訪問入浴介護の看取り連携体制加算とは?

訪問入浴介護の看取り連携体制加算は、1回につき64単位。令和6年度改定で新設されました。算定できるのは死亡日及び死亡日以前30日以下の期間です。
この加算で最も実務的な要件は、施設基準のイにあります。病院・診療所・訪問看護ステーションとの連携により連絡体制を確保し、必要に応じて訪問看護等が提供されるよう、「訪問入浴介護を行う日時を調整していること」。単なる連携体制ではなく、入浴の日時そのものを医療側と合わせることが求められています。
看取り期の入浴は、状態の変動が大きく、入浴中や直後の急変リスクを常に抱えます。「訪問看護が入る日に合わせる」「訪問直後に看護師が来られる時間にする」といった調整を、報酬として評価した加算だと理解すると要件が腑に落ちます。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問入浴介護費のニ、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第2号の2、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第3号の4の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 看取り連携体制加算の単位数(64単位/回)と算定期間
- 「死亡日及び死亡日以前30日以下」という期間の考え方
- 施設基準の3要件(連絡体制と日時調整・対応方針の説明と同意・職員研修)
- 「訪問入浴を行う日時を医療側と調整する」という独特の要件
- 利用者側の2要件(医師の診断・説明と同意)
- 令和6年度改定で新設された加算であること
- 介護予防訪問入浴介護には設けられていないこと
ちびウルフ看取り期に入浴なんて、リスクが高くないですか?
リハウルフリスクはあります。だからこそ、医療と日時を合わせて入る体制を要件にしているわけです。最期にお風呂に入れてあげたい、という家族の希望は現場では本当に多い。断るか、体制を整えて受けるか。この加算は後者を選んだ事業所を評価するものです。
単位数は64単位。死亡日以前30日以下が対象
告示19号の訪問入浴介護費「ニ 看取り連携体制加算 64単位」の注は、次のとおりです。
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして(略)都道府県知事に対し届出を行った指定訪問入浴介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者について看取り期におけるサービス提供を行った場合は、看取り連携体制加算として、死亡日及び死亡日以前30日以下について1回につき所定単位数を加算する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 1回につき64単位 |
| 算定期間 | 死亡日及び死亡日以前30日以下 |
| 算定単位 | 訪問1回ごと |
| 届出 | 必要(都道府県知事) |
| 新設 | 令和6年度改定 |
「1回につき」なので、期間中に訪問した回数分を算定できます。週2回の利用なら、30日でおよそ8〜9回分。基本報酬1,266単位に対して64単位なので約5%の上乗せです。
施設基準は3つ
イ 病院、診療所又は指定訪問看護ステーションとの連携により、利用者の状態等に応じた対応ができる連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて当該病院、診療所又は指定訪問看護ステーションにより指定訪問看護等が提供されるよう、指定訪問入浴介護を行う日時を当該病院、診療所又は指定訪問看護ステーションと調整していること。
ロ 看取り期における対応方針を定め、利用開始の際に、利用者又はその家族等に対して、当該対応方針の内容を説明し、同意を得ていること。
ハ 看取りに関する職員研修を行っていること。
小規模多機能型居宅介護の看取り連携体制加算は「看護師により24時間連絡できる体制の確保」と「看取り期の対応方針の説明・同意」が要件です。訪問入浴だけが「サービスを行う日時を医療側と調整すること」を明記しています。
実務では、
- 訪問看護の訪問日に合わせて入浴日を設定する
- 入浴直後に看護師が訪問できる時間帯にする
- 当日の状態を訪問看護・主治医と事前に共有し、実施の可否を決める
といった運用になります。調整した記録(誰と、いつ、どう決めたか)を残しておくことが、そのまま算定根拠になります。(運用例は筆者の実務経験にもとづく整理で、制度上の定めではありません)
ロの「利用開始の際に」を落とさない
看取り期における対応方針の説明・同意は、「利用開始の際に」行うものです。看取り期に入ってから慌てて同意を取る運用は、条文の建て付けと合いません。新規利用者の契約時に、重要事項説明とあわせて対応方針を説明する流れにしておくのが確実です。
利用者側の要件は2つ
イ 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること。
ロ 看取り期における対応方針に基づき、利用者の状態又は家族の求め等に応じ、介護職員、看護職員等から介護記録等利用者に関する記録を活用し行われるサービスについての説明を受け、同意した上でサービスを受けている者(その家族等が説明を受け、同意した上でサービスを受けている者を含む。)であること。
ロの「説明を受け、同意した上で」は、1回きりの同意ではなく、状態や家族の求めに応じて説明を続けることを想定した書き方です。訪問のたびに状態が変わる看取り期では、実施可否の判断とその説明を記録に残す運用が必要になります。
介護予防訪問入浴介護には設けられていない
介護予防訪問入浴介護費(平成18年厚生労働省告示第127号)には、看取り連携体制加算はありません。要支援1・2の利用者については算定できません。
看取り期に入れば区分変更で要介護になることが多いものの、要支援のまま最期を迎える人もいます。その場合、報酬上の評価は受けられません。
よくある質問
いつから算定できますか?
死亡日及び死亡日以前30日以下の期間について、訪問1回ごとに算定します。死亡してはじめて期間が確定するため、実務上は死亡後に該当分をさかのぼって請求する形になります。取扱いは保険者に確認してください。
「1回につき」とは訪問ごとですか?
そのとおりです。期間中に訪問入浴介護を提供した回数分を算定します。
医療機関との「日時の調整」はどの程度必要ですか?
施設基準は、必要に応じて訪問看護等が提供されるよう、訪問入浴を行う日時を病院・診療所・訪問看護ステーションと調整していることを求めています。調整の記録を残してください。
看取り期の対応方針の説明はいつ行いますか?
「利用開始の際に」説明し、同意を得ることが要件です。看取り期に入ってからではありません。
職員研修の頻度は決まっていますか?
「看取りに関する職員研修を行っていること」とのみ定められています。頻度の考え方は保険者に確認してください。
医師の診断はどのように確認しますか?
利用者側の要件として、医師が回復の見込みがないと診断していることが必要です。診断の確認方法や記録の残し方は保険者に確認してください。
要支援の人にも算定できますか?
できません。介護予防訪問入浴介護費には看取り連携体制加算が設けられていません。
清拭・部分浴(90%算定)の日でも算定できますか?
看取り期には全身入浴が困難な日も想定されます。清拭・部分浴を行った日の取扱いは条文に明示がないため、保険者に確認してください。
- 看取り連携体制加算は1回につき64単位。令和6年度改定で新設
- 算定期間は死亡日及び死亡日以前30日以下
- 期間中の訪問回数分を算定できる
- 施設基準は、医療機関等との連絡体制の確保と訪問日時の調整、看取り期の対応方針の説明と同意、看取りに関する職員研修の3つ
- 「訪問入浴を行う日時を医療側と調整する」要件は訪問入浴に特有
- 対応方針の説明・同意は「利用開始の際に」行う
- 利用者側の要件は、医師による回復の見込みがない旨の診断と、説明・同意のうえでのサービス利用
- 介護予防訪問入浴介護には設けられていない
- 届出先は都道府県知事
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問入浴介護費のニ(看取り連携体制加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第2号の2(指定訪問入浴介護における看取り連携体制加算に係る施設基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第3号の4(訪問入浴介護費のニの注の基準に適合する利用者)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 介護予防訪問入浴介護費(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および保険者・指定権者の解釈をご確認ください。請求のタイミング、清拭・部分浴を行った日の取扱い、職員研修の頻度、医師の診断の確認方法については確認をおすすめします。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用例に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




