福祉用具貸与でレンタルできるのは13品目。ただし、要支援1・2と要介護1の人は、そのうち9品目が原則として給付対象外です。車いすも介護ベッドも、介護度が軽いと原則借りられません。

ただし「原則」には例外があります。この記事では、介護支援専門員として在宅の現場に関わってきた立場から、福祉用具貸与の対象品目・軽度者の例外給付・自己負担の考え方を、厚生労働省の告示にそって整理します。

この記事でわかること
  • レンタルできる13品目の一覧
  • 軽度者が原則借りられない9品目
  • 例外給付が認められる状態像(基本調査の項目つき)
  • 市町村への確認が不要なケース
  • 令和6年4月からの「貸与と販売の選択制」4種目
  • レンタルではなく購入になる6品目
  • 自己負担額の決まり方と限度額との関係
  • 借りるまでの流れと、モニタリングの義務化

福祉用具貸与とは

福祉用具貸与は、日常生活の自立を助ける用具を、介護保険を使って月額でレンタルするサービスです。買い取りではないため、状態が変われば別の機種に交換できますし、不要になれば返却できます。

介護保険サービスなので、ケアプランに位置づけたうえで、指定を受けた福祉用具貸与事業所から借りる必要があります。自分で福祉用具店に行って借りても、介護保険は使えません。

福祉用具貸与の対象品目【13品目】

①車いす自走用標準型、普通型電動、介助用標準型など
②車いす付属品クッション、電動補助装置、テーブル、ブレーキなど
③特殊寝台いわゆる介護ベッド。背上げ・脚上げ・高さ調節の機能があるもの
④特殊寝台付属品サイドレール、マットレス、ベッド用手すり、テーブル、スライディングボードなど
⑤床ずれ防止用具エアマットレス、静止型マットレスなど
⑥体位変換器体位の保持のみを目的とするものを除く
⑦手すり取り付けに工事を伴わないもの(工事を伴うものは住宅改修)
⑧スロープ取り付けに工事を伴わないもの
⑨歩行器歩行車を含む
⑩歩行補助つえ松葉づえ、多点杖、ロフストランドクラッチ、カナディアン・クラッチ、プラットホームクラッチ
⑪認知症老人徘徊感知機器離床センサー、玄関の通過を知らせる機器など
⑫移動用リフト(つり具の部分を除く)床走行式、固定式、据置式。段差解消機や昇降座椅子も含む
⑬自動排泄処理装置交換可能部品は除く
一本杖(T字杖)は対象外⑩歩行補助つえに含まれるのは、松葉づえ・多点杖・ロフストランドクラッチなどです。ホームセンターで売っているような一本杖(一本の支柱のみのT字杖)は、介護保険の対象になりません。実費で購入することになります。ここは相談の場面で必ず出てくる誤解です。

要支援1・2と要介護1は9品目が原則対象外

軽度者(要支援1・要支援2・要介護1)は、状態像から見て使用が想定しにくいという理由で、次の品目が原則として給付対象外です。

原則、借りられない車いす/車いす付属品/特殊寝台/特殊寝台付属品/床ずれ防止用具/体位変換器/認知症老人徘徊感知機器/移動用リフト(つり具の部分を除く)/自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するものを除く)
軽度者でも借りられる手すり/スロープ/歩行器/歩行補助つえ/自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するもの)

なお自動排泄処理装置(尿のみを吸引するものを除く)は、要介護2・要介護3も原則対象外です。実質的に要介護4・5向けの品目という位置づけになっています。

例外給付が認められる状態像

「原則」と書いたとおり、要件を満たせば軽度者でも借りられます。判断はまず要介護認定の基本調査の結果で行われます。

車いす・車いす付属品日常的に歩行が困難(基本調査1-7「3.できない」)/日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる
特殊寝台・特殊寝台付属品日常的に起きあがりが困難(1-4「3.できない」)/日常的に寝返りが困難(1-3「3.できない」)
床ずれ防止用具・体位変換器日常的に寝返りが困難(1-3「3.できない」)
認知症老人徘徊感知機器意思の伝達・介護者への反応・記憶または理解に支障がある/かつ 移動において全介助を必要としない(2-2「4.全介助」以外)
移動用リフト日常的に立ち上がりが困難(1-8「3.できない」)/移乗に一部介助または全介助が必要(2-1)/生活環境において段差の解消が必要と認められる
自動排泄処理装置排便において全介助(2-6「4.全介助」)/かつ 移乗において全介助(2-1「4.全介助」)

基本調査で該当しない場合の例外給付

基本調査の結果では該当しない場合でも、次の2つを満たし、市町村の確認を受ければ例外給付の対象になります。

  • 医師の医学的所見にもとづき、次のいずれかの状態像に該当すると判断されている
  • サービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより、貸与が特に必要と判断されている
  • 市町村へ確認依頼書を提出し、確認を受ける
Ⅰ 状態が変動しやすい日や時間帯によって頻繁に該当する状態になる(例:パーキンソン病のON・OFF現象、関節リウマチの朝のこわばり)
Ⅱ 急性増悪状態が急速に悪化し、短期間のうちに該当することが確実に見込まれる(例:がん末期)
Ⅲ 医学的な危険回避身体への重大な危険性や症状の重篤化の回避等の医学的判断(例:喘息発作による呼吸不全、心疾患による心不全、嚥下障害による誤嚥性肺炎の回避)
ちびウルフちびウルフ

要介護1だから介護ベッドは無理、って言われたんだけど…

リハウルフリハウルフ

そこで終わらせないでください。例えば重度の逆流性食道炎で、上体を起こして寝ないと誤嚥性肺炎の危険がある。心疾患で急な起き上がりを避ける必要がある。こうしたケースは「Ⅲ 医学的な危険回避」として例外給付が認められる代表例です。必要なのは主治医の所見と担当者会議での検討。ケアマネジャーに「例外給付の確認をお願いしたい」と伝えてください。制度を知らずに諦めている人が本当に多いところです。

市町村への確認が不要なケース

次の2つについては、対応する基本調査の項目がないため、主治医から得た情報とサービス担当者会議を通じた適切なケアマネジメントによる判断があれば、市町村への確認依頼は不要とされています。

  • 車いす・車いす付属品の「日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者」
  • 移動用リフトの「生活環境において段差の解消が必要と認められる者」

ただし各担当者の意見や判断がケアプランに記載されている必要があります。運用の細部は市町村により異なるため、担当のケアマネジャーに確認してください。

令和6年4月から「借りる・買う」を選べる4種目

令和6年4月の介護報酬改定で、比較的安価で、購入したほうが負担が抑えられる割合が高い品目について、貸与と販売の選択制が導入されました。

固定用スロープ可搬型のものは対象外
歩行器歩行車を除く
単点杖松葉づえを除く
多点杖

この4種目については、福祉用具専門相談員またはケアマネジャーが、貸与と販売のどちらも選べることを、メリット・デメリットを含めて説明したうえで提案することになっています。

長く使うなら購入、状態が変わりそうなら貸与判断の軸はシンプルです。数か月で状態が変わりそう、機種を変える可能性がある、メンテナンスを任せたい場合は貸与。逆に状態が安定していて長期間同じものを使い続けるなら購入のほうが総額は安くなります。なお貸与を選んだ場合、福祉用具専門相談員が利用開始後6か月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、継続の必要性を検討することになっています。

レンタルではなく購入になる品目

直接肌に触れるものや、再利用に心理的な抵抗が生じるものは、レンタルではなく特定福祉用具販売(購入)の対象です。

腰掛便座ポータブルトイレ、補高便座など
自動排泄処理装置の交換可能部品レシーバー、チューブ、タンクなど
排泄予測支援機器膀胱内の状態から排尿のタイミングを知らせるもの
入浴補助用具入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、すのこ、入浴用介助ベルトなど
簡易浴槽
移動用リフトのつり具の部分本体は貸与、つり具は購入

購入は年間10万円(4月1日から翌年3月31日まで)が上限で、その範囲内で自己負担割合に応じた額を負担します。こちらも指定を受けた事業者から買わないと保険給付の対象になりません。ネット通販で同じ商品を買っても対象外です。

自己負担額の決まり方

福祉用具貸与には、他のサービスのような全国一律の単位数がありません。事業所が設定した貸与価格に、自己負担割合(1〜3割)を掛けた額が自己負担になります。

ただし、貸与価格には全国平均貸与価格をもとにした上限が設定されており、上限を超える価格では保険給付されません。また、福祉用具貸与も他の在宅サービスと同じく区分支給限度基準額の枠を共有します。訪問介護やデイサービスを多く使っていると、福祉用具の分で枠を超えてしまうことがあります。

借りるまでの流れ

  • ケアマネジャーに相談する/困っている動作を具体的に伝える
  • 福祉用具専門相談員が訪問し、選定する/住環境と身体状況を確認して機種を提案
  • 軽度者の場合は例外給付の確認/必要に応じて主治医への照会と市町村への確認依頼
  • サービス担当者会議・ケアプランへの位置づけ
  • 福祉用具貸与計画の作成・同意/モニタリングの実施時期も計画に記載される
  • 納品・使い方の説明/実際に使って調整する
  • モニタリング/専門相談員が結果を記録し、ケアマネジャーに報告する

令和6年度改定で、福祉用具貸与計画にモニタリングの実施時期を記載すること、モニタリング結果を記録してケアマネジャーに報告することが義務づけられました。「借りっぱなし」を防ぐための見直しです。合わない用具を使い続けている場合は、遠慮なく相談してください。

よくある質問
福祉用具貸与の対象品目は何種類ありますか?
13品目です。車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト(つり具の部分を除く)、自動排泄処理装置です。
要介護1でも介護ベッドは借りられますか?
原則は対象外ですが、例外給付があります。基本調査で「起きあがり」または「寝返り」が「できない」に該当していれば対象になります。該当しない場合でも、医師の医学的所見にもとづき、状態が変動しやすい・急速に悪化する・医学的に危険回避が必要といった状態像に該当し、サービス担当者会議で必要と判断され、市町村の確認を受ければ借りられます。
要支援でも借りられる品目はありますか?
あります。手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、尿のみを自動的に吸引する自動排泄処理装置は、要支援1・2でも対象です。
一本杖(T字杖)は介護保険で借りられますか?
借りられません。歩行補助つえとして対象になるのは、松葉づえ、多点杖、ロフストランドクラッチ、カナディアン・クラッチ、プラットホームクラッチです。一本杖は実費での購入になります。
ポータブルトイレはレンタルできますか?
できません。腰掛便座は特定福祉用具販売(購入)の対象で、年間10万円を上限に保険給付されます。指定を受けた事業者から購入する必要があります。
杖や歩行器は買ったほうが得ですか?
令和6年4月から、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4種目は貸与と販売を選べます。状態が安定していて長く使うなら購入、状態が変わりそうで機種変更やメンテナンスを想定するなら貸与が向いています。福祉用具専門相談員またはケアマネジャーが、両方のメリット・デメリットを説明したうえで提案することになっています。
ネット通販で買った福祉用具も対象になりますか?
なりません。貸与も購入も、指定を受けた事業者を通す必要があります。同じ商品でも、指定事業者以外から購入したものは保険給付の対象外です。
合わない用具を使い続けている場合はどうすればよいですか?
ケアマネジャーか福祉用具専門相談員に相談してください。貸与であれば機種の変更や返却ができます。令和6年度改定で、福祉用具専門相談員はモニタリング結果を記録してケアマネジャーに報告することが義務づけられており、見直しの機会は制度上も確保されています。
まとめ
  • 福祉用具貸与の対象は13品目。ケアプランに位置づけ、指定事業者から借りる必要がある。
  • 要支援1・2と要介護1は、車いす・特殊寝台・床ずれ防止用具など9品目が原則対象外。
  • 軽度者でも、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ・尿のみを吸引する自動排泄処理装置は借りられる。
  • 自動排泄処理装置(尿のみを除く)は要介護2・3も原則対象外。
  • 例外給付は、まず要介護認定の基本調査の結果で判断される(起きあがり・寝返り・立ち上がり等が「できない」など)。
  • 基本調査で該当しない場合も、医師の医学的所見+サービス担当者会議での判断+市町村の確認で認められる。
  • 状態の変動、急性増悪、医学的な危険回避の3類型が例外給付の対象となる状態像。
  • 車いすの「移動の支援が特に必要」と移動用リフトの「段差の解消が必要」は、市町村への確認依頼が不要。
  • 令和6年4月から、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖は貸与と販売の選択制。
  • 腰掛便座・入浴補助用具・簡易浴槽・排泄予測支援機器などは購入(年間10万円が上限)。
  • 自己負担は事業所の貸与価格×負担割合。全国平均貸与価格にもとづく上限が設定されている。
  • 福祉用具貸与も区分支給限度基準額の枠を他のサービスと共有する。
  • 令和6年度改定で、モニタリング実施時期の計画記載と、結果の記録・ケアマネジャーへの報告が義務化された。
参考にした情報
  • 「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)第31号(軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付)
  • 厚生労働省老健局「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(1.(8)① 一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入、② モニタリング実施時期の明確化、③ モニタリング結果の記録及び介護支援専門員への交付)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(告示・通知・Q&A等の一次情報の掲載ページ)

※本記事の対象品目および例外給付の要件は、厚生労働省の告示および令和6年度介護報酬改定資料にもとづいて整理したものです。例外給付の確認手続き(提出書類、確認依頼の要否、様式)は市町村によって運用が異なります。実際の利用にあたっては、担当のケアマネジャー、福祉用具専門相談員、お住まいの市町村の介護保険担当窓口にご確認ください。基本調査の項目番号は要介護認定の認定調査票にもとづくものです。貸与価格は事業所ごとに設定され、全国平均貸与価格にもとづく上限額は定期的に見直されます。特定福祉用具販売の年間上限額は同一年度(4月1日から翌年3月31日)での金額です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。用具選定に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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