Barthel Indexを用いて行うものとする。
2つの条件があります。
- 評価尺度はBarthel Index(FIMや独自の尺度では不可)
- 評価者は一定の研修を受けた者
Barthel Indexは10項目・5点刻みの簡便な尺度ですが、評価者によって判定がぶれやすいという弱点があります。とくに「見守り」「一部介助」の線引きは、評価者の慣れに左右されます。
この加算では開始月と6月目で同じ人が評価するとは限りません。開始月を厳しく(低く)つけ、6月目を甘く(高く)つければ、実態と無関係にADL利得が出てしまいます。逆もまた然りです。
通知が「一定の研修を受けた者」と限定しているのは、この評価精度を担保するためでしょう。施設としては、評価者を絞り、判定基準をそろえる内部研修を行っておくことが、実地指導への備えにもなります。
評価対象期間と算定期間の関係
この加算は「いつ測って、いつから取れるのか」がわかりにくい構造です。整理します。
評価対象期間の定義
告示94号 第56号の2は第28号の3を準用しており、そこにはこう書かれています。
ADL維持等加算の算定を開始する月の前年の同月から起算して12月までの期間
たとえば令和8年4月から算定を開始したいなら、評価対象期間は令和7年4月〜令和8年3月です。
算定できる期間
告示21号 注15は「評価対象期間の満了日の属する月の翌月から12月以内の期間に限り」としています。
| 項目 | 期間(例) |
|---|---|
| 評価対象期間 | 令和7年4月〜令和8年3月 |
| 算定できる期間 | 令和8年4月〜令和9年3月(12月以内) |
1年分のデータを取って、翌1年間算定する。そしてその1年のあいだにまた次の評価対象期間のデータが積み上がっていく——というサイクルです。継続して算定するには、毎年データを取り続ける必要があります。
なお老企第40号⑤は、届出初年度について次の扱いを定めています。
- 加算を取得する月の前年の同月に、基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出ている場合は、届出の日から12月後までの期間を評価対象期間とする
令和6年度の経過措置(すでに終了)
老企第40号⑥に、次の経過措置がありました。
- 令和6年度については、令和6年3月以前よりADL維持等加算(Ⅱ)を算定している場合、ADL利得に関わらず、評価対象期間の満了日の属する月の翌月から12月に限り算定を継続することができる
令和6年度限りの措置で、現在は本来のADL利得による判定が適用されます。過去の請求を点検する際の参照点として押さえておいてください。
他の加算との関係
ADL維持等加算には、他の加算との併算定を禁じる規定がありません。(Ⅰ)と(Ⅱ)の相互のみ排他です。
| 加算 | 関係 | LIFE提出のトリガー |
|---|---|---|
| ADL維持等加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 相互は排他 | 評価対象利用開始月・6月目の月 |
| 個別機能訓練加算(Ⅱ)/(Ⅲ) | 併算定可 | 計画の新規作成月・変更月・3月に1回 |
| 科学的介護推進体制加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 併算定可 | 算定開始月・入所月・3月ごと・退所月 |
| 自立支援促進加算 | 併算定可 | 入所時・3月に1回 |
他のLIFE関連加算が「3月に1回」を基本にしているのに対し、ADL維持等加算は「入所から6か月目」という個別のタイミングです。入所日が人によって違うので、提出月も人によってバラバラになります。
3月周期のカレンダーで管理していると、この加算だけ確実に漏れます。入所者ごとに「開始月」と「6月目」を管理する台帳が別途必要です。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版のADL維持等加算は存在しません。
この加算は通所介護・特定施設入居者生活介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・地域密着型特定施設・地域密着型特養・特養に設定されています。要件は大臣基準第16号の2に一本化されており、通所介護と特養で同じ基準です。ただし単位数の考え方や評価対象者の定義は各サービスの条文に従うため、資料を流用する際は確認してください。
ADL利得はどう計算しますか?
「6月目のADL値 − 開始月のADL値」に、開始月のADL値に応じた調整値を加えます。調整値は、開始月ADL値が0〜25および30〜50なら3、55〜75なら4、80〜100なら5です。
ADLが変わらなかった人のADL利得はいくつですか?
差が0なので、調整値がそのままADL利得になります。開始月ADL値に応じて3〜5です。全員が維持できていれば平均は3以上となり、(Ⅱ)の基準を満たします。
(Ⅱ)は改善させないと取れませんか?
改善は必須ではありません。(Ⅱ)の基準は「ADL利得の平均が3以上」で、維持できていれば調整値だけで3以上になります。ただし低下した方がいれば平均が下がるため、施設全体としてADLを保てているかが問われます。
ADL値の表に26〜29などがないのはなぜですか?
Barthel Indexの各項目の配点が0・5・10・15点で、合計が必ず5の倍数になるためです。26点や51点という値は生じないため、表に隙間があっても実務上の問題はありません。
評価対象者は誰ですか?
当該施設の利用期間が6月を超える者です。その総数が10人以上でなければ算定できません。入所後6か月未満の方はカウントされません。
上位10%・下位10%の除外はどう計算しますか?
ADL利得の多い順に並べ、上位10%と下位10%に相当する人数を除きます。1未満の端数は切り捨てです。評価対象者10人なら上下1人ずつを除いて8人で平均、20人なら上下2人ずつを除いて16人で平均します。
評価にFIMを使ってもよいですか?
使えません。通知は「Barthel Indexを用いて行うものとする」と明記しています。また、評価は一定の研修を受けた者が行う必要があります。
6月目に入院していて測定できませんでした。
大臣基準は「6月目にサービスの利用がない場合については当該サービスの利用があった最終の月」の値を用いるとしています。直前の測定値で判定します。
評価対象期間はいつからいつまでですか?
ADL維持等加算の算定を開始する月の前年の同月から起算して12月までの期間です。令和8年4月から算定するなら、令和7年4月〜令和8年3月が評価対象期間になります。算定できるのはその満了月の翌月から12月以内です。
他のLIFE関連加算と提出のタイミングは同じですか?
違います。他の多くが「3月に1回」であるのに対し、ADL維持等加算は「評価対象利用開始月」と「その翌月から起算して6月目の月」です。入所日ごとにタイミングが異なるため、別途の管理台帳が必要です。
- ADL維持等加算は(Ⅰ)30単位・(Ⅱ)60単位/月。同時算定は不可
- (Ⅰ)はADL利得の平均が1以上、(Ⅱ)は3以上
- ADL利得=(6月目のADL値 − 開始月のADL値)+調整値
- 調整値は開始月ADL値が0〜25と30〜50で3、55〜75で4、80〜100で5
- ADLが変わらなくてもADL利得は3〜5になる
- 維持できていれば(Ⅱ)60単位の基準を満たす
- 逆に5点でも低下するとADL利得はマイナスに振れる
- 表に26〜29等がないのはBarthel Indexが5点刻みだから
- ADL利得の平均は上位10%・下位10%を除いて算出する
- 端数は切り捨てなので、19人でも除外は上下1人ずつ
- 評価対象者は利用期間が6月を超える者で、10人以上必要
- 測定は評価対象利用開始月と、その翌月から起算して6月目の2回
- 6月目に利用がない場合は利用があった最終の月の値を用いる
- 測定した日が属する月ごとにLIFEへ提出する(翌月10日まで)
- 評価はBarthel Indexを用い、一定の研修を受けた者が行う
- FIMなど他の尺度は使えない
- 評価者による判定のぶれが最大のリスク。評価者を絞り基準をそろえる
- 評価対象期間は算定開始月の前年同月から12月間
- 算定できるのは評価対象期間の満了月の翌月から12月以内
- 継続算定には毎年データを取り続ける必要がある
- 令和6年度の経過措置(ADL利得に関わらず継続)はすでに終了
- 他のLIFE関連加算と併算定できるが、提出のリズムだけが異なる
- 介護予防(要支援)版は存在しない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」注15
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第16号の2(ADL維持等加算の基準)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する入所者等(平成12年厚生省告示第94号)第56号の2、第28号の3(評価対象期間)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(17)ADL維持等加算について
- 科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月15日老老発0315第4号)第2の2
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。「一定の研修を受けた者」の具体的な範囲や、評価対象期間の設定方法については、都道府県・指定都市によって取扱いが異なる場合があります。Barthel Indexの合計点が5点刻みになる点は評価尺度の構造にもとづく記述であり、告示・通知に明記されているものではありません。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の計算例および期間の例は、条文を機械的に当てはめた例示です。評価者の統一に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




