「訪問看護中に社用車で事故を起こしたら、責任は会社?それとも自分?」
自家用車(マイカー)で訪問看護をしていて事故を起こしたら、修理費や賠償はどうなるの?」
「訪問先での駐車違反の反則金は誰が払うの?」——車で利用者宅をまわる訪問看護では、こうした交通事故・違反の不安がつきまといます。

結論から言うと、責任の所在は「誰が運転していたか」だけでなく「業務中だったか」「どの車を使っていたか」で変わります。あいまいなまま働くと、いざというとき自分が大きな負担を背負うことにもなりかねません。この記事では、訪問看護で起こりやすい交通事故・違反のケースごとに、責任と保険の考え方を法律の視点もふまえて整理します。

この記事でわかること
  • 訪問看護中の交通事故は「運転者」と「会社」のどちらが責任を負うのか
  • 社用車・自家用車(マイカー)で責任と自動車保険がどう変わるか
  • 駐車違反の反則金・放置違反金は誰が払うのか
  • 利用者宅の塀などをぶつけた物損の扱い
  • 事故を起こしたときの正しい対応手順と、事故を防ぐコツ

訪問看護中の交通事故は誰が責任をとるべき?【結論】

ちびウルフちびウルフ

訪問中に事故をしたら、仕事中だから全部会社が責任をとってくれるんですか?

リハウルフリハウルフ

「仕事中なら全部会社」と思い込むのは危険だよ。まず大原則を押さえよう。事故を起こした運転者本人が責任を負い、そのうえで業務中なら会社も責任を負う、という二段構えなんだ。

訪問看護中の交通事故では、責任の主体は大きく分けて次の2つです。

責任を負う人根拠となる考え方
事故を起こした運転者本人自分の不注意(過失)で他人に損害を与えた責任(民法709条の不法行為責任)
雇っている会社(事業所)従業員が業務中に起こした事故への「使用者責任」(民法715条)など

つまり、被害者から見れば、運転者本人だけでなく会社にも賠償を請求できるのが原則です。これは被害者をきちんと救済するための仕組みで、業務中の事故は「会社の事業の遂行にともなって起きたもの」と評価されるためです。

ポイント「運転者本人の責任」と「会社の責任」はどちらか一方ではなく、両方が同時に成立しうるのがポイントです。被害者への賠償の場面では、会社も連帯して責任を負うのが一般的と考えられています。

社用車で訪問看護中に事故を起こした場合の責任と保険

最も一般的なのが、事業所の車(社用車)で訪問する形です。社用車で事故を起こした場合の整理は次のとおりです。

項目原則的な扱い
運転者の責任事故を起こした本人が過失責任を負う
会社の責任業務中のため使用者責任を負うのが原則。社用車は会社が「車の運行を支配し利益を得ている」立場のため、車の所有者・使用者としての責任(運行供用者責任)も会社が負う
使う自動車保険その社用車にかけられている自動車保険(任意保険・自賠責)

たとえばもらい事故(追突されたなど自分に過失がない事故)の場合は、相手方とその車の保険で賠償されるのが一般的です。一方、自分の過失で相手にケガをさせた・物を壊した場合は、社用車の保険で対応することになります。

注意社用車であっても、飲酒運転・無免許・私的利用中の事故など、業務とかけ離れた使い方をしていた場合は扱いが変わります。会社の車はあくまで業務のために使うのが大前提です。

自家用車(マイカー)で訪問看護中に事故を起こした場合

ちびウルフちびウルフ

うちは自分の車で訪問しているんですけど、ぶつけたら全部自分持ちなんですか?

リハウルフリハウルフ

まず使うのは自分のマイカーの自動車保険だよ。ただし「会社が業務にマイカーを使わせていた」事情があると、会社も責任を負う場合があるんだ。ここを知らない人がとても多い。

自家用車で訪問看護を行っている事業所も実際にあります。マイカーで業務中に事故を起こした場合、基本は次のようになります。

  • 被害者への賠償に使うのは、まず自分のマイカーの自動車保険(任意保険・自賠責)です。
  • 自分の車の修理費(自損)は、車両保険に入っていなければ自己負担になることがあります。

ここで重要なのが会社の責任です。「マイカーだから会社は一切関係ない」とは言い切れません。判例では、マイカーが業務に日常的に使われ、会社がそれを容認・助長していた場合には、たとえマイカーであっても「事業の執行について」起きた事故として、会社が使用者責任を負うと判断されることがあります。ガソリン代や手当を会社が支給していた事情なども、判断材料になります。

注意逆に、純粋に通勤だけのマイカー利用で業務には一切使っていなかった場合は、会社の使用者責任は生じないとされるのが一般的です。「業務に使っていたかどうか」が大きな分かれ目です。

とはいえ、いざ事故が起きたとき「業務使用だったか否か」で会社ともめるのは、現場の看護師にとって大きな負担です。マイカー業務使用は、保険・責任のリスクを従業員が抱えやすい働き方であることは知っておきましょう。マイカーで訪問する事業所を選ぶなら、後述の確認ポイントを必ずチェックしてください。

駐車違反・交通違反の反則金は誰が払う?

「仕事中の違反なんだから会社が反則金を払って」という声を聞くことがありますが、これは原則として通りません。

違反の種類誰が負担するのが原則か
スピード違反・信号無視などの反則金・罰金運転者本人(刑事・行政上の責任は本人に帰属するため)
駐車違反の反則金まずは違反した運転者本人
放置違反金運転者が反則金を納めない等のとき、車の使用者(社用車なら会社)に課されることがある

つまり、交通違反の反則金や罰金は、原則として運転した本人の負担です。一方で、駐車違反で運転者が反則金を納付しない場合などは、「放置違反金」という形で車の使用者(社用車なら会社)に納付命令が来る仕組みがあります。社用車で駐車違反を繰り返すと会社に迷惑がかかる、という点は押さえておきましょう。

ポイント訪問看護では「短時間だから」と路上駐車しがちですが、駐車違反は会社にも影響します。訪問先の駐車場所はあらかじめ確認し、コインパーキングや利用者宅の許可を得た駐車スペースを使いましょう。

利用者宅の塀などをぶつけた物損は誰の責任?

会社にとって悩ましいのが、運転者が利用者さんのお宅の塀・門・カーポートなどをぶつけてしまったケースです。ぶつけたのは運転者ですが、業務中に会社の車で起きたことなので、基本的には会社が責任を負って対応するのが一般的です。

リハウルフリハウルフ

職場の湯のみをうっかり割ったら毎回罰金、なんて職場は嫌だよね。仕事には一定のミスがつきもので、それをすべて従業員に負わせるのは現実的じゃない、という考え方が背景にあるんだ。

ただし、運転者にまったく負担が及ばないわけではありません。会社が被害者へ賠償したあと、運転者の不注意の程度に応じて会社が従業員に一部の負担を求める(求償する)ことはあり得ます。もっとも判例では、求償できる範囲は信義則上「相当と認められる限度」に制限されると考えられており、軽い不注意でいきなり全額負担、とはならないのが一般的です。

注意具体的な負担割合や扱いは、事故の状況・就業規則・契約内容によって変わります。実際にトラブルになりそうなときは、自己判断せず会社や専門家(弁護士・労働相談窓口)に相談してください。

訪問看護中に事故を起こしたときの正しい対応手順

万が一の事故でも、落ち着いて順番どおり動けば被害を最小限にできます。基本の流れを覚えておきましょう。

  1. けが人の安全確保と救護。負傷者がいれば救急車(119番)を呼び、二次事故を防ぐため安全な場所へ移動する。
  2. 警察へ連絡(110番)。人身・物損にかかわらず必ず届け出る。事故証明がないと保険が使えないことがある。
  3. 会社(事業所)へ報告。次の訪問の調整も必要なため、できるだけ早く管理者へ連絡する。
  4. 相手と情報交換。氏名・連絡先・車のナンバー・保険会社を確認。記憶が新しいうちに現場写真を撮る。
  5. 保険会社へ連絡。社用車なら会社経由、マイカーなら自分の保険会社へ。自己判断で示談しない。
注意その場で「自分が全部払います」「示談で済ませましょう」と安易に約束しないこと。あとから賠償額が大きく変わることがあります。必ず警察と保険会社を通すのが鉄則です。

訪問看護で交通事故を防ぐためにできること【看護師視点】

訪問看護師は1日に何件も移動し、時間に追われがちです。だからこそ、現場でできる予防策を習慣にしておくことが大切です。

  • 余裕のある訪問スケジュールを組む。焦りは事故の最大の原因。移動時間に余裕を持たせてもらえる事業所を選ぶ。
  • 初めて行く利用者宅は、駐車場所と道順を事前に確認しておく。
  • 雨・雪・夕暮れなど視界の悪い時間帯はとくに減速し、車間距離をとる。
  • 運転中はスマホ・ナビ操作をしない。連絡は停車してから。
  • 体調不良・睡眠不足のときは無理に運転しない。管理者に相談する。
ちびウルフちびウルフ

就職するとき、車のことってどう確認すればいいんですか?

リハウルフリハウルフ

面接で「もし訪問看護の業務中に交通事故を起こしたら、責任と保険はどうなりますか?」と聞いてみるといいよ。きちんとした事業所ほど、明確に答えてくれるはずだよ。

ポイントとくにマイカー業務使用の事業所では、業務使用が保険でカバーされるか・事故時の費用負担はどうなるかを、入職前に文書で確認しておくと安心です。あいまいなまま働き始めると、いざというときに自分が損をします。
訪問看護中の事故は、必ず会社が全額払ってくれますか?
いいえ。被害者への賠償は会社も責任を負うのが原則ですが、運転者本人の責任がなくなるわけではありません。不注意の程度によっては、会社から従業員へ一部負担を求められる(求償される)ことがあります。ただし判例上、その範囲は相当な限度に制限されると考えられています。
自家用車で訪問看護をしていて事故を起こしたら、会社は関係ないですか?
一概には言えません。マイカーが業務に日常的に使われ、会社がそれを容認・助長していた場合は、会社が使用者責任を負うことがあります。使う自動車保険はまず自分のマイカーの保険です。トラブルを避けるため、業務使用の補償と費用負担を事前に確認しましょう。
仕事中の駐車違反の反則金は会社が払うべきでは?
反則金や罰金は原則として運転した本人の負担です。ただし駐車違反で運転者が反則金を納めない場合などは、「放置違反金」として車の使用者(社用車なら会社)に納付命令が来ることがあります。会社に迷惑をかけないよう、駐車場所には十分注意しましょう。
もらい事故(自分に過失がない事故)の場合はどうなりますか?
基本的には相手方とその自動車保険で賠償されます。社用車・マイカーいずれの場合も、自己判断で示談せず、警察への届け出と保険会社への連絡を必ず行ってください。
まとめ
  • 訪問看護中の交通事故は、運転者本人が責任を負い、業務中なら会社も使用者責任を負うのが原則。
  • 社用車なら賠償はその車の保険で対応。会社が車の使用者として責任を負う立場になる。
  • 自家用車(マイカー)はまず自分の保険を使う。業務使用を会社が容認していれば会社も責任を負う場合がある。
  • 反則金・罰金は原則本人負担。駐車違反では放置違反金が車の使用者(会社)に来ることもある。
  • 利用者宅の塀などの物損は基本会社が対応。ただし不注意の程度により求償されることがある。
  • マイカー業務使用の事業所では、補償と費用負担を入職前に文書で確認することが身を守る最大のポイント。

※本記事は一般的な法律・保険の考え方を整理したものです。具体的な事案の責任や負担割合は、契約内容・就業規則・事故状況によって異なります。実際のトラブルでは、会社・保険会社・弁護士・労働相談窓口など専門家にご相談ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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