令和6年度(2024年度)の介護報酬改定で新たに登場した「高齢者施設等感染対策向上加算」。新型コロナの経験を踏まえ、施設と医療機関が連携して新興感染症に備える体制を評価する加算です。「(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?」「うちの施設は対象?」「何を準備すれば算定できる?」——管理者・相談員・事務担当の方が抱えやすい疑問を、この記事で一気に解消します。

本記事では、対象サービス・単位数・算定要件・準備のステップを、最新の制度にもとづいて整理しました。届出に向けたチェックリストとしても活用してください。

この記事でわかること
  • 高齢者施設等感染対策向上加算が新設された背景と目的
  • (Ⅰ)10単位・(Ⅱ)5単位の単位数と、対象となる施設サービス
  • (Ⅰ)(Ⅱ)それぞれの算定要件のちがい
  • 「第二種協定指定医療機関」「実地指導」など要件のキーワード解説
  • 算定に向けて施設が準備すべき手順と注意点
ちびウルフちびウルフ

感染対策の加算って、前からあった気がするけど何が新しいの?

リハウルフリハウルフ

いい質問だね。従来の「感染対策」とは別に、令和6年度から“医療機関と連携して新興感染症に備える”ことを評価する新しい加算ができたんだ。順番に見ていこう。

高齢者施設等感染対策向上加算とは?新設の背景

高齢者施設等感染対策向上加算は、令和6年度介護報酬改定で新設された加算です。新型コロナウイルス感染症への対応で浮き彫りになった「施設だけでは感染症に対応しきれない」という課題を踏まえ、施設が医療機関と平時から連携体制を築くことを評価する仕組みとして導入されました。

ねらいは大きく次の2つです。

  • 新興感染症の発生に備え、施設と医療機関があらかじめ「対応の取り決め」をしておくこと
  • 感染症の専門的な助言・実地指導を受けられる体制を、平時から確保しておくこと
ポイントこの加算は、施設内に感染管理の体制を整えるだけでなく、外部の医療機関との「連携」を評価するのが最大の特徴です。単独で完結する加算ではなく、協力医療機関や地域の医師会との関係づくりが前提になります。

単位数|(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)5単位

単位数は区分ごとに次のとおりです。いずれも1か月につき算定します。

区分単位数ひとことで言うと
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)10単位/月医療機関との「連携体制」を評価
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)5単位/月医療機関からの「実地指導」を評価

※単位数は令和6年度介護報酬改定にもとづく。1単位の単価は地域区分・サービスにより異なります。

注意(Ⅰ)と(Ⅱ)はそれぞれ要件が異なり、両方を満たせば併せて算定可能です(合計15単位/月)。一方で、求められる連携・指導の内容が違うため、自施設がどちらを取得できるかを個別に確認する必要があります。

対象となる施設サービス|訪問系は対象外

この加算の対象は入所・入居系の施設サービスです。具体的には次のサービスが対象になります。

対象サービス通称
介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護特養
介護老人保健施設老健
介護医療院
特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護介護付き有料老人ホーム等
認知症対応型共同生活介護グループホーム
ちびウルフちびウルフ

訪問看護とか通所介護は対象に入ってないんだね?

リハウルフリハウルフ

そう、この加算は入所・入居系の施設が対象なんだ。訪問系・通所系のサービスは対象外だよ。利用者が長時間滞在し、集団感染(クラスター)のリスクが高い施設に絞って評価しているんだね。

算定要件|(Ⅰ)の3つの条件

高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)を算定するには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 第二種協定指定医療機関との連携体制の確保
    感染症法にもとづく「第二種協定指定医療機関」との間で、新興感染症が発生したときの対応を行う体制を確保していること。
  2. 協力医療機関等との取り決めと連携
    新型コロナを含む感染症の発生時等の対応について協力医療機関等とあらかじめ取り決め、実際に感染症が発生した際に連携して適切に対応していること。
  3. 研修・訓練への年1回以上の参加
    診療報酬の「感染対策向上加算」または「外来感染対策向上加算」を届け出た医療機関、または地域の医師会が主催する、院内感染対策に関する研修・訓練に年1回以上参加していること。

キーワード解説|「第二種協定指定医療機関」とは

第二種協定指定医療機関とは、感染症法にもとづき、新興感染症が発生・まん延したときに発熱外来や入院などの医療を提供することを、都道府県と協定で取り決めた医療機関のことです。いざという時に頼れる医療機関と、平時から連携しておくことが(Ⅰ)の核になります。

算定要件|(Ⅱ)は「実地指導」がカギ

高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)の要件は次のとおりです。

(Ⅱ)の要件診療報酬の「感染対策向上加算」を届け出た医療機関から、3年に1回以上、施設内で感染者が発生した場合の感染制御等について実地指導を受けていること。

つまり(Ⅱ)は、感染対策に強い医療機関の専門家に施設へ来てもらい、実際の現場で「感染が起きたらどう動くか」を指導してもらう体制を評価するものです。書面だけでなく、現場に即した実地の指導が求められます。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いを整理

比較項目加算(Ⅰ)加算(Ⅱ)
単位数10単位/月5単位/月
評価のポイント医療機関との連携体制医療機関による実地指導
主な連携先第二種協定指定医療機関・協力医療機関・医師会感染対策向上加算の届出医療機関
頻度研修・訓練に年1回以上参加実地指導を3年に1回以上
併算定(Ⅰ)(Ⅱ)はそれぞれ要件を満たせば併せて算定可(合計15単位/月)

算定に向けて施設が準備すべきこと

算定を目指す施設は、次の手順で準備を進めましょう。

  1. 協力医療機関・第二種協定指定医療機関を確認し、新興感染症発生時の対応を取り決める(協定・覚書の整備)
  2. 感染症発生時の連絡体制・受診ルート・情報共有の流れを文書化する
  3. 地域の医師会や感染対策向上加算の届出医療機関が行う研修・訓練の情報を収集し、年1回以上参加する
  4. (Ⅱ)を目指す場合は、感染対策向上加算の届出医療機関に実地指導を依頼する
  5. 参加記録・指導記録・取り決め文書を保管し、届出書類を整えて自治体へ提出する
注意要件を満たしていても、研修参加や実地指導の「記録」が残っていないと算定根拠を説明できません。参加日・指導日・相手先・内容を記録に残し、運営指導(実地指導)でいつでも提示できるようにしておきましょう。

従来の感染対策の取り組みとの関係

介護施設には、もともと感染症対策に関する基準や委員会の設置義務があり、令和6年度からは業務継続計画(BCP)の策定や感染症の発生・まん延防止のための取り組みがすべての事業者に求められています。高齢者施設等感染対策向上加算は、これらの「施設内で完結する取り組み」に加えて、外部医療機関との連携という上のステップを評価するものと位置づけられます。

区分位置づけ
運営基準(義務)感染対策委員会・指針・研修・訓練・BCPなど、全事業者が満たすべき土台
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)医療機関との連携・実地指導という、土台の上に積み上げる評価

つまり、まず運営基準としての感染対策をしっかり整えたうえで、医療機関との連携体制を構築することが加算取得の前提になります。基準を満たしていない段階で加算だけを狙うことはできません。日々の感染対策の積み重ねが、結果として加算につながると考えましょう。

ポイント令和6年度改定では、施設の感染症対応力強化と並行して、協力医療機関との連携強化も大きなテーマになっています。協力医療機関との定期的な会議や、入院受け入れの取り決めなどと一体で整備すると、加算の要件もスムーズに満たしやすくなります。

専門職・管理者が押さえたい実務ポイント

感染対策は一部の担当者だけの仕事ではなく、看護師・介護職・リハビリ職・相談員・管理者がチームで取り組むテーマです。加算の取得を、施設全体の感染対応力を底上げするきっかけにしましょう。

現場で役立つ視点
  • 平時の関係づくり:感染が起きてから慌てないよう、協力医療機関との連絡先・窓口を一覧化しておく。
  • 研修の全職種参加:研修・訓練は要件を満たす担当者だけでなく、現場職員も内容を共有し、対応手順を浸透させる。
  • 既存の体制加算との整理:従来からある感染症対策の取り組みと役割を整理し、二重管理にならないようにする。
  • 多職種でのBCP連動:感染症発生時の業務継続計画(BCP)と連動させ、誰が何をするかを明確にしておく。
ちびウルフちびウルフ

10単位って小さく見えるけど、取りに行く価値はあるのかな?

リハウルフリハウルフ

単位数だけ見ると小さいけど、要件を満たす過程で“医療機関との連携”という大きな財産が手に入るんだ。クラスターを防げれば、結果的に施設も利用者も守られる。金額以上の意味がある加算だよ。

よくある質問(FAQ)

(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できますか?
それぞれの要件を満たせば、両方を併せて算定できます。その場合は合計15単位/月となります。要件は別々なので、自施設がどちらを取得できるかを個別に確認してください。
訪問看護や通所介護でも算定できますか?
この加算は入所・入居系の施設サービス(特養・老健・介護医療院・特定施設・グループホーム)が対象です。訪問系・通所系のサービスは対象外です。
協力医療機関がないと算定できませんか?
(Ⅰ)は協力医療機関・第二種協定指定医療機関との連携が前提です。連携先が未確保の場合は、まず地域の医療機関と新興感染症発生時の対応について取り決めることから始めましょう。
研修は誰が参加すればよいですか?
要件としては施設が年1回以上、院内感染対策に関する研修・訓練に参加していることが求められます。参加者・参加日・内容を記録に残し、現場職員にも内容を共有することが望ましいです。
正確な要件や単位の単価はどこで確認できますか?
最新の算定要件・留意事項は厚生労働省の介護報酬改定資料や告示・解釈通知、各都道府県・市町村の介護保険担当ページで確認できます。届出前に必ず一次情報を確認してください。
まとめ
  • 高齢者施設等感染対策向上加算は令和6年度新設。施設と医療機関の「連携」で新興感染症に備える体制を評価する。
  • 単位数は(Ⅰ)10単位/月、(Ⅱ)5単位/月。要件が異なり、両方満たせば併算定可(計15単位/月)。
  • 対象は特養・老健・介護医療院・特定施設・グループホームなどの入所入居系。訪問系・通所系は対象外。
  • (Ⅰ)は第二種協定指定医療機関・協力医療機関との連携と年1回以上の研修参加、(Ⅱ)は3年に1回以上の実地指導がカギ。
  • 要件を満たすだけでなく、参加・指導の記録を残すこと。連携体制づくりは金額以上の価値がある。
ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶