「複数名訪問看護加算って、誰と一緒に訪問すれば算定できるの?」「看護職員と看護師等って何が違うの?」——医療保険の複数名訪問看護加算は、用語と区分が複雑で、現場でつまずきやすい加算の代表格です。区分を取り違えると算定回数を間違え、返戻(へんれい)の原因にもなります。

この記事では、医療保険(訪問看護療養費)の複数名訪問看護加算について、用語の整理・区分(イロハニ)・金額・回数制限・算定要件を、厚生労働省の告示や疑義解釈をもとにわかりやすく解説します。なお、令和6年度(2024年度)診療報酬改定では、本加算の金額・算定要件に変更はありませんでした。最新の実務に対応した内容です。

この記事でわかること
  • 「看護職員」「看護師等」「その他職員」など紛らわしい用語の違い
  • 複数名訪問看護加算の区分(イ・ロ・ハ・ニ)と金額・回数制限
  • 加算を算定できる要件(別表7・別表8・特別指示書など)
  • 算定時の注意点と、厚労省の疑義解釈Q&A

複数名訪問看護加算の前に|紛らわしい用語を整理

この加算がややこしく感じる最大の原因は、登場する「職員」の呼び方が複数あることです。まずは用語を整理しましょう。ここを押さえるだけで、区分の理解が一気に進みます。

用語含まれる職種
看護職員保健師・助産師・看護師・准看護師
看護師等保健師・助産師・看護師・准看護師+理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
理学療法士等理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
看護補助者訪問看護ステーションに雇用された無資格者
その他職員看護師等(PT・OT・ST含む)または看護補助者
ちびウルフちびウルフ

「看護職員」と「看護師等」って、PT・OT・STが入るかどうかの違いなんだね!

リハウルフリハウルフ

その通り!看護職員=看護系の資格者だけ、看護師等はそこにリハ職を足したもの。ここが分かれば区分の表もスッと読めるよ。

複数名訪問看護加算とは?

複数名訪問看護加算とは、1人の看護師等による訪問看護が困難な場合に、2人で同時に訪問したときに算定できる加算です(医療保険・訪問看護療養費)。具体的には、次の「A」と「B」が一緒に訪問するときに算定します。

区分職種
A(必須)看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)
B(同行者)保健師・助産師・看護師/准看護師/理学療法士・作業療法士・言語聴覚士/看護補助者

「1人での訪問看護が困難」とは、たとえば体格の大きい利用者の移乗・体位変換に2人の手が必要なケース、医療機器の管理と処置を同時並行で行う必要があるケース、暴力行為や著しい迷惑行為のリスクがあるケースなどが想定されます。安全に質の高いケアを提供するために、複数名での訪問が制度上評価される仕組みです。

ポイント複数名のうち、最低1名は必ず看護職員でなければなりません。リハ職同士、看護補助者同士の訪問では算定できない点に注意です。

複数名で訪問できる理由(算定要件)とは?

複数名訪問看護加算は、誰でも好きなときに算定できるわけではありません。「1人では訪問看護が困難」と認められる、次のいずれかの状況が要件です。

No.複数名で訪問できる理由
厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七)の者
特別管理加算の対象者(別表第八)
特別訪問看護指示書が交付されている者
暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者
身体的理由により1人の看護師では対応が困難(その他職員のみ)
その他、①〜⑤に準ずると判断される場合(その他職員のみ)
注意算定にあたっては利用者・家族の同意が必要です。同意は口頭でも可能ですが、同意を得た旨を必ず記録に残すこと。新人の同行や引き継ぎなど、事業所都合の同行訪問は算定対象になりません。

複数名訪問看護加算の区分(イロハニ)と金額一覧

加算額は「誰と同行するか」で変わり、イ・ロ・ハ・ニの4区分に分かれます。さらに同一建物内の利用者人数(1〜2人/3人以上)で金額が異なります。以下は医療保険(訪問看護療養費)の金額です。

区分同行する人同一建物1〜2人同一建物3人以上回数
看護師等(准看護師を除く)4,500円4,000円週1日
准看護師3,800円3,400円週1日
その他職員(看護補助者)3,000円2,700円週3日

そして、別表第七・別表第八・特別訪問看護指示書の対象者について、看護補助者(その他職員)と訪問する場合は「ニ」の区分となり、1日あたりの訪問回数で金額が決まります(回数制限なし)。

区分ニ(その他職員・厚労大臣が定める場合)同一建物1〜2人同一建物3人以上
1日に1回3,000円2,700円
1日に2回6,000円5,400円
1日に3回以上10,000円9,000円
ちびウルフちびウルフ

イとロは週1回、ハは週3回まで…回数が区分でちがうんだね。

リハウルフリハウルフ

そう、回数制限の取り違えが返戻の一番の原因なんだ。看護師等(イ)・准看護師(ロ)は週1日、看護補助者(ハ)は週3日。ここはチームで共有しておこう。

注意本加算は1人の利用者につき所定の回数が上限です。同じ週に複数の訪問看護ステーションそれぞれで算定することはできません(週ごとに算定するステーションが異なるのは可)。複数事業所が関わる場合は、どちらが算定するか事前に調整しましょう。

看護補助者とは?資格要件と算定上の扱い

区分ハ・ニで登場する「看護補助者」は、資格を問わないのが特徴です。介護福祉士や初任者研修の修了も不要です。ただし、秘密保持や医療安全の観点から、その訪問看護ステーションに雇用されていることが必要です。

厚労省の疑義解釈では、看護補助者は「看護師の指導の下に、療養生活上の世話(食事・清潔・排泄・入浴・移動等)や居室内の環境整備、看護用品・消耗品の整理整頓といった看護業務の補助を行う者」と想定されています。指定基準の人員には含まれないため、従事者の変更届の提出は不要です。なお、看護職員を看護補助者として算定することはできません

介護保険の「複数名訪問加算」との違い

ここまでは医療保険(訪問看護療養費)の複数名訪問看護加算を解説してきましたが、介護保険にも似た名前の「複数名訪問加算」があります。名前が紛らわしいため、両者の違いを整理しておきましょう。

項目医療保険:複数名訪問看護加算介護保険:複数名訪問加算
根拠診療報酬(訪問看護療養費)介護報酬
計画上の扱い主治医の指示が前提ケアプランに位置づけが必要
同行できる職種・回数イ〜ニで職種・回数が細かく規定看護師等/看護補助者で区分・単位が設定
金額の単位「円」で規定「単位」で規定(地域単価を乗じる)
注意介護保険の複数名訪問加算は、あらかじめケアプランに計画されていることが前提です。医療保険のように主治医の指示だけでは算定できない点が大きな違いです。どちらの保険での訪問かを必ず確認してから算定しましょう。

そもそも医療保険の訪問看護は、別表7・別表8・特別訪問看護指示書など医療的ニーズが高い人が対象です。この前提を押さえておくと、「どちらの複数名加算を算定するのか」で迷うことが少なくなります。要介護認定を受けている人は原則として介護保険が優先され、別表7などの条件を満たした場合に医療保険へ切り替わります。

医療保険の複数名訪問看護加算のQ&A(厚労省 疑義解釈より)

訪問のすべての時間で同時に複数名でいる必要がありますか?
必要な時間帯に複数名で対応すれば可とされています。ただし、同時に複数名で実施する時間は、訪問看護の標準的な時間とされる30分程度を超えていることが求められます。(疑義解釈/平成22年3月29日)
同時に3名で訪問した場合も週1回のみの算定ですか?
そのとおりです。区分イ・ロに該当する場合、人数が増えても週1回までの算定となります。(疑義解釈/平成22年3月29日)
利用者・家族の同意は口頭でもよいですか?
口頭でも差し支えありませんが、同意を得た旨を記録等に残すことが必要です。トラブル回避のためにも文書化が望ましいです。(疑義解釈/平成22年3月29日)
看護補助者にはステーションへの雇用が必要ですか?
秘密保持や医療安全の観点から、当該訪問看護ステーションに雇用されている必要があります。資格は問われず、従事者の変更届の提出も不要です。(疑義解釈/平成24年4月20日)
新人スタッフの同行訪問でも算定できますか?
算定できません。複数名訪問看護加算は「1人での訪問が困難な利用者」に対して同時訪問する場合の加算であり、教育目的の同行や引き継ぎ、事業所都合での複数名訪問は対象外です。算定要件(別表7・8、特別指示書など)を満たし、利用者・家族の同意があることが前提となります。
まとめ
  • 複数名訪問看護加算は、1人での訪問が困難な場合に2人で同時訪問したときに算定(最低1名は看護職員)
  • 令和6年度(2024年度)診療報酬改定では、本加算の金額・算定要件に変更なし
  • 区分は同行者で決まる:イ=看護師等(週1日・4,500/4,000円)、ロ=准看護師(週1日・3,800/3,400円)、ハ=看護補助者(週3日・3,000/2,700円)、ニ=別表7・8等で看護補助者と訪問(回数制限なし)
  • 算定には別表7・別表8・特別指示書などの要件と、利用者・家族の同意(記録)が必要
  • 回数制限の取り違えと、複数事業所での重複算定に注意

出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」、厚生労働省保険局医療課 疑義解釈資料(平成22年3月29日/平成24年4月20日/令和2年3月31日)。金額・要件は報酬改定で変わる場合があるため、算定時は最新の告示・通知をご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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