特養の看護体制加算とは?(Ⅰ)(Ⅱ)イ・ロの単位数と同時算定を解説

特養の看護体制加算は、(Ⅰ)イ6単位・(Ⅰ)ロ4単位・(Ⅱ)イ13単位・(Ⅱ)ロ8単位(いずれも1日につき)の4区分です。(Ⅲ)(Ⅳ)はありません。
この加算の実務上いちばん大きなポイントは、(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定できることです。しかも老企第40号は、(Ⅰ)で加算対象となった常勤看護師を、(Ⅱ)の配置数の計算にも含めてよいと明記しています。同じ人を二重にカウントできる、かなり珍しい設計です。
もう1つ引っかかるのが(Ⅱ)の人数要件です。「常勤換算で入所者25:1以上」と「人員基準上の必要数+1以上」の両方を満たす必要があり、施設規模によってどちらが効くかが入れ替わります。定員50人なら後者、定員130人なら前者が壁になります。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の注10、厚生労働大臣が定める施設基準(平成12年厚生省告示第96号)第51号、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第3号ロ、老企第40号第二の5(11)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 看護体制加算(Ⅰ)イ・ロ、(Ⅱ)イ・ロの4区分と単位数
- イが定員30〜50人、ロが51人以上で、イのほうが高いこと
- (Ⅰ)は常勤看護師1名、(Ⅱ)は人数と24時間連絡体制が要件であること
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定でき、同じ看護師を両方でカウントできること
- (Ⅱ)の人数要件が「25:1」と「人員基準+1」の二重条件であること
- 施設規模によってどちらの条件が壁になるかが入れ替わること
- 「24時間連絡できる体制」に求められる4つの整備事項
- ショートステイ併設・空床利用の場合の数え方
看護体制加算は4区分。単位数は4〜13単位
告示21号の注10は、次の4区分を定めています。
| 区分 | 入所定員 | 単位数/日 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)イ | 30〜50人 | 6単位 |
| 看護体制加算(Ⅰ)ロ | 51人以上 | 4単位 |
| 看護体制加算(Ⅱ)イ | 30〜50人 | 13単位 |
| 看護体制加算(Ⅱ)ロ | 51人以上 | 8単位 |
構造はシンプルです。
- (Ⅰ)と(Ⅱ)=要件の違い(常勤看護師の配置か、人数+24時間体制か)
- イとロ=入所定員(イ=30〜50人、ロ=51人以上)
「ロ」の定員には経過措置があり、平成30年3月31日までに指定を受けた施設は「30人または51人以上」となります(イは「31人以上50人以下」)。定員ちょうど30人の古い施設は「ロ」に入ります。夜勤職員配置加算とまったく同じ経過措置です。
(Ⅰ)イ6単位に対して(Ⅰ)ロ4単位。(Ⅱ)イ13単位に対して(Ⅱ)ロ8単位。定員が小さいほうが1人あたりの単位数は高く設定されています。
理由は夜勤職員配置加算と同じです。求められる配置(常勤看護師1名など)は規模にかかわらず同じなのに、加算は入所者全員に算定されます。定員40人で6単位なら1日240単位、定員100人で4単位なら400単位。総額で調整されているということです。
(Ⅰ)の要件は「常勤の看護師を1名以上」だけ
施設基準(告示96号)第51号イ・ロが定める(Ⅰ)の要件は、次の3つです。
- 入所定員が30〜50人(イ)/51人以上(ロ)であること
- 常勤の看護師を1名以上配置していること
- 定員超過利用・人員基準欠如の状態でないこと(通所介護費等の算定方法第12号に該当しないこと)
ポイントは「看護師」と書かれていることです。准看護師では要件を満たしません。人員基準上の「看護職員」は看護師・准看護師のどちらでもよいのですが、この加算は看護師に限定しています。
さらに「常勤」です。常勤換算で1以上ではなく、常勤の看護師が実際に1名以上いることが求められます。
(Ⅱ)の人数要件は二重条件。どちらが壁になるかは規模しだい
(Ⅱ)の要件は4つあります。
- (Ⅰ)と同じ定員要件に該当すること
- 看護職員の数が、常勤換算方法で入所者25:1以上であり、かつ人員基準上の必要看護職員数に1を加えた数以上であること
- 24時間連絡できる体制を確保していること
- 定員超過利用・人員基準欠如の状態でないこと
2つ目が二重条件になっています。まず前提として、人員基準上の看護職員数を確認します。省令39号第2条第1項第3号ロは次のとおりです。
| 入所者の数 | 看護職員(常勤換算) |
|---|---|
| 30以下 | 1以上 |
| 30超50以下 | 2以上 |
| 50超130以下 | 3以上 |
| 130超 | 3に、130を超えて50またはその端数を増すごとに1を加えた数以上 |
この2つの条件を規模別に当てはめると、次のようになります。
| 入所者数 | ①25:1 | ②人員基準+1 | 必要数(大きいほう) | 効く条件 |
|---|---|---|---|---|
| 50人 | 2 | 2+1=3 | 3 | ② |
| 80人 | 4 | 3+1=4 | 4 | ①②同値 |
| 100人 | 4 | 3+1=4 | 4 | ①②同値 |
| 130人 | 6 | 3+1=4 | 6 | ① |
| 150人 | 6 | 4+1=5 | 6 | ① |
定員50人前後の施設では「人員基準+1」が効きます。25:1なら2人で足りるのに、3人必要になる。
逆に定員130人規模では「25:1」が効きます。人員基準+1なら4人でよいのに、6人必要になる。
「25:1を満たしているから大丈夫」と片方だけ確認して届出を出すと、もう一方で引っかかります。必ず両方を計算して、大きいほうを採用してください。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時算定できる。しかも同じ看護師を両方で数えられる
老企第40号 第二の5(11)③は、こう書いています。
看護体制加算(Ⅰ)イ及び看護体制加算(Ⅱ)イ又は看護体制加算(Ⅰ)ロ及び看護体制加算(Ⅱ)ロは、それぞれ同時に算定することが可能である。この場合にあっては、看護体制加算(Ⅰ)イ又はロにおいて加算の対象となる常勤の看護師についても、看護体制加算(Ⅱ)イ又はロにおける看護職員の配置数の計算に含めることが可能である。
これは大きい話です。同時算定した場合の単位数を並べます。
| 定員 | (Ⅰ) | (Ⅱ) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 30〜50人 | 6単位 | 13単位 | 19単位/日 |
| 51人以上 | 4単位 | 8単位 | 12単位/日 |
定員100人なら12単位×100人×30日で月36,000単位。常勤看護師を1名置き、看護職員を4人体制にするだけで届く水準です。
ちびウルフ(Ⅰ)で数えた常勤看護師を(Ⅱ)でも数えていいって、二重取りみたいで大丈夫なんですか?
リハウルフ通知が明文で認めているので問題ありません。評価している中身が違うからです。(Ⅰ)は「常勤の看護師という質」を評価し、(Ⅱ)は「看護職員の総量と24時間体制」を評価している。別々の観点なので、同じ人が両方に寄与してよいという整理です。
ただし組み合わせは決まっています。(Ⅰ)イ+(Ⅱ)イ、または(Ⅰ)ロ+(Ⅱ)ロ。イとロは定員で決まるので、そもそも混ざりません。
「24時間連絡できる体制」は4つの整備が求められる
(Ⅱ)の要件である24時間連絡体制について、老企第40号④は「施設内で勤務することを要するものではなく、夜間においても施設から連絡でき、必要な場合には施設からの緊急の呼出に応じて出勤する体制」と定義したうえで、具体的に4つの整備を挙げています。
- オンコール体制に関する取り決めの整備
管理者を中心として、介護職員および看護職員による協議の上、夜間における連絡・対応体制に関する取り決め(指針やマニュアル等)を整備する。 - 観察項目の標準化
管理者を中心として、介護職員および看護職員による協議の上、看護職員不在時の介護職員による入所者の観察項目の標準化(どのようなことが観察されれば看護職員に連絡するか)を行う。 - 施設内研修等による周知
看護・介護職員に対して、①②の内容が周知されていること。 - 引継の実施
施設の看護職員とオンコール対応の看護職員が異なる場合には、電話やFAX等により入所者の状態に関する引継を行い、オンコール体制終了時にも同様の引継を行う。
オンコールの当番表を作れば要件を満たすと思われがちですが、通知が求めているのはそこではありません。
②「観察項目の標準化」は、介護職員が「どうなったら看護師を呼ぶか」を文書で決めることです。夜勤の介護職員が判断に迷わないようにする仕組みで、これがないと体制として不十分と判断されます。
④の「オンコール体制終了時にも同様の引継」も見落としがちです。夜勤入り時の引継だけでなく、朝、オンコール担当から日勤の看護職員へ戻すときの引継まで求められています。往復の記録が必要です。
ショートステイ併設・空床利用の場合の数え方
老企第40号①②は、短期入所生活介護を併設している場合の扱いを定めています。併設と空床利用で扱いが違う点に注意してください。
| 形態 | 扱い |
|---|---|
| 併設事業所 | 指定短期入所生活介護事業所とは別に、必要な数の看護職員を配置する必要がある |
| 特別養護老人ホームの空床利用 | 特養の入所者とショートの利用者を合算して「入所者数」とし、一体的に加算を行う |
併設の場合は、特養側とショート側でそれぞれ看護職員を確保しなければなりません。特養の看護師がショートも見ている、という運用では両方の加算は取れません。
空床利用の場合は逆に、合算した人数で判定します。空床利用のショートについては、特養に常勤看護師を1名配置していれば(Ⅰ)が算定可能、(Ⅱ)は合算した人数で25:1かつ人員基準+1を満たせば算定可能、という整理です。
合算するということは、(Ⅱ)の判定に使う入所者数が増えるということです。定員100人の特養で空床10床をショートに使えば、判定上は110人。25:1なら5人(110÷25=4.4→5)必要になり、100人のときの4人では足りなくなります。
稼働状況によって必要数が変わるため、毎月の確認が欠かせません。
他の加算との関係
看護体制加算には、他の加算との併算定を禁じる規定がありません。(Ⅰ)と(Ⅱ)の同時算定が認められていることは前述のとおりです。
ただし1つ、逆方向の関係があります。配置医師緊急時対応加算は、看護体制加算(Ⅱ)を算定していないと算定できません。告示21号の「カ 配置医師緊急時対応加算」の注は、次のとおりです。
ただし、看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は、算定しない。
配置医師緊急時対応加算は、通常の勤務時間外325単位・早朝夜間650単位・深夜1,300単位と単価が高い加算です。看護体制加算(Ⅱ)は、その前提条件になっています。
さらに、看取り介護加算(Ⅱ)は配置医師緊急時対応加算の施設基準を満たすことが要件です。整理すると、次のような連鎖になります。
| 順序 | 加算 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 1 | 看護体制加算(Ⅱ) | 24時間連絡体制の土台 |
| 2 | 配置医師緊急時対応加算 | (Ⅱ)の算定が必須条件 |
| 3 | 看取り介護加算(Ⅱ) | 配置医師緊急時対応加算の施設基準が必要 |
施設内での看取りを増やしたいと考えている施設は、まず看護体制加算(Ⅱ)から着手するのが順序として正しいということです。
介護予防(要支援)には存在しない
特養は原則として要介護3以上の方が入所する施設のため、介護予防版の看護体制加算は存在しません。
なお、短期入所生活介護(ショートステイ)にも看護体制加算があり、こちらは(Ⅰ)〜(Ⅳ)の4区分です。(Ⅲ)(Ⅳ)には要介護3以上の利用者の割合という中重度者受入要件が加わります。特養とは区分の立て方が異なるので、混同しないよう注意してください。
看護体制加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できますか?
できます。老企第40号が「(Ⅰ)イ及び(Ⅱ)イ又は(Ⅰ)ロ及び(Ⅱ)ロは、それぞれ同時に算定することが可能」と明記しています。定員30〜50人なら合計19単位、51人以上なら合計12単位になります。
(Ⅰ)で数えた常勤看護師を(Ⅱ)の人数にも含めてよいですか?
含めてよいと通知に明記されています。(Ⅰ)は常勤看護師という「質」、(Ⅱ)は看護職員の「総量と24時間体制」を評価しており、観点が異なるためです。
准看護師でも(Ⅰ)の要件を満たしますか?
満たしません。施設基準は「常勤の看護師を1名以上配置していること」としており、看護師に限定されています。人員基準上の「看護職員」は准看護師を含みますが、この加算は別です。
(Ⅱ)の人数は25:1を満たせばよいのですか?
それだけでは足りません。「常勤換算で入所者25:1以上」と「人員基準上の必要看護職員数+1以上」の両方を満たす必要があります。定員50人前後では後者、定員130人規模では前者が壁になります。
定員がちょうど30人です。イとロのどちらですか?
平成30年3月31日までに指定を受けた施設であれば「ロ」です。イは「31人以上50人以下」と読み替えられます。平成30年4月1日以降に指定を受けた施設は、イが「30人以上50人以下」です。
24時間連絡体制とは、看護師が施設に泊まることですか?
違います。通知は「施設内で勤務することを要するものではなく、夜間においても施設から連絡でき、必要な場合には施設からの緊急の呼出に応じて出勤する体制」としています。いわゆるオンコール体制です。
オンコールの当番表があれば24時間連絡体制の要件を満たしますか?
不十分です。通知は①取り決め(指針・マニュアル等)の整備、②看護職員不在時の介護職員による観察項目の標準化、③施設内研修等による周知、④オンコール担当との往復の引継、の4つを求めています。とくに②の観察項目の標準化が抜けやすい項目です。
ショートステイを併設しています。特養の看護師で兼ねられますか?
併設事業所の場合は兼ねられません。「本体施設における看護職員の配置とは別に、必要な看護職員の配置を行う必要がある」とされています。一方、特養の空床を利用してショートを行う場合は、入所者数と利用者数を合算して一体的に加算を判定します。
配置医師緊急時対応加算を算定したいのですが、順序はありますか?
看護体制加算(Ⅱ)が先です。告示に「看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は、算定しない」と明記されています。さらに看取り介護加算(Ⅱ)は配置医師緊急時対応加算の施設基準を満たすことが要件なので、看護体制加算(Ⅱ)→配置医師緊急時対応加算→看取り介護加算(Ⅱ)という順序になります。
介護予防(要支援)の看護体制加算はありますか?
ありません。なお短期入所生活介護には(Ⅰ)〜(Ⅳ)の4区分の看護体制加算があり、(Ⅲ)(Ⅳ)には要介護3以上の利用者割合という要件が加わります。特養とは区分の立て方が異なります。
- 看護体制加算は(Ⅰ)イ6・(Ⅰ)ロ4・(Ⅱ)イ13・(Ⅱ)ロ8単位/日の4区分
- イは定員30〜50人、ロは51人以上。イのほうが単位数が高い
- 平成30年3月31日までに指定を受けた定員30人の施設は「ロ」に入る
- (Ⅰ)の要件は常勤の「看護師」1名以上。准看護師では満たさない
- (Ⅱ)の人数要件は「25:1」と「人員基準+1」の二重条件
- 定員50人前後では「人員基準+1」、定員130人規模では「25:1」が壁になる
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は同時算定でき、合計19単位(30〜50人)/12単位(51人以上)
- (Ⅰ)で数えた常勤看護師を(Ⅱ)の配置数にも含めてよいと通知に明記がある
- 24時間連絡体制はオンコールでよく、施設内での勤務は不要
- ただし取り決めの整備・観察項目の標準化・研修による周知・往復の引継の4つが必要
- 「看護職員不在時の介護職員による観察項目の標準化」が抜けやすい
- オンコール体制終了時の引継まで求められている
- ショート併設の場合は特養とは別に看護職員を配置する必要がある
- 空床利用の場合は入所者数と利用者数を合算して一体的に判定する
- 空床利用では判定上の人数が増えるため、毎月の確認が必要
- 配置医師緊急時対応加算は看護体制加算(Ⅱ)の算定が必須条件
- 看取り介護加算(Ⅱ)まで見据えるなら、看護体制加算(Ⅱ)が起点になる
- 介護予防(要支援)版は存在しない
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表 指定施設サービス等介護給付費単位数表「介護福祉施設サービス」注10、カ(配置医師緊急時対応加算)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成12年厚生省告示第96号)第51号(指定介護福祉施設サービスにおける看護体制加算に係る施設基準)、第54号の2(配置医師緊急時対応加算に係る施設基準)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第3号ロ(e-Gov法令検索により確認)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)第二の5(11)看護体制加算について、第二の2(13)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、省令および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。常勤換算の計算方法や、オンコール体制の整備水準の判断は、都道府県・指定都市によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の規模別の必要人数は条文を機械的に当てはめた計算例であり、実際の入所者数の変動や常勤換算の端数処理により結果が異なる場合があります。加算の取得順序に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




